「遺体で発見って……」「デスク……病気だったの……?」ざわつく報道部の中で、総務課の男性は苦しげに首を振った。「い、いえ……こちらも、あまり詳しくは聞いていないのですが……どうやら井上デスクは、後頭部を強打して亡くなっていたそうで……。遺書のようなものが残されていた、と……。すみません、それ以上は……」深々と頭を下げる男性。その話を聞いた瞬間、空気がさらに凍り付く。「え!? それって……もしかして自殺ってこと?」「でも後頭部を強打って……普通じゃないよね」「自殺じゃそんな亡くなり方、ありえなくないか……?」「ひょっとして殺人……?」「だったら取材に行かないと!」誰かが声を上げ、憶測が憶測を呼び、騒ぎはさらに広がっていく。「もし殺人なら……誰かに恨まれて……?」「そ、そんな……!」次々と飛び交う言葉に、沙月は全身から血の気が引いていくような感覚を覚えた。(そんな……殺人……? デスクが……!?)昨日の光景が脳裏に蘇る。司に呼び出され、青ざめていた井上デスク。そして、霧島がデスクとすれ違いざまに囁いた謎の行動。(まさか……そんな……)呼吸が荒くなり、足元がふらついた。もはや報道部は仕事どころではなく、混乱の渦に飲み込まれている。耐えきれなくなった沙月は、外の空気を吸おうと席を立ち、報道部を出た――その瞬間。ドンッ!「きゃっ……す、すみません……!」「沙月!?」聞き覚えのある声に顔を上げる。そこには、髪を乱し、肩で息をする司が立っていた。額には薄っすら汗が滲んでいる。「え……司……!?」「沙月……ちょっとこっちへ来い!」言うが早いか、司は沙月の腕を掴んだ。その手は強く、震えているようにも感じられる。「ちょ、ちょっと! どこ行くのよ!」沙月の問いに返事もせず、司はまっすぐどこかへ向かって歩いていく。通路にも局員たちが溢れかえり、井上デスクの件で物凄い騒ぎになっていた。(局内が大騒ぎになってるわ……)腕を引かれながら沙月は周囲を見渡して歩いていると、司は不意に足を止めた。そこは会議室で『空き室』となっている。「……ここがいいな」司は小さく呟くと、扉の前でスライド式のサインプレートを乱暴に『使用中』へと滑らせ、そのまま中へ押し込むように入った。「ちょっと! 勝手に何を……!」「誰にも聞かれたくない
Last Updated : 2026-01-25 Read more