夜が明けていた。世界が、息を吹き返すように輝いていた。葉の上には、無数の朝露がきらめき、小さな雫が光をはね返して、まるで星々が地上に降りてきたようだった。ソラは目を覚ました。「……まぶしい。」隣でフウも、ゆっくりとまぶたを開ける。寝ぼけた声でつぶやいた。『ソラ……太陽、帰ってきたね。』ソラは空を見上げた。昨日の夜、初めて見た“ツキ”の姿はもうない。けれど空の向こうに、確かに“何かが残っている”ように感じた。「ねぇ、フウ。夢、見た?」フウは少し考えてから頷いた。『うん。風が、どこまでも吹いていく夢。でもね……その風の中で、“声”がした。』「声?」『うん。やさしい声。“おやすみ”って言ってた。』ソラははっとした。「ボクも、聞いた。」フウは目を見開く。『同じ夢?』「たぶん。風が光って、花が笑ってて……その中で、誰かが『ありがとう』って言ってた。」二人は顔を見合わせた。その瞬間、風が吹いた。朝の空気の中で、どこからともなく光が舞い、花びらがふわりと浮かび上がる。——ひとつの声が、風に混じった。(……おはよう。)フウは息をのんだ。「ソラ……今の、聞こえた?」ソラはうなずいた。(……もう、ひとりじゃないよ。)風が頬をなでた。それは、まるで誰かの手のひらのようにやさしかった。そして、光が答える。『……ナギ、聞こえる?』(ああ。やっと、声が届いたな。)リィナの声が風に混ざる。ナギの声が空に溶ける。(この世界……ちゃんと生きてるな。)『うん。ねぇ、見て。あの二人、もう夢と現実の違いがないの。世界の中で“感じるまま”に生きてる。』(それでいい。感じることが、生きることだ。)ソラは風に向かって、小さく言った。「……あなたたちは、だれ?」リィナが静かに笑った。『ソラ。わたしたちは、“この世界のはじまり”。でも、もう“神様”じゃないよ。』ソラの目が輝いた。「じゃあ、ボクたちは……?」(お前たちは、“この世界の今”だ。そして、これからを作る存在だ。)フウはそっと手を胸に当てた。「……風の中に、あたたかい声がする。これが、記憶?」『そう。それはあなたたちが受け継いだ、“やさしさの記憶”。』ソラは微笑んだ。「じゃあ、これが“朝”なんだね。」フウが首を
最終更新日 : 2025-10-31 続きを読む