Semua Bab 冷酷御曹司は逃げた妻を愛してやまない: Bab 11 - Bab 20

45 Bab

2-3 呼ばれない名前 1

――13時ビジネススーツに身を包んだ沙月はテレビ局の面接を受ける為、都内にあるビルに到着した。正面入り口には案内板が立っており、面接会場の時刻と場所が記されている。「5階の大会議室ね……」場所を確認すると、沙月は面接会場へ向かった。「……ここね」大会議室の隣は控室になっており、20人ほどのスーツ姿の男女が長テーブルに向かって座っている。沙月も空いている席に座ると、そっと辺りを見渡した。面接に来ていた彼らは全員沙月とほぼ同年代に見えた。全員緊張した面持ちで座っている。誰もが自分の未来を賭けて、ここに来ているのだ。(大丈夫……実績はないけれど、教授たちの言葉を信じるのよ)沙月は自分に言い聞かせる。かつて報道番組の記者になることを志し、X大学を首席で卒業した沙月。それがあの夜……司と衝撃的な一夜を共にしてしまったせいで、全てが駄目になってしまった。結婚のために記者になる夢をあきらめざるを得なかった過去が今になって蘇る。(もう夢を諦めない……自分の手で掴み取るのよ)次々と名前を呼ばれて、一人二人と席を立っていく若者たち。沙月も自分の名前が呼ばれるのを待っていたが、いくら待っても呼ばれる気配がない。(おかしい……皆名簿順で呼ばれている。とっくに呼ばれていいはずなのに……)もうかれこれ1時間近く待たされている。そして、ついに最後の一人が名前を呼ばれて部屋を出て行く。とうとう沙月の名前は呼ばれなかったのだ。(面接の指定時間はとっくに過ぎてる……いくら何でもおかしいわ!)我慢できなくなった沙月は席を立つと廊下に出た。大会議室の前には受付があり、女性が座っている。「あの、すみません。私……天野沙月と申します。本日、面接を受けに来たのですが、一向に名前を呼ばれません。一体どうなっているのでしょうか?」沙月は早口で尋ねた。「天野沙月様ですね。少々お待ちください」女性はPCを確認し……眉を寄せた。「……申し訳ございません。天野沙月様というお名前はリストに載っておりません」その話に沙月の顔は青ざめる。「そ、そんな……確かに本日が面接だと連絡がありました! このメールを見てください!」スマホに入って来た通知メールを受付の女性に見せ、再度電話で確認してもらったが、やはりリストには載っていなかった。それどころか女性の声で「他社に決まった
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-23
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2-4 呼ばれない名前 2

「あの、失礼します。少しだけ、お時間をいただけませんか? 私、この度御社に入社したくて面接を受けに来たのですが、何かの手違いか受付が取り消されてしまっていたのです! でも、報道に関しての熱意は人一倍あると自負しています! お願いです! どうか私にチャンスをください!」彼らは足を止める。その中の一人の人物を沙月は知っていた。彼は業界でも名の知れた人物で、厳格なことで有名だった。その鋭い目が、沙月を値踏みするように見つめる。「最近三か月の国内外ニュースのトレンドを分析し、次に起こり得る出来事を予測しました。そしてそれに基づく報道プランを提案します。もしチャンスをいただけるなら、インターンからでも構いません。苦労も挑戦も恐れません。失望させないと誓います!」沙月の声には、覚悟が宿っていた。面接官は眉をひそめ、沙月を見つめる。「ほぅ……まだ若いのにこれほどの胆力があり、しかもここまで入念な準備をしてきたとは驚きだ。続けてみたまえ」その一言に、沙月の胸が高鳴った。「はい! それでは私の分析結果を聞いて下さい!」沙月は高揚しながら、饒舌に語りだした。弁論は得意中の得意、学生時代教授からは「君の言葉には力がある」と言われたほどだ。周りの雰囲気が徐々に変わり始めていた。受付にいた女性も、沙月を追い払おうとした男性も茫然と沙月を見つめている。面接を受けた志望者たちも騒めき始めた。しかし、弁論に夢中になっている沙月は自分が注目されていることに気づいていない。けれど……確実に彼女の存在は確かに誰かの目に留まり始めていた。そしてその様子を物陰から見つめる一人の人物。「そ、そんな……折角うまくやれたと思ったのに、かえって目立たせてしまうなんて……どうしよう……これではあの方にまた怒られてしまう……」その背中は小刻みに震えていた――****――その夜「「カンパーイ!!」」真琴の部屋で、沙月と真琴は楽しそうにグラスを鳴らした。「おめでとう、沙月! ついに憧れだった記者への第一歩を踏み出したわけね?」ワインを飲みながら真琴が嬉しそうに沙月を見つめる。「ええ、そうなの。これも真琴のおかげよ」沙月はグラスを回した。「どうして私のお陰なの?」「だって真琴が面接の話を持ち掛けてくれたからじゃない。本当に感謝しているわ」「何言ってるの、私はきっかけ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-24
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2-5 鉢合わせ 1

