「どんなに難しくても、玲の父親が遺したものは必ず見つけ出す」秀一の表情には、一片の揺らぎもない。雨音がどれほど「困難だ」、「可能性が低い」と告げても、彼の目的はただ一つ――玲がもう一度、笑えるようにすることだけだ。それが、何度目の決意だろう。玲が高瀬家で濡れ衣を着せられた時も、綾に追い詰められ、クルーズから飛び降りる時も、「不倫相手」だと嘘の世論をぶつけられた時でさえ。秀一は、一度たりとも彼女を手放さなかった。約束通り、何があっても玲を守り続けた。雨音は、玲の親友の中でも一番厳しいタイプだ。そんな彼女でさえ、今の秀一を見て、鼻の奥が熱くなってしまう。「藤原さん、玲ちゃんの代わりに言わせてください……本当にありがとう。ここまでしてもらえるなんて、あの子は幸せ者です」まるで、天から与えられた贈り物のようだった。秀一が現れたことで、玲が何十年も背負ってきた「不幸」が少しずつ、塗り替えられていく。しかし秀一は、静かに視線を外し――その黒い瞳を、玲の部屋の方向へ向けた。「本当にたくさんのことをしてくれたのは、むしろ彼女のほうだ」その事実を知っている人間は、ほとんどいない。玲は、秀一に何かを求めることがなかった。だから彼女自身からは何も言わない。最初に、あの冷たい川から彼の母の形見を拾い上げた時だけじゃない。宴会の途中で陰で見守り、孤立しないよう支えた時も――他にも、数えきれないほど小さな気遣いを重ねてきた。あの頃、秀一の「落ちぶれた姿」を真正面から見たことがある数少ない人間。だからこそ、彼女の中で責任感と正義感のようなものが自然に芽生えた。秀一に遊ぶ相手がいないと、小さな泥人形を作り、彼がよくいる場所へ並べていった。秀一が食事を抜かれると、自分の夕食を半分以上削り、人づてに届けさせた。そして――彼の名誉を、美穂と綾が汚し、首都中に悪評が広まったとき。玲はこっそり、噂好きのご令嬢たちの飲み物に唐辛子とマスタードを仕込んだ。令嬢たちが唇を腫らせ、涙と鼻水だらけで声も出なくなる姿を、影で口を押さえながら、肩を震わせて笑う玲。本当は、彼女自身もひどい噂を流されていた。自分の誹謗中傷には無関心なのに、彼のこととなると、黙っていられなかった。秀一は、その全部を見てきた。年相応なら「子どもじみている」と笑うようなことも、玲
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