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All Chapters of Dress Circle: Chapter 11 - Chapter 20

50 Chapters

#2

また知らない表情。傷ついた子どもを宥めるように優しく、でも力強い声で繰り返してくる。「全然信じてないな?」案の定、すぐにバレた。胡散臭いことこの上ないから顔に出ていたらしい。「だって継美さんも散々最低なことしてきたじゃん。俺が類まれなるイケメンってことを差し引いてもお釣りがくるぐらい」「ははっ、そんな馬鹿言ってる元気があるなら大丈夫だな」生徒に手を出す人に言われたくない。あくまで自分が正しいという態度を崩さないでいると、またさっきの話に戻った。「でもここからは真面目な話。何を隠してるんだ?」彼の視線が鋭くなる。それと同時に居心地が悪くなった。柚のことを話すには、まず乱交パーティのことから打ち明けなければならない。でもそれを話したら説教タイムが始まって長いこと拘束されるだろう。「別に、何も」「俺の眼を見て言えっての。もうバレバレだけど」「バレバレじゃない……」精神的に追い詰められるとはこういうことを言うんだな。嫌だなあ。話したら絶対怒るもんな。─────当たり前だ。全部自分が悪い。どう思われても仕方ないことをしたんだ。でもその相手が彼だということが、不思議なぐらい嫌だ。「ほら、とにかく話してくれないと助けることもできないだろ」継美は困り果てた様子で、一架の前に屈んだ。「大丈夫だから言ってみろ。怒ったりなんかしないから」「……!」真正面から目が合って、ふと遠い記憶を思い出した。芸能界に入ったばかりの頃。右も左も分からず、子どもだった俺に色々教えてくれた昔の彼が重なった。「本当に怒らない?」「あぁ。約束する」陽だまりのような顔と言葉に弱い。自分の弱い部分を晒すことに抵抗がなくなってしまう。この人なら信じてもいいか、と勘違いしそうになる。「……実は俺、昔のファンを集めて毎週乱交パーティを開いてるんだ」胸の中に押しとどめていたことを打ち明けたらスッキリした。ただやっぱりというか、秒速で鉄槌を食らったから帰ることにした。「一架君、おかえりなさい」外はすっかり闇に包まれている。明かりのついた家に入ると、響子さんが笑顔で出迎えてくれた。「ただいまです」「あら、どうしました? ちょっと元気ない……?」できる限り笑顔を作ったつもりだけど、逆に暗く見えてしまったのかもしれない。彼女は困った顔を浮かべていた。「大丈夫
last updateLast Updated : 2025-10-02
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#3

「遊ぶどころかこれ以上お前と関わる気はないんだよ。ほら、とっとと教室戻れ」わざと冷たく言ってまた男子観察に戻ったものの、柚はさっきより近い距離で隣に並んできた。「えー、俺先輩と仲良くなりたいなぁ……」めちゃくちゃ上目遣いで可愛さをアピールしてくる。彼の本性を知らなければ揺らいだかもしれないが、今となっては警戒心しか生まれない。「無理だって言ってるだろ。あと俺の半径一メートル以内に入るな! トリハダが立ってしょうがないんだよ!」「あははっ。先輩ってほんと、慣れてない女子って感じだよね」「あぁっ? どこの! 誰が!?」女子に例えられるなんて心外だ。いきり立ってみたものの、鼻先に指を突きつけられる。「先輩。気が強いくせに、ほんのちょっと攻められただけで弱気になるんだもん」なっ……!「そんなことない!」「ある」「ない!」はぁ……。「好きなように思ってろ」なんたってこんなしょうもないことで言い争わなきゃいかんのだ。すぐ馬鹿らしくなり、また窓の方へ向き直る。すると柚は不思議そうに手すりを掴んだ。先程とは打って変わり、落ち着いた口調で尋ねてくる。「先輩、ほんとに俺に興味ないの? いや、俺っていうか……先輩の悪趣味を続けるなら、ウチのホテルが一番都合良いんでしょ?」急に違う方向へ話を持って行かれて、無視しようと思ったのに振り返ってしまう。ホテルの件は確かに気になっていたので、詳しく聞き出すことにした。「……そうだな。でもあのホテルの管理者、高城なんて名前じゃないだろ。あの人の名前は確か」「うん、紗倉。俺の元父親」なるほど、そういうことか。ちょっと反応に困ったが、とりあえず合点がいく。「父親とは仲良いのか?」「うん。暇な時、たまに会いに行くよ」その紗倉という男性と親交が深い俺のファンがいて、少額で大部屋を貸切りにしてもらえてる。……わけだけど。「たまたま先輩らしき人をホテルで見かけてさ。気になって父さんに訊いてみたら、やっぱり先輩だったんだよね」「じゃあ、俺のことは前から知ってたのか」「そりゃあ、元子役ってことを省いても。先輩ってエリートでビジンだから学校じゃ超有名だし」そんな自覚はないけど、どうやら俺の美貌とは隠し通せるものじゃないらしい。秀才ということも相まって、教師の間でも目立っていることだろう。 柚からは「でも先輩
last updateLast Updated : 2025-10-03
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#4

