Dress Circle

Dress Circle

last updateLast Updated : 2025-11-06
By:  七賀ごふんCompleted
Language: Japanese
goodnovel18goodnovel
Not enough ratings
50Chapters
204views
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

元子役の高校生、一架は視姦が趣味。かつてのファンを集めて乱交パーティーを楽しむ日々を送っていたが、あるとき役者時代の知り合いが担任教師として現れ…。 教師×生徒。 ※総受け、複数CPあり。

View More

Chapter 1

少年の秘密

自分の性癖が異常なものだと分かっている。これはどんなに隠しても醜く滲み出てしまうものなんだ。

『一架。……もしかして見てた?』

遠い記憶。あの人の声が反響している。

『俺達が“してる”ところを……』

本当は思い出したくない。“あれ”は消し去りたい記憶だ。

まだ小学生のとき、他人がセックスしている姿を目撃した。それを機に自分の異常な性癖に気付てしまった。

驚きや嫌悪より興奮の方が遥かに勝っている。

俺は他人のセックスを視ることでしか欲情できない人間だった。

崔本一架《さいもといちか》、十七歳。私立の男子校に通う高校二年生。

中学まで子役として芸能事務所に所属していたが、今は引退してごく普通の高校生活を送っている。

「一架、おはよ!」

「おはよう」

学校では基本真面目な優等生を演じ、大人しく過ごしている。

学校は好きでも嫌いでもない。常に成績上位の為テスト前は必ずクラスメイトに引っ張りだこだ。

頼りにされるのは素直に気持ちが良い。だから断ることもせず、優しい微笑みを貼り付けている。

「ごめん崔本、この問題がどうしても分かんないんだけど……」

「どれどれ……あぁ、これはここをこうして……」

教えて、それで喜んでくれるならいくらでも力になってやりたいぐらいだ。

「なるほど、サンキュー! やっぱお前すげーな!」

一生懸命なクラスメイトといると癒される、というか心が洗われる。

俺とは違って本当に純粋なんだな、と思う。

「勉強もスポーツもできて、クラス一面倒見がいい! 一架は最強のイケメンだよ!」

「ははっ、褒めすぎだよ。決して間違いではないけど」

そうそう、俺が子役のオーディションに合格したのも、この容姿と全くの無関係とは言いきれない。俺はどうも一部の人を惹き付けてしまう美貌の持ち主らしい。

「はぁ、イケメンで勉強もできるなんて不公平だよな。外でお前のことガン見してる女子とか見つけると、マジで羨ましいわ~」

「褒めすぎだね、間違いではないけど。……でも俺は俺で不安な時があるんだ。俺のルックスに嫉妬した男子諸君が襲って来ないかって」

「大丈夫だよ。お前ほど完璧な奴だと逆に手が出せないって」

「そうかな……。それならいいんだけど……」

学校に限らず、俺はどこを歩いても見られている。

それを自信過剰と呼ぶ友達もいれば、自意識過剰と呼ぶ友達もいる。

「あ、崔本だ。今日も爽やかだなぁ」

「な。あそこだけマイナスイオン漂ってそう」

でも一歩廊下に出ると知らない生徒からもヒソヒソと囁かれるぐらいだから、決して心配症なわけじゃないと思う。

注目されるのはもう慣れているし。とにかく、早く夜になってくれればいい。

「一架くん、おかえりなさい!」

「ただいま帰りました。響子《きょうこ》さん、父さんは?」

「あら、電話ありませんでしたか? 急に大阪に出張になったみたいで……明後日まで帰ってこられないから、なにかあったら連絡してほしいと今朝仰ってましたよ」

父は記者で、仕事の為よく家を空ける。しかも突然。

家事をするのが困難だからと家政婦を雇って良しとしてる、奔放なひとだ。

三年前に母さんと離婚してから今まで以上に仕事第一になったような気がする。

夕食を食べ終え、一架はスマホと財布だけ持って玄関へ向かった。

「こんな時間に大丈夫? 最近は物騒だから気をつけてくださいね」

「わかってます、心配いりませんよ。響子さんは戸締りお願いします。じゃ」

夜、彼女には買い物と称してある場所へ向かった。

そこは何の変哲もないビジネスホテル。こんな時間に高校生が来ると目立って仕方ないが、知人が経営しているので簡単に入ることができた。

────ここでは、本当の俺になれる。

最上階の、一番奥の部屋に鍵を開けて入った。

「お待たせ、皆」

そこでは、誰にも言えない密かなパーティが開いていた。

「う……っ……あ、あぁ……っ!」

鼓膜を揺さぶる艶めかしい声。

水音が絡んだぶつかり合う肌の音。

甘ったるい独特のにおい。その全部が、俺の情欲を掻き立てる。

「あれ、もう始めてたの?」

部屋には十人程度の男性が全裸で抱き合っていた。

これだけで、この空間の異常性が感じられる。

「待てができない悪い子達はお仕置きが必要かな」

軽く吐き捨てると、彼らは慌てて一架の元に駆け寄った。

