信行は真琴を抱きしめ、その額にそっと口づけを落とした。背中を優しく撫でながら寝かしつけていた、まさにその時だった。枕元に置いたスマートフォンが震えだした。耳障りな着信に、信行は迷うことなく画面をタップして通話を切る。だが直後、再び激しいバイブレーションが唸りを上げた。もう一度切っても、間を置かずにまたディスプレイが激しく振動し始める。立て続けに邪魔をされ、眠りかけていた真琴がうっすらと目を開けた。「何回も鳴ってるよ。急用かもしれないし、出てあげたら?」真琴の眠気を覚ましてしまったことに気づき、信行はようやくスマートフォンを手に取った。画面に目を落とした瞬間、すっと顔色が曇る。真弓からの着信だった。久しぶりに目にする番号を見つめ、信行は真琴へ視線を向けた。「……成美の母親からだ」探るような信行の視線を受け止め、真琴は淡々と口にする。「出ていいよ」真弓からの電話に出るよう促した真琴の言葉に、嘘偽りはなかった。本当に、心の底からどうでもよかった。まだ信行に希望を抱いていた2年前なら、胸を痛めて落ち込んでいたかもしれない。けれど今の真琴は、何に対してもすっかり冷めきっている。過剰に気に留めることすらなくなっていた。数日前、信行の歩み寄りを受け入れ、「試してみよう」と告げたばかりではある。だが、真弓からの着信ごときで、その心に波風が立つことはもうなかった。真琴の許しを得て、信行は回していた腕を解いた。ベッドを下りて窓の前まで歩くと、通話ボタンを押す。繋がった瞬間、受話器の向こうから真弓の泣きじゃくる声が響いた。「信行さん、やっと出てくれた……」信行が口を開く隙も与えず、真弓は涙声で一気にまくし立てる。「成美が急に合併症を起こして、今、救急処置室に運ばれたの!夫は出張中で東都にいないし、どうしていいか分からなくて……こんな夜中に電話するしかなくて。私と由美だけじゃ、もうどうしたらいいのか見当もつかないのよ。少しだけでもいいから、病院に来てくれないかしら。どう対応すべきか、同意書にサインすべきかも含めて、一緒に見てほしいの」取り乱して泣きついてくる真弓に対し、信行は眉間を寄せながらも、極めて冷静に返した。「伯母さん。俺は今、手が離せません。代わりに武井を向かわせます。まずは
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