Alle Kapitel von 婚約者は私にプロポーズをしたその口で、初恋の幼馴染に愛してると宣う: Kapitel 121 – Kapitel 130

191 Kapitel

121話

加納家──。 それは、滝川家と並ぶ、古くから続く大きな家だ。 清水瞬の家も古くから続く、由緒ある財閥の家だが、加納家はそれよりも歴史が長い。 加納家は、衣料業界では1番の力を持ち、政界にも顔が利く。 そんな大きな家が、私の実家。 けど。 厳しくも、温かい両親と絶縁状態に陥ってしまったのは、偏に私が愚かだったから。 今よりもまだ私が幼かった頃。 清水瞬に惚れ込んでしまっていた私は、彼の家の窮地を救うために、自分が考え、編み出した生地の技法も、生み出したその生地でデザインした服の権利も、売ってしまったのだ。 ただただ、清水瞬を助けたい一心で全ての権利を手放した昔の私の行動は、愚かとしか言いようがない。 その生地は、天然素材を使用した保温にも、冷感にも大いに優れた物だった。 その生地を使用して、私がデザインした服は、瞬く間に話題になり、すぐに国内に流通して国内一のシェアを獲得した。 だけど、私は全ての権利を手放していて。 それを知った私の両親が激怒したのだ。 私が編み出した技法も、その生地を使ってデザインした服も、全ての権利は清水瞬の会社に渡ってしまったから──。 窮地に陥ったいた清水家の会社が、それで持ち直したのだから莫大な利益を得たのは想像にかたくない。 その時の私は、清水瞬に入れ込んでいたから、両親に反発して、大喧嘩。 私は飛び出すように加納家を出てしまった。 だから、私は国内の大企業の子供が通う学校には進学できなかった。 家を出た私は、最低限の仕送りで普通の公立校に通うしかなかったから──。 けど、滝川さんは中学生の時に。私がまだ加納家にいる時に助けてくれて、顔見知りになっていた。 時折、加納家に仕事の件で父と話す滝川家当主に連れられて、滝川さんも加納家に来ていたのを覚えているから。 何度か顔を見た事があったから、お互いに顔だけは知っていたのだ。 だから、滝川さんは私の家の事を知っていた。 絶縁状態である事も知っていたから、私の家の事を勝手に滝川家、本家の会長に話してしまった事が後ろめたいのだろう。 だけど、今。この状況では話す他なかっただろう。 「滝川さん、謝らないでください。私が加納家の娘だって事は、遅かれ早かれ知られていたでしょうし……それに、先日のパ
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-02
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122話

私の様子が落ち着いたのを見て、滝川さんがソファの向かい側に移動する。 そして、これからの事を簡単に私に説明してくれた。 滝川本家、会長には私の家系の事はもう話している。 事情も全て理解してくれて、全面的に私を支援して、会社にい続けられるよう手を打つ、と滝川さんと約束をしてくれたらしい。 今回の騒動で被った分は、記事を出した会社に賠償させる。 それは、法的措置を取ると言う事だ。 事実無根の、何の裏も取っていない情報を、あたかも真実のように語り、株価を下落させた暴挙は、到底容認できない。 そして、滝川グループが法的措置に移った事を業界内に知ら締めれば、第二、第三の被害を食い止める事に繋がる。 そして、驚いたのは個人への対応だった。 「さっき、加納さんも見てしまっていたけど、SNSの書き込みだな。……インフルエンサーや、名のある芸能人。著名人の発言力は大きい。そう言った人達が誹謗中傷の投稿をしたら、沢山の人の目に止まるだろう?彼らが、物事を大事にしてしまう事に一躍を買っている。そういった個人に対しても、滝川グループは法的措置を取る流れだ」 淡々と説明をする滝川さんに、私はただ頷くしかできない。 被害を被ったのは、滝川さんの家だ。 滝川さんや、会長が「こう動く」と決めたのなら、私がどうこう言える立場じゃない。 「分かりました。ご迷惑をおかけしっぱなしで、本当にごめんなさい、滝川さん。そしてありがとうございます……!」 私が言葉と同時に頭を下げると、滝川さんは「頭を上げてくれ」と言う。 「加納さんの事情を知っていたのに、配慮が足りなかった。俺の考えが甘くて、傷付けてごめん。……加納さんは、まだ俺の会社で働いてくれるか?」 不安気に、眉を下げてそう口にする滝川さんに、私は「もちろんです!」と答える。 「まだ、滝川さんの会社でちゃんとお仕事らしいお仕事ができていません……!ぜひ、これからも一緒に働かせてください!」 「──良かった、ありがとう加納さん」 「こちらこそ、ありがとうございます滝川さん」 ふふ、とお互い目を合わせて笑い合う。 そうしていると、滝川さんが「あっ」と小さく声を上げた。 「そうだ、加納さん……!1つ君に協力してもらいたい事があって──」 言いにくそうに、申し訳なさそ
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-03
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123話

