บททั้งหมดของ トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~: บทที่ 111 - บทที่ 120

128

思い込みと誤算、そして PAGE3

   * * * * ――僕はその後部屋まで飛んできた兄にさんざんからかわれ、根掘り葉掘り訊かれ、グッタリ疲れた状態で朝を迎えた。 兄は絢乃さんに、僕が情緒不安定っぽかったと言ったそうだが(これはだいぶ後になって知った事実だったが)、誰のせいだよと抗議したくなる。……それはさておき。 やっと目が覚めて、一階のリビングダイニングへ下りて行ったのは十時近くになってからだった。僕は普段からけっこう早起きな方で、こんなに遅く起きることはめったになかったので、それはやっぱり兄のせいだと思う。もしくは、絢乃さんに対して愚かな行為に及んだ僕自身のせいか。「――母さん、おはよ。……あれ、父さんは?」 平日ならともかく、土曜日の朝から父が不在なのは珍しかったので、僕は母に訊いた。 「朝早くから釣りに行ってるわよ。あんたがこんな朝寝坊なんて珍しいわね」 父の唯一の趣味が海釣りである。僕も兄も、高校生くらいの頃まではよく一緒に連れて行ってもらっていた。ただ、二人とも父に似ず、釣りのセンスはイマイチだ。「うん……、夜遅くまで兄貴と色々あってさ。っていうか兄貴、今日も早番って言ってたような。あれでちゃんと起きて仕事行ったのか」「店長だからでしょう。責任ある立場だから休んだり遅刻したりできないのよ。貢、あんたもそうでしょう?」「うん、まぁそうかな」 会長秘書というのは管理職というわけではないが、会長と同じ権限を持っている分重責を伴うのだと小川先輩から聞いた。僕が抜けると絢乃会長の仕事が回らないというのは、そういうことである。彼女の手が回らない分を、僕と加奈子さんとでフォローしているからだ。「――貢、コーヒー飲む?」「ああ、自分でやるよ。――母さん、俺も今日出かけてきていいかな?」「それはいいけど……、どこに行くの?」 自分でインスタントのコーヒーを淹れて戻った僕は、ふと思い立って母にそう言った。別に行きたい場所がこれといってあったわけでもなかったのだが、家に引きこもっていても何も始まらないんじゃないかと思ったからだ。「都内のカフェ巡りと……、あとは映画観るとか……かな。昼ゴハンも外で済ませるから。場合によっては夕飯も」「分かった。昨日からなんか元気なかったものね。好きなだけ気分転換してらっしゃい」 ――というわけで、僕はこの日、クルマで都内を巡ることになっ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-28
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE4

 ――朝食を済ませてから、僕は家を出た。まずはいつも絢乃さん用のコーヒー豆を提供してもらっている、実家にほど近いコーヒー専門店へ。「――いらっしゃい……あ、貢くん。おはよう。いつものでいいかな?」「おはようございます、マスター。お願いします」 カフェ巡りの時、僕は決まってブレンドをオーダーする。それプラス店によってはたまにスイーツも。 ブレンドコーヒーには店それぞれのこだわりが表れていて、その店の味が出ていると思うからだ。ちなみに、絢乃さんに飲んで頂いているのもここのブレンド豆である。「……いつ飲んでも美味いっすね、ここのブレンド。明後日の朝、また豆もらいに来ます」「ありがとう。君のところのボスも、ウチのコーヒーを気に入ってくれてるんだって? 嬉しいねぇ」 五十代前半のマスターが目を細めた。絢乃さんもこの店のコーヒーのファンになってくれたことを、心から喜んでいるようだった。「はい。って言っても、ここの豆だってこと、まだ会長には話してないんですけど。僕から宣伝しておきましょうか?」「ありがとうね。それも嬉しいが、いつか彼女と二人で飲みにおいで」「…………はい、一応考えておきます」 彼女には昨日嫌われたかもしれないのに、と思った僕はお茶を濁した。飲んでいたのはコーヒーだが。 ――結局、朝までソワソワしながら待っていたが、絢乃さんからメッセージの返事は来なかった。既読がついていたのに、である。それを世間では「既読スルー」というのだが、されて当然のことをした自覚はあったので僕に怒る資格はなかった。 彼女は絶対に怒っているんだと、その時の僕は思っていた。そして、週明けに待っているであろう最悪の事態まで想像してひとりで勝手に震えあがっていた。『桐島さん、貴方には会長秘書の任から外れてもらうから。要するに、秘書をクビってこと』『貴方には失望した。そんな人だと思わなかった。サイテー』 よくよく考えれば、絢乃さんがそんなことを言うような人ではないと分かっていたのに。彼女から既読スルーをくらったせいで、勝手に失恋フラグどころかクビフラグまで立ってしまったと思い込んでいたのだ。 その後は都内のあちこちでカフェに立ち寄り、ランチも済ませ、フラリと映画館に入った。たまたま上映時間に間に合った恋愛映画のチケットを買って一人で観ていると、ふとこんな呟きが漏れた
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-28
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE5

