Semua Bab 後悔のない人生を歩もう: Bab 11 - Bab 20

3年後、帝市空港にて。国際超一流ブランドのチーフデザイナーである江口心音（えぐち ここね）が初めて国内に姿を現した。多くの記者たちは待合室で、期待に胸を膨らませながら準備を整えていた。皆がカメラをセットし、デザイナーの情報をいち早く手に入れようと構えていた。心音の名前が出ると、誰もが驚嘆の声をあげた。2年前に突然現れた天才デザイナーは、謎めいていて絶世の美貌を持ち、登場するや否や多くの国際賞を総なめにした。50年もの間、本国のデザイナーを起用しなかった超一流ブランドにまで、巨額の報酬を提示され迎え入れられた。言うまでもなく、「江口心音」という名前は今やファッション界の看板である。その「看板」はこの時、シンプルで洗練された白いシャツを着て、キャップをかぶり、荷物を引きながらVIP通路からゆっくりと現れた。彼女が姿を見せた瞬間、フラッシュは止まることがなかった。心音、いや、あるいは咲夜と言うべきか。彼女は取材を受けるつもりはなく、頭を下げてひたすら前へ歩いていった。だが、鋭い記者が声を上げた。「これは江口咲夜じゃないか？」「え？彼女は亡くなったんじゃなかったの？」その大きな声は通りかかった人々の注意を引いた。その中には空港に到着したばかりの陸斗もいた。「江口咲夜」という4文字が陸斗の注意を引きつけた。彼は突然足を止め、声のする方を見やると、人だかりの中に心音の姿を一目で見つけた。心音もたまたま顔を上げ、二人の視線が人混みを越えて交わった。陸斗は女性の瞳をじっと見つめ、大きなショックを受けた。慣れ親しんだようで、しかしどこかぼんやりとした感覚に、彼は心音から目をそらせなかった。心の中で猛獣が鎖を振りほどき暴れ出そうとし、彼の神経を激しく引っ張るようだったが、陸斗は冷たい表情でその感情に抗った。心音も、まさかこんな突然に陸斗に出会うとは思っていなかった。3年が経った……彼女はずっと、陸斗の姿が心の中で薄れていったと思っていたが、群衆を隔ててただ見つめ合うだけで、自分の胸にある恋しさと深い悲しみを感じてしまった。3年経っても、まだ忘れられないのか？彼女は無理に視線を引っ込めて、早足で去っていった。さっき陸斗が冷たい目で自分を見つめたのを思い出し、涙が目の端からこぼれ落ちた。

咲夜の動きは突然固まった。「何て……言った……？」誠司は彼女の瞬時に血の気が引いた顔を見て、急にこの話をしたことを後悔した。彼は咲夜を愛していて、私心もあった。しかし、彼が彼女を振り向かせようとする方法は、彼女を傷つけるものではあってはいけない。一瞬、誠司という大柄で成熟した男が戸惑いながら、目の前の咲夜を慰めた。「ごめん、急にこんな話をして……」実は咲夜は物事がこうなると想定していた。むしろ、こうなるのが普通だと思っていた。彼女はいつも、陸斗の愛の邪魔をしていたのだろう？「大丈夫よ、謝らなくていい」咲夜は無理に現実に向き合い、胸を刺すような痛みを抑えながら、何事もなかったかのように振る舞おうとした。「ただ、少し驚いただけ……」彼女は指をぎゅっと握り、爪が深く肉に食い込んだ。感情から抜け出そうとしていたが、赤くなった目元は彼女の本心を隠せなかった。誠司は心配そうに咲夜を抱きしめた。「咲夜、君には俺がいる。俺を見てくれ……君を愛していない人のために、悲しまないで」咲夜は誠司の胸に静かに寄りかかり、黙ったままだった。……咲夜は一晩眠れなかった。無理に結んだ縁は続かないと、彼女は自分に何度も言い聞かせた。愛さないことが罪だ。その理屈は彼女が命をかけて体験してきたことだ。今の彼女は同じ過ちを繰り返したくなかった。晴香との会見は3日後に決まっていた。しかも、会見の場はかつて3年前に訪れた西洋料理店だった。それが晴香の故意によるものかは分からなかった。咲夜は車を降りると、窓際に座って待つ晴香を見つけた。きちんとおしゃれをして、咲夜にラブラブを見せびらかしに来たのか？咲夜は急がず、道路の向かい側のカフェでコーヒーを注文し、30分ほど座っていた。その間に、晴香の秘書が3度もマネージャーを通じて、咲夜に催促の連絡をしてきた。4度目の催促で、咲夜はゆっくりとマスクをつけて西洋料理店へ向かった。晴香の苛立った表情を見て、咲夜は非常に良い気分だった。咲夜は悠然と席に着いた。彼女が座った瞬間から、晴香の刺すような視線は一度も逸れなかった。咲夜は、もし彼女の目に温度があれば、自分のマスクに穴が二つ開くのではないかと疑った。「ずっと見てるけど、飽きないの？」咲夜は顎を少し上げて