「一架、それなら俺から……!」

「いや、俺からお願いします!」

皆我が先に擦り寄ってくる。そのさまを眺めるのが本当に楽しかった。彼は心の中では既に高笑いをしていた。

「心配しなくても全員お仕置きしてあげるよ。分かってるだろうけど、最後には俺を満足させてね?」

甘く、淫蕩な囁きは邪な考えがあるからこそ響くものだと思う。これは全て俺だけの、俺の為の秘密のパーティだから。

芸能界を退いても熱狂的なファンは少なからず残る。ここには現役時代から俺を追いかける、俺の言うことだけを聞くファンが集まっていた。

「じゃあ、俺の前でシて」

一等席でショーを楽しむが好きだ。

……異常なまでに。

ここで俺が望むことはただ一つ。男同士のセックスを見る。ただそれだけ。

「は……はい……」

最初に目をつけたのは、大学生とサラリーマンの青年だ。名前は大学生が春木さん、サラリーマンが柄屋さん。どちらも俺に一目惚れしたという。その俺にこうしてセックスを見られるのはどんな気分なんだろう。

好きでもない相手とのセックスを、好きな人間に視られる。変な感じだけど、それはそれで面白い。

「……ぅあっ!」

下着をズボンごと下ろされ、春木さんは恥ずかしそうに顔を逸らした。柄屋さんの目には、春木さんの下半身が晒される。

「あれ、もう勃ってんね。興奮してるの?」

「はっ……い……」

柄屋さんがそこを擦ると、春木さんは声を抑えることもできず、激しく腰を振った。

「ひゃ……っ」

その最中も容赦なく彼の奥に指を這わせ、キツく閉じた部分をこじ開けていく。硬くなった性器が当てられ、長い愛撫の末に挿入された。

「うあぁっ!」

春木さんは苦しそうに顔を歪めたが、反対に柄屋さんは心底嬉しそうな顔をしていた。

全く、どうしようもない変態だ。それを強要している俺は彼を遥かに越える変態だけど。

「いっ、あっ、あぁっ!」

柄屋さんが激しく腰を振れば、それだけ春木さんも激しく全身を震わせた。飛び散る汗と体液が二人を汚していく。それだけでもう絶頂の気分だ。

二人が必死に腰を打ちつけ合ってる姿を見ると、たまらなく下半身が疼いた。

「あぁっ……イきたい、一架……っ」

春木さんは、俺に許しを求めてきた。でも。

「だーめ。柄屋さん、もっと気持ちよくしてあげて」

「は、はい」

一架の言葉を受け、柄屋はさらに激しく彼の中を突いた。

良い。

苦痛と快楽が混ざり合い泣き叫ぶ彼を見て、俺も自身の性器を取り出して自慰を始めた。

この支配感。他人の生セックス鑑賞は何よりも興奮する。欲望を掻き立てる。

「ん……っ」

その快感は、この為に生まれてきたんじゃないかと思わせるほどの満足感。

彼らがイクのに合わせ、一架も自身のものを強く扱いて射精した。

「はっ……あ、あぁ……さいこう……っ」

密室に立ち込める狂気の熱。気付けば二人ともあられもない姿で果てていた。

俺も全て出し切ったからどうでもよくなって、ソファの上で身体を放り出す。

「一架、イッたの?」

「あっ!?」

しかし後ろから手を回され、イッたばかりの性器をまた扱かれた。ここまでくるともはや苦しいだけで、倦怠感から掠れた悲鳴を上げた。

「ふふ、可愛い声」

「朝間さん……や、やだ……」

優しく抱き寄せてきたのは、朝間というまだ若い青年だった。彼は一架のファンとしてかなり長い。また、一番一架に執着しているかもしれず、そこは油断ならなかった。

「一架のここ、まだビクビクしてる。物足りないのかな」

「ふっ……て……」

先端のくぼみを指で押し潰され、居心地の悪さに身を捩る。

「朝間さん、待って………!」

抵抗するものの、朝間の手は止まることなく濡れたそこを虐める。クチュクチュと淫らな音を立て、白い蜜を搾り取ろうとする。

快感が、理性を上回る。

いや……駄目だ。

気持ちわるい。

自分のそんなところを他人に触られるなんて。

「やめろ、ホントに……っ!」

彼の手を払い除け、できる限り睨んだ。

「俺は触られんの嫌いだって言ったよね」

「そうだったね。ごめんごめん!」

決して冗談ではなく、怒りを込めて言った。しかし彼は悪びれることなく、明るい笑顔で両手を合わせる。

「一架があんまり可愛いから我慢できなかったんだ。……ね。何でもするから許して?」

物腰は穏やかだが、常に飄々としている彼は得体の知れない不気味さがある。

一架に強く執着しているが、かといって心酔しているわけでもない。食えない態度は昔から気に入らなかったが、「何でも」という言葉に弱かった。

「じゃあ誰か抱いてるところを見せてよ」

「うん。一架が見たいって言うなら、いくらでも席を用意するよ」

朝間は一架の頬に音の鳴るキスをした。

日中は同僚や後輩の前でできる社員を演じているだろうに。今は新たなパートナーを見つけて、行為に耽っている。

滑稽で、醜悪で、こんなに最高な催しはない。

見るのって何でこんなに楽しいんだろう。

彼らのセックスをいつまでも見ていたい。

醒めない夢として、永遠にこの特等席を陣取っていたい。

(────自分がその輪に入るのは死んでもごめんだけど。)