――翌朝10時。真琴のマンションのキッチンに、コーヒーの香りが漂っている。沙月はスマホを手に取り、メールを確認していた。『正式採用通知:報道部編集補佐としての配属決定』『歓迎パーティーのご案内:今週金曜19時より』「フフ……」沙月の顔に笑みが浮かぶ。「……正式に決まったんだ。いよいよ長年の夢だった記者として働くことが出来るのね」採用通知が届いたことを一刻も早く真琴に報告したかった沙月はすぐにメッセージを送った。『正式に採用通知が届いたよ。パーティーもあるみたい』するとすぐに真琴から着信が入ってきた。『もしもし? 採用通知届いたのね!?』通話口から真琴の興奮した声が聞こえてくる。「うん、そうだけど……ねぇ、電話しても平気なの? 仕事中じゃなかったの?」『今、顧客のところに向かってる途中だから平気よ。改めて言わせて。おめでとう、沙月!』「ありがとう……でも、私ドレスが無いの。ねぇ、真琴。パーティー用の服、何か貸してもらえない? 古いので構わないから」すると通話口から真琴の驚いた声が聞こえてきた。『え? 何を言ってるのよ。せっかく新しい門出を祝うパーティーなのよ? ここはドレスを新調するべきよ。早速今夜新しいのを買いに行きましょう。ちょうど私もスーツを新調しいと思っていたところだったの。就職が決まったお祝いに私にドレスをプレゼントさせてよ!』 まさかの申し出に慌てる沙月。「ええっ!? だ、だめよ! いくら何でもそんなこと……悪いわよ」『いいから、いいから。私を誰だと思ってるの? これでも若手弁護士として、世間では少し有名なんだから。こういう時はね、素直に好意を受け取るものよ?』真琴が有能な弁護士で高給取りなのは、このタワーマンションを見ればよく分かる。「……うん。ありがとう、真琴。それじゃお言葉に甘えさせてもらうね。でも、いつかこの恩は必ず返すから」「アハハハ……沙月ったら何言ってるの。おおげさね、それじゃ待ち合わせ場所だけど……」その後、2人は待ち合わせの場所と時刻を決めると通話を終えた。「……あら?」沙月は、ふと画面に表示された通知に目を留めた。【天野司より振込:1000万円】「……!」添えられたメッセージを見て、思わず息をのむ。『一応、天野家の妻だろう? 貧相な格好でパーティーに出席するな。天野家からの“
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-25
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2-6 鉢合わせ 2

