ここ数年、進は清流と清澄を掌中の珠のように可愛がっていた。母親の佐知子に対しても、異常なほど甘かった。それが突然、佐知子が裏で別の男と関係を持ち、そのうえ二人の息子まで自分の子ではなかったと知ったのだ。危うく、全財産を赤の他人に渡すところだった。――進が狂いかけるのも無理はない。清流はずっと感じていた。進は、いずれ必ず自分たちに報復する。しかも容赦なく。だが母親も兄も、進に訴えられることばかり嘆き騒ぎ、泣き喚くだけだった。それを見ていると、清流はうんざりする。以前、自分が警告した時には誰一人耳を貸さなかったくせに、今さら後悔しても遅い。しかも、事態の露見は清流の想像より遥かに早かった。逃げ道を用意する時間すらなかったのだ。八方塞がりの中、ふと頭に浮かんだのが君江だった。もちろん、今の彼女が自分たちを心底嫌っていることくらい分かっている。それでも、なぜか彼はここに来てしまった。罵倒される覚悟も、追い出される覚悟もしていた。必要なら脅しでも取引でもするつもりだった。だがまさか、彼女が病気で、それもかなり酷い状態だとは思わなかった。「何ぼーっとしてるの!」君江の怒った声に、清流は我に返る。彼はため息をついた。「家に薬、ある?」「あんたには関係ない。もう一度言うけど、ここで偽善ぶらなくていいから」清流は、目を真っ赤にして自分を睨みつけ、今にも噛みつきそうな勢いを見せる君江を見つめ、その瞳の奥に複雑な感情を滲ませた。だが表情には出さず、彼はいつもの軽薄そうな笑みを浮かべる。「はいはい。お姉様には逆らえません」彼はわざとらしく両手を上げ、降参のポーズを取った。「帰るよ。病人いじめたとか言われたくないし」そう言って背を向ける。寝室を出る寸前、彼はふと振り返った。「ちゃんと休めよ」それだけ言い残し、今度こそ部屋を出て行った。君江は呆れて笑いそうになった。――何を演じてるのよ。少し優しい言葉でもかければ、自分が感動するとでも思っているのだろうか。滑稽すぎる。やがて玄関のドアが閉まる音が聞こえた。清流は本当に出て行ったらしい。君江は少しだけ気を緩める。すると途端に、頭の重さがさらに増した。体にはもうほとんど力が入らない。額もさっきより熱い。薬を飲む
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