詩織は、そんな彼らを誰一人拒むことなく、涼やかな笑顔で受け入れていた。一方、祝福に包まれる詩織たちとは対照的に、佳乃の顔色は怒りで蒼白になっていた。間の悪いことに、夫の長昭から電話が入る。「結果はどうだ?柊也くんも誘って、今夜は家族でお祝いのディナーといこうじゃないか」何も知らない夫の能天気な声に、佳乃の表情は完全に冷え切った。彼女は何も答えず、無言で通話を切った。志帆の顔色も最悪だった。母が先に席を立った後、その屈辱感はさらに増していく。このプロジェクトのために、どれだけの時間を費やし、どれだけの接待をこなしてきたか。それなのに、この無様な結果は何だ。「そこで何してんの、突っ立って。これ以上恥をさらすつもり?」戻ってきた佳乃に冷たく叱責され、志帆は慌てて母の後を追った。だが、会場の出口で二人の足が止まる。一抱えもあるような、鮮やかなひまわりの花束を抱えた京介が立っていたからだ。志帆と七年も付き合っていた京介を、佳乃が見間違えるはずがない。なぜ彼がここに?しかもひまわりを持って?佳乃はいぶかしげに娘を振り返った。志帆は、気まずそうに顔を背けた。それだけで、佳乃は全てを察した。彼女の表情は、もはや怒りを通り越して般若のようだった。その時、詩織たちの一団が会場から出てきた。京介は迷うことなく詩織のもとへ歩み寄り、その大きな花束を差し出した。「海外出張中じゃなかったの?」詩織は目を丸くした。京介はこのプロジェクトの出資者の一人でもある。定期報告の中で彼が海外にいることは知っていたはずだ。まさか、突然目の前に現れるとは夢にも思わなかった。「こんな大事な瞬間に、立ち会わないわけにはいかないだろ」京介は優しさに溢れた眼差しで、ひまわりを詩織に手渡した。「おめでとう。また一つ、階段を登ったな」「ありがとう!」詩織は満面の笑みで花束を受け取ると、弾んだ声で言った。「今夜、食事に行きましょうよ。私の奢りで!」しかし、京介は残念そうに首を振る。「その食事、帰ってからの楽しみにとっておくよ。帰国してから、また改めて二人で祝わせてくれ」「これから、また仕事?」「ああ。商談の途中なんだ。すぐにトンボ帰りしなきゃならない」彼は交渉の休憩時間を利用し、詩織に「おめでとう」を言うためだけに、わざわざ帰国
Baca selengkapnya