 就職先が決まったことは誰にも話していないはずだった。真琴以外には。それなのに司はまるで全てを見てきたかのように、タイミングを合わせて金を送ってきた。その事実が、沙月を少しだけ不安な気持ちにさせた――****――18時。都内の高級ショッピングモールに沙月と真琴の姿があった。二人は今週行われるテレビ局のパーティーに向けてドレスを選びに来ていたのだ。「ねぇ、これなんかどう? 沙月に似合いそうよ」真琴が手に取ったのは、紺青色のマーメイドラインのドレス。胸元には細かなクリスタルが散りばめられ、光を受けて夜空の星のようにきらめいている。優雅に揺れる裾は見る者の目を引く魅力的な輝きを放っていた。「……すごい。とても素敵なドレスね。でも……とてもじゃないけど私には着こなせそうにないわ」「そんなことないって。沙月は美人なんだから、もっと自信を持っていいのよ?」そのとき。「これは朝霧様、お越しいただき、誠にありがとうございます。我らスタッフ一同、朝霧様のご来店を心よりお待ちいたしておりました。お預かりのドレスのお直しは完了しております」店員のこれ見よがしに媚びるような声が店内に響き渡った。沙月は思わず振り返り……驚きで目を見開いた。現れたのは、朝霧澪。そして隣には白石遥――沙月の義妹の姿があった。遥は幼い頃から沙月の物を奪い続けてきた因縁の存在でもある。「……!」沙月の背筋が凍る。(ど、どうして澪さんと遥が……?)すると澪は驚くことも無く笑顔を浮かべ、遥は挑発的な視線を沙月に向けたその様子はまるで初めから沙月の存在を認知していたかのようだった。「まぁ……誰かと思えば偶然ね。お姉ちゃんも、こんな場所に来るんだ。子供の頃から私のお古ばかり着てたのに、今は自分で服を選べる身分になったのね。随分偉くなったものじゃない」「……っ」沙月の身体が硬直する。そこへ澪が口を挟んできた。「だめよ、遥ちゃん、そんなこと言ったらいけないわ。沙月さんは、ただ店の前を通りかかっただけかもしれないじゃない?」「そうね。澪さんの言う通りかも。だってお姉ちゃんてば、小さい頃から私のいらなくなった服ばかり着てたもの。それがすっかり癖になって、今更自分で服を買う気になんかならないわよねぇ?」遥はクスクス笑いながら、軽蔑の眼差しをむけてくる。「……」沙月は動悸が
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-26
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2-7 鉢合わせ 3

「……私なら大丈夫だから」沙月の言葉に、遥はさらに調子に乗る。「澪さんから聞いたわよ……司さんと離婚するんだってね? でも仕方ないわよね。だってこの二年間、夫婦関係は最悪だったんでしょう? おまけに子どもすら産めない身体になってしまったのだから、捨てられても当然よね」沙月は遥をじっと見つめ……告げた。「残念だったわね。離婚を決めたのは私よ。もう、彼は私にとって必要ない人だから」「……は?」遥は目を見開き、信じられないというように沙月を見つめた。その瞳には驚きと、次第に滲み出る侮蔑の色が混ざっている。「馬鹿じゃないの……捨てられたのはあんたの方でしょ? 何を強がってるのよ」「別に強がってはいないけど? だって、本当のことだもの」涼しい顔で答える沙月。すると徐々に遥が苛立ってくる。「嘘つくんじゃないわよ。司さんはねぇ、最初からあんたなんて眼中になかったの。愛してるのは澪さんだけ。あんたはその澪さんから、汚い手を使って司さんを奪っただけじゃない」「別に奪ってはいないわ。だって結婚を申し出てきたのは天野家の方なのだから」澪の眉がピクリと動き、ついに遥の怒りが爆発した。「ふざけるんじゃないわよ! そもそも天野家から結婚の申し出をしなけらばならない状況を作り上げたのは、沙月! あんたの方でしょう!? それにねぇ、子供も産めない身体になったあんたには、もう何の価値もないのよ! そんな女、誰も欲しがらないんだからね!」子供も産めない……その言葉は沙月の心を傷つけたが、一歩も引かずに冷静に言い返した。「そう。でも、その価値を決めるのはあなたじゃないわ」「な……何よそれ!」遥は顔を真っ赤にして叫んだ。その声には、驚きと怒り、そして沙月への根深い嫉妬が混ざっていた。「いいのよ、遥さん」そこへ澪が一歩前に出てきた。「澪さん……でも……!」「大丈夫、私が話をつけるから」澪は優しい口調で遥に声をかけ……次に鋭い眼差しで沙月を睨みつけてた。「いい気になるんじゃないわよ。今に見ていなさい。司も天野家の婦人の座も、近い将来全て私の物になるわ。今はそうやって強がっているけど……いずれ、あなたは私にひれ伏すことになるのよ!」沙月は一瞬、言葉に詰まるも……。(私は、新社会人として一歩を踏み出すことが出来た……もう、言われっぱなしの自分とは卒業よ)就職
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-27
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2-8 鉢合わせ 4

