ついに、すみれと蓮の結婚式の日が訪れた。結婚式場は色とりどりの花々で飾られ、華やかな空気に包まれている。すみれは控室の窓辺に立ち、何度も入口の方を振り返った。式はもう始まるというのに、沢井家の誰一人、姿を見せていなかった。胸騒ぎがして、まぶたが小刻みに震える。そんな彼女の肩に、温かな手がそっと置かれた。「緊張してる?」振り返ると、蓮が心配そうに見つめている。「大丈夫」すみれは無理に笑みを浮かべた。やがて式が始まっても、沢井家の席は空いたままだった。すみれは皮肉げに唇を歪める。「来ないなら来なくていいわ。私はひとりでも平気」ブライダルマーチが鳴り響いた瞬間、彼女は深く息を吐き、鏡に向かって微笑むと、ブーケを抱いてゆっくり歩み出した。参列席に座る美智子は、すみれの姿を見た途端、涙で目を潤ませた。両手を合わせ、声にならぬ祈りを捧げる。「あなた、見えてる?今日、私たちの息子がすみれちゃんと結婚するのよ。この子は本当に幸運な子だわ……最初に会ったときから、心から好きになったの」そのとき――「蓮!」背後から名を呼ばれ、蓮は振り返った。そこにはウェディングドレスをまとったすみれ。あまりの美しさに息をのむ。ずっと知っていたはずなのに、改めて見た彼女は眩しすぎて視線を奪われた。「すみれ」声が震えていた。神父が二人の前に立ち、笑顔で二人の手を取り上げる。「それでは、新郎新婦、指輪を交換してください」蓮がケースを開き、幸せそうにすみれの手を取った――その瞬間だった。荘園の門が勢いよく開かれ、鋭い声が会場を切り裂いた。「篠原社長、ひどいじゃないですか。結婚式に招待もしてくれないとは」振り向いた全員の視線の先にいたのは、タキシード姿の遼介だった。壇上で固く手を取り合うすみれと蓮を見た途端、その瞳は嫉妬に狂気を帯びる。「すみれ……俺と一緒に来てくれ。一生大事にするから」会場はざわめきに包まれた。誰かが小声でつぶやく。「……あれ、あの神谷社長じゃない?恋人に捨てられたって噂の」その言葉で空気が一気に変わった。視線が一斉にすみれへと向けられる。「じゃあ、すみれさんって……神谷社長の元カノ?」すみれの表情が冷えきった。「遼介……あなた、正気なの?」遼介の目は血走り、声は狂気
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