不安と不満が綯い交ぜになりながらも、日が暮れてから柚を連れていつものホテルへ向かった。ネクタイを緩め、一架は少々重い靴で踵を鳴らした。「わぁー……先輩、ほんとに俺もお邪魔しちゃって良いんですか?」「あぁ、視る方で楽しみたいんだろ? ならボケっと突っ立ってな」予約していた部屋の扉を開ける。いつもの照明と、いつもの甘い香りが鼻についた。ドアの近くに佇んでスマホを見ていた朝間はこちらに気付くと、片手をかざして微笑んだ。「お、一架。久しぶりだね。……と、その子は? 初めて見るけど」「久しぶり、朝間さん。こっちは俺の学校の後輩」「高城です。初めまして!」柚は無邪気な笑顔を浮かべ、朝間や他のメンバーに頭を下げる。演技だろうけど、ツラの厚さと度胸だけは評価してもいい。……それはそうと、ただの後輩を連れてくるのは怪しまれるかな。今まで一度だってプライベートの知り合いを連れてきたことはない。朝間さんは特に敏感だから、なにか感じ取ってそうだ。迷ったものの、紗倉さんの息子だということは言わないでおいた。「柚は俺と同じで視たいだけなんだ。みんな、気にせず始めちゃっていいよ」「へぇ。一架と同じなんて珍しいね?」「はい。俺、一架先輩に憧れてて……少しでも近付く為に、まずは先輩の悪趣味を理解したいと思いまして」「オイこら」俺の趣味をナチュラルに貶しやがって。本当は演技する気なんてないんだろうか。ますます怪しまれそうだった為、柚の腕を引き寄せ、耳元で囁く。「もういっそノンセクって顔してろ。そのうち襲われるぞ」「でも、先輩が何とかしてくれるでしょ?」「あのなぁ……」そりゃそうだけど、何なんだ。天然なのか、怖いもの知らずなのか。「あ、本当だ。タイミング関係なくヤッちゃうんですね」「ああ」相手を見つけて、良い雰囲気になるとすぐに抱き合う。“そうなるように”俺が言い聞かせてる。絡み合う指に、絡み合う舌。わざと立てる激しい水音。視線。みんな、俺に「視てくれ」という視線を向けている。それで良いんだ。それが、俺の望みだから。そうするように彼らに頼んでいる。でも……。「……先輩、大人ってやばいですね。みんなどこにでもいそうな人なのに、ベッドに入るとキャラ変わっちゃうとことか」隣で興味津々に食らいついてる柚を想うと、何だか複雑な気分になる。一つしか歳
last updateLast Updated : 2025-10-04
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#5

