朝間は姿勢こそ崩さないものの、軽く両肩を上げた。一架の顎に触れるか触れないかの距離に手を伸ばし、静かに告げる。「一架は、寂しいんだね」「……っ」予想外の台詞が胸に突き刺さる。思わぬところから球を投げられ、否定より驚きが勝った。声も出ない。飲み物を飲んで喉はだいぶ潤ったはずだけど、ひどく枯れてしまったようだった。感情が心の中だけ泣き叫んでいる。不安、恐怖、怒りに悲しみ。そして隠しようのない孤独感。彼の言う通りなんだろうか?「……寂しい」味方が欲しい。自分を分かってくれる、自分を守ってくれる存在が欲しい。それは本心の気がした。今まで気にしたこともない“独り”が、今はどうしようもなく耐え難かった。胸の深いところで渦巻く黒い感情が、自分を支配している。常識や道徳は二の次で、ただ息しやすい場所まで浮上したい。その一心だけだ。つまり、傍にいてくれるなら誰でも良かった。朝間は前屈みになり、テーブルの下で一架に手を重ねる。つま先まで電流が走った。これは恐怖か高揚か。いまいち推し量れずにいると、彼は微笑を浮かべて指を絡ませてきた。「俺なら一架をひとりにしない。ずっと傍で、君だけを愛するって誓うよ」甘い言葉だ。乗っちゃいけないって分かってた。これは毒だ。それを知られないように丁寧にコーティングしている。見え透いた罠なのに、今は引っ掛かりたかった。めちゃくちゃにしてほしい。くだらないことを考える自分を壊して、離さないで。─────闇に吸い込まれるように、その夜は再び彼と顔を合わせた。あえて古く出入りが少なそうなホテルを選び、その一室に踏み入る。何でもない一歩だけど、また大変な一線を越えたようだった。俺は自分から望んでここへ来た。きっともう戻れない。柚のときみたいに、嫌々来るのとはワケが違う。地獄の入口を開けたと思って良かった。退路なんてなくて、先に進むしかない。奈落の底に落ちるしかないんだ。「おいで、一架」朝間はネクタイを外し、ダブルのベッドに腰を下ろした。迷ったものの、促されるまま彼の膝に座る。服は一枚一枚、丁寧に脱がされた。床に落ちる服から視線を外せない。もう何度も自分の裸を人に見られているけど、未だに慣れない。指先が震えてしまう。「ふふ。やっぱり一架は可愛いね」彼の指が唇をなぞり、胸に這う。すぐに閉じてしまう脚の間に潜
Last Updated : 2025-10-12 Read more