絵理の記憶の中で、帝都の初雪はいつも遅く訪れた。子供の頃、最も楽しみにしていたのは冬だった。彼女はいつも駿の腕にしがみつき、指を一本ずつ数えながら日を待ちわび、目を輝かせていた。「あと何日で大雪が降るの?その時は、お庭いっぱいに雪だるま作ってね」だが駿は、雪だるまを作るのが極端に不器用だった。十個作ってようやく一つが形になる程度で、それでも彼はいつも得意げに絵理に見せつけた。「見ろ、これが俺が彫ったドラゴンだ」絵理は期待に胸を膨らませ近づくが、ミミズのような雪の塊を見て驚き、必ず顔を覆った。それでも駿は真剣な顔を崩さず、その真剣な顔に思わず笑い転げた。その光景を思い出し、絵理は自然と口元を緩めたが、すぐに頭を振り、過去の記憶をそっと払いのけた。窓の外の寒風が雪粒を運び、ガラスを叩きながら清冽な空気が鼻先を刺す。彼女が窓を開けると、外はすでに一面の白に染まっていた。海外での日々は、最初の環境不慣れから次第に安定し、まるで一世紀を過ごしたかのように感じられた。義兄の江口智也(えぐち ともや)は、熱心に絵理の世話をし、大小さまざまな病院を共に巡り、医師の指示に沿った食事を一グラム単位で準備してくれた。彼女がふと故郷の煮込み料理を欲しがれば、中華街をくまなく探し、希少な食材を手に入れてきた。智也の料理の腕は、長年の経験で磨き上げられたものだった。かつて両親の交通事故の後、絵理は泣きながら部屋に閉じこもり、食事も口にしなかった。当時成人したばかりの智也は、不器用にエプロンを結び、レシピを見ながら一品ずつ彼女の好物を作ってきた。絵理は母から貰ったウサギのぬいぐるみを肌身離さず抱え、毎晩枕を濡らすまで泣いていた。智也は黙って両親の遺品を整理し、家の重責を背負いながら彼女を守った。兄であり、父であり、絵理の世界を一手に支える存在――その安心感は、骨身に刻まれるほどだった。絵理は顎を支え窓の外を見つめ、隣家の子供たちが赤いマフラーを巻いた雪だるまを一列に作る姿を見て、思わず笑い声を上げた。彼女は子供のように階下へ駆け降り、ちょうど智也が朝食をテーブルに運び終えたところだった。サンドイッチでさえ、うさ耳の形に細かく整えられている。絵理は智也の皿を一瞥すると、彼の分はただ斜めに切られただけで、横に
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