「だいたい、あなたは高校時代からお金があることをいいことに、常に周りを見下して外見ばかり着飾っていたわよね? あなたなら、このドレスくらい朝飯前でしょ。似合うかどうかは別として」 そして真琴が選んでくれたドレスを手に取り、遥の前に差し出す。「……」遥は怒りで震え、顔を赤らめた。美しい沙月とは違い、地味な顔立ちの遥。そのことがずっとコンプレックスであり、尚更沙月に辛く当たっていたのだ。「どうしたの? 着るの? 着ないの? どっち?」沙月は美しい笑みを浮かべた。「あ、あんたが着ようとしていたドレスをこの私が着るはずないでしょう! だいたい、あんたにだって似合うはずないんだから!」「そんなの着てみなければ分からないでしょう?」沙月は余裕の笑顔でドレスを抱えて試着室へ向かった。「……」去って行く沙月の後姿を見つめる澪は銀白色のロングドレスを手にしていた。元にダイヤモンドが散りばめられたこのドレスは、今年のパリ・ファッションウィークで初披露された「月光」シリーズの一着。世界に三着しか存在しない、幻のイブニングドレスだった。グッと歯を食いしばる澪。(何よ、あの余裕の笑顔……気に入らないわ……私だって負けないんだから……!)沙月に続き、澪も試着室に向かおうとした瞬間、真琴が独り言のように言った。「ほんと、誰かの名前を借りてしか言葉を発せない人って見ていて哀れね。自分の言葉で話せるようになる日は、来るのかしら」「「!」」遥の顔がこわばり、澪は真琴を睨みつけた。「はぁ!? あんた、今何を……!」今度は真琴に怒りをぶつけようとした遥。そこを澪が止めた。「もういいわ、遥さん」「澪さん……だけど……!」「こんな人たちを相手にして、私たちの品位を落とすことも無いわ。そうでしょう?」「品位……」遥は周囲を見渡すと、店員や来店客がこちらをじっと見ていることに気付いた。「え、ええ、そうね。確かにこんな人達相手にしていられないわ。行きましょう」余程バツが悪かったのか、遥と澪はレジへ向かい会計を済ませると逃げるように店を出て行った。「フン、何よ。全く……あの二人、口ほどにもないわね」真琴は遠ざかっていく遥と澪を見つめながら肩をすくめた時。シャッと試着室のカーテンが開かれ、それまで殺伐としていた店内の雰囲気が変わった。試着を終えた沙月が出てき
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-28
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2-9 不穏なメール

――火曜日。朝日が差し込リビングで、沙月はコーヒーを飲みながらスマホの画面を見つめていたが……その目は厳しい。「……」沙月が見ていたのは一通のメール。白石グループの広報部名義の代表アドレスから届いたものだった。件名は「パーティー出席について」。書かれていた内容は、金曜のパーティーを辞退するように。どうしても参加するのであれば白石家の名を汚すような行動は慎むように、と記されていた。「一体これは何なの?」沙月は、なぜ白石家が自分の出席を知っているのか、ふと違和感を覚えた。「……どうでもいいわ。あの人たちが何を言おうと関係ないし」スマホの電源を落とすと、沙月は明日の出社の準備を始めるために席を立った――****――19時過ぎ「え? 何ですって? 白石家からメールが届いた?」仕事から帰宅した真琴は怪訝そうに沙月を見つめた。「そうなのよ。金曜のパーティーに私が出席することについて牽制してきたの」「そのメール、見せてくれる?」「これなんだけど」沙月はスマホを差し出すと、真琴は画面を見て眉をひそめる。「何? このメール、ふざけてるわね。完全に脅しじゃない」真琴はスマホを手に取り、すぐにスクリーンショットを撮った。「証拠として保存しておいて。念のため、私のアドレスにも転送して」「分かった」沙月はスマホを操作し、直ぐに真琴にメール通知の知らせが届いた。「……うん、大丈夫ね。万一白石家にメールを消されても安心よ」「ありがとう、真琴」沙月と真琴は固い信頼関係で結ばれている。言葉以上の信頼が流れていた。沙月は脅しに屈しないし、真琴は沙月を誰にも傷つけさせない。 その後、2人は食事をとりながらテレビを見ていた。この番組は明日から沙月が働く報道局が作っている。そして冒頭で澪の復帰が大々的に取り上げられていた。『朝暮澪、ついに復帰。国民的キャスターとして再び報道の最前線へ』画面いっぱいに映る澪の笑顔は、完璧に演出されたものだった。沙月は黙ってその映像を見つめていたが、真琴は違う。「全く……たかが、一人のキャスターが復帰するだけなのに……異常に報道が偏っているわね。まるで芸能人気取りだわ。何か裏があるんじゃないかしら」真琴は余程気に入らないのか、ぶつぶつ文句を言っている。「……」沙月は何も言わず、ただ画面を見つめていたが……徐
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-29
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2-10 司の質問 1

