また知らない表情。傷ついた子どもを宥めるように優しく、でも力強い声で繰り返してくる。「全然信じてないな?」案の定、すぐにバレた。胡散臭いことこの上ないから顔に出ていたらしい。「だって継美さんも散々最低なことしてきたじゃん。俺が類まれなるイケメンってことを差し引いてもお釣りがくるぐらい」「ははっ、そんな馬鹿言ってる元気があるなら大丈夫だな」生徒に手を出す人に言われたくない。あくまで自分が正しいという態度を崩さないでいると、またさっきの話に戻った。「でもここからは真面目な話。何を隠してるんだ?」彼の視線が鋭くなる。それと同時に居心地が悪くなった。柚のことを話すには、まず乱交パーティのことから打ち明けなければならない。でもそれを話したら説教タイムが始まって長いこと拘束されるだろう。「別に、何も」「俺の眼を見て言えっての。もうバレバレだけど」「バレバレじゃない……」精神的に追い詰められるとはこういうことを言うんだな。嫌だなあ。話したら絶対怒るもんな。─────当たり前だ。全部自分が悪い。どう思われても仕方ないことをしたんだ。でもその相手が彼だということが、不思議なぐらい嫌だ。「ほら、とにかく話してくれないと助けることもできないだろ」継美は困り果てた様子で、一架の前に屈んだ。「大丈夫だから言ってみろ。怒ったりなんかしないから」「……!」真正面から目が合って、ふと遠い記憶を思い出した。芸能界に入ったばかりの頃。右も左も分からず、子どもだった俺に色々教えてくれた昔の彼が重なった。「本当に怒らない?」「あぁ。約束する」陽だまりのような顔と言葉に弱い。自分の弱い部分を晒すことに抵抗がなくなってしまう。この人なら信じてもいいか、と勘違いしそうになる。「……実は俺、昔のファンを集めて毎週乱交パーティを開いてるんだ」胸の中に押しとどめていたことを打ち明けたらスッキリした。ただやっぱりというか、秒速で鉄槌を食らったから帰ることにした。「一架君、おかえりなさい」外はすっかり闇に包まれている。明かりのついた家に入ると、響子さんが笑顔で出迎えてくれた。「ただいまです」「あら、どうしました? ちょっと元気ない……?」できる限り笑顔を作ったつもりだけど、逆に暗く見えてしまったのかもしれない。彼女は困った顔を浮かべていた。「大丈夫
Last Updated : 2025-10-02 Read more