Todos los capítulos de 婚約者は私にプロポーズをしたその口で、初恋の幼馴染に愛してると宣う: Capítulo 141 - Capítulo 150

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141話

涼真さんの手が、そっと私の手を包み、指が絡められる。 所謂「恋人繋ぎ」で手を繋がれて、私は自分の頬が赤く染まって行くのを感じた。 きゅ、と力を込められ、自然と私と涼真さんの距離が近くなる。 涼真さんの腕が私の腕に触れ、私は自分の鼓動が速まるのを感じた。 ちら、と涼真さんを盗み見る。 涼真さんは普段と変わらず、落ち着いた表情のまま。 顔色も、何も変わっていない。 そんな涼真さんを見て、私はそっと自嘲するように笑う。 意識してしまっているのは、私だけ。 涼真さんは微塵も動揺していないし、婚約者の振りを完璧にしているだけ。 こんな風に、胸を騒がせているのは私だけなんだ。 そう、思うとつきりと胸が痛むような気がして。 だけど私はそんな痛みには気付かないふりをして、涼真さんと一緒にお店を出た。 「すみません、涼真さん。ごちそうさまです」 「どういたしまして。部下でもある君に出させる訳にはいかないだろ?それに、大事な婚約者に出させる事だってしたくないからな」 悪戯っぽく笑みを浮かべる涼真さんに、ついつい私はくすくすと声を漏らして笑ってしまう。 どこか、緊張している私を気にしてくれているのだろう。 緊張を解そうとしてくれている涼真さん。 そんな涼真さんの優しさがとても嬉しい。 手を繋ぎながら、駐車場に向かって歩く私たち。 お店の駐車場が見えてきて、涼真さんの車が見えた──。 その時。 清水瞬が、私たちの車の近くで待っているのが見えて、私はぎくりと体を強ばらせた。 「──心?」 涼真さんにも繋いだ手から、私の体が震えた事が伝わったのだろう。 不思議そうに私を見て、そして私の視線を辿った涼真さんも清水瞬の姿を見て、僅かに眉を顰めた。 自分の車に背を預けていた清水瞬が、私たちがやってきた事に気付き、車から背を離す。 そして、私の姿を見た清水瞬は嬉しそうに顔を輝かせたけれど、その視線は私たちの繋がれた手に向かい、不愉快そうに眉を寄せた。 「何故手を繋いでいる」 不機嫌さを隠しもせずに、清水瞬が低い声で話しかけてくる。 涼真さんは、彼を冷たく一瞥したあと、至極当然のように答えた。 「付き合っている男女が手を繋ぐなんて、普通の事だろう。君も、心と付き合っていた時は手を繋ぐくらいはしていたんだろ?それと同じだ」 「……っ、お前
last updateÚltima actualización : 2025-12-14
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142話

◇ 「……っ、くそっ!くそっ」 男──清水瞬は、去って行く車を見送るしかできず、自らも自分の車に乗り込み、スマホを取り出すとある番号にかけた。 コール音が何度も何度も鳴るが、相手は出る気配が無い。 「何で出ない!?」 ダン!とハンドルを強く叩き、悪態を付く。 「麗奈は何で最近電話に出ない事が増えたんだ……!?この時間なら、家にいるはずだろう!?」 麗奈はまだ帰国してから日が経っていない。 仕事もまだ決まっておらず、家の中にいるはずだ。 瞬は、帰国したばかりの麗奈に、好きに過ごして欲しい。海外で大変な生活をしていたのだから、国内では何の不安も考えずに好きに過ごして欲しい、と思い、麗奈に1枚のカードを渡していた。 利用上限など無い、特別なカード。 以前は心に渡していたが、麗奈とやり直すと決めていた瞬は、麗奈が国内に戻ってきて、そのカードを心から取り上げ、麗奈に渡したのだ。 それ以降、麗奈に好きに使ってもらっていたが。 ここ最近、支出の額が大きくなっていて、1度実家から連絡が入っていた。 数百万ならいざ知らず、1度に数千万の利用が月に何度も重なり、1度調査も入った。 こんな事は、心にカードを渡していた時には有り得なかった事だ。 「心は……いつも必要最低限しか利用しなかったのに……。麗奈に渡してからは、麗奈は際限なくカードを使うようになって……。好きに使わせているのだって、俺が必死に働いて稼いだ金だってのに……!心はこんな浪費はしなかった……!」 一体、何に湯水の如く金を使っているのか──。 瞬は、これは麗奈に金の使い道をしっかりと確認しなければ、と考え自宅までを急いで車を走らせた。 「──麗奈、
last updateÚltima actualización : 2025-12-15
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143話