「嫌だ……っ!」抵抗を試みるも背後から押さえ込まれ、座位をとらされる。強引に両脚を開かされた為、高まった中心部が部屋にいる全員に晒されてしまった。この場にいる者皆、待ちに待った様子で一架を凝視している。羞恥心から自暴自棄になりかけた頃、とうとう朝間の指が後ろの小さな入口に入りこんできた。ローションをたっぷり塗りこまれてはいるが、固く閉じた部分を無理やりこじ開けられれば激しい痛みが伴う。生理的に涙が流れたが、容赦なく中を犯される。「い……痛……っ!」「うんうん。ね? 視てるだけじゃ分からないでしょ? ───体験しなきゃ」上手く息できない。青白い照明が明滅している。明暗も分からないぐらい、頭がおかしくなってしまったのかもしれない。いつからか視線を独り占めにしていた。誰とも目を合わせないように俯き、何故こんな事になったのかをひたすら考える。分かったところで、何も解決はしないけど。「少しキツいかもしれないけど、こっち入れようか」何本も含ませていた指を引き抜かれ、またなにか硬いものを押し当てられる。「え……?」熱を持ったその感触の正体は、本能で理解した。震えが走り、目を見開く。「一架、大人しくしててね」下から腰をホールドされ、勢いよく貫かれる。「うあぁあっ!!」あまりの衝撃に身体が仰け反り、腰が宙に浮いた。全身の関節がぎしぎしと叫ぶ。熱くて太い狂気がくい込んでくる。恐ろしくて泣き叫ぶこともできなかった。思考がショートしている。上半身だけに力が入って、下はむしろ脱力していった。「朝間、さんっ……いや、やめて……やだあっ!」痛みを堪えながら必死に声を振り絞ったけど、彼は優しく微笑むだけだった。頬や唇に、啄むような口付けを落とす。「ごめんね、やめられそうにない。今すごく最高の気分なんだ。……ほら、皆も一架を視てる」涙で滲んでいるけど、何とか正面を見た。皆自慰をやめ、嬉々とした眼で一架と朝間に注目している。特等席から眺めていた時とは真逆だ。今は自分が舞台の上に立ち、醜態を晒している。観客は彼らで、俺は狂った役者。やば……っ。視られてる。────俺が。「一架の中、きついけど……きゅうきゅう締まって気持ちいいよ。ほら、分かる? 下のお口がペニスをちゃんとくわえてるよ。初めてなのに、物わかりが良くて良い子だ」「んう……あぁっ!」
last updateLast Updated : 2025-10-05
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#6

痛い。ところどころ冷たいし、どこかぬれていて気持ち悪い。何度目かの寝返りをうったときに、一架は飛び起きた。「あ……っ!」慌てて周りを見回す。その衝撃で枕が床に落ちたが、どうやらまだホテルのベッドで寝ていたみたいだ。「あ、先輩おはよーございます! まだ夜だけどね」「……柚」瞼を擦ると、傍のチェアに柚が座っていた。けど他には誰もいない。静寂に包まれた空間が広がっている。「朝間さんや……皆は」「帰っちゃったよ。もう満足。お腹いっぱい! って言って」柚は相変わらずおどけている。彼の高いテンションとは真逆に、こちらはさらに陰鬱としていた。解放されたことには安堵してるが、頭がガンガンする。身体もあちこち痛い。起き上がろうとしたが、柚はまだ休むよう言って、無理やりベッドに寝かせられてしまった。「でも驚いたよ、まさか先輩が襲われちゃうとは。すいませんね、俺のせいかな?」「……いや」「じゃ、助けてほしかった?」「……いや?」束の間の沈黙。一架は怪訝な表情で柚を見返す。「とりあえず、お前が襲われなくて良かったと思うよ」全裸でいることに気付き、改めて恥ずかしそうに一架は顔を背けた。「うーん、やっぱり先輩って可愛いなぁ!」「うわっ! ちょっとやめろよ!」せっかくシーツであそこを隠したのに何の意味もない。ベッドに乗り上げ、抱きついてくる柚を本気で拒絶した。もっとも、彼はそんなの気にも留めないだろうけど。「ねぇ先輩、自分が抱かれてるところ視られて興奮した?」「するかアホ!」「じゃ、先輩は今……何なら興奮するの?」鼻先が触れそうなほど近い距離で、柚は問い掛けてきた。本来、好きでもない奴とこんな近くに顔を合わせることは絶対ない。でも不思議と、もう嫌な気はしなかった。多分、こいつは特別だ。良い奴でもなければ、悪い奴でもないんだろう。ちょっとだけ、俺と似てる……のかも。大きな瞳を見開いて返事を待つ柚を見て、再び顔を逸らした。「分からない」「ええ、分かんなくなっちゃったの?」「もういいだろ、この話は!」さすがに嫌になって一喝すると、彼は笑ったままキスをしてきた。「ねえ先輩、あの朝間さんて人とのキスは気持ち良かった? わりとすぐに勃起しちゃってたけど、先輩が淫乱なだけなのかな」「ん、うぅ……っ」唇は離されたけど、今度は指を口腔内に突
last updateLast Updated : 2025-10-06
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前途多難

