夏休みの夜って、なんだか無限に時間がある気がする。アイスを食べて、扇風機の前で口を開けて、アニメを見て、気がつけば夜。別に何か特別なことがあったわけじゃないのに、「あぁ、今日も夏だったなぁ」と、そんな気分になる。そうして俺は、何の気なしにベッドに転がって、何の不安もなく目を閉じた。ほんの、些細な、ひとつの眠りが——全部を、変えてしまった。夢だった。……と、思うしかない、現実離れした光景。見慣れた部屋が、オレンジ色の夕焼けに照らされて、静かすぎるくらいに静まり返っていた。虫の鳴き声もない。風もない。テレビもスマホも消えてる。気づいたら、目の前に立っていた。「……やっと、会えた」その声は、あまりに懐かしくて、心臓が跳ねた。「……リィナ?」そこにいたのは、俺の知ってる少女だった。いや、正確には——前に、確かに一緒に旅をした女の子。淡い金髪に、雪のような肌。ちょっと不器用だけど優しくて、強くて。何より、俺の引き金を引いてくれた、最初で最後の「使い手」。彼女は、笑った。「うん、ナギ。わたしだよ」「でも……なんで、お前がここに?」「来たんだよ、迎えに」淡々とした口調。でも、その奥には、いろんな感情が渦巻いていた。「ナギはね、また“あの神様”に呼ばれるの。今度は、あの人——“スーツの神”が、“ちゃんとお願い”してくるの」「お願い……?」「世界が、壊れかけてるんだって。“歪み”っていうらしい。わたしには難しいことはわかんないけど……きっと、ナギなら大丈夫」
Terakhir Diperbarui : 2025-09-05 Baca selengkapnya