「大丈夫です。たぶん、私と晴臣さんの間に少し誤解があるだけです」そう言ってから、私は宗樹に向き直った。「宗樹さん、この玉飾り、ありがとうございました。母の代わりに、大切に保管します。それでは、失礼します」そう言うと、私は沙耶香を連れて帰ろうとした。すると宗樹が言った。「昭乃さん、よければ沙耶は預からせてもらえませんか。俺もずいぶん長いこと、あの子と一緒に過ごせていないので」私は少し迷った。もし宗樹が沙耶香を江城家へ連れて帰ったら、また里奈の手に渡ってしまうんじゃないかという不安が頭をよぎる。私の心配を察したのか、宗樹は穏やかに続けた。「ただ、あとで晴臣を呼んで、一緒に沙耶と食事をして遊びたいだけです。潮見市を離れる前には、必ずお送りしますから。それに……あの子、江城家にいるときより、あなたといるほうがずっと楽しそうです」私は沙耶香に視線を向け、どうしたいのか尋ねた。沙耶香が私に向かってこくりと頷いたのを見て、ようやく安心してその場を後にした。茶室を出て数歩歩いたところで、正面から歩いてきた晴人と鉢合わせになった。淡いグレーのカジュアルスーツに身を包んだ彼は、以前の遊び人のような雰囲気が薄れ、どこか落ち着いた印象になっていた。とはいえ、前回、彼が突然現れたせいで、私は詩恩をその場で捕まえる絶好の機会を逃してしまった。だから今、彼の顔を見ても、正直あまり話す気にはなれない。私は軽く会釈だけすると、そのまま通り過ぎようと体をずらした。だが、その瞬間、手首をそっとつかまれた。「昭乃、話があるんだ」焦りをにじませた声で、晴人は私の前に立ちふさがる。「十分だけでいい。時間をくれないか?」私は腕時計に目を落とし、「いいよ。今から時間を計る」と言った。あまりにもあっさりした返事だったせいか、晴人は意外そうに一瞬固まった。「……ここで話すのか?どこか落ち着いて話せる場所に……」「必要ない」私は腕時計を指で軽く叩いた。「もう一分経った」晴人はわずかに表情を曇らせたが、それでも声を落とし、単刀直入に切り出した。「時生と、本当にヨリを戻したのか?」またその話だ。最近は誰に会っても、この話題を避けて通れない。私は彼を見つめ返し、問い返した。「あなたに関係ある?」すると晴人は、確信してい
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