目が覚めるなり「お腹が空いた」と言い出した真琴の可愛らしさに、信行は思わず吹き出した。身を乗り出して彼女のシートベルトを外してやり、その頬を優しくつまむ。「じゃあ、部屋に戻って何か作ってやるよ」2人はそろって車を降りた。車の前を回ってくる真琴を待ち、信行はごく自然にその手を取った。ずっと昔から、こうして彼女の手を引いて歩きたかった。だが当時は機会も少なく、何より真琴がまだ幼かったため、踏み切れずにいた。片手をポケットに入れ、もう片方の手で彼女の指先をしっかりと握る。急ぎ足ではなかったが、その足取りはどこか誇らしげで軽やかだった。気分はこれ以上ないほど晴れやかだった。エレベーターに乗り込み、信行が視線を落とすと、ちょうど真琴も見上げていた。ふと視線が重なり、真琴は口元をほころばせて柔らかに目を細めた。息をのむほど愛らしい表情だった。その姿に見とれながら、信行は握りしめた手に優しく指を絡めた。「ずっと前から、こうやってお前と手をつなぎたかった」信行の言葉に、真琴の胸にも懐かしい記憶がよみがえる。まだ学生だった頃、彼は放課後によく待っていてくれた。運転手の送迎を嫌い、好んで自転車を押していた信行。紗友里でさえ荷台にはめったに乗せてもらえなかったのに、彼は決まって真琴を待っていた。「真琴ちゃん、スピード出すからしっかりつかまってろよ」「真琴ちゃん、裏通りにうまい焼肉屋を見つけたんだ。連れてってやる」「真琴ちゃん……」次々とよみがえる思い出は、どれも心から楽しかった日々のことばかりだった。やはり、気のせいではなかった。彼が自分を好いてくれていると、あの頃から確かに感じていた。だからこそ、祖父たちが克典への嫁入りを決めた時も、真琴は悩み抜いた末に本心を打ち明け、信行を選ぶ決断を下した。今になって振り返ってみても、信行が自分を大切に想っていたのは間違いなかった。ただ当時の2人はあまりにも若く、些細なすれ違いに対処するすべを知らなかったにすぎない。わだかまりを手放し、1度すべてを受け入れてしまえば、人は驚くほど寛容になれる。許すことも、慈しむこともできるようになる。整った彼の横顔を見つめながら、真琴は実感していた。自分は今でも、この人が好きなのだと。それでも、先のことはあえて
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