「……会いたいなぁ」 どの面さげてと言われそうだが、無性に彼女に会いたくなった。 僕がこんなにも心から惹かれた女性は、絢乃さんが本当に初めてだった。彼女に出会ってから、どんな時にも頭に浮かぶのは彼女の笑顔だけだった。 いくら女性不信だと口で言っていても、自分の心にウソはつけない。僕は絢乃さんのことなら信じられる……、いや、信じようと決めたのだ。彼女は僕が信用するに値する女性だから。心から愛せる人だから。 ただ、拒まれたらどうしようという恐怖心から、自分から連絡を取る勇気は出なかった。   * * * * ――そんな愛しの絢乃さんか電話がかかってきたのは夕方四時半ごろ、僕は市谷のカフェにいた頃だった。「…………ん、電話? 絢乃さんから……マジか」 スマホの画面を確かめた僕は、信じられなくて思わず表示された名前を二度見した。 会長に就任されてから、絢乃さんとのやり取りは主にメッセージアプリだった。そんな彼女からの電話はレアだったが、レアだからこそ僕は不安を募らせた。「まさか、クビ宣告の電話……とかじゃないよな」 もう僕の顔を見たくないから電話にしたとか? だとしたら最悪の事態である。が、常識で考えて、休日である土曜日にそんな連絡をするだろうか? でもボスからの電話だから出ないわけにもいかず、そして僕自身が彼女と話したいという気持ちもあったので、僕は通話ボタンをスワイプした。 「――はい。絢乃さん、どうされたんですか? お電話なんて珍しいですね」 どんな用件か予想がつかずにビクビクしていたので、僕の声は若干震えていたかもしれない。『桐島さん、お休みの日にごめんね? 今、どこで何してるの?』 そう言った彼女の声は穏やかで、どう聞いてもクビ宣告をする悪魔の声には聞こえなかった。どうやら僕が怯えすぎていただけだったらしく、ホッとした。「今は……市谷ですかね。今日は朝から都内のカフェ巡りをしていたんです。ちなみに、僕が会社でお出ししているコーヒーの豆も、実家近くのコーヒー専門店から仕入れてるんですよ。……っと、長々と失礼しました」 安心した僕はつい熱く語ってしまい、ついでのように実家近くのコーヒー専門店の宣伝までしてしまった。これで何度、好きになった女性や歴代彼女にドン引きされたことか。 そんなことよりも、前日の暴挙
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-29
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE6

