Alle Kapitel von 婚約者は私にプロポーズをしたその口で、初恋の幼馴染に愛してると宣う: Kapitel 131 – Kapitel 140

191 Kapitel

131話

「加納家と旧知の仲であれば、縁組などもすんなりと進んだだろうが、大昔に交流があった程度。加納さんと一緒になりたいのなら、自分でどうにかするしかないぞ」 「ええ……。分かって、います。今回の一件で手助けして頂いただけでも助かります」 「うむ……。ならば、黒瀬には十分気をつけていた方がいい。今回、加納さんを手に入れる為にあの男が動いたのだろう」 「……柳に、手を貸したって言うんですか?あの男が?」 会長の言葉に、驚きを隠せない。 あんな、得体の知れない女と手を組んで、こんな事を仕出かしたと言うのか。 あの、黒瀬が? 「あのパーティーで、加納さんを見初めたのだろう。 清水家の倅のために加納さんがした事を黒瀬が知れば、益々欲するぞ?早く婚約なりなんなりした方がいい」 会長の言う事は、一理ある。 加納さんが清水瞬を助けるために動いたのは、まだ子供の頃の事だ。 それほど昔から加納さんは才能に溢れていた。 もし、黒瀬がその事を知れば。 元々、素晴らしい女性ではあるが、そこに「利益」が生じる。 経営者として、同じ服飾関係の仕事に就く人間からして、加納さんのセンスや才能は喉から手が出るほど欲しいだろう。 だけど、俺は加納さんの気持ちを大事にしたい。 事を強引に進めるつもりはない。 「ご忠告、痛み入ります。肝に銘じておきます」 「悠長に構え過ぎぬようにな……」 「ええ、もちろん」 会長は、ため息をついて手のひらをひらひらと振る。 話は以上なのだろう。 俺は会長に一礼してから急いで書斎をあとにした。 何だか無性に加納さんに会いたくなる。 会長から、黒瀬が加納さんを狙っている、と言う言葉を聞いたからだろうか。
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-08
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132話

滝川さんに手を取られたまま、私は前を足早に進んで行く滝川さんの背中を見つめる。 ちらりと覗く滝川さんの横顔は、普段の落ち着いた穏やかな顔じゃなくて。 焦ったような。どこか、切羽詰まったような。そんな表情。 いつもは優しく握られる私の手も、僅かに力が入っていて、違和感を覚える。 「た、滝川さんっ」 「──っ」 「どうしたんですか、滝川さん。何だか、いつもと……」 いつもと様子が違う──。 私の不安気な様子に気がついたのだろう。 前を歩いていた滝川さんは、はっとしたような顔をしたけど、すぐに苦しそうな表情を浮かべる。 「悪い、加納さん……無理やり引っ張って……。手は大丈夫?痛めてない?」 「え、ええ。それは大丈夫ですが……。滝川さんこそ、大丈夫ですか?」 私の言葉に、滝川さんは答えようとして口を開いたけれど、すぐに噤んでしまう。 そして、立ち止まったここが駐車場のすぐ近くである事を確認すると、またそっと私の手を取って、今度は優しく引いた。 「一先ず車に行こうか……家まで送る」 「わ、分かりました」 何が滝川さんにこんなに辛そうな表情をさせているのだろうか。 さっき、会長に呼び止められたけど、そこで何かあったの? その答えが分からないまま、私と滝川さんは車に乗り込んで、家まで向かった。 滝川さんが運転をしてくれている間、車内では当たり障りのない無難な世間話がされた。 運転中の滝川さんにあまり踏み込んだ事を聞けなくて、昼食会が楽しかっただとか、皆さん優しかっただとか、ご飯がおいしかった、だとか無難な会話をする。 そうしている内に、滝川さんの家に到着した。 私を送り届けてくれた滝川さんは、そのまま会社に戻るのだろう、と思ったけど、滝川さんも一旦家に入るらしく、一緒に車を降りた。 階段を上り、玄関を開けて中に入る。 すると、お手伝いさんがリビングにいて、私たちの出迎えをしてくれた。 「お帰りなさいませ。お茶をご用意しますか?」 「ああ、ただいま。お願いしてもいい?俺の部屋に2つ運んで欲しい」 「分かりました」 滝川さんのお部屋? いつものように滝川さんは書斎に行くのかな、と思ったけど、どうやら違うらしい。 それに、お茶を2つ、と言う事は私も滝川さんのお部屋に行くのだろう。 滝川さんの私室に入るのは、滝川さんが怪我
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-08
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133話