視姦趣味を持つ、支配欲にまみれの高校生。

これが人に言えない、本当の自分だ。

全ての男性は俺の性的欲求を満たす為に存在する。それぐらい傲慢な考えを持っていた方が人生楽しい。

さ、今日も真面目に学校行くか。

朝、ネクタイをしっかりしめて伊達メガネを掛ける。昨日の俺の面影は残らない。俺が可愛がってるファンもこの姿に気付くかどうかは微妙だ。

「響子さん、行ってきます」

「はーい、行ってらっしゃい」

電車一本で二十分ほどの場所に、俺が通う高校がある。

「一架先輩、おはようございまーす」

「おはよう!」

かなりのおぼっちゃま校だからか、真面目な人種が多い。もちろん俺もその輪の中にいる。

「おはよう一架! すまん、一生のお願い! 写真撮らせて! 知り合いの女子にクラスにイケメンがいるって言ったら撮ってこいって聞かなくてさ」

「えぇ、困ったな。魂抜けるから写真は苦手なんだけど」

「本当に頼むよ!! 一枚だけ!!」

「やれやれ」

知り合いの知り合いとか友達の友達とか色々あるけど、実は学校にも現役時代のファンが意外と居て、写真を求めてくる生徒がいた。

だけど、作り笑いするまでもなく笑ってしまう。写真に写る俺なんて、九割俺じゃないのに。

見た目が全てだと思ってるのは俺か、それとも周りか……実際のところは分からない。

「一架、ちょっといい?」

「ん?」

朝のホームルームが始まる前に、隣のクラスの男子A君(仮)に呼ばれてトイレへ向かった。

「突然ごめん。お願いがあるんだけど、写真撮らせてくれない? ……言いにくいんだけど……裸の。お、お金払うから……」

朝からデンジャラスな依頼だった。

こんな事を言える勇気がすごいし、そう言わしめる俺の美貌もすごい。

「ほ、本当にごめん。気持ち悪いよね」

気持ち悪くない、と言えば嘘になる。けど俺の方が数百倍気持ち悪い性癖を持っている。

「……いいよ。その代わり、俺のお願いを聴いてくれれば」

「ほんとう!? 何!?」

彼は目を輝かせて飛びつく。でもその直後に告げた、俺の“お願い”に青ざめて固まった。

「俺の前で、男とセックスして?」

彼は予想通りの反応でかぶりを振った。 

「む、無理だよ、そんなの!」

「そ。だよね、じゃあ俺も無理ってことでごめんね」

「えぇー!」

えぇー、じゃない。どこの世界に無償で裸を見せるアホがいるんだ。

「ギブアンドテイクだよ。俺が君の言うことを聴く義理はないし」

「でも、お金は欲しいだけ払うから……」

「いらないって」

これ以上は時間の無駄だ。振り切るようにトイレから出ようとしたけど。

「……わ、わかった。セックスすればいいんだね?」

なんという事だろう。A君は折れた。

「あれ、ほんとに? 度胸あるなぁ」

……やった!

久しぶりに高校生のセックスが見られるぞ。

内気そうな少年だった為正直かなり驚いたが、最近おじさんばっかり相手にしていたから最高だ。すっかり機嫌を良くして、彼に近付いた。

「誰かアテはいるの?」

「い、今は何とも言えないけど。必ず誰か見つけてエッチするから」

彼がそう言った時、背後で靴音が響いた。

「君達、何してるんだ?」

低いが、自分達の前の壁までよく通る声。生徒じゃない。大人だと悟り、慌てて振り返る。 

誰だ?

