今や真琴が何を口にしようと、信行は素直に改めると答えるばかりだった。互いに明確な言葉で関係を確かめ合ったわけではなく、付き合っているのかどうかすら曖昧なままだというのに、信行はすっかり恋人同士のつもりでいた。何しろ、すでにベッドを共にした後なのだから。機嫌を取ろうとしてくる信行に対し、真琴は冷ややかな一瞥を向けると、握られていた手をすっと抜いた。途端に、車内はしんと静まり返った。重苦しい思考に沈む真琴が口を開かないため、信行も無理に話しかけずに黙っていた。付き合いの長い信行には、先ほどの出来事が真琴にどれほど大きな衝撃を与えたかが痛いほど分かっていた。繊細な彼女にとって、そう容易に受け入れられる事態ではなかった。感情の波が大きくなればなるほど、真琴は口数を減らし、自分の殻に閉じこもる癖があった。一時間が経ち、車が興衆実業の本社前に到着したところで、真琴はようやく信行へ視線を向けた。「着いたわ」信行もまた顔を上げ、静かに言った。「駐車場に回してくれ。少し話そう」急に話を持ち出され、真琴は無言で彼を凝視した。しばらく思案するように信行を見つめていたが、やがて車を駐車場へと滑り込ませた。車を駐車スペースに止めると、真琴が向き直るより早く、信行が手を伸ばして彼女の手を握りしめた。目が合い、真琴が手を振り払おうとしたものの、信行の力に阻まれて解くことができなかった。抵抗しても無駄だと悟った真琴は、そのまま力を抜いて信行を見つめた。「話って何かしら」信行は彼女の手を優しく包み込みながら、焦ることなく切り出した。「俺たちも、ようやくここまで来ただろう。もう一度、籍を入れ直さないか?式の形は、お前の好きなように……」「結婚なんて考えていないわ」信行に最後まで言わせず、真琴はきっぱりと言い放った。いくら彼が初めての相手であったとしても、再び彼と結婚生活を送るなどと考えたこともなかった。真琴の容赦ない言葉に、信行は呆然と固まった。信じられないといった様子で真琴を見つめ、思わず問いかけた。「……ベッドを降りた途端に知らん顔か?俺に対して責任を取る気はないのか?」肌を重ねた以上、自分と真琴の関係は決定的なものとなり、再び妻になってくれるものだと疑っていなかった。何しろ昔から古
Read more