手を引かれ、滝川さんの部屋に到着した私は、ソファに案内されてそのままそこに腰を下ろした。 少しして、お手伝いさんからお茶を受け取った滝川さんは、私の前にグラスを1つ置いて自らもソファに腰を下ろした。 滝川さんは、何か話したい事があって、私をここに連れてきたんだろう。 だけど、ソファに座って暫く。 滝川さんは話を切り出す気配が無い。 待っている間、私はふと昨日清水瞬が突然この家にやって来た事を滝川さんに伝えていなかった事を思い出す。 あの時、持田さんが助けてくれたから、彼女から既に報告されているかもしれないけど、自分の口からも伝えておいたほうがいい。 そう考えた私は、未だに考え込むように黙っている滝川さんに、話しかけた。 「滝川さん。お話の前に、1つご報告してもいいですか?」 「報告……?ああ、聞こうか」 私の声に、滝川さんが顔を上げて真っ直ぐ目を合わせてくれる。 私は昨日起きた事を、滝川さんに伝えた。 「実は昨日、家に戻ってからちょっとした事で一瞬だけ外に出たんです。そうしたら、何故か外に清水瞬がいて……」 「──っ、そうだ、そうだった。持田さんから聞いているよ。訳の分からない事を言っていたって?」 やっぱり、持田さんから報告を受けていた。 私は、経緯の説明などを省き、結論だけを伝える。 「ええ。どうやら、清水瞬はあのネットニュースには関わっていない様子でした。危ないから、うちに来い、と。……もっとも、それも嘘かもしれませんが……」 「何だってた……?」 滝川さんの声が低くなる。 怒りすら込められているような滝川さんの雰囲気に、私はついつい背筋が伸びてしまう。 滝川さんはすぐにはっとして、自分の眉間を指で揉むと「すまない」と謝罪を口にする。
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-09
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134話

滝川さんから言われた言葉に、すぐに反応出来なかった。 何を言われたのかは分かっているのに、脳が理解するのに時間がかかった。 そして、滝川さんの言葉を理解した私の頬に、じわじわと熱が集まってくる。 「……えっ、え?こ、婚約の振り、ですか?私と、滝川さんが……?」 私のぎょっとした声に、滝川さんも頬を薄っすらと染めながら両手を胸の前に突き出して「ま、待って」と声を上げる。 「そのっ、本当に婚約する訳じゃない……!形だけでも、加納さんはもう婚約者がいるって分かれば、黒瀬社長に手を出される事も、加納さんが変に貶められる事も無いだろう!?」 「でっ、でも、そんな事本当にいいんでしょうか?滝川さんのお家は?会長はご承知なんですか?」 こんな風に、滝川さんに守ってもらえるのは確かに心強い。 だけど、形だけとは言え、婚約は婚約だ。 黒瀬さんに手を出されないため、と言う事は外部に向けても発表をする事になるのでは、と私は不安になってしまう。 確かに、滝川さんのお家はとても大きい。それに、業界でも力を持っている。 下手に滝川家に手を出したら、やり返される可能性がある。 家を潰されてしまう力があるのだ。 だからこそ、滝川家の跡継ぎである滝川涼真さんの婚約者になれれば、周囲を牽制する事は出来るけど──。 「その……滝川さんに、婚約者の方は……」 「そんなのいない」 「そう、ですよね……」 もし滝川さんに婚約者がいたら、こんな提案はしないはずだし、いくら滝川さんが優しい人だとしても、自宅に婚約者以外の異性を住まわせたりしないだろう。 「けど、本当に……それでいいんですか?滝川家に守って頂けるのは、とても心強いですが……」 「問題ない。会長も、両親も了承済だ。それに……うちも、下心がないとは言いき
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-10
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135話