見たことない顔だけど、教師だろうか。トイレの入口には若い青年がいた。

「もうホームルーム始まるよ」

「あっ、ハイ、すいません!」

一瞬の不意をつき、A君は俺を残し猛ダッシュでトイレから走り去った。なんて奴だ。切り替え早ッ。

「すいません、じゃあ僕も!」

顔覚えられる前に行かないと。愛想笑いを浮かべながら、彼の横を通り抜けようとした。

「あ、ちょっと待って」

ところが、それは叶わなかった。

静止の声に従ったわけじゃない。

大きな音が目の前で響いてビックリした為だ。

逃げたくても逃げられない。俺の顔面スレスレで彼は壁に手をつき、見事に通せんぼをしていた。

「さっきの彼と何の話してたの。……崔本一架君」

「えっ」

フルネームで呼ばれて、今度は恐怖ではなく驚きに支配される。後ろに一歩引き、相対する青年を見上げた。

「何で知ってるんだって顔だな。逆に訊きたいんだけど、俺のこと分からない?」

「……っ?」

彼は、誰から見ても整った顔をしている。俺ほどではないにしろ、イケメンだ。

言われてみれば……見覚えがあるような……。 

だから真剣に凝視するけど、やっぱり分からなかった。

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters

Comments

No Comments
50 Chapters
少年の秘密
自分の性癖が異常なものだと分かっている。これはどんなに隠しても醜く滲み出てしまうものなんだ。『一架。……もしかして見てた?』遠い記憶。あの人の声が反響している。『俺達が“してる”ところを……』本当は思い出したくない。“あれ”は消し去りたい記憶だ。まだ小学生のとき、他人がセックスしている姿を目撃した。それを機に自分の異常な性癖に気付てしまった。驚きや嫌悪より興奮の方が遥かに勝っている。俺は他人のセックスを視ることでしか欲情できない人間だった。◇崔本一架《さいもといちか》、十七歳。私立の男子校に通う高校二年生。中学まで子役として芸能事務所に所属していたが、今は引退してごく普通の高校生活を送っている。「一架、おはよ!」「おはよう」学校では基本真面目な優等生を演じ、大人しく過ごしている。学校は好きでも嫌いでもない。常に成績上位の為テスト前は必ずクラスメイトに引っ張りだこだ。頼りにされるのは素直に気持ちが良い。だから断ることもせず、優しい微笑みを貼り付けている。「ごめん崔本、この問題がどうしても分かんないんだけど……」「どれどれ……あぁ、これはここをこうして……」教えて、それで喜んでくれるならいくらでも力になってやりたいぐらいだ。「なるほど、サンキュー! やっぱお前すげーな!」一生懸命なクラスメイトといると癒される、というか心が洗われる。俺とは違って本当に純粋なんだな、と思う。「勉強もスポーツもできて、クラス一面倒見がいい! 一架は最強のイケメンだよ!」「ははっ、褒めすぎだよ。決して間違いではないけど」そうそう、俺が子役のオーディションに合格したのも、この容姿と全くの無関係とは言いきれない。俺はどうも一部の人を惹き付けてしまう美貌の持ち主らしい。「はぁ、イケメンで勉強もできるなんて不公平だよな。外でお前のことガン見してる女子とか見つけると、マジで羨ましいわ~」「褒めすぎだね、間違いではないけど。……でも俺は俺で不安な時があるんだ。俺のルックスに嫉妬した男子諸君が襲って来ないかって」「大丈夫だよ。お前ほど完璧な奴だと逆に手が出せないって」「そうかな……。それならいいんだけど……」学校に限らず、俺はどこを歩いても見られている。それを自信過剰と呼ぶ友達もいれば、自意識過剰と呼ぶ友達もいる。「あ、崔本だ。今日も爽やかだな
last updateLast Updated : 2025-09-09
Read more
#1
でもこんな知り合いいただろうか。これほどの顔立ちなら覚えているはずだ。頭が働かず沈黙が流れてしまう。気まずいあまり増々混乱していると、青年は屈み、一架の耳元で囁いた。「初めて生で見たセックスは、誰だか覚えてる?」「えっ!?」今、なんて……。慌てて顔を上げると、彼は優しい顔で笑った。この笑顔。思い出した。嘘だろ……。「つ……継美さん……?」「良かった、ちゃーんと覚えてるじゃんか。あんなに子どもだったのになぁ」驚きのあまり口が塞がらない一架に、彼は可笑しそうに笑い、腕を組んだ。「でも中身は変わってないな。まだ懲りずに人のセックス見て興奮してんのか」「あ、いやっ、そういうわけじゃ……!」噛みまくったが、全身全霊否定した。と言っても挙動不審過ぎて怪しさ倍増だろう。「ていうか何なんですか、何でここに……!」「何でだと思う? 当たったらキスしてやる」「結構です!!」全力で拒絶すると、ちょうど朝礼を告げるチャイムが校内に流れた。「おっと、いい加減遅刻になるぞ。頑張って教室まで走るんだな。俺は後から行くから」それって……。何か尋常じゃなく嫌な予感がする。外れてほしいけど、十中八九当たってる気がする、嫌な予感。青ざめてる一架に彼はにっこり笑いかける。頭にぽんぽんと手を置き、切れ長の目を開いた。