今日の午後、紗友里にかけられた言葉が、真琴の心を強く揺さぶっていた。紗友里はあのあと、こうも言っていた。暇を持て余しているくらいなら、信行と一緒にいて、注いでくれる愛情を思いきり受けていればいい。お姫様みたいに甘やかされていればいい、と。そんな気楽で満ち足りた恋愛なら、どうして楽しもうとしないのか。そうまくしたてられ、真琴は一言も言い返せなかった。夜は深まり、あたりはしんと静まり返っている。車内の空気は驚くほど穏やかだ。ふとまぶたを開けて信行の顔を見た瞬間、もう一度向き合ってみるのも悪くないと、自然と思えてしまった。だからこそ、真琴はあの言葉を口にした。真琴が突然見せた吹っ切れように、信行はその場で固まった。両頬を真琴の手に包み込まれたまま、信行は驚きを隠せない目で見つめ返し、信じられない様子で問いかける。「……今、なんて言った?」つい数日前まで、真琴はピルを欠かさず飲んでいたはずだ。今朝だって、飲んだのかどうか定かではない。それなのに今、唐突にやり直してみようと言ってきた。信行はあまりの幸運に戸惑い、自分の耳を疑った。呆然とする信行を見て、真琴は頬に添えた手に少し力を込め、優しくもむようにしながら真剣な声で繰り返した。「だから、試してみようって言ったの」信行が口を開くより早く、真琴は念を押すように続ける。「ただし、まずはお試しだからね」由美との長年にわたる駆け引きも、成美が今回仕掛けてきた苦肉の策も、真琴はすべて見抜いていた。内海家が血眼になって信行という大きな後ろ盾にすがりつこうとしていること。成美がこれまで立ち回ってきたのも、信行の財力と地位を手放したくないからだということ。そんなのは痛いほど分かっている。相手が隙をうかがっているからこそ、信行を突き放して内海家の思い通りにさせてやる気など毛頭なかった。そして何より、ここ最近の信行の献身や気遣い、昼間の紗友里の後押しが、真琴の頑なだった心を確かに動かしていた。真琴の真面目な念押しに、信行は思わず吹き出した。「どうして急に腹を括ってくれたんだ?」眩しいほどの笑顔を向けられ、真琴は信行の肩に手を置くと、センターコンソールをまたいで信行の膝の上へと身を移した。首に腕を回し、顔をのぞき込む。「私が決心したの、
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