金曜日、18時――仕事から帰宅した沙月は、早速ドレスに着替えた。このドレスは遥と澪に遭遇した時に購入した物――ある意味因縁のドレスでもある 濃紺のマーメイドラインに、胸元のクリスタルが鏡の中で星のように煌めいてる。いつもより濃い目にメイクを施した沙月は鏡の前に立って髪をまとめようとした。その時、玄関の鍵が回る音が聞こえた。「ただいまー……って、え!?」 帰宅した真琴はリビングに入ってきた瞬間、沙月を見て目を見開いた。「お帰りなさい、真琴」笑顔で出迎える沙月。「素敵! 最高よ、沙月! これこそが私の知っているあなたよ! もしかしたら、今夜のパーティーの主役はあなたが主役になるかもしれないわね」真琴は興奮気味に言う。その言葉に沙月は笑い、鏡の中の自分に視線を戻した。 「主役になれるかどうかは分からないけれど……もう逃げないって決めたのよ。もっと強くならなくちゃ」「……そう。分かったわ」真琴は鏡の中の沙月に頷いた……。**** 出掛ける用意が整った沙月は玄関に立っていた。正面には見送る真琴。「それじゃ、パーティーに行ってくるわね」「うん。行ってらっしゃい。あのね、沙月……」「何?」「すごく奇麗よ。朝霧澪よりもずっとね。だから自分に自信を持つのよ」真琴の言葉に沙月は目を見開く。「! ……ありがとう、真琴」「行ってらっしゃい。頑張ってね」「うん、行ってきます」笑顔で頷き手を振ると、月は玄関の扉を開けてエレベーターホールへ向かった――マンションを出ると、既に事前に手配しておいたタクシーが待機しており、沙月の姿に気付いた男性運転手が降りてきた。「天野沙月様ですか?」「はい、そうです」「どうぞ、お乗りください」「ありがとうございます」沙月が乗り込むと、タクシーはすぐに出発した――**** 夜の高層ビル街を走り抜け、ホテルのエントランス前でタクシーが停車した。ドアが開き、降り立つと沙月はホテルに入って行った。その瞬間、エントランスに立っていたフロントマンが、美しい沙月の姿に思わず息を呑む。「……いらっしゃいませ」その声は、わずかに震えている。沙月は軽く会釈をすると、パーティー会場へ向かった。その背中をフロントマンの視線が吸い寄せられていることを意識しながら――エレベーターの扉が開いて乗り込んだ沙月
Terakhir Diperbarui : 2025-10-13 Baca selengkapnya