「これからよろしく、一架。俺、今日からお前のクラスの担任になったから」黒板に、チョークの綺麗な白文字が書かれた。「梼原継美《ゆすはらつぐみ》。担当は英語だ。もう二年も残り少しだけど宜しく!」「先生って何歳?」「二十五」「お~、若い」教室はかつてなく活気に溢れている。だけどこんなに仲間はずれな気分はない。「中途半端な時期に悪いね。本当は来年から一年の教室を受け持つ予定だったんだけど、前田先生が脚を骨折して入院されたから」前田というのは俺達の担任。陽気なおばさん先生だけど、この間の休みに大好きな登山で脚を骨折して帰って来た。ホームルームが終わった後も、彼の周りから生徒が散ることはなかった。むしろ彼に近寄っていないのは俺だけという最悪な構図。何だこのアウェイ感……。「そういや、先生の名前聞き覚えあんだよね。何でだろ」ふと、誰かがそんな事を言った。「あ! 思い出した、昔何かのドラマに出てた子役の名前だ!」「……まぁ、ちょっとだけね」
last updateLast Updated : 2025-09-23
Read more
#2
終始気が気じゃなかったものの、無事に最後の授業を終えた。案の定、放課後は梼原継美先生と仲良くなろう会が開催している。今日はもう疲れたから帰ろう……。バラされたらどうしようとか考えるのもめんどくさくなってきた。まぁそこまで外道じゃないと信じ、気づかれないよう彼らの前を通り過ぎようとする。しかしばっちり見透かされてたらしく、即座に名前を呼ばれた。「」あ、ちょっと待って、崔本。時間あったら久しぶりに少し話さないか?」「はい!?」やはり、相手はつっ……梼原さんだった。ニコニコしやがって、間違いなく良くないことを企んでる。「おー、そうしなよ、一架も先生と話したいこと色々あるだろ?」ないよ。クラスメイトの気遣いが心苦しいというか、今はむしろありがた迷惑だ。「すいません、今日は用事あるんで帰ります」反応を待たずにそう言い捨てて、教室を出た。はぁー……。またしてもドッと疲れが押し寄せてきた。無性に喉が渇く。帰る前に売店に寄って、ジュースを一気飲みした。暑い。全身が火照って熱い。あの人を見てると、嫌でも後ろ暗いことを想像して、身体が疼いてしまう。俺が他人のセックスに興奮するキッカケになった人……だから。「一架!」ボーッとしてたが、名前を呼ばれてビクッとする。声の方を振り返ると、今朝俺をオトリに逃げた少年A君がいた。彼は眉を下げ、申し訳なさそうに側へ寄ってきた。「ごめんね。朝いたの、新任の先生だったんだね。大丈夫だった?」「あはは、大丈夫だよ。心配してくれてたんだ?」「うん、悪いことしちゃったなって思って……」特に行き先もないけど、二人で廊下を歩き出した。たった今知ったが、A君は赤沢と言うらしい。「ねぇ、一架は何で男同士のセックスが見たいの?」「何でそんなこと訊くの?」「えっ……だって、こんなこと言うのはアレだけど、発想が普通じゃないし……」人の裸を見せろとか言うお前も普通の発想してないけどな。心の中でのみ毒づいたが、赤沢の言うことはもっともだ。けど、それは俺が変態だから。変態に生まれたから、変態として追い求めている。理由なんてそれだけで充分だ。「男同士のセックスが、この世に存在するからだよ。そこにあるから見るんだ。そもそも存在しなかったら見られないだろ?」「それはそうだけど……まぁ、そうだね。……え? やっぱよく分
last updateLast Updated : 2025-09-24
Read more
災難
それは今から六年前。うわ……!!当時十一歳だった俺は、ドラマ撮影の為スタジオにいた。本番前に緊張からトイレへ行こうとして、そこで偶然見てしまった。『んっ……あっ、あっ……!』見覚えのある人が、知らない男性と互いの性器を擦り合っている姿を。性の知識なんてほとんどないけど、彼らが“普通”とは違うことは瞬時に理解できた。だけど目を離がせない。むしろすごく興味津々で、釘付けになった。好奇心に突き動かされ、最後まで彼らの行為を盗み見た。それでバレたんだ。混乱の渦中にいたせいか、何で見つかったのかは忘れたけど。そんなことより、俺を支配していたのは生まれて初めて抱く強過ぎる願望。奇異な目を向けられてもまるで気にせず、青年に頼んだ。もっと今の行為を見せてほしい。……と。「どうした? 気持ち良すぎて飛んだか?」「やっ!?」極限まで反り返った先端を爪で引っ掻かれ、今度は痛みに呻く。「ん……っ!」どれほどの時間が経っただろう。まだ梼原に主導権を握られたまま、身体を逸らして天井を睨んでいる。背中を預けながら、呼吸を整えることに集中した。「他人のセックスに興奮したって、直接かまってやれば感じるに決まってんだろ。不感症じゃないならな」とか言ってるけど、誰もかまってくれなんて言ってない。むしろ近寄らないでほしいのに。「……っ!」けどもう本当に限界だ。一瞬でも力んだらイきそう。「やっ……人が来たら……見られちゃう……っ」「心配すんな。もう終わりだろ」終わり?意味が分からず聞き返そうとする。だが一層激しく擦られ、絶頂に達した。「あっ……! ひ、あ……っ」白い飛沫が彼の掌の中に放たれる。その瞬間だけは恥も外聞もなく、守るべき理性は消え去った。膝の力が抜け、床に崩れ落ちそうになったところを支えられて壁に押し付けられる。「気持ち良かった? ……って、訊くまでもない顔だな」彼は本当に意地の悪い笑顔を浮かべ、満足そうに顔を覗かせた。「ところで眼鏡いらないだろ、お前」頭がボーッとしてる間に伊達メガネを外される。彼は俺の眼鏡をポケットに仕舞い、出口へすたすた向かっていった。「ち、ちょっと! 返せ!」「お前から話しかけてくれたら返すよ。それより早く綺麗にして、服ちゃんと着な。そのまま出てきたらさすがに庇えないぞ」それだけ言い残すと、なんと本当に行
