真琴の姿を捉えた瞬間、信行の表情がふっと綻んだ。足早に歩み寄り、流れるような手つきでバッグを受け取る。口元には悪戯っぽい笑みを浮かべた。「西脇博士、今日は随分とお時間通りで。少しは自分を労わる気になったか?」「もう……嫌味はいいから」真琴は小さく息を吐き出した。「お腹空いた。先に何か食べに行こ」顔を合わせるたび、以前のようなぎこちなさは薄れていく。明らかに距離が縮まっていた。真琴の手を取り、慈しむように軽く口づけを落とす。「了解。まずは腹ごしらえだな」ベンツのGクラスへ向かい、助手席のドアを開けて真琴をエスコートする。フロントを回り込み、運転席へ乗り込んだ。エンジンをかけるやいなや、真琴のほうへぐっと身を乗り出す。右手で彼女の後頭部を優しく包み込み、そのまま貪るように唇を奪った。ようやく口づけを解いた頃には、息を整えることすらままならない。ここ最近重ねてきたキスの数は、過去の記憶すべてを合わせても足りないほどだった。乱れた呼吸のまま、真琴は微かに眉をひそめる。「……余計にお腹空いた」拗ねたような、どこか甘えた声。思わず吹き出し、信行は車を発進させた。ふたりで穏やかに過ごすこの時間は、どんな大仕事の契約を勝ち取るよりも、信行の心を甘く満たしていた。*食事を終えたあと、ふたりでスーパーへ向かった。夕飯の食材だけでなく、真琴のためにフルーツやお菓子もカゴいっぱいに買い込んでいく。大した金額ではない。けれど、互いの生活へ深く踏み込んでいく実感があった。誰にも代えられない、ささやかで確かな時間。カートを押しながら隣を歩き、カゴへぽんぽんと品物を入れていく真琴を眺める。ふと学生時代の記憶が蘇った。あの頃も、たまに真琴や紗友里と買い出しに来たことがあった。そういえば、真琴は昔からスーパーでの買い物が一番好きだった。懐かしさに胸がくすぐられ、真琴の頬へそっと顔を寄せる。不意の甘えに、真琴は横目で呆れた視線を向けた。「自分を何歳児だと思ってるの。子供じゃないんだから」「真琴……こういうの、すごくいいな」肩に顎を預けたまま、柔らかな耳たぶにちゅっと唇を落とす。信行の言葉を聞き流し、真琴はカートにチョコレートを放り込むと、また好物を物色し始めた。素っ気ない態
Leer más