一架は泣き叫びながら懇願する。自己嫌悪のあまり奥歯を噛み締めながら、脚を大きく開いた。「お願い、早く……早く、イかせて」こうなったら、一刻も早く終わってほしい。それだけを願って、彼の手を掴んだ。「イきたい? じゃあ、これから俺がシたいって言った時は────抱かせてくれる?」唇に当たる指。その先に見える笑顔に背筋が凍った。「や、やだ……」そこは正直に答えると、頬を優しく撫でられた。「じゃあ、俺もやだ。今日は休みだし、一日こうしてても俺は平気だよ。萎えても動かなければ抜けないし?」本気だろうか。冗談だとしても悪辣極まりないし、何より狂ってる。しかしこのままは辛い。本当はもう一秒だって耐えられなかった。嘘でもいいから、ここは彼の言う通りにする。「分かった。……いつでも、する」「約束だよ? じゃあ僕のエッチなお口に、柚の熱いミルクたくさん飲ませてくださいって言って」「お前ほんと死ね」「冗談だよ~。でも、可愛くおねだりして?」柚のキスが首から胸へと落とされる。本当に嫌でしょうがなかったけど、彼が突きやすいように腰を浮かせた。「早く…馬鹿みたいに腰振って、俺をイかせろよ……!」「やっぱ先輩ってエロいね」柚は舌舐めずりした後、一架の腰を押さえて激しく動いた。壊れるかもしれないと不安になるほど、ベッドが軋む音が響き渡る。乱れる声も汗も、空気を熱する材料になった。「先輩……まだ、俺のそばにいてよ……っ」柚の細い声が耳元で聞こえた。どういう意味か考える前に腹の中が熱くなって、唾液を零した。女になってしまったようだ。「はは……先輩のお尻熱くて、すごい締めてくる。もうたくさん種付けして、妊娠させたいよ」AVの見過ぎだと叱りたかったけど、それ以上に自分が淫らに腰を振ってるので何とも言えない。恥ずかしい台詞を平気で口に出した。「もっと……もっと欲しい、柚のち、んこ……っ」「先輩さ……もう完全に視られる方にチェンジだね。恥ずかしいとこ見せつけるのって快感でしょ?」逡巡するも、一架は頷いた。もう、この時にはそう思ってしまっていた。視るのではなく、視られたい。このあられもない痴態を見せつけて。「あっイクッ……!!」絶叫し、気を失うまで一架は脚を開いていた。高まった熱はあっという間に冷めていく。ちょっとだけ、あの温もりが恋しい。立て続
last updateLast Updated : 2025-10-07
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#1

翌々日、カラカラの晴天。一架はいつも通りを装って登校した。「おはよ、一架!」「柊……おはよう」電車に一本乗り遅れた為少し遅い時間だったが、校門前で柊と会った。彼はこちらを見ると眉根を寄せ、かなり近くに顔を持ってきた。「お前、何か前よりやつれてるぞ。どうした?」「いや、ちょっと寝不足が続いてるだけ。大したことないよ」余計な心配をかけないよう笑って返す。それでも柊はさっきより険しい顔で腕を組んだ。「……寝不足って、勉強とかじゃないだろ。何か悩んでんなら言えよ」「あ……ありがと。でも、今はマジで大丈夫」彼の気持ちが素直に嬉しい。その反面、申し訳ない気持ちになる。自分は親友にも言えないような秘密を隠し持っている。相談しようにもできないことが恥ずかしい。彼には迷惑をかけたくない。距離感も程々を保たないとな。「一架先輩、おはようございます!」「うっわ! 柚!」心臓が止まりそうになった。突然目の前に現れたのは、ホテル以来の柚だ。顔を合わせたくなかったのに、タイミングが悪過ぎる。また嫌なことを思い出して腹が痛くなってきた。上手くこの場からエスケープする方法を考えていると、隣の柊が目を輝かせてることに気付いた。何か嫌な予感がする。「一架、その子誰?」「あ、初めまして。高城柚っていいます。一架先輩には色々お世話になってて、尊敬してるんです」「へぇー、そうなんだ! 俺は津久見柊。よろしく」柚の白々しさがすごい。また一人称が僕に戻ってるし。 「一年生かぁ。何繋がり? 生徒会とか?」「いや、そういうんじゃないよ。ただの知っ、知り合いで……っ」適当に誤魔化し、再び歩き出す。よくよく考えたら、柊と柚は俺の偏った性格を知っている。だから変に取り繕う必要はないんだけど……二人が初対面だから、そこは触れないでおこう。できるだけ普通に、大人しくしとくか。「へえ、柊先輩は一架先輩の幼なじみなんですか。じゃあ先輩のこと何でも知ってそうですね」「いや~? 一架は隠し事が多いからな、俺も知らない事いっぱいあるよ」「あぁ、それちょっと分かります」さらに二人が盛り上がるから、彼らを残して先に歩いた。落ち着かない。すごくハラハラする。これを何とかできるのは、多分“彼”しかいない。「俺、ちょっと用思い出したから。先に教室に行ってて」無理やり二人と別れ、一
last updateLast Updated : 2025-10-08
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#2