last updateLast Updated : 2025-09-25
Read more
#1
屈辱。なんて便利な言葉だ。継美さんに再会してからの全ては、この一言に集約されている。だが心情はどうであれ、現実は残酷だ。「崔本、お前図書委員だろ。悪いけどこの本、図書室に運ぶの手伝ってくれないか」放課後、やっと帰れると思って鞄を持った直後に怨敵の継美さんに話しかけられた。いや、名前を呼ぶのも腹立たしい。梼原だ。梼原のドS野郎だ。「わっ、すごいたくさんありますねー。これ一架に持てんのかな?」こいつめっちゃ細いし、と近くに居たクラスメイトが一架の肩に手を乗せて笑った。それを聞き、頼んだ継美も眉を下げる。「あぁ、確かに。崔本にはちょっときついかな?」彼の、心配してますみたいな困り顔が本気でうざい。馬鹿にしやがって。けどムカついてるのを悟られないよう、本が大量に入ったダンボール箱を持ち上げた。「図書室で良いんですね?」「おぉ、ありがとう。俺もひとつ持っていくから」彼が残りの一箱を持ち、二人で教室を出た。……あれ!?廊下を歩きながら思ったことがある。二人きりになっちゃった!手伝うって言った時点でこうなることは分かるはずなのに、馬鹿過ぎる。気まずさで死ねそうだけど、特に会話もなく図書室に着いた。部屋の中には誰もいなかった。「そこに置いてくれ。先生達が必要で借りてた資料だからカードとか確認しなくていいぞ」とりあえず言う通りの場所に置き、一息ついた。やっぱり結構重くて、両手をブラブラと揺らす。「重かった?」「別に」一架がぶっきらぼうに言い放つと、継美はテーブルに寄りかかって苦笑した。「素直じゃないな。……まぁ、助かったよ。お疲れ様」ポン、と頭の上に手を置かれる。俺達以外誰もいないとはいえ、それなりに慌てて手を振り払った。「触らないで」「えぇ? 昨日はすごいところ触らせてくれたくせに」「無理やりだろ! セクハラ教師!」思ったより大きな声で叫んでしまい、口元を手で覆う。「何気にしてんだ? 誰かに聞かれた方がお前は都合が良いんだろ」「ほんと何がしたいわけ……」彼の考えてることが本気で分からなくて、若干恐怖心が募る。怖々問い掛けると、彼は顎に手を当てて瞼を伏せた。「したい事ねぇ……」待ってみるも明瞭な答えは返ってこない。そのまま、彼は本の片付けに取り掛かってしまった。「継美さんて、教師になりたかったから役者の道は進まな
last updateLast Updated : 2025-09-26
Read more
#2
さらっと、かなり困ることを言われた。「もう絶対しない! 気持ち悪いし」猛反発すると、継美は笑いながら襟元を正した。「一架はやっぱメガネかけてない方がいいな」「……っ」本当に、この人は何がしたいんだろう。俺のカラダ目当て? いや、そこまでは腐ってないと信じたい。かといって俺に気があるなんて可能性はもっとないな。ってことは俺に怨みがある……?それなら納得がいく。俺のことが好きではない、キス魔でもないっていうなら……答えは簡単に導き出せる。「継美さんて、もしかして俺に嫉妬してるの?」「うん?」意味が分からなそうに眉を寄せる彼を一旦スルーし、ドアの鍵をかけた。今さら過ぎるが、こんなディープな話を誰かに聞かれたらまずい。「ここに来れば好きなだけ男子高校生を食えると思ったんだろ。ところがクラスの皆はイケメンすぎる俺がいることで継美さんにいつまでも靡かない可能性がある。だから邪魔な俺に排除しようとしてるとか」「は~……。その想像力をもっと役立つことに使えたらいいのにな」継美は可哀想な人を見る目で一架を一瞥した。しかし気に留めた様子もなく、一架の横を通り過ぎてドアへ向かう。「でも思ったより元気そうで安心したよ。昨日のことが屈辱過ぎて、今日学校を休まないかと心配してたぐらいなんだ。……それじゃ手伝いご苦労様。寄り道しないで帰れよ」「待った。まだ話は終わってない!」鍵をあけて颯爽と出ていこうとする彼を慌てて止めた。「俺に嫉妬するのは仕方ないとしても、気持ち悪いちょっかい出してくんのはやめてくれる?」「俺がお前に嫉妬してる方向で話が進んでるのか……」彼は露骨に困り果てた表情を浮かべ、一回あけた鍵をまたかけた。「あのな、俺は別に嫉妬なんて」 「あ、良いこと思いついた! やっぱ何人か紹介するよ。継美さんほどの顔のランクじゃないかもしれないけど、間違いなく皆イケメンだし。それなら鬱憤も」晴れる。と言おうとしたが、とても言える空気じゃなかった。「前から思ってたけど」継美が、一架の後ろの本棚に勢いよく手をついたからだ。心臓が止まりそうなほど凄まじい音だった。一瞬だが、この壁一列の棚が揺れた気がする。前髪から覗く、冷徹な瞳と目が合い、一架はようやく自身の発言を後悔した。「お前はほんとに俺を怒らせるのが上手いな?」彼の口元は笑ってる。けど確
