こうして、西洲と清佳は密約を交わした。西洲は清佳に精神病院の管理を一任し、毎年莫大な資金を病院に注ぎ込むことを約束した。清佳が必要とする実験器具や薬品も、彼が無条件で用意することになった。そして清佳は、もう一本の特効薬を西洲に手渡し、定期的に病院を訪れて涼音の体を診察し、回復の様子を見守ることとなった。涼音が死んでいないとわかった以上、西洲も彼女を棺に閉じ込めておくなんてできなかった。棺なんて、入らずに済むならそれが一番だ。西洲は涼音を自宅に連れ帰り、彼女の部屋を昔のように美しく飾り直した。そして、そっと涼音を抱き上げ、ピンク色のプリンセスベッドに優しく寝かせた。「ここは涼音の昔の部屋だよ。配置も、涼音が好きだったあの頃のまま全部再現したんだ」西洲は微笑みながら、涼音の青白い頬に手をそっと触れた。その声は今までにないほど柔らかい。「涼音、おかえり」どれほどの時が経っただろう。やっと、彼女をもう一度家に連れて帰ることができた。今度こそ、もう二度と離れ離れにはならない。この一年、西洲は涼音の世話を徹底的にやり抜いた。まるで、時が巻き戻ったかのようだった。涼音がまだ幼かった頃、西洲は毎晩彼女を抱きしめて童話を読んでやり、眠るまで見守っていたものだ。今や小さな涼音も大人になったが、きっとおじさんの優しさはまだ必要なのだろう。西洲は昔の童話本を取り出し、低く温かい声でゆっくりと読み聞かせた。涼音が聞こえているかどうかは分からない。けれど、それでもいい。彼は、彼女に語ってあげたかったのだ。「おやすみ、涼音」読み終えると、西洲はそっと額にキスを落とし、布団を直してから静かに部屋を後にする。時折、西洲は涼音に恋の言葉も囁いた。彼女が目覚めているときには、恥ずかしくてとても言えなかった言葉も、今の彼にはやっと言える。「涼音、本当はお前より先に俺の方が心を奪われていた。でも、そんな自分を認めたくなかった。あんなに純粋で綺麗な涼音に惹かれる自分が、どうしようもなく汚れているようで……お前が俺に告白してくれた時、俺は本当にうろたえた。お前を欲しくてたまらなかったのに、年の差を思うと、どうしても自分が卑怯者に思えて、お前と一緒にいることが不公平に感じてしまった。おじとして、理性を保たなきゃいけない、絶対に一線を越えちゃいけないって、そう
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