「じゃあ、好きな人もいないの?」念の為訊いてみる。けどやっぱり、彼の答えは一変わらずで。「いないな」爽やかな笑顔で、短か過ぎる回答。あぁなるほど。やっぱそうなんだ。確信した。この人は好きじゃない人間に簡単に手を出せる変態教師だったんだ。俺は何を期待してたんだろう。ちょっとでもこの人が俺に特別な感情を持ってんじゃないか……なんて思ったりして。「さ、それよりもう朝礼始まるぞ。早く教室に行こう」「……わかってる。先に行くね」何だか全部馬鹿馬鹿しく思えて、彼より先に図書室を飛び出した。意味が分からない。というよりも、自分が分からない。勝手に喜んで、勝手に傷ついて。勝手に八つ当たりしようとしている。何で……。そもそも何で“傷ついて”いるのかも分からなかった。継美さんには散々ひどいことをされてきた。あんな人だってことははるか昔から知ってたし、好きになる理由もない。なのに今は、ここに来た時の百倍心が重かった。視姦をやめた。ファンには事情を話し、これまで協力してもらった謝礼を自費で出した。ホテルの乱交も取りやめになり、これで晴れて“普通”に戻れる。────はずなのに。「一架せーんぱい」学校が終わった後、厄介な人物に必ず捕まるようになってしまった。趣味とは別に、俺にはまだ悩みの種がある。高城柚の性欲処理。もう行かずに済むと思ったホテルへ行き、彼と遅くまで寝る。服を脱がされ、強引にベッドに押し倒される。今日は夕方から三時間近く彼の変態趣味に付き合っていた。そのせいで疲労困憊なのに、いつまで経っても解放してもらえない。せっかく平凡な生活に戻れると思ったのに、以前より酷い場所にいる。「柚、もう許して……っ……もうイきたいっ」「だーめ。ていうか先輩、焦らされんの大好きじゃん。先っぽ、もうずっと垂れてるよ」ぬるぬるの性器を爪で弾かれ絶句する。ちょっとの刺激で仰け反り、喘ぐ身体が憎い。いっそさっさと理性を手放し、イきたかった。でも性器の根元にぴったりとはまったリングによって堰き止められてしまう。今日は彼に射精管理をされ、ずっと苦しみに呻いている。イきたいと願えば願うほど、彼は残酷な要求をした。 「先輩、男がいないと駄目な身体になるの早かったね。俺が上手いのか、先輩に素質あんのか……。多分両方だろうけど」柚は熱い舌で、乳首を舐め回す。
last updateLast Updated : 2025-10-09
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#3