last updateLast Updated : 2025-09-27
Read more
#3
正直に言うと、怖い。他人の手から与えられる、自分を忘れてしまうほどの快感に対応できない。「いっ……ああっ!」しかし身体は本当に素直だ。昨日を凌ぐ強い快感に打ち震える。彼の掌に包まれた部分は、溢れ出る透明な液体でぐちょぐちょにとけていた。馬鹿みたいな話、まるで天国にいるみたいだ。自分の身体だと思えない。手コキだけで何故これほど陥落してるのか理解不能。このままじゃもっと馬鹿にされるだろうな……。だけど、いやらしい音も、彼の言葉ももう聞こえなかった。「……っ!」快感の代わりに凄まじい倦怠感に襲われ、意識は音もなく閉じた。小さい頃から気付いていた。自分は周りと違う。子どもらしさがない。“らしさ”っていうのも上手く言い表せないけど、皆が喜ぶものに心が踊らない。流行りのゲームやアニメとか、テーマパークに行っても心にブレーキがかかってる。浮かれきれない。主体的になりたいんじゃない。俺は常に外野で、中心で踊り狂ってる奴らを眺めることが好き。舞台も、ゲームも、セックスも。おかしいけど、でもやめられない。むしろそんな不安を押し殺すように暴走してく自分が怖かった。快感を追い求め、他人の快感に乗っかる俺は一体何なんだろう。一体、誰とセックスしてるんだろう。「……ん」頭がガンガン鳴って、目が覚めた。知らないにおい、知らないベッドの上で。おかしいな。図書室に居たはずだけど、保健室にいる。「おっ、起きたか」「うわ!」隣を見ると、継美さんが椅子に座って首を傾げた。今まで寝てたみたいだ。夢じゃなかったのは残念だけど……。「何で俺……?」上体を起こして頭を抱える。痛いのと、少し息苦しい。不思議に思っていると、不意に額を触られた。「お前、あの後ぐーぐー眠ったんだよ。でも今はちょっと熱もあるな……」「え」慌ててシーツをめくる。下はしっかりズボンを履き、ベルトも留められてあった。それには安心したが、「さ、最悪……あんなカッコで……!」「心配すんな、ちゃんと綺麗に拭いといてやったから」「誰のせいだよ!」彼の白々しさに驚いてツッコむも、鋭い目つきで睨まれて後ずさる。「おっ、俺のせいです」いや違う。絶対違うけど、悪に屈してしまう自分が憎い。「……多分相当に感じてたんだと思うぞ。今まで抱いてきた中で、あんな気持ちよさそうな顔見んの初めてだったなぁ
last updateLast Updated : 2025-09-28
Read more
#4
「あっ、一架おはよ。何か眠そうだね」「おはよう……うん、寝不足……」重い。心も体も。翌、朝八時三十分。一架は上履きに履き替えて自身の教室へ向かった。その内側は黒く淀んだ海が荒波を立てている。もうしばらく学校に行きたくない。と思ってたのは昨日の朝のこと。そして“今日”はさらに……ああ……。「お、良かった。休まずにちゃんと来たな」「げっ! 継美さん……っ」それに加え、タイミングの悪さに現実を呪う。どうせ教室で会うというのに、その前の廊下で継美と顔を合わせてしまった。気まずい……っ。来た道をスッと戻りたい衝動に駆られるが、そんな如何にも避けてますみたいに思われるのも癪だった。諦めて、さり気なく横を通り過ぎようと決める。「おはようございます。じゃ、お先」「あ、ちょっと待った。熱は下がったか?」前を阻むように、冷たい掌が額に当たった。「……っ!」周りには他の生徒が大勢いる。見られたくなくて何も考えずに振りほどいてしまった。「大丈夫だって、昨日も言っただろ!」口調まで強くなったことに驚いた。心臓がばくばくと鳴っている。心配してもらったこと自体は別に怒ってないのに、何でこんな当たり方をしたのか自分でも分からなかった。「そっか……とりあえず、大丈夫なら良い。今日は無理すんなよ」しかもそういう時に限って彼の反応が控えめ。何だこの罪悪感。モヤモヤが止まらない。「一架、どうした?」さっさと通り過ぎようと思ってたのに、ついその場で立ち止まってしまった。「いや、俺……」でも、言わなきゃ。このまま別れたらさらにモヤモヤするに決まってる。何より、悲しそうに映る彼の顔が耐えられない。とにかく大丈夫だって伝えて、安心してもらおう。それぐらいなら言える気がする。「あの……俺はもう元気だし、大丈夫だよ。もうすっかり誰かを視姦したい気持ちに駆られてるぐらいだし」「は?」継美さんのとても微妙な反応を見て、頭が真っ白になった。とても大きな声で叫んだから、恐らく廊下を歩く生徒全員に聞こえた。ような……。やっちまった……!今さら後悔しても遅いけど、やっぱり最悪な朝だった。失言じゃ済まない。シカンって他に何か良い意味あったっけ。言い訳に使えそうな言葉を考えなきゃ。ぐるぐる考えていると、彼は困惑しつつも口元を押さえ、落ち着いた口調で返した。「そ……
