「何を言ってる?」正修は聞き返した。奈穂が何をぶつぶつ言っているのか分からないが、とにかく今は、彼女にキスしたくてたまらなかった。「えへへ、別に何も。聞こえなかったならいいよ」奈穂はそう言って、彼の胸元にさらに身をすり寄せた。実のところ、彼女の胃はもうかなり良くなっている。だが今でも、周りの人たちは彼女を過保護なくらい気にかけていて、辛いものも駄目、酒も駄目、生ものや冷たいものも控えるよう言われている。彼女自身も、それが全部自分の体を思ってのことだと分かっている。だからこそ、心の中で少し愚痴をこぼす程度で、結局は皆の言うことをちゃんと聞いていた。正修はそれ以上追及せず、ただ甘やかすように彼女を抱きしめ、しばらく彼女が甘えるままにさせてから、一緒に起き上がった。奈穂は洗面所で身支度を整え、スマホを手に取って間もなく、眉をひそめた。恵子が新しく投稿した動画を見てしまったのだ。「ほんと、いい加減にしてほしい……」奈穂はこめかみを揉んだ。自分でさえ疲れるのだから、ましてや夏鈴の負担は言うまでもない。もっとも、この状況なら優斗が夏鈴にネットを見せないようにしているはずだ。それに今回は、恵子の味方をする人間もほとんどいない。世論を味方につけるのは、もう無理だった。ウォーキングクローゼットから出てきた正修は、奈穂が顔をしかめているのを見て、すぐに声をかけた。「どうした?」「なんでもない」奈穂は首を横に振り、スマホの画面を消した。恵子のことなど、口にする気にもなれなかった。思い出すだけで胸が重くなる。だが正修には、奈穂が何を見たのかおおよそ察しがついていた。彼の表情がわずかに沈む。奈穂がウォーキングクローゼットに入った隙に、彼は一本の電話をかけた。「九条恵子に伝えろ。これ以上ネットでくだらないものを投稿するなら――責任はちゃんと取らせる、と」「かしこまりました」電話を切った後も、正修の目は冷え切っていた。他人の家庭の問題などどうでもいい。だが奈穂を煩わせるのは、我慢ならない。奈穂をこんなことで悩ませたくなかったし、夏鈴の件でいつまでも心を痛めさせたくもなかった。これまでは、奈穂の右脚のことに気を取られていた。だが今はもう、完全に回復している。ならば、ようやく本腰を入れて、厄介な連
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