――数時間前の出来事。高層ビルの一角にある重厚なオフィスで、天野司はじっとPC画面を見つめていた。画面には、先日振り込んだ1000万円の送金履歴が表示されている。「……アレからの連絡は、まだか」低く呟いた声に、傍らのアシスタントが首を振った。「はい。沙月さんからは、今現在電話もメールも一切ありません」「……フン」司は鼻を鳴らし、無言で画面を閉じると椅子の背にもたれた。(金を送った目的は沙月と話す理由が欲しかっただけだったのに……だが、電話どころかメールも寄こさないとは……)沙月が振り込まれた1000万を慰謝料と思って受け取っているとは、司は思ってもいない。(何故、連絡をしてこないんだ? あの家で暮らしていた頃は鬱陶しいくらいに俺に依存していたくせに……)自分自身が沙月を恋しいと思っている気持ちに司は気づいていない。沙月が今、どこに住んでいるのか。そして就職先が決まったことは周囲を調べ上げているので知っている。初めの頃は、すぐにでも沙月が自分に泣きついてくるだろうと考えていた。だが、沙月は一度も司に連絡を寄越さなかったのだ。まるで司の存在を完全に切り離したかのように。(クレジットを全て凍結された沙月にとって、1000万は大金だ。俺に感謝を伝える連絡を入れるのは筋じゃないか?)徐々にイライラした気持ちが募りはじめたそのき。――ガチャッノックもなく、突然ドアが開いた。「司、元気だった?」笑顔の澪が室内に入って来た。「何だ……君か」ただでさえイライラしているところにノックも無しに入室してきた澪に対し、司の苛立ちが募る。しかし、そんな司の気持ちなどお構いなしに澪は司の元へやって来た。右手には紙袋を持っている。「何だとは御挨拶ね? 折角この私があなたの為に手作りスイーツを持ってきたっていうのに」澪は紙袋を司のデスクに置いた。「……君が? 手作りスイーツだと?」司は眉を顰める。しかし、それは当然のことだった。澪は料理が嫌いで、滅多に作ることは無い。ましてスイーツなど初めてだ。「ええ、そうよ。私も何か新しいことに挑戦しようかと思ったの。仕事にも無事復帰できたことだし。ほら、クッキーを作ってみたの。味見したけど美味しかったわ」澪は紙袋からラッピングされたクッキーを取り出して司に差し出した。「……」しかし、司は黙って見
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-30
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2-11 司の質問 2