「それはともかく、絢乃さんは今どちらに?」 電話の向こうは何だか騒がしくて、彼女はもしかしたら外にいらっしゃるんじゃないかと思った。 そういえば、僕は絢乃さんが休日にどんな過ごし方をしていらっしゃるのか知らなかった。彼女は料理やお菓子作りが好きだということは知っていたが、それ以外の趣味の話を伺ったことはなかった。彼女が僕のことをあまりご存じなかったように。 それに、学校がお休みなら里歩さんにどこかへ連れ出されている可能性もあった。あんなことが起きた翌日だったのだから、絢乃さんが親友である彼女と連絡を取っていらっしゃらないわけがないと思ったのだ。『わたしは今、新宿にいるの。里歩と一緒にランチして、ボウリングして、別れた後貴方のお兄さまに声かけられてね。ついさっきまで一緒だったの』 里歩さんとボウリング……と納得しかけた僕は次の瞬間、絢乃さんの口から思いがけない名前が飛び出して卒倒しかけた。兄貴と!? ウソだろ!? っていうかなんで!? 電話に出る時、店のエントランスまで出ていたからよかった。もしコーヒーを飲みながら聞いていたら、コーヒーを噴き出して店の人にそれはそれは迷惑をかけていたかもしれない。 僕が「えっ、兄にですか!? それってナンパじゃ……」と言うと、「ナンパじゃないよ。仕事帰りに偶然見かけたから声をかけられただけ」という呑気なお答え。偶然ならナンパじゃないのか、と僕は首を傾げた。『そんなことより、わたしが今日電話したのはね、貴方と話がしたくて。電話じゃなくて、直接会って話したいの。あと、昨日の既読スルーについても弁解させてほしい。だから……、今から会えないかな? 新宿まで来られる?』 前日あんなことをしでかしてしまった僕に「会いたい」と言ってもらえたことは意外だった。そして彼女も、メッセージを既読スルーしてしまったことを気にされているのだと知って正直驚いた。そのおかげで、僕の中の悪い予感がすべてふっ飛んだのは言うまでもない。 「そこは〝謝りたい〟じゃなくて〝弁解させてほしい〟なんですね」 僕もお人好しよく言われるが、彼女もたいがいお人好しだよなぁと僕は思った。この時笑ったのはそれが理由である。彼女に謝る必要なんてなかったのだ。むしろ謝るべきは僕の方だった。 彼女に「あと十分くらいで着けると思います」と言い、通話を終えると僕は店を出
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-29
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE7

 ――それから約十分後。僕はJR新宿駅前のベンチに座っていた、私服姿の絢乃さんを見つけた。 本当は路上駐車はいけないのだが、彼女の目の前の路上にクルマを停めて運転席の窓を開け、声をかけた。「――絢乃さん、お待たせしてすみません」 本当はそんなにお待たせしていなかったと思うのだが、一応礼儀としてそう言っておいた。「ううん、待ってないよ。っていうか謝らないで。呼びつけたのはわたしの方なんだから」 このセリフは何とも心優しい絢乃さんらしい。別に呼びつけられたなんて僕は思っていなかったのに、彼女は自分を悪く言うことで僕に気を遣われたのだと思う。「あ……、ですよね。絢乃さん、あまり長くクルマを停めておけないので、とりあえず乗って下さい。どこかへ移動しましょう」 僕はそんな彼女を立て、彼女に乗って頂くために一旦クルマを降り、助手席のドアを開けた。   * * * *「あの、絢乃さん。――昨日は本当にすみませんでした」  運転席に乗り込んだ僕が、クルマのエンジンをかける前にまず彼女に謝罪すると、彼女は「ううん」と首を振っただけだった。彼女の様子からして、これは「わたしは怒ってないよ」という意味だと僕は解釈した。 僕は彼女の服装に注目した。 この日の絢乃さんの装いはピンク色のアーガイル柄が入ったベージュのハイネックニットに茶色いコーデュロイのロングスカート、焦げ茶のロングブーツにライトブラウンのダッフルコートというコーディネート。やっぱり、清楚系のファッションがお好みと見えた。が、ちょっと待てよ? 彼女はこの日、何をして過ごされていた?「……というか、里歩さんとボウリングに行かれてたんでしたっけ。まさかその格好で?」 言ってしまってから。「ヤベぇ、地雷踏んじまった」と思った。……が。「『このロングスカートで?』って思ったでしょ。里歩にもおんなじツッコミされた」「…………すみません」「ううん。わたし自身、明らかに服選びミスったなって思ってるから」 絢乃さんはそうおっしゃって、小さく肩をすくめられた。ロングスカートじゃ、さぞボウリングなんてしにくかったろう。 そういえば、彼女は運動全般が苦手だとご自身でおっしゃっていたような……。多分、彼女も気にされているはずだし、今度こそ地雷を踏んでしまいそうだったので、ボウリングのスコアについて訊ねるのはやめ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-31
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE8

