【見られなくてもいいから、とにかく婚約おめでとうって言いたい!】【そういえば、前に水戸さんを裏切ったクズ男、今頃後悔して発狂してそうじゃない?笑】【めでたい日にその男の話出すなって。縁起悪い】だがネットでそんな言葉が飛び交っている頃、その「クズ男」本人はスマホを握り締めたまま、画面に映る【九条正修と水戸奈穂の婚約】という文字を食い入るように見つめていた。以前この婚約の噂を見た時、北斗は心のどこかで、「デマであってくれ」と願っていた。だが今はもう違う。ついに正式に決まってしまった。自分が心から愛していた女が、別の男と婚約する。婚約式の会場は、美しい島。多くの招待客が二人を祝福しに訪れる。今頃、奈穂は何をしているのだろう。きっと、婚約式を楽しみにしているはずだ。そう考えた瞬間、北斗は息が詰まりそうになった。本来なら、奈穂は自分の妻になっていたはずなのに。もし水紀さえいなければ、今頃自分たちはとっくに結婚していたかもしれない。子どもだっていたかもしれない。家族三人で幸せに暮らし、自分は水戸家の婿となり、伊集院グループもさらに発展していたはずだ。それなのに現実はどうだ。足は不自由になり。今は各地を逃げ回り、捕まって刑務所送りになることに怯えている。考えれば考えるほど、苦しさが増していく。ちょうどその頃、ニナは買い物に出ていて家にいなかった。裏社会のルートから雇った三人のボディガードのうち、一人は彼女に付き添い、残る二人が家で北斗を守っている。北斗は、そのうちの一人に命じ、大量の酒を買わせていた。数時間後、買い物から戻ったニナは、閉ざされた寝室のドアを見て眉をひそめる。入ろうとしたが、ボディガードが前に立ち塞がった。「伊集院様から、『誰も入れるな』と指示されています」「私も?」ニナは不機嫌そうに眉を寄せた。彼らは同時通訳イヤホンを付けているため、会話自体に支障はない。「はい。伊集院様は、一人になりたいと」ニナの顔に不満が浮かぶ。自分は北斗の恋人なのに。今、彼は何を抱えていて、自分ですら部屋に入れてくれないのか。彼女は夕方まで耐えた。だが夜になり、ついに我慢できなくなる。ボディガードたちを強い口調で下がらせると、鍵を使って内側から施錠された部屋を開けた。
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