家に帰ると、久しぶりに父がリビングで寛いでいた。こちらに気付く様子がなかった為、足音を殺してこっそり自分の部屋に戻った。我ながら冷たいと思う。でも「ただいま」の一言を掛けてしまうと、そこから長い話が始まってしまうかもしれない。一刻も早く着替えたいし、申し訳ないけど今はひとりになりたかった。ぐちゃぐちゃになった頭と、ぐちゃぐちゃにされた身体。今の自分はある意味釣り合いがとれている。ベッドに倒れ込んで、額を押さえた。「はぁ……」このまま朝なんか来なければいいのに。そしたら柚に抱かれることもなくて、勉強なんかしなくてよくて、継美さんに会わなくていい。誰とも会いたくない。なのに、誰かと繋がりたい。この矛盾した願望は頭の中でしか息をしてくれない。一歩外へ出た途端に弱気になって、引っ込んでしまうんだ。翌日も気が重いけど学校へ向かった。もう心を無にして、授業だけに集中しよう。深呼吸して自分の席についた。ところが。「おはよう、一架」何故か継美さんが目の前に現れた。「おはよ……ございます」目も合わせず、とりあえず挨拶だけ返す。彼は俺の机に手をついて、ひとり話し始めた。「放課後、ちょっと教室に残れるか? 話があるんだ」「い……一分で終わるならいいですよ。まぁその時間で終わるなら、今話してもらっていいんですけど」わざと嫌味っぽく言ってやる。すると継美さんは眉を顰めた。俺のあからさまな態度も悪いけど、彼の露骨な反応もいかがなものかと思う。でも、これ以上彼の顔を見たくない。そう思って視線を外していると、呆れ果てたような声が聞こえた。「最近ずっと素っ気ないな。一体何を拗ねてんだか……最近かまってやらなかったから?」「拗ねるって……変な言い方しないでくれる!?」思わず立ち上がって、声を張り上げてしまった。今のはまずい、と慌てて口を塞ぐ。でもタイミングよく、朝礼の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。教壇に戻らざるを得ない継美さんは舌打ちした。何てこんな態度悪い人間が教師になれるんだ。心底不思議に思っていると、彼は俺にだけ聞こえる声で「放課後は残れよ」と呟いた。そして教卓の方へ向かい、いつものように出欠を取り始める。複雑……いや、微妙な気持ちだった。くっそー……だから何でアンタの言うことを聞かなきゃなんないんだよ!放課後は速攻帰ってやる。そ
last updateLast Updated : 2025-10-10
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#4

同時刻。教室で立ち尽くす継美を、廊下側から眺める生徒がいた。「ふーん……」なるほど。先輩の好きな人わかっちゃった。肩を竦め、小柄な体躯をさらに縮めたのは柚だ。彼は足音を殺して教室から離れると、今度は廊下側の窓を覗き込んだ。校門を見渡すにはちょうどいい位置にいる。……何となく見つめていると、門の傍に停めてある車と、そこに立っている人物に息を飲んだ。「あの人……」────何でここに?気になったが、あまり“彼”と会いたくない。今はそこで放心している梼原先生の方が気になるし、とりあえず放っておこう。柚はポケットに手を入れ、その場から静かに立ち去った。最悪だ……。気を抜いたらそのまま倒れてしまうんじゃないだろうか。そう思うほどの息苦しさに襲われながら学校を出た。パニックから鞄を持ってくることも忘れたが、スマホと定期さえあれば帰宅するのに困らない。二つともポケットに入っていることを確認し、深く息をついた。学校に戻るのは絶対嫌だったから、駅に向かって歩みを進める。まだ目頭が熱い。通り過ぎる人達に顔を見られないよう、俯きながら歩く。そうして思い浮かぶのは、戸惑う継美の顔。冗談抜きで自分が嫌いになりそうだ。あの人の前で、一体何回泣いただろう。怒りを通り越して呆れた頃、聞き覚えのある声が降り掛かった。「あれ。一架?」心臓がどくんと跳ねる。いつかの苦痛と恐怖が息を吹き返した。「朝間、さん……」この辺りでは一番のメインストリート。昼夜問わず大勢が行き交うその場所で、タイミング悪く鉢合わせてしまった。あれからそう日は経ってないけど、俺をホテルで無理やり抱いた人。……朝間さん。彼は控えめだが上質なスーツを着ている。「奇遇だね。元気?」「え……あ、はい」あれだけのことをしておいて、よく平然と声を掛けられるな。正直どう反応したらいいかも分からなくて、歯切れが悪くなる。すると彼は困ったように笑った。「あはは、俺に元気とか訊かれても微妙だよね。この前は大丈夫だった? ……しばらく痛かったでしょ」彼の切れ長の瞳が段々と下へ移る。別に触られてるわけでもないし、裸を見られてるわけでもないのに……何故かゾクっとした。今度は恐怖ではなく、官能的な反応だ。「だ、大丈夫です。それじゃ……」これ以上彼と関わってはいけない。急いで立ち去ろうとしたが、前
last updateLast Updated : 2025-10-11
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