   * * * *「――ところで、どこに行きますか?」 僕は絢乃さんがシートベルトを締めるのを見届けながら、行き先を訊ねた。こうしてプライベートで彼女とドライブをするのは初めてだったので、どうせなら思い出というか記念に残りそうな場所に行きたいと思った。「う~ん……、じゃあ久々にあのタワーに行きたいな」という答えが返ってきたので、隅田川方面へクルマを走らせることにした。「あのタワー」とは他でもない、その二ヶ月半ほど前に訪れた高さ世界一の電波塔のことである。「――そういえば、会社の往復以外にこうやって桐島さんのクルマでおでかけするの、久しぶりだよね」 彼女がしみじみとおっしゃったので、僕も気がついた。絢乃さんが会長になられてから、二人でドライブらしいドライブをしていなかったのだということに。それまでは色々な場所へお連れしていたというのに。 秘書として送迎を依頼された手前、出社時はともかく退社後は一分一秒でも早くお家へお送りすることが僕の使命だと思い込んでいて、途中でどこかへ寄り道する余裕なんてなくなっていたのだ。「これは仕事だから」と四角四面に考えてしまっていたせいだろう。 それに、彼女がボスになってしまったために、部下である僕がプライベートでも彼女をお誘いすることが難しくなったというのもあった。……多分これは、逃げ腰な僕の言い訳でしかないのだろうが。 本音は多分もっと別のところにあって、オフィス以外の場所で二人きりになったら、僕は彼女に対する男としての部分が抑えきれなくなると思ったからだろう。「そうですね……。もう二ヶ月ぶりくらいになりますか? あれから僕と絢乃さんとの関係も変わってしまいましたからねぇ。僕もおいそれとお誘いすることがためらわれてしまって」「わたしは別に何も変わってないよ? だから貴方も、自分の立場がどうとか気にする必要ないんだよ」 そう、彼女は何も変わっていない。立場云々勝手に気にしていたのは僕の方で、彼女を相手に暴走して醜態を晒したくなかっただけだ。まだ、絢乃さんが僕のことをどう想って下さっているのか知らなかったから。 僕は「……はぁ」と頷いたものの、すぐには変われないだろうなと思った。絢乃さん、こんなアタマの堅い男ですみません。 そういえば、お互いの私服姿を見たのはクリスマスイブ以来だった。 僕は家にいる時にはスウ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-31
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE9

 その一方、兄の私服姿はどこへ行く時にも(出勤時でさえ)カジュアルスタイルだ。冬場はだいたいダボッとしたトレーナーにカーゴパンツか色褪せたデニム、その上からダウンジャケット。もう三十になるんだから、もうちょっと何とかならないのかよというのが弟の感想である。「うん。カジュアルっていうか、ちょっとルーズな感じ? でも、出勤の時まであれって社会人としてどうなんだろう?」 絢乃さんにその話をすると、僕と共通したそんな疑問が出てきた。兄はいい加減、周りからどういうふうに見られているかを自覚すべきである。こと女性は、けっこうシビアな目で見ているものだから。「飲食チェーンですし、制服があるから大丈夫なんじゃないですか。あれできちんとTPOはわきまえてるんですよ」 でも一応、弟としてそこはフォローを入れておいた。が、僕の口調が若干不機嫌になっていたのは、絢乃さんが兄から何を言われたのか気になって仕方がなかったからだ。僕の前日の様子を一体どんなふうに彼女に吹き込んだのか気が気ではなかった。 だいたい、兄が僕のいないところで絢乃さんと話していたこと自体気に入らなかった。今にして思えばこれも嫉妬だったのだろうか? だとしたら俺、めちゃめちゃ器の小さい男だな。「あのね、桐島さん。もしかして、お兄さまにヤキモチ焼いてる? だとしたらホントに心配いらないからね? お兄さま、彼女がいらっしゃるらしいから」 そんな僕の気持ちを、絢乃さんにはバッチリ見透かされていた。……というか何だって? 兄に彼女? おい待て、俺そんなこと聞いてないぞ!「彼女、いるんですか? ……何だよもう、兄貴のヤツ! 話してくれたっていいのに、水臭い!」 そのせいで余計な心配しちまったじゃねえか。一人で勝手に嫉妬して、めちゃめちゃみっともないじゃん、俺。……と独り言を言っていたつもりが絢乃さんの耳にも入ってしまっていたようで、僕を見つめる彼女には「すみません」と小さくお詫びを言った。 こんな素の自分丸出しの僕をご覧になって、絢乃さんはどう思われたのだろう? 今度こそ幻滅されたかもしれない。こんなカッコ悪い自分を見られたくなかったのに……。 そんな心配をしながら彼女の顔をチラリと横目で見ると、彼女は何だか楽しそうに笑っていた。もしかしたら、僕はまったく的外れな心配をしていたのだろうか……。 
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-11-05
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE10