滝川さんとの話が終わると、滝川さんは会社に戻り、私は明日の出社に向けて家で準備をする事になった。 仕事で使用するタブレットは、持ち帰ってきている。 社内共有クラウドで、明日の滝川さんの予定を確認して、スケジュールに組み込んで行く。 そしてそれと同時に、国内のブランドの調査も並行して進める。 SNSでの流行も追ったり、として忙しくしていると、気がついたらもう夕方になっていた。 ふ、と息を吐き出して息抜きをしようと考える。 きっともう、お手伝いさんは帰宅してしまっているだろう。 私は階下にあるキッチンに向かい、飲み物を用意する。 陸と凛はお手伝いさんにたっぷり遊んでもらって、疲れたのだろう。 今は眠っていて、家の中は私1人しかいないからか、とても静か。 しん、と静まり返っていると、色々考えてしまう。 家の事や、滝川さんの事。滝川家に、先日のパーティーで会った、黒瀬さん。 それに──。 「清水瞬と、麗奈をどうにかしなくちゃ……」 今回、社内チャットに私の誹謗中傷を書き込んだ社員、三橋さんは麗奈の指示で書いた。 恐らく、この件はちゃんと証拠も入手できるだろうし、大丈夫だと思う。 けど、麗奈がどうやって黒瀬さんと手を組み、ネットニュース会社にその情報を流出させたのか。 それに、架空の記者は見つけ出す事が出来るのか──。 滝川さんは会社自体を訴えると言っていたけど、それが全て上手く行っても、一度ネットニュースになってしまった記事は完全には削除されない。 人の記憶には残るだろうし、記事が拡散されてしまったら追い切れない。 「……滝川さんのイメージだって、悪くなってしまった……」 例え、あの記事が真っ赤な嘘だとしても。 疑念は生まれる。 それを払拭するのは骨が折れる。 だからこそ、清水瞬は私の身の安全を考慮して、自分の家に避難しろ、と言ってきたのだろう。 「やったのは、麗奈なのにね……」 バカバカしくて笑えてきてしまう。 清水瞬は、今回の一件が麗奈のせいだと知らないのだろうか。 麗奈が、黒瀬さんと手を組んでいる事を知らないのだろうか。 もし、清水瞬がこの騒動が麗奈のせいだと知ったら──? 麗奈を止めてくれるだろうか。 「そう、そうよね……。自分の恋人がこんな事をしてるって知ったら、さすがに止めるかもしれない……」
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-10
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136話

「駄目だ」 「えっ!?」 時刻は、夜。 滝川さんの家の仕事部屋。 まさか私は滝川さんに提案を断られるとは思わず、声を上げて、ぽかんとしてしまった。 滝川さんが仕事お終え、帰宅後。 夕食を終えた私は、滝川さんに相談があると伝えた。 滝川さんはすぐに頷いてくれて、場所を変えて、1階にある仕事部屋に移動した。 そして私は、昼間考えた事を滝川さんに提案していた。 最初は私の話を興味深そうに聞いていた滝川さんだったけど、清水瞬に連絡を取り、麗奈の件を伝えるのはどうか、と言う相談をし始めるなり滝川さんの表情は嫌そうに歪み、そして先程のきっぱりとした「駄目だ」の一言。 まさかこんな風にあっさりと提案を却下されるとは思わなくて、私は戸惑いつつ滝川さんに言葉を続けた。 「で、ですが滝川さん。清水瞬に伝えれば、麗奈の暴走を止めるかもしれません。彼も、会社の経営者です。自分の恋人……婚約者の女性が、誰かを誹謗中傷している、なんてもし記事にされたら会社の信用が落ちるじゃないですか?」 「それは尤もだが、加納さんが清水に連絡をする必要は無い。……それに、まだ柳麗奈と清水が本当に手を組んでいないか分からないだろう?下手に焦って接触しない方が良い」 「た、滝川さんの仰る通りだとは思いますが……」 良いアイデアだと思ったのに……。と、私は少しだけ落ち込んでしまう。 私の実家の加納家の力を極力使わず、私が良い対策を打てれば。 そうしたら、嘘の婚約だってしないで済むかもしれないのに……。 私が不服そうにしているのが滝川さんにも伝わったのだろう。 彼は少し困ったように眉を下げ、微笑みつつ口を開いた。 「何はともあれ、加納さんが清水に連絡するのは駄目だ、危険過ぎるから
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-11
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137話