西洋料理店の中で、晴香は怒りで顔が真っ赤になり、頭の中で無数の推測が駆け巡りしたが、結局どれが正しいかは判断できなかった。少し考えてから、京平に電話をかけた。京平が駆けつけたとき、晴香は席に座り、目を真っ赤にした可哀想な姿で座っていた。その姿を見ると、彼は胸が締めつけられるほど心を痛めた。もう距離を保つことも忘れ、京平は彼女をぎゅっと抱きしめた。「晴香、泣かないで。どうしたんだ？」晴香は京平の胸に顔を埋め、事実を捻じ曲げて出来事を語りながら、不確かな口調で彼に確認を求めた。「あの人が咲夜だと思う？本当に彼女だったら、私は、私……」言葉を言い終える前に、彼女は再び彼の胸の中ですすり泣いた。京平は心が崩れてしまいそうな気がした。彼は優しく彼女の背を撫で、柔らかい声で言った。「彼女が江口咲夜かどうかなんて関係ない。あんな態度だけで、俺は彼女を潰すさ。それに、たとえ江口咲夜だとしてもどうだ？今、陸斗の婚約者はお前だ！人間だろうと幽霊だろうと、お前の邪魔をする奴は許さない！」「ありがとう……」京平の保証を聞くと、晴香は彼の胸の中であざとい笑みを浮かべた。だが、彼女は気づかなかった。京平の瞳に、狂気と愛情が入り混じった光が揺らめいていることに！……偶然通りかかった陸斗は、咲夜がレストランに入るのを見ると、思わず車を停め、カフェに入る彼女の姿を目で追った。亡き妻と瓜二つの顔を持つこの女性に、彼は少なからず興味を抱いていた。だがまさか、彼女が会う相手が晴香だとは思わなかった。明らかに口論になった二人と、その後笑顔で出てきた咲夜を見て、陸斗はなぜかほっとした。咲夜の車が車列に紛れ込むのを見届けると、彼は再びエンジンをかけた。その時、スマホにメッセージが届いた。晴香の周囲に潜ませている監視者から送られた写真だった。陸斗はその写真を見つめ、相変わらず整った顔に冷ややかさを湛えていたが、瞳の奥だけがわずかに沈んだ。写真には、彼の幼なじみと婚約者が抱き合い、親密そうな様子が映っていた。秘書の大宙も同じ写真を受け取った。彼は一目見て肝を冷やし、陸斗の顔色をうかがいながら口を閉ざした。陸斗はどう対処するのだろうか？大宙は、陸斗が人を殺すか、あるいは晴香との婚約を解消するかも