 ――真冬の夕暮れは早く、タワーに着いた五時ごろにはもう日が沈み始めていて、あたりはオレンジ色と薄紫色に染められていた。 休日だったためかその日の天望デッキは人でごった返しており、西側の窓辺はキレイな夕焼けの写真をSNSにアップすべくスマホをかざす女の子のグループやカップルたちで賑わっていた。「――ホントは、こんな人が大勢いるところで言うようなことじゃないと思うんだけど……。昨日はライン、返事返さなくてごめんなさい!」 絢乃さんはその景色を楽しむことなく、大勢の人たちの目がある中で開口一番で僕にガバッと頭を下げられた。 彼女はすでにかなりの有名人だったはずで、悪目立ちしてしまったらどうしようかとうろたえた僕は「頭を上げて下さい」と言おうとしたが、その前に彼女の方から顔を上げて下さったので少しホッとした。「でもね、それにはちゃんと理由があるの。……最初のメッセージで返信しようとしたら、その後あんなこと書かれるんだもん。わたし、どう返していいか分かんなくなっちゃって。ただ、それは怒ってたわけじゃなくて、気が動転してたっていうか、パニクってたっていうか……。とにかく頭の中が真っ白になっちゃってて」 僕の顔色をチラチラと窺いながら、誠実に理由を話してくださる彼女は本当に純真で可愛らしかった。 初めて男性(僕のことである)からキスをされて、気が動転していたのは本当だろうし、そこがピュアな絢乃さんらしい。僕がチョコの感想だけを送っていればよかったのに、あんな余計なことまで送信したせいであの時の記憶が甦ってしまって余計に動揺してしまったのだろう。何だか申し訳ない。 僕もそのアンサーとして、自分の想いをお伝えした。もしかしたら絢乃さんから嫌われてしまったんじゃないかと心配していたのだと。だから電話を下さった時は驚いたけれど嬉しかった、と。 そこで彼女は、人を好きになったのが初めてだから、あなたの気持ちはちゃんと言葉にしてくれないと分からないとおっしゃった。キスなんて遠回しな行動では、彼女に僕の気持ちは伝わらなかったのだ。 それでもわざとすっとぼけると、「初めて会った日から貴方のことが好き。好き好き好きっ!」と半ばシャウトのような告白を受けた。顔を真っ赤にしてゼイゼイ息を切らしている彼女も可愛くて、この人を好きになって本当によかったと思った僕は、自分
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-11-05
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE11