心との思い出が、全て消えてしまっている──。 瞬の胸に1番に浮かんだのは、そんな感情だった。 そして、次に感じたのは、怒り。 瞬は怒りを抑える事なく、荒い足音を立てて寝室に直行した。 音を立てて扉を開く。 すると、心が気に入って使っていた鏡台がいつの間にか寝室からは消えていて。 2人でこだわり抜いて決めたベッドも、いつの間にか変わっていた。 心が好きだと言っていた落ち着いた色合いのシーツの色も、麗奈好みの明るい色に変わり、カーテンの色まで変わってしまっている。 「──っ、数日前までは、今まで通りだったのに……何故、こんな事を……!」 麗奈には、心をしばらく預かる予定だ、と告げたのに。 心が落ち着いて過ごせるように協力してくれ、と頼んだのに。 それなのに、心が好んで使っていた家具も、色合いも、全部変えてしまうなんて──。 「どうしてこんな酷い事をするんだ……」 瞬は、麗奈の考えが全く分からず、頭を抱えた。 「あんなネットニュースになって、心は傷付いているのに。それを気遣わず、使用していたものを処分するなんて……。ここまで酷い女だとは思わなかった」 正直、麗奈にはがっかりだ。 瞬がそう考えていると、ようやくそこで瞬のスマホに求めていた人物からの着信が届いた──。 ◇ 昼食を終え、会社に戻った私と涼真さん。 表向きは普段と変わらない態度で接するけど、時折涼真さんから送られる視線が、以前より気になってしまって、緊張する。 チラチラ、と涼真さんを見てしまう。 人の機微に敏い涼真さんだ。 変に思われてしまうかも。 ああ、それに今は仕事中なのに。
last updateÚltima actualización : 2025-12-16
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144話

「──……?」 この間から、何度か感じた痛み。 つきり、と胸を刺すような痛みを感じる。 私は無意識の内に痛む心臓をそっと自分の手のひらで押さえていた。 「加納さん?どうした……?体調が悪いのか?」 「──え?あっ、大丈夫です滝川社長。資料は、ここに」 「本当に?……無理しないで、辛かったら言ってくれ」 「ありがとうございます、本当に大丈夫ですよ」 心配そうな顔をした涼真さんが、私に声をかけてくれる。 持田さんとの通話は終わったのだろう。 私は、午後の会議に必要になるであろう資料を涼真さんに笑顔で手渡した。 ◇ 「社長、失礼します」 「ああ持田さんか、入ってくれ」 午後。 取引先との会議のため、副社長の秘書に着いていた持田さんがやって来た。 社長室の扉をノックする音が聞こえ、次いで持田さんの声がかかった。 それまでパソコンに視線を落としていた涼真さんがパソコンから顔を上げて、扉に視線を向ける。 扉を開けて持田さんが入ってきた瞬間、涼真さんの表情が柔らかく緩んだような気がする。 涼真さんの目が嬉しそうに細められて、持田さんが入室するのを椅子から立ち上がって出迎えた。 「持田さん、忙しいのにわざわざ悪いな。助かる」 「いえ、とんでもございません。お求めの資料です」 持田さんはきりっとした表情のまま、鞄から書類の入った封筒を取り出し、涼真さんに手渡す。 涼真さんは中身を取り出し、内容にさっと目を通した後持田さんに向き直った。 「ちょっといいか、持田さん」 「分かりました、社長」 「加納さん、悪いけど少しだけ待っててくれ。少し話をして戻る。副社長が来たら、待っててもらって」 「分かりました、滝川社長」 涼真さんは、私に顔を向けてそう指示をすると、持田さんを連れて隣の部屋に入って行った。 社長室に1人残された私は、準備した資料を再確認したりして2人が戻ってくるのを待つ。 けれど、涼真さんと持田さんの話は長引いているのか。 まだ隣の部屋から戻ってくる気配は、無い。 どんな話をしているんだろう。 今まで、涼真さんと持田さんがお話をする時は場所を変える事なく、その場で話をする事が多かった。 だけど、今回は場所を移している。 私に聞かれてしまうと、あまり良くないお話なのだろうか……。 何だか、またもやもやとした
last updateÚltima actualización : 2025-12-16
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145話

