朝が来た。……いや、正確には「初めての朝」だった。太陽が東から昇るように設計したわけじゃない。ただ、空の光がゆっくりと強くなっていっただけ。「へえ……ちゃんと“昼と夜”があるんだな。」『うん、世界が自分で動き始めてる証拠だよ。ねえ、ナギ、聞こえる?』「ん?」リィナが指をさす。波打ち際で、何かがぴちゃぴちゃと動いていた。最初は水泡かと思った。けれど、それは小さく跳ねて、光を放ち、やがて――二つの目が生まれた。『わぁ……命だ。』リィナが目を輝かせる。「ほんとに……生まれたのか。」光の粒たちは、丸くなって、また散って、小さな生き物の形をとっていく。魚のような、鳥のような、でもどこかまだ未完成な姿。『ねえ、ナギ。名前つけようよ。』「名前?」『うん。世界に生まれた命には、“呼び名”がいるの。そうすれば、世界がその存在を“覚えられる”んだよ。』「……覚える、か。」俺はしゃがみこんで、小さな光の生き物を手に乗せた。温かくて、くすぐったい。「こいつ……丸っこいし、よく跳ねるな。“ポロン”とか、どうだ。」『ポロン……可愛いね!』リィナが笑って手をかざすと、小さな光の生き物は、その名前を聞いてピカッと光った。『……反応した! ねえ、ナギ、“ポロン”が自分の名前をわかったよ!』「マジか……」その瞬間、風が吹いた。光の波が広がり、周囲の命たちも次々に動き出す。ポロンが跳ねるたび、他の光の粒も追いかけてくる。それぞれ違う色、違う動き。リィナは両手を広げた。『みんなにも名前をつけよう!』「おいおい、全部か? 数え切れねぇぞ。」『大丈夫、考えるの楽しいもん。ねぇ、あのちょっと気が強そうな子は“ピカリ”。あののんびり浮かんでる子は……“スイ”。』「センスあるのかないのか微妙だな。」『失礼なっ! ナギも何かつけてよ。』「じゃあ……あのちょこまか動くやつは“ヒュン”。」『ふふっ、速そうでいいね。』そんな調子で、二人で延々と名前をつけていった。スイ、ピカリ、ヒュン、ポロン。光の粒がそれぞれに反応し、次第に色や形を変えていく。『ねえナギ、名前って不思議だね。ただ呼ばれるだけで、みんな違う“形”になっていく。』「……たぶん、形が違うんじゃなくて、“意味”を見つけてるんだろうな。」『意味?』「誰
Terakhir Diperbarui : 2025-10-21 Baca selengkapnya