澄江の声は、話すほどに感情が高ぶり、胸が小さく上下していた。使用人が慌てて支えようと駆け寄るが、彼女は手を振ってそれを制した。そして、そのまま言葉を続ける。「高司はね、冷たそうに見えて本当は情に厚い子なの。親子の情を少しでも残していたからこそ、あなたが重い病気だと知って、ようやく過去を水に流して、もう一度あなたを受け入れようとしたのよ。でも、自分が成長する中で負った傷を、本当に全部忘れたとでも思っているの?」冬香の顔から一瞬で血の気が引き、ふらつきながら一歩後ずさると、後ろのドア枠に手をついた。冬香のすすり泣く声が静かなリビングに響く。それでも澄江の口調は少しも和らぐことなく、むしろ決意を強めていた。杖を握る手にぐっと力を込め、彼女はきっぱりと言い放つ。「あなたはあの子の人生から早々に身を引いて、新しい家庭を選んだ。その時点で、自分の立場をわきまえて生きるべきだったの。高司は血のつながりがあるからと、あなたを見捨てず治療まで受けさせてくれた。それだけでも十分ありがたいことでしょ。もう何年も経った今となっては、あの子のことに口を出す資格なんて、あなたにはないの。わかるわね?」冬香は、もう何ひとつ言い返せなかった。涙で滲む視界の中、彼女は突然私へ視線を向けた。その目には懇願と期待が入り混じり、さっきの提案に私が頷いてくれることを願っていた。だけど私は、その視線を静かにそらした。澄江がここまで私を守り、大切に思ってくれているのに、どうして冬香の言うとおりにして、その優しさを無駄にできるだろう。私が最後まで何も答えないとわかると、冬香の瞳から少しずつ光が消えていった。唇をきゅっと噛みしめたものの、結局それ以上は何も言わなかった。そして背を向け、よろめきながら玄関へと歩いていく。澄江はその後ろ姿を冷たい眼差しで見つめたまま、少しも心を動かされることはなかった。エレベーターの扉が開き、冬香の姿が見えなくなると、ようやく視線を戻し、表情の険しさも少しだけ和らいだ。それでも玄関のほうへ向かって鼻で笑い、軽蔑を隠そうともしない声で言った。「昔のことなんて、今さら蒸し返したくもなかったのに。何年経っても、あの人は結局自分のことしか考えてないのね。挙げ句の果てには、あなたまで巻き込もうとするなんて!」私は澄江の隣
Read more