「……一体何のこと?」「多重事故の件だ。あの辺りは天野グループが管理している不動さんがある。事故の状況を知るために監視カメラを確認させてもらったのだ。そのカメラに君の元マネージャーが映り込んでいたんだよ。何故あの事故現場に彼女がいたんだ? もう完全に契約解消したんじゃなかったのか?」「……え!? 監視カメラを……?」澪が目を見開く。「何だ? それほど驚くことか?」司は腕組みすると澪をじっと見つめた。「べ、別にそういう訳じゃ……でも、ちょっと待ってよ。何故元マネージャーがあの現場にいたからって、それをわざわざ私に言うのよ? ひょっとしてまさか……司は事故の原因が私だって思ってるの? 司は忘れちゃったの? あの時私は貴方を助けるために自分の身を顧みずに行動したのに……それなのにこの私を疑うっていうの?」うつむく澪。司は黙って澪を見つめていた。すると司が何も声をかけてこないことに業を煮やしたのか、再び沙月は顔を上げた。「ねぇ。本当は監視カメラなんて確認していないんじゃない? 沙月さんが言った嘘じゃないの? 大体私は彼女とは、もう連絡すら取ってないのよ? それに司だって分かっているでしょう? 本来あなたの妻になるはずだったのは私だったのよ? それを全部ダメにしたのは沙月さんじゃないの! あの女はねぇ、私とあなたが一緒になるのも、私がアナウンサーに復帰するのも許せないのよ! だからあんな多重事故を起して私を陥れようとしたの! あの女はそういう陰険な女なのよ!」声を荒げる澪に司は冷静に言った。「そんなに興奮するな……この忙しい時期に、わざわざ俺に手作り菓子を届けに来てくれたということは他に話したいことがあったからなんだろう?」司はまるで澪を射抜くような眼差しで見つめている。「大体……どうして私が関与したと考えたのよ? 私は被害者なのよ? あの怪我のせいでアナウンサーへの復帰が遅くなったのは司だって知ってるでしょう? 事故を仕組んだのは沙月さんなのよ!」澪はヒステリックに喚いた。「じゃあ沙月が、君を復帰させないためにわざと事故を仕組んだと思ってるのか? 自分が危険にさらされても」「それじゃ私よりも沙月さんの怪我の方を心配しているってことなの!?」「俺はただ本当のことを聞かせて欲しいだけだ。何しろあれは何台もの車を巻き込んだ多重事故だったからな。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-01
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2-12 初めての仕事

翌朝、7時半――「今日からいよいよテレビ局で働くのね? そのスーツ、良く似合ってる。仕事のできるOLって感じで。頑張ってね、沙月」真琴がコーヒーを片手に、キッチンのカウンター越しに笑顔で声をかけてきた。沙月はスーツの襟元を整えながら、少し照れたように頷く。「ありがとう。学生時代からずっと憧れだった報道部で働けるなんて……何だか今も夢みたい」「夢じゃないわよ。沙月が自分で掴み取った現実」真琴はカップを置くと、沙月の肩に両手を置いた。「誰よりも努力してきたんだから、自信を持って行ってらっしゃい」「……うん。行ってくるね」沙月は深呼吸すると玄関を出てエレベーターホールへ向かった。タワーマンションを出ると、雲一つない青空が見える。「……よし、頑張ろう」沙月は自分に言い聞かせると、背筋を伸ばして駅へ向かった――****午前8時半。都心の一角にそびえ立つテレビ局の本社ビルに沙月の姿はあった。受付で名前を告げると、社員証と一時通行証が渡される。「編集補佐の方ですね。報道部は12階になります。こちらのエレベーターをご利用ください」案内係の女性は慣れた口調でそう言い、視線はすでに次の来客へと向いている。「ありがとうございます」礼を述べると、沙月は案内されたエレベーターへ向かった**エレベーターの中は無機質な静けさに包まれていた。壁には局内の番組表が貼られており、朝暮澪の復帰特番の告知が赤字で丸囲みされている。「報道の顔、再び――朝暮澪、復活記念スペシャル」その文字が、沙月の視界に焼きつく。(ここにも朝霧澪の名が……)沙月は、わざと番組表から目をそらすとエレベーターの表示灯を黙って見つめていた。――チーン12階。エレベーターのドアが開いた瞬間、空気が変わる。フロア全体が活気に満ちていた。電話の着信音、キーボードを叩く音、誰かが台本を読み上げる声。壁際には澪のポスターが何枚も貼られ、まるで彼女がこの局の象徴であるかのようだった。沙月はエレベーターを降りてすぐの案内板の前で立ち止まり、報道部の位置を確認していた。初めて足を踏み入れる職場。どこへ向かえばいいのか、誰に声をかければいいの分からず迷っていると、背後から声をかけられた。「あの……受付から連絡を受けたのですが、あなたが今日からこちらの部署に配属された天野さん
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-02
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