「――僕と、お付き合いして頂けますか? 僕をあなたの彼氏にして下さい。お願いします」 このセリフを僕から言ったのは、これが初めてではなかった。それまでの恋愛でも、告白したのは決まって僕からだったはずなのに、絢乃さんに対して言うのはそれと違う感覚だった。 一生この女性について行きたい、彼女のことを守っていきたいという気持ち。――そういう気持ちが芽生えたのはきっと、彼女が僕の運命の人だったからだと今は思う。「はい……、喜んで。こちらこそ、これからもよろしくお願いします」 彼女は可愛くはにかみながら、それでもしっかりと頷いて下さった。生れて初めての彼氏が、こんな頼りない男でいいのだろうかと自虐的な気持ちが湧きつつも、大好きな女性と両想いになれて本当に嬉しかった。 思えば日比野の時、こんな気持ちにはならなかった。遊ばれていることを承知の上で付き合っていたのだから、あの頃の僕はそこまで本気じゃなかったのだろう。なのに裏切られたと傷付き、女性不信になった僕はバカだ。もう、あの黒歴史はこれで忘れようと思った。それでも一度植え付けられてしまった女性不信というトラウマは、なかなか消えてはくれなかったが……。 でも、絢乃さんは絶対に僕を裏切らないという確信があったので、僕の胸に飛び込んできた彼女をしっかりと抱きしめた。この人を絶対に離さないという決意を込めて。 僕たちの関係は、社内では秘密にしようということになった。会長と秘書が恋愛関係だというのは世間的にスキャンダラスだし、社員たちに示しがつかないと絢乃さんが気にされていたのだ。「そうですよね……。僕は別に気にしなくていいと思いますけど、秘密の恋愛の方がスリルがあっていいと思います」 二人の年齢差のこともあるし、秘密のオフィスラブを楽しんでみるのも悪くないかなと僕は思ったのだった。   * * * * ――その日の帰りにも、僕は絢乃さんをお家の前までお送りしたのだが、そこで嬉しい誤算が待っていた。「……ねえ、桐島さん。よかったら、ウチで一緒に夕飯食べて行かない? ママにも今日のこと、報告したいから」 なんと、思いがけない夕食のお誘い! 彼女と両想いになる前ならおこがましいと辞退していただろうが、晴れて彼氏となった僕にお断りする理由はなかった。彼氏が彼女の家にお邪魔するのは、カップルではごく普通のことなのだか
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-11-07
อ่านเพิ่มเติม

思い込みと誤算、そして PAGE12

 篠沢家のその日の夕食は、パングラタンに鮭のムニエル、サラダというわりと庶民的なメニューだった。パングラタンは前日の夕食メニューだったクリームシチューの残りをアレンジしたものらしい。「偶然ですね。ウチも昨日はクリームシチューだったんですよ」 寒い時にはみんな考えることが同じなんだなぁと、僕は妙なところで感心してしまった。「――あのね、ママ。わたしと桐島さん、今日からお付き合いすることになったの」 絢乃さんがそう報告すると、加奈子さんは早い段階からこうなると思っていたのだとあまり驚かれていないようだったが、母親としてお嬢さんと僕との交際を許して下さった。 そして、二人の関係を社内では秘密にしておきたいという絢乃さんの希望を僕からお伝えした時には、「まぁいいんじゃない?」とクールに述べられ、優雅に白ワインなど飲んでおられた。「――絢乃さん、今夜はごちそうさまでした。では、僕はこれで」 すっかり暗くなった夜七時過ぎ、食事を終えて帰ろうとする僕を、絢乃さんは玄関の外まで見送りに来て下さった。が、そこでもう一つの嬉しい誤算が僕を待っていた。「うん。……ねぇ、桐島さん。ファーストキスの上書きなんて、してもらえたりする?」「は、はい!?」  何なんだ、この可愛すぎる提案は? 上目づかいに訴えられた僕は妙にドギマギしてしまった。「えっと……、昨日のあれが初めてのキスって言うのはわたしも何か後味悪いし、貴方に後悔させたまんまなのも何だか申し訳ないから」「ああ……、そういうことですか。――いいですよ」 彼女はあくまで、僕のために提案して下さったらしい。本当に優しい人だ。――そんな彼女の願いを聞き入れ、今度はちゃんと向き合い、彼女が目を閉じてから優しく唇を重ねた。「……ありがと、桐島さん。わたし、これからは今日のキスがファーストキスだったことにしようかな。昨日のは事故みたいなものだったし」「…………そうですね。あれはなかったことにして頂いて」 僕もその方がいいと思った。あんな暴挙はさっさと忘れてもらいたかったというのは僕も同じだ。「それじゃ桐島さん、おやすみなさい。――これからは恋人同士ってことでよろしく。また来週ね!」「はい、こちらこそよろしくお願いします! おやすみなさい!」 僕たちはそれまでと違う気持ちで、別れの挨拶を交わしたのだった。
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-11-07
อ่านเพิ่มเติม
ก่อนหน้า
1
...
8910111213
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป
DMCA.com Protection Status