季節が移るのはあっという間だ。長くて短い夏休みも終わり、気付けば肌寒い風が吹くようになった。特別悪いことはないけど、良いこともない。舗装された、とても平坦な道を歩いている。一架はまだ目覚めきってない頭で、今日も通学路を歩いていた。「よっ、一架!」「おぉ、柊。と……」学校の昇降口の手前で名前を呼ばれ、足を止める。振り返ると、よく知ってる二人が後ろにいた。「おはよう、一架先輩」「おはようございますだろ、柚? 一架は一応先輩なんだから」「オイ、一応って何だよ」颯爽と現れたのは幼なじみの柊と、後輩の柚。彼らは一目でわかるぐらい距離が縮まった。何か一悶着あったみたいだけど、今は穏やかに付き合ってるみたいだ。柚の方を盗み見て、密かに思案する。……眼鏡外したんだな。俺の方も安泰だ。柊の家に連れて行った日から、柚にちょっかいを出されることは完全になくなった。柊が良い具合にストッパーになってくれてるんだろう。おかげでとても平和な日々を過ごせている。これで見た目もキャラ被らないし、学年は違うといえポジションを切り離せる。「なぁ、そういえば一架は好きな奴いないの? 俺、お前からそういう話聞いたこと全然ないけど」三人で廊下を歩く。途中、柊は冗談っぽく訊ねてきた。もし柚からこれまでの事を聞いてるのなら、こんな質問はしてこないはず。ということは、柚は朝間さんを含めた乱交の件について、柊には何も話してないようだ。案の定、彼は澄まし顔で隣を歩いている。でもその方がいい。俺が継美さんと付き合ってることは隠しておこう。「……あぁ、いないよ。俺はまだいいかなー。学校中にいるファンを裏切るようなことはできないからね」「えぇ? 大丈夫だよー、もうそんな熱狂的なファンは残ってないって。一架が誰と恋愛しても、誰も気にしないよ!」柊は明るく笑った。俺の為に言ってくれたんだろうけど、何か逆に傷つく言葉だ。もう誰も俺のことなんて想ってない……。その心情に気付いたのか、柚はそっぽを向いて必死に笑いを堪えている。このガキ。「まっ、一架も早く好きな人見つかるといいな。じゃあまた!」階段をのぼりきったところで二人と別れた。俺も自分の教室へ向かい、見慣れた景色に飛び込む。「おはよう!」「おー、おはよう一架!」にこやかに挨拶すると、近くにいたクラスメイトは笑顔で近寄ってき
Last Updated : 2025-10-22 Read more