「加納家と旧知の仲であれば、縁組などもすんなりと進んだだろうが、大昔に交流があった程度。加納さんと一緒になりたいのなら、自分でどうにかするしかないぞ」 「ええ……。分かって、います。今回の一件で手助けして頂いただけでも助かります」 「うむ……。ならば、黒瀬には十分気をつけていた方がいい。今回、加納さんを手に入れる為にあの男が動いたのだろう」 「……柳に、手を貸したって言うんですか?あの男が?」 会長の言葉に、驚きを隠せない。 あんな、得体の知れない女と手を組んで、こんな事を仕出かしたと言うのか。 あの、黒瀬が? 「あのパーティーで、加納さんを見初めたのだろう。 清水家の倅のために加納さんがした事を黒瀬が知れば、益々欲するぞ?早く婚約なりなんなりした方がいい」 会長の言う事は、一理ある。 加納さんが清水瞬を助けるために動いたのは、まだ子供の頃の事だ。 それほど昔から加納さんは才能に溢れていた。 もし、黒瀬がその事を知れば。 元々、素晴らしい女性ではあるが、そこに「利益」が生じる。 経営者として、同じ服飾関係の仕事に就く人間からして、加納さんのセンスや才能は喉から手が出るほど欲しいだろう。 だけど、俺は加納さんの気持ちを大事にしたい。 事を強引に進めるつもりはない。 「ご忠告、痛み入ります。肝に銘じておきます」 「悠長に構え過ぎぬようにな……」 「ええ、もちろん」 会長は、ため息をついて手のひらをひらひらと振る。 話は以上なのだろう。 俺は会長に一礼してから急いで書斎をあとにした。 何だか無性に加納さんに会いたくなる。 会長から、黒瀬が加納さんを狙っている、と言う言葉を聞いたからだろうか。
Zuletzt aktualisiert : 2025-12-08 Mehr lesen