陸斗は、自分でもなぜ声をかけに来たのか分からなかった。心音の身元が確かに怪しいとはいえ、そこまで彼の注意を引くほどではなかったのだ。ただ偶然通りかかり、心音が嬉しそうに手を振って誠司を呼び寄せるのを見た。背が高いイケメンが彼女の向かいに座り、二人で何やら小声で話していた。陸斗の胸には、理由もなく苛立ちが込み上げ、心の奥を何かにぎゅっとつかまれたように痛かった。気がついたときに、彼はもう咲夜と誠司のテーブルの横に立っていた。咲夜は顔を上げて男の端正な顔立ちを見ると、さっきの推測で胸が高鳴り、一瞬何も言えなくなった。先に口を開いたのは誠司だった。「雨宮社長、お久しぶり」男の端正な顔には笑みが浮かんでいたが、その眼差しには敵意しかなかった。陸斗は誠司の言葉に答えず、咲夜を見て、深いまなざしで言った。「江口さん、雨宮グループとの協力はもう一度考え直してほしい」咲夜は、陸斗と向き合うのが少し怖かった。今、彼女の心は乱れ、頭の中に次々と質問が浮かんだ。陸斗に確かめたかったが、いざ口に出そうとすると言葉にならなかった。誠司は、うつむく咲夜を見て、さらに彼女を見つめ続ける陸斗を横目で見やると、瞳にかすかな痛みを宿した。だが、彼はすぐに気持ちを整え、一歩前に出て咲夜と陸斗の間に立つと、彼女に代わって答えた。「彼女はもう断ったはず」陸斗は視線を引き、誠司の顔に向けると、冷たい光を帯びた不快そうな目つきを送った。誠司はもちろん恐れなかった。彼は咲夜をしっかり背後に隠し、陸斗の視線を遮った。二人の背が高く目立つ男が、こうして睨み合い、誰も引こうとしない。その場の空気は一瞬で火花が散るように張り詰めた。咲夜は、誠司が自分を守ってくれているのはわかっていた。陸斗の前で取り乱して計画が台無しになるのを恐れているのだ。だが、彼女はいつか向き合わねばならない。「大丈夫、席に戻って」咲夜の困った表情を見た誠司は、深く息を吸い、悔しそうに半歩退いたが、守る姿勢は崩さなかった。咲夜は顔を上げて、陸斗の視線を受け止めた。その見慣れた顔に緊張が走り、彼女は無意識に誠司の袖をつかんだ。彼女は言葉を整理し、口を開いた。「雨宮グループとの協力、もう一度よく考えてから返事するよ」陸斗は何も言わなかった。

一方で、咲夜は我慢できずに少しおしゃれをしていた。だが約束の場所に着き、陸斗のそばに晴香がいるのを見ると、咲夜の笑顔はたちまち固まった。晴香は陸斗にぴったり寄り添い、甘い笑顔で咲夜に手を振った。「お久しぶりですね、江口さん」咲夜は晴香を完全に無視し、冷たく陸斗を見つめた。彼女は腕を組みながら、二歩ほど距離を取って立ち、眉をひそめた。「雨宮さんって、本当に家族思いだね。仕事の話をするのに、婚約者まで連れてくるなんて」彼女の口調は高くはなかったが、陸斗には皮肉が込められているのがわかった。彼は軽くため息をついた。「誤解だ。これは偶然だ」咲夜は微笑んだが、その笑みは心からのものではなかった。「私に説明する必要はないよ。だって、あなたは私の姉と関係があるだけで、私とは関係ないからね、義兄さん？」彼女は「義兄さん」の4文字を強調した。咲夜ははっきりと、陸斗と5年間続いた名ばかりの結婚を皮肉っていた。言い終えると、彼女は背を向けて立ち去ろうとした。今日来たのは間違いだった！陸斗の顔色が急に険しくなり、反射的に咲夜の手首を掴んだ。「説明しただろ。これは偶然だ」そんな説明なんて求めていない！咲夜は心の中で毒づいたが、表情はさらに冷たくなった。彼女はこれまで自分が間違っていたと思った。陸斗は晴香を大事にしていて、二人は婚約していた。好きだという気持ちはただ、彼女の一方的な妄想だったのだ。なんて愚かなんだ。以前の苦しい記憶がまた襲い、咲夜の顔色は青ざめた。彼女は必死に耐え、陸斗と晴香の前では弱さを見せないよう踏ん張っていた。晴香は明らかに顔色の悪い咲夜を見て、口元に得意げな笑みを浮かべた。そして、彼女は柔らかく口を開いた。「ごめんなさい、江口さん。仕事の邪魔をしに来たわけじゃないんです。ただ、義母さん……久美子さんが、帰って食事をしようって言いまして、陸斗が送ってくれるだけです。誤解しないでくださいね」彼女が言わなければよかったのに、咲夜の頭は一瞬にして爆発しそうだった。もう「義母さん」なんて呼んでる……彼女は力強く陸斗の手を振りほどき、振り返らずに大股で去っていった。手の中は空になり、刺すような視線を一瞬晴香に向けた陸斗は、すぐさま咲夜の後を追った。晴香