「お待たせしました。すみません、社長と持田秘書は現在打ち合わせ中でして、すぐに戻られると思います」 「加納さん。分かりました、中で待たせてもらいますね」 間宮さんがにこり、と笑みを浮かべつつそう返してくれる。 彼と私が話していると、副社長が「失礼するよ」と言いながら社長室に入って行く。 私は急いでお茶の用意をして、副社長の前に置く。 すると私に向かって副社長はにこり、と笑いながら「ありがとう」と言ってくれた。 副社長は、確か涼真さんの20歳年上だったはず。 笑みを浮かべると、目尻に皺が浮かび、穏やかな容姿をしている副社長の雰囲気が更に柔らかくなる。 「このお茶美味しいねぇ。加納さんはお茶をいれるのが上手だ」 「ありがとうございます」 「持田さんは……仕事は凄いんだけど……、ほら、彼女お茶はちょっと、だっただろう?」 「言わないであげて下さい」 副社長は間宮さんにこそり、と話しかける。 すると間宮さんは苦笑いを浮かべた。 どうやら、持田さんはお茶をいれるのが苦手だったみたい。 でも、持田さんはとても仕事が出来る敏腕秘書。 副社長もそれは十分承知しているからこその、冗談を交えた会話。 もしかしたら、私が緊張しているのを和ませて下さっているのかもしれない。 社長室の雰囲気が柔らかくなったような気がする。 「加納さんは秘書は初めてなんだよね?」 「はい。まだまだ勉強中の身です」 「そんな固くならないで大丈夫だと思うよ。滝川社長は優しいし、滅多な事では怒らないから」 そこで副社長は1度言葉を切ると、ちらりと隣の部屋の扉に視線を向ける。 涼真さんと持田さんがまだ出てこないかどうかを窺っているのだろう。 そして、副社長は少しだけ声を潜めて続けた。 「だけど、社長が激怒した時は本当に恐ろしいんだよ……。二の句を継げない」 「そ、そうなんですか……!?その、普段の社長からは想像出来ない、ですね……」 「だろう?滝川社長の激怒事件は私たちの間では結構有名なのがあって──」 副社長がひそひそと声を潜めてお話されるので、耳を傾ける私は自然と副社長の近くでお話を聞く事になる。 無意識の内に副社長との距離が近くなったところで──。 「……高遠副社長。加納さんに変な事を吹き込まないでくれ。彼女、純粋だからすぐに信じてしまう」 ぐっ
last updateÚltima actualización : 2025-12-17
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146話

「す、すみません持田さんに間宮さん……!」 秘書として先輩のお2人に資料を取らせてしまうなんて!と私が慌てて口にすると、持田さんは「気にしないでください」と笑みを浮かべた。 「加納さんは滝川社長のお相手を。面倒くさいので、よろしくお願いします」 にっこりと笑顔を浮かべたまま、持田さんがはっきりとそう口にする。 高遠副社長は「容赦ないなぁ」と笑い、間宮さんも苦笑いを浮かべている。 涼真さんも「きみなぁ……」と砕けた様子で持田さんに小言を告げていて、私は4人が慣れ親しんだ仲なんだ、と実感する。 涼真さんの秘書として長く仕えていた持田さんと間宮さん。 それに、副社長の高遠さん。 何だか、私だけが4人の中に混ざり込んだ異質な存在のような気がしてしまって……。 いえ、でも私が異質な混ざりものなのは分かっていたはず。 涼真さんが優しくて、私を保護してくれたのが始まりだ。 勘違いしそうになってしまう。 涼真さんとの婚約の振りだって、私を助けるために必要で。 本当の婚約者になれるわけじゃない。 涼真さんの隣に、ずっと居続けられるわけじゃないんだから。 それをしっかりと自覚しないと、いけない。 「──さん、加納さん?どうかした?」 何度も名前を呼ばれていたのだろう。 私の名前を呼びつつ、涼真さんの顔が覗き込んで来た。 私ははっとして、すぐに表情を引き締めて笑顔を浮かべた。 「申し訳ございません、何でもありません。行きましょう、滝川社長」 「……ああ」 私は、急いで持田さんと間宮さんから資料を受け取り、涼真さんと一緒に応接室に向かった。 「本日はお時
last updateÚltima actualización : 2025-12-18
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147話

