――13時ビジネススーツに身を包んだ沙月はテレビ局の面接を受ける為、都内にあるビルに到着した。正面入り口には案内板が立っており、面接会場の時刻と場所が記されている。「5階の大会議室ね……」場所を確認すると、沙月は面接会場へ向かった。「……ここね」大会議室の隣は控室になっており、20人ほどのスーツ姿の男女が長テーブルに向かって座っている。沙月も空いている席に座ると、そっと辺りを見渡した。面接に来ていた彼らは全員沙月とほぼ同年代に見えた。全員緊張した面持ちで座っている。誰もが自分の未来を賭けて、ここに来ているのだ。(大丈夫……実績はないけれど、教授たちの言葉を信じるのよ)沙月は自分に言い聞かせる。かつて報道番組の記者になることを志し、X大学を首席で卒業した沙月。それがあの夜……司と衝撃的な一夜を共にしてしまったせいで、全てが駄目になってしまった。結婚のために記者になる夢をあきらめざるを得なかった過去が今になって蘇る。(もう夢を諦めない……自分の手で掴み取るのよ)次々と名前を呼ばれて、一人二人と席を立っていく若者たち。沙月も自分の名前が呼ばれるのを待っていたが、いくら待っても呼ばれる気配がない。(おかしい……皆名簿順で呼ばれている。とっくに呼ばれていいはずなのに……)もうかれこれ1時間近く待たされている。そして、ついに最後の一人が名前を呼ばれて部屋を出て行く。とうとう沙月の名前は呼ばれなかったのだ。(面接の指定時間はとっくに過ぎてる……いくら何でもおかしいわ!)我慢できなくなった沙月は席を立つと廊下に出た。大会議室の前には受付があり、女性が座っている。「あの、すみません。私……天野沙月と申します。本日、面接を受けに来たのですが、一向に名前を呼ばれません。一体どうなっているのでしょうか?」沙月は早口で尋ねた。「天野沙月様ですね。少々お待ちください」女性はPCを確認し……眉を寄せた。「……申し訳ございません。天野沙月様というお名前はリストに載っておりません」その話に沙月の顔は青ざめる。「そ、そんな……確かに本日が面接だと連絡がありました! このメールを見てください!」スマホに入って来た通知メールを受付の女性に見せ、再度電話で確認してもらったが、やはりリストには載っていなかった。それどころか女性の声で「他社に決まった
Terakhir Diperbarui : 2025-09-23 Baca selengkapnya