朝の報道部はいつものように騒がしかった。「おはようございます……」出社した沙月が報道部に入った瞬間、部署にいた局員が一斉に沙月を振り返り……慌てたように視線をそらす。(……え?)周囲からの視線に人一倍敏感な沙月はすぐに異変を感じながら、自分の席に着いた。(気のせい……? 何だかいつもと雰囲気が違うように感じるけれど……?)澪が報道部にいたあの頃のように足を引っかけられることも、機材室に閉じ込められることも今は無くなっていた。澪の命令により、沙月に嫌がらせをしていた局員たちは全員が司の介入で左遷や、別部署に飛ばされたからだ。それ以来、沙月への嫌がらせはピタリと止んだ。そして誰もが沙月の陰にいる司の存在に怯え、関わらないように距離を置いていた。相変わらず報道部での沙月は孤立していたものの、以前に比べて格段に働きやすい職場になっていたはずなのに……。PCを立ち上げながら、沙月は周囲を伺う。すると近くにいた女性局員と目が合った。彼女は沙月と挨拶や、仕事上での会話を交わす程度の中ではあった。それなのに今日に限り、彼女は一瞬強張った表情を浮かべると、慌てたように視線をそらせてしまったのだ。(え……? 何? 今の態度は……?)そこへ、男性局員が近くを通りかかった。「おはようございます」沙月が挨拶すると、局員はギョッとした表情を浮かべる。「あ、あぁ……お、おはようございます」そして男性局員は急ぎ足で去って行く。「どうしたのかしら……?」ポツリと呟いたとき、背後から視線を感じて振り向いた。すると局員たちが沙月をじっと見つめている。彼等は沙月が振り向いたことで、まるで蜘蛛の子を散らすように慌てた様子で去って行った。(何……この雰囲気。まさか……また以前のように戻ってしまったの……?)胸騒ぎを感じ、心音がドクドク早まっていく。沙月の脳裏に機材室に閉じ込められたときの苦い記憶が蘇る。(絶対におかしい……まさか、昨日の脅迫文と何か関係があるのかしら……? でもまだ直接何か言われたわけでは無いし……あら?)社内メールに新着メールが届いていることに気付いた。『報道部、局員へ。至急確認を』と記されている。「至急のメール……?」緊張しながら、沙月はフォルダをクリックした――
Last Updated : 2025-12-26 Read more