「全く……油断も隙もないな……」 「確か、あちらの社長には丁度いい年齢のご子息がいたはずですよ、滝川社長」 「高遠副社長……」 「ははは、すみません。余計なお節介でしたね。それでは、私もここで失礼しますよ。加納さんも、また」 涼真さんと高遠副社長は、軽口を叩き合うようにいくつか言葉を交わし、高遠副社長は肩を竦めたあと、私に挨拶をして部屋を出て行ってしまった。 あまりにも速い退出だったので、私は副社長にご挨拶が出来ないままで。 私がわたわたとしていると、涼真さんが疲れたようにため息を吐き出しつつ、こちらに向かって歩いて来た。 「全く……彼は他人事だと思って俺を揶揄ってる……」 「滝川社長と副社長、随分気心が知れた仲なのですね……?」 「ああ。彼の兄が俺の父親の部下なんだ。兄弟揃ってうちの会社を支えてくれていて……感謝しているんだが、昔から知っているからこそ揶揄われて堪らない……」 「そうだったんですね。皆さん、仲が良さそうで、傍で見ていて微笑ましかったです」 「そう?加納さ……心も、その内の1人だよ」 「──っ、そう、なれるでしょうか」 「もちろん。と言うか、もうなっているだろ?」 涼真さんは、本当に心からそう思ってくれているのだろう。 きょとん、とした顔でそう口にし、笑ってくれる。 なんの意識もしていない、本心からの言葉。 それがとても嬉しくて、私はついつい涼真さんに笑い返してしまった。 「……心、」 「滝川社長、戻りまし──失礼しました」 涼真さんが、ふと真剣な顔で、私に向かって手を伸ばした。 その瞬間、応接室の扉がノックされてすぐに扉が開かれる。 持田さんは、顔を上げて室内を見た瞬間、すぐにそう告げて扉を閉めてしまった。 その後、慌てて涼真さんが扉に向かい、持田さんと間宮さんを迎えているのを、私はどこかぼうっとしながら見つめた。 ◇ それから、数日。 涼真さんが話してくれた通り、涼真さんと私の婚約が大々的に発表された。 そして、それと同時に滝川本家が私に対して誹謗中傷を行ったネットニュース会社を提訴した、と言うニュースも公開された。 その事は、大々的に報道され、SNSでも大きな騒ぎになった。 滝川本家が、私を認めた──。 その事で、私に対する興味や、バックグラウンドを調べようとする人達まで現れている
last updateÚltima actualización : 2025-12-18
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148話

広い広い応接室に通された私と涼真さん。 私は、見慣れた室内が何故か落ち着かなくってそわそわとしてしまう。 お手伝いさんの顔も、屋敷内にいる使用人の顔も、以前私が居た頃とはガラッと変わっていて。 私が知っている人はいないのだろうか……。 そう考えつつ、出された紅茶のカップに口をつけた。 喉を潤していると、この部屋に近付いてくる足音が廊下から聞こえた。 「──っ、」 「心。落ち着いてくれ」 涼真さんが苦笑いを浮かべつつ、隣に座る私の手をそっと優しく握ってくれる。 大きな手のひらに包まれて、安心感を感じた私は小さく息を吐き出すと、涼真さんに頷いて返す。 「そう、ですね。すみません、緊張してしまって……」 「はは。ご両親に会うのに緊張する事はない。心だって、過去の自分を恥じているんだから、素直にその気持ちをご両親に伝えればいいよ」 「……はい。ありがとうございます、涼真さん」 短い会話をしていると、応接室の扉が不意に開く。 開けたのは、この屋敷で長く働いている使用人の男性。私も見知った、懐かしい顔だ。 以前より皺が増えて、所々に白髪があった程度だったのに今はもう髪の毛が真っ白になっている。 使用人の男性──加藤さんが、私に視線を向けて柔らかく、懐かしむような優しい笑みを浮かべてくれた。 「お嬢様」と加藤さんの口元が小さく動いた気がする──。 加藤さんに意識が持って行かれてしまっていたけど、室内に入って来た加納家当主の厳しい低く、重い声が室内に響いた事で、私ははっとして視線を父に戻した。 「待たせてすまない、滝川涼真さん。……それに、心」 「とんでもございません。本日はお時間を取っていただき、ありがとうございます」 涼真さんが、父に向かって深々と頭
last updateÚltima actualización : 2025-12-19
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149話

