「……俺は君を協力相手に選び、結婚した。だから、他の誰かを選ぶつもりはない」秀一は一拍置いて、少しぎこちなく言葉を足す。――けれど本当は、「協力相手」なんて冷たい言葉で括りたくなかった。秀一の中で二人は、契約関係でも協力関係でもない。ただ一つ、「彼は彼女の夫だから、信じてほしい」、それだけだった。彼は玲を愛しているから、裏切ったり、他の人を選んだりしない。しかし、今の二人は、まだ気持ちが通じ合っていなかった。それに、弘樹との苦い初恋を経験した玲は、気持ち的にも精神的にもすぐには秀一を恋愛対象として受け入れるのは難しいだろう。そんな彼女に、急に恋人としての距離を詰めるより、信頼できる仲間として寄り添う方が、きっと自然だ。玲は、言葉の裏にある秀一の思惑を知る由もない。けれど、「他の誰かを選ぶつもりはない」という一言が、胸の奥に温かく染み込んだ。「……はい。秀一さんを信じます」目尻が少し潤んで、玲は笑った。「次からは、勝手に疑ったりしません。無駄に落ち込んだりもしません」秀一はその笑顔を見つめ、ふっと柔らかく微笑んだ。「いい子だ」大きな手が、そっと彼女の頭に触れる。「さっき部屋を出てからずっと戻ってこなかったが……お義母さんに何か言われたのか?」「ううん、何も。むしろちょっと仕返ししてきました。そうだ、これ!母からご祝儀をもらってきました!」手渡されたのは、一枚のカード。雪乃の貯金だけでは足りなかったから、十数分前、玲が自分の口座からわざわざ振り替えをしたばかりのものだ。決して大金ではない。けれど、彼女なりの精一杯の気持ちだ。誇らしげの玲の顔を見て、秀一は一瞬だけ目を細め、それから受け取って小さく頷いた。「ありがとう」彼にとっては必ずもらわないといけないお金ではないが、玲が彼のために頑張って引っ張り出してきたものだ。大事にとっておくのが、彼女への一番のお返しだろう。秀一がカードを丁寧にポケットにしまい込むのを見て、玲の胸の中で小さな花が咲いたように嬉しさが広がる。弘樹に「大人気ない」と言われたことも、完全に忘れ去った。二人はそのまま個室へ戻り、最後まで丁寧に挨拶を済ませた。一方、雪乃は全財産をまんまと失い、目の縁まで赤くして、誰とも話したくない様子だ。そんな中、茂だけは変わらぬ笑顔を浮かべていた。秀一
Magbasa pa