翌日。 滝川さんと一緒に出社する。 社内は、先日の騒ぎなど無かったかのように落ち着きを取り戻していた。 すれ違う社員は皆、滝川さんと、一緒にいる私に笑顔で挨拶をしてくれる。 たった数日で私への偏見も、蔑むような視線も綺麗に無くなっている事に、私は驚いた。 多少なりとも鋭い視線を覚悟して出社したのだけど、そんな私の不安や心配は杞憂に終わった。 「……滝川さん、社内に何か通達なようなものを出しました?」 普段通り、変わらない様子で隣を歩く滝川さんにこそりと問う。 社長室があるフロア直通のエレベーターに乗り込んだ滝川さんに続き、私もエレベーターに乗り込むと、壁に背を預けた滝川さんがなんて事無いように頷いた。 「ああ。加納さんに対する根も葉もない噂を投稿した三橋まどかを解雇した事は社内に報せてある。それと、ネットニュースを報じた会社に対しても、滝川グループが法的措置を取る動きは報せているから、利口な社員は口を噤む」 「な、なんだかそれって……」 「独裁、だなんて言わないでくれよ?加納さんは怒っていいし、俺は社員を守る義務がある。不当な扱いはさせないよ」 滝川さんが話し終わると同時、エレベーターが目的の階に到着する。 先にエレベーターから出る滝川さんを、私は慌てて追った。 ◇ 「──やられた」 黒瀬公紀は、会社の一室であるメールを開き、内容を確認した途端、投げやりに呟き、背もたれにどさりと体を投げ出した。 「あの女と手を組んだのが失敗だったな……。だが、滝川のみならず、滝川グループ会長が動くと言う事は……やはりあの加納と言う女性は、加納家の娘か……。どうして今まで表に全く出てこなかったんだ……?」 ぎい、と背もたれに凭れつつ、黒瀬は自分の顎に手を当てて、考える。 加納家には一人娘がいる事は業界内では有名だった。 だが、その一人娘が業界のパーティーに出てくる事も、結婚したと言う話も何も聞いた事はなかった。 だから、加納家の一人娘は容姿が酷いとか、両親の才能を受け継がず、冷遇されている、などと噂されていたのだ。 だが、それも年月が経過すると共に収まっていた。 加納家は、後継者がいない。 そう、思われていた。 「だが……。あのパーティー会場で加納さんを庇ったのが、他でも無いあの加納社長だ。その時点では確信を得られなかったが、滝川
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-11
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138話

黒瀬は、スマホを取り出す。 登録されている麗奈の名前を探し出し、簡単にメールを送った。 「俺が責任を取らされる前に、全部の責任をこの女に押し付けておかないとな」 にんまり、と口元を歪めた黒瀬は、上機嫌でパソコンに向き直った。 ◇ 会社では、ひっきりなしに滝川さんのスマホが鳴っていた。 苛立たし気に電話口の相手に滝川さんが凄む事も多く、口調も厳しい。 午前中は、殆ど電話対応に追われ、落ち着いたのは昼食をゆうに過ぎた頃だった。 「……すまない、加納さん。午前中がこんな事になって、昼飯を食べ損ねたな」 「私は大丈夫ですが、滝川さんこそ大丈夫ですか?」 「俺は慣れてるから大丈夫」 滝川さんは話しながら腕時計を確認し、言葉を続ける。 「一旦落ち着いたから、外に食べに行こう」 「分かりました」 もし、滝川さんの忙しさがこのまま続けば、どこかのお店のデリバリーを頼もうとしていたけど、そうはならなくて安堵する。 デリバリーは、偏ったメニューも多い。 いくら昼食抜きには慣れっこだと言っても、秘書として雇ってもらっている以上、しっかりしたご飯を摂ってもらわないと、と考えていた。 社長室から出る滝川さんに続き、私もその後を追った。 会社から近いイタリアンのお店にやって来た私たち。 滝川さんがお店に入るなり、お店の人がさっとやって来て、個室のお部屋に通してくれた。 食べられない物はないし、滝川さんにお勧めを教えてもらい、それを注文する。 食事が提供されるまで、時間が空く。 滝川さんは、出されたお水のグラスを持ち上げ、軽く喉を潤してから私に話しかけた。 「加納さん、昨日話した内容だが──」 「……!はい」 昨日話した内容。 それは、私たちの婚約の事についてだろうか。 そう思い至った私は、居住まいを正す。 「婚約発表の準備は順調に進んでいる。ひと月後のパーティー前に、加納さんのご両親に話を、と言っていただろう?」 確かに。 滝川さんは昨日そう言っていたのを、思い出す。 私はこくりと頷き、滝川さんの言葉の続きを待った。 「昨夜、会長が加納家に連絡を入れた、みたいだ」 「え……っ、え!?もう、ですか!?」 「ああ、気が早くてすまない。……それで、加納家からは思っていたよりも色良い返事が返ってきたようで、一度加納家に俺と加納さん
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-12
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139話