1度溢れ出した涙は、暫く収まる気配を見せない。 私は、母と抱き合いながら嗚咽を漏らしつつ短く言葉を交わした。 そっと優しく頭を撫でてくれる感触も、声も。全然変わらなくて。 私と母が涙を流しながら抱き合っている傍ら。 涼真さんは父と強く握手を交わしていた。 ◇ 「大変、失礼しました……」 「もう泣き止んだか?話を始めてもいいのか?」 ソファに座り直し、ようやく感情の昂りも落ち着いて、話せるようになった。 先ずは話の腰を折ってしまった事を謝罪しないと、と私が声を上げると、意地の悪い父の声が聞こえた。 母が「あなた!」と小さく咎めているのが見えたけど、私は苦笑いを浮かべて答える。 「──はい。大変失礼しました……そして、本日お話をさせていただく前に、いいでしょうか?」 きゅっと私は自分の膝の上に置いた両手を握りしめる。 私が話そうとしている内容を、事前に伝えていた涼真さんから勇気付けるように手を握られる。 そんな私と涼真さんの姿を、眩しいものを見るかのように目を細めて眺めていた父が「なんだ?」と小さく答えた。 「先ずは……、謝罪をさせてください。過去の……子供過ぎた私が犯した愚かな行為のせいで、お父様にも、お母様にも……そして、加納家にも多大なご迷惑をおかけしました」 「……そうだな」 「そして、お父様やお母様の言葉に聞く耳を持たず、家を飛び出して……このように長期間連絡もせず、親不孝な事をいたしました。簡単に許していただきたいとは思っていません。だけど、今後……少しずつでもお父様とお母様の信頼を取り戻したいと考えています」 本当は、しっかりと言葉を紡ぎたかった。 だけど話していくうちに、やっぱりまた感情が揺れて、声が震えてしまう。 それでも、父も母も私が話し終わるまで一切口を挟まず、真剣に最後まで聞いてくれた。 「あの時の事は私たちも後悔している。後悔だらけだ……私たちももっとお前と対話をすれば良かったものを、それを諦めて親としての責任を放棄してしまった。子の過ちは親の責任だ。私たちも子供のお前に酷い事をしてしまった」 「私たちも、心。あなたにずっと謝りたかったの……。こんなに遅くなってしまって、ごめんなさい……」 父と母が、しっかりと私を見つめ返して真摯に話してくれる。 それだけで、私はもう十分だった。 私が顔を覆
last updateÚltima actualización : 2025-12-19
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150話

「……心?」 私の反応に、父が怪訝そうに眉を顰める。 いくら子供の頃に家を飛び出したからと言って、私の癖までは忘れていないのだろう。 何か疚しい事があると、私は過剰に反応してしまうし、父や母の目を見れなくなってしまう。 父は、私にじっと視線を向けたまま、口を開く。 「──家出したからと言っても、お前が大事な娘だと言う事には変わりない……。だから、お前が出て行ったあと、人を使ってお前の居場所を突き止めたし、1年に1度はお前についての報告は得ていた。……心、お前があの愚か者と同棲していたのは、知っている。まだ、隠し事があるのか?」 「──っ」 私について、報告を受けていた……? 頻度は多くないけど、1年に1度は報告を受けていたのなら──。 私の妊娠も、そして交通事故で流産してしまった事も、近い内に知られてしまう。 それに、清水瞬の事を私が捨てた、と父は言っていたけど……。捨てて、捨てられたようなものだ。 むしろ、今現在その報告を受けていないのが不思議なくらい。 私は、ごくりと喉を鳴らす。 これは、父と母に自分の口から話さないといけない。 こんな事を、他人の口から聞かさせるべきじゃない。 僅かに震える私の手を、隣に座っていた涼真さんが心配そうにそっと握ってくれる。 視線にもありありとその感情は滲んでいて、私は涼真さんに緩く微笑み返してから、父と母に向き直った。 「──お父様、お母様。私がこれからお話する内容は……、衝撃的な内容です。ですが、実際にあった事、です」 「……なんだ?」 私のただならぬ雰囲気に、父も母もすっと居住まいを正す。 私は、清水瞬と別れた経緯や子供がいた事を話すため、口を開いた──。
last updateÚltima actualización : 2025-12-20
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