last updateLast Updated : 2025-09-29
Read more
有名人
「一架っ、頼む!! 今日の掃除当番変わってくれ!!」「え」その日の放課後。やっと帰れると安心していた一架の元に、クラスメイトのひとりが泣きそうな顔で立ち塞がった。「実はバイト入ってたの忘れててさぁ……。前も遅刻したから、今日は死んでも遅刻できないんだ。店長に殺されるから……この通り! 一生のお願い!」正直、もう疲れたから早く帰りたい。でもこんな風に頼まれたら断りづらいし、彼の悲壮な顔を見てるのもいたたまれない。く……。「分かった、代わりにやっとくよ。どこだっけ?」「一架ぁ……! 裏庭だよ、本当恩に着る! 明日何か奢るから、サンキューな!」彼は目に涙を浮かべながら走り去って行った。それは良いんだけど、裏庭か。よりによって一番遠くて面倒な場所だ。「しょうがないか……」さっさと終わらせて帰ろう。腰を浮かせ、教室を後にした。憂鬱なまま来たけど、思ったより裏庭は綺麗だった。いつもだったらジュースの缶が捨てられたりしてるんだけど、今日はついてる。これなら大丈夫だな。一通り箒で掃除して、自分の教室の方へ戻った。その道中、知らない生徒に声を掛けられた。「あの。崔本一架さんですよね?」「え? ……そうだけど」振り返った先に立っていたのは、眼鏡をかけた大人しそうな少年だった。格好や雰囲気だけなら自分と似ている。しかし一体何の用かと思ってると、彼は口を開き、小さな声で話した。「僕、一年の高城柚《たかじょうゆず》っていいます。その、いきなりすいません。ちょっと崔本さんに訊きたいことがあって……」小柄だとは思ったが、一年か。可愛い名前と見た目、オドオドした態度は男からモテる気がした。「大丈夫だよ。何が訊きたいの?」自分の中では最高の笑顔で問いかけた。自分を最も魅力的に魅せる笑顔。子役時代に身につけた、最初の武器でもある。「あ……ありがとうございます! えっと」すると予想どおり、彼は緊張を解いて明るい顔を浮かべた。そこまでは予想どおりだったのだが。「崔本さんって、同性愛者ですよね?」「えっ?」知らない人間に話しかけられることに慣れてる一架だったが、初対面でそんな質問を投げ掛けられたのは生まれて初めてだった。意表を突かれて、少しの間呆然としてしまった。何だこの子……!学校で、知らない人間にそんなことを訊けるのは相当な馬鹿か無神経か、────
last updateLast Updated : 2025-09-30
Read more
#1
高城柚。人間性が最低だということは確信したが、彼の本当の目的は分からない。「あぁもう、ちょっといじめただけでかなり満足しちゃった。先輩ってすごいなー。すごい魔力を持ってるよ」まず頭がおかしい。人をこれだけ好き勝手しといて、ふざけるにも程がある。こちらの反応を楽しむ為だけにやってるようだ。「ねぇ、もっと虐めてほしい?」「ひっ……あ、やだ……っ」柚は自身の眼鏡を外し、一架の耳元で囁く。戦慄して青ざめる一架にとは反対に、彼は至極落着していた。体勢を整え、膝についた埃をはたき落とす。「そっか。わかった。俺も疲れちゃったから、続きはまた今度しよ」また……今度!?「も、もういいってば!」「えー、せっかく仲良くなったんだから、また楽しい子としようよ。俺、先輩のすごい秘密もたくさん知ってんだよ」「な、何の話だよ……?」身構え、怖々尋ねる一架に、柚は口角を上げた。「いつも西口のホテルで乱交パーティ開いてるでしょ? あれ、学校に知られたらやばいんじゃない?」絶句した。何故それを知っているのか訊きたかったが、手が震えそうだった為見えないよう後ろに回した。そして深く息をつき、目の前の柚を強く睨み上げる。「……脅す気?」取り引きでもするつもりだろうか。逸る鼓動を抑えて待っていると、彼は嬉しそうに顔を近付けてきた。「そんな、脅すなんて。俺は先輩のことが大好きだよ? 可愛くって綺麗。そんな先輩が俺の言うこと聴いてくれたら何て幸せなんだろ……とは思うけど」訳、「つまり脅したい」。 彼はそう言ってる。危険だ。人のこと言えないけど、こいつは危険すぎる。話が通じないタイプが一番厄介だ。「じゃあ先輩、またエッチなことして遊んでくださいね。あ、学校が嫌なら今度はホテルでもいいし!」柚は眼鏡をかけ、乱れた服を整えるとドアの方へ向かった。「俺の父親、あのホテルの管理者だから。じゃあね、先輩」「……は!?」いやいや、ちょっと待て。どういう事か問い詰めようとしたけど、彼は颯爽と教室から出て行ってしまい、その先は訊くことができなかった。それに、自分の今の格好は酷すぎる。下着もズボンも膝より下に落ちて、いやらしい体液を滴らせていた。うっわ……!改めて恥ずかしくなり、その場に蹲った。こんなところ、死んでも人に見られるわけにはいかない。急いでハンカチで拭いて、後
last updateLast Updated : 2025-10-01
Read more
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status