この場所で、聞こえるはずの無い声。 その声が聞こえた方向に、私も滝川さんも勢い良く顔を向けた。 そこには、部屋の扉を開けた姿勢のまま、険しい表情の清水瞬が立っていた。 「もう1度言え、滝川。誰と、誰が婚約だって……?」 「……清水社長、勝手に他人の部屋に入ってくるのは、看過できない。……出て行ってくれ」 「他人──!?はっ、他人だと!?」 何がおかしいのか、清水瞬は滝川さんに向かって嘲るような笑みを浮かべると、ぎろりと私を睨み付けた。 そして、部屋の入口で立ち止まっていた清水瞬が、室内に向かって一歩足を踏み入れて来る。 私は、彼から距離を取ろうとすぐに移動しようとしたけど、私が移動するより清水瞬に腕を掴まれる方が早かった。 「言ってみろ、心……っ!まさか、お前と滝川が婚約なんて……っ」 「──痛いっ、離してくださいっ」 「清水社長。うちの社員に乱暴を働かないでくれ。それに、加納さんは俺の婚約者だ。近々、正式に婚約発表も行われるし、婚約パーティーも開催する予定だ」 すぐに滝川さんが立ち上がり、私と清水瞬の間に入り、掴まれていた腕を解放してくれる。 私は急いで滝川さんの背後に隠れ、勝手に入室してきた清水瞬を睨んだ。 まさか、私に睨まれるとは思わなかったのだろう。 清水瞬は一瞬、傷付いたような感情を浮かべたけど、すぐにそれが怒りに変わるのが手に取るように分かった。 「ふざけた事を……っ、心!この間迎えに行っただろう。俺の家に来れば安心だ。こいつには心を守る事なんて出来やしない。俺と一緒に家に帰れ」 「な、何を……!ふざけた事を言っているのは清水社長でしょう!?どうして私が、関係ない人の家に行かなくちゃならないんですか!」 「関係なくないだろう。心が誹謗中傷を受けたのは、俺の子供を妊娠してたからだろう。そ
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-13
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140話

ぱたん、と静かな部屋に扉が閉まる音が響く。 先程までの騒がしさが嘘のように、室内は静まり返った。 「加納さん……ごめん。勝手に名前で呼んだりして、嫌な気持ちになっただろう?清水を追い返すためとは言え、馴れ馴れしかった……」 滝川さんは申し訳なさそうに眉を下げ、私に謝罪をした。 だけど、滝川さんが謝る必要なんて1つも無い。 それに、私たちが婚約をするのは嘘ではない。例え、それが嘘の婚約だとしてもそれを知っているのは当人である私と滝川さんだけ。 仲が良い様子を他人に見せておけば、説得力だって増す。 滝川さんは、そんな狙いもあって清水瞬の前で私の事をわざと名前で呼んだのだろう。 だから私は滝川さんに申し訳なく思って欲しくなくて、ふるふると首を横に振った。 「全然大丈夫です。それに、婚約者だったら、いつまでも苗字で呼び合うのは、変ですもんね。その、心、と名前で呼んでください」 「ありがとう……、心。じゃあ、俺だけ名前で呼ぶのは変だから、心も俺の事名前で呼んでくれ。そうすれば、婚約者っぽく見えるだろう?」 滝川さんから笑顔でそう提案され、私はぐっと息を飲み込む。 確かに、滝川さんの言う通りだ。 それに私もそう考えていた事は、事実だし……。 私はちらり、と滝川さんを見上げる。 滝川さんは期待に目を輝かせて私を真っ直ぐ見つめ返している。 私は、覚悟を決めたように滝川さん──いえ、涼真さんを真っ直ぐ見つめ返しながら名前を呼ぶ。 「りょ、涼真さん……」 私が小さく名前を呼ぶと、その声が届いていたのだろう。 涼真さんは嬉しそうにはにかみながら「うん」と返事をした。 そんな事をしている内に、個室の扉がノックされ、食事が運ばれてくる。 そう言えば、まだ昼食を摂っていなかったのだ。 清水瞬が急に入ってきて、バタバタしてしまったけど本来の目的は昼食を摂りにやってきたのだった。 それに、婚約についても話し合う事ができた。 私と涼真さん、は食事を始める。 どこか気恥しいような、なんとも言えない空気が室内には流れていた。 食事を終え、部屋を出る準備をする。 スーツを羽織った涼真さんが、ふと私に顔を向けた。 「心。もしかしたら、清水が外で待っているかもしれないから、手を繋いでもいい?」 「──っ、た、確かに……どこかで見ているかもしれません
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-14
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