◇ ドタドタ、と慌ただしい足音を立てながら自宅の玄関ドアを開ける。 「──麗奈、麗奈いるか!?」 廊下を通り、リビングを見ても、いない。 風呂場にも、麗奈の姿は、無い。 寝室にも、麗奈の姿は、無い。 「麗奈……?こんな時間に、どこに?」 もう、夜も更けた時間帯だ。 それなのに、麗奈が部屋にいないのはどう考えてもおかしい。 「くそ……っ麗奈に心の事を相談しようとしたんだが……」 瞬は、自分のスマホを取り出して麗奈に電話をかける。 だが、呼出音は鳴らず、電話から聞こえてくるのは「電源が入っていないか、電波の届かない場所に──」と言うアナウンスが流れるだけ。 何度かけても麗奈のスマホは繋がらず、瞬は苛立ちスマホをソファに投げ付けた。 「どこに行ったんだ……っ!心が大変な目に遭ってるって時に……っ」 たまたま、確認していたネットニュース。 そうしたら、滝川の会社が。滝川自身も炎上していて、瞬はそれに楽しげに笑った。 どんな内容で炎上しているんだ、と瞬がそのネットニュースをタップして、読み込んで行くと。 そこには、明らかに心と思われる女性の写真が載せられて、滝川を騙した悪女として登場していた。 心の顔にはモザイクがかかっていたが、長年一緒に過ごしていた瞬は、それが心だと言う事にすぐに気がついた。 何が、どうしてこんな事になっているのか──。 慌てて記事内容を読み込むと、心がとんでもない悪女として面白おかしくネット記事にされていた。 瞬は、それを見た瞬間何故か怒りが込み上がった。 心はネットに書かれているような、そんな酷い女じゃ
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-04
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124話

未だに繋がらない電話に、苛立ちが最高潮になったその時。 瞬の家の玄関が開く音がした。 「──麗奈!」 「しゅ、瞬……っ?どうしたの、そんなに慌てて」 駆け寄ってくる瞬の姿に、麗奈はびっくりしたように瞳をぱちくりと瞬く。 だが、すぐに瞬はこんな時間まで帰ってこない自分を大層心配していたのだろう、と納得した麗奈は、笑顔で続けた。 「こんな時間まで外にいて心配かけちゃったわよね、ごめんなさい。カフェで友人に会って盛り上がっちゃって……スマホの充電も切れちゃったの。これからは気をつけるわ、瞬」 麗奈は頬を染め、はにかみながら瞬の頬に手のひらを添え、自分の唇を寄せる。 ここ最近。 あの新作発表パーティーで、麗奈が心を陥れようとした事が瞬に見られてしまった日から、2人の間は少しギスギスしていた。 もう、心には関わるなと言われていたのに、麗奈はパーティー会場でわざと心に恥をかかせようとして、失敗した。 しかも、その企みを見破られていて、瞬に責められたのだ。 ちょっとした言い合い、口喧嘩のような物をして、暫くは雰囲気が悪かったのだが、麗奈はにんまりと笑みを浮かべる。 (結局、瞬も初恋の私が忘れられないのよね……。私が少し帰ってこないだけで、これだけ取り乱しちゃうんだから……) 胸中でほくそ笑みつつ、唇を重ねようとしていた麗奈は、だが瞬から呆気なくべりっと剥がされた。 「ぇ……っ」 「そんな事より、麗奈!こんな大変な時に外を呑気に彷徨いていたのか!?心がっ、心が大変な事になっているんだぞ!?」 「──は、?心……?」 「まさか、ネットニュースを見ていないのか!?これだけ滝川の会社が炎上しているのに?」 瞬は呆れたように首を横に振ると、麗奈に見えるようにスマホを操作し、問題のネットニュースの記事を画面に表示してスマホを麗奈の目の前に突き出した。 「心が、酷い誹謗中傷に遭っている。滝川の家に居たら、そのうち記者に撮られるだろう。そんなのは流石に可哀想だ。うちに避難させるから、心の面倒は見てやれ」 「……は、?何を……何を言っているの、瞬?」 信じられない、と真っ青な顔で麗奈が答える。 何とか笑みを浮かべようとする麗奈だが、上手く笑顔を作る事はできず、口端がひくひくと引き攣り、歪んでしまう。
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-04
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125話

◇ 滝川さんから、滝川会長が食事に招待したいと言っていると話をされた、翌日。 朝、朝食を摂っていると向かいに座っている滝川さんが申し訳なさそうに切り出した。 「すまない、加納さん。昨日の話なんだが……早速今日の昼にいいだろうか?」 「──!会長のお誘い、ですか?」 私の言葉に、滝川さんは申し訳なさそうなまま、頷いた。 「今日、昼に迎えに来る。だから、今日は会社には出社しなくて大丈夫だ。……本家に向かう準備だけしておいてもらってもいいか?」 「分かりました。……入社してすぐにこんな事になってしまい、ごめんなさい滝川さん」 「加納さんのせいじゃないって言っただろう?明日は、普通に出社してもらうから、気にしないでくれ」 加納さんにはバリバリ働いてもらうよ、と悪戯っぽく笑う滝川さんに、私もこれ以上の謝罪は口にせず、笑みを返す。 会社に向かう滝川さんと、持田さん間宮さんを見送って、私は滝川本家での昼食会までの時間をお手伝いさんと一緒に家事をこなしながら過ごす。 家事以外の時間は、陸と凛と遊んだりしていると、あっという間に時間が経った。 滝川さんが迎えに来てくれる時間になり、私は滝川本家でも失礼にならないよう、スーツに着替えた。 今の私は、滝川さんの──滝川社長の秘書兼、デザイナーとして雇ってもらっているから、この格好でおかしくないだろう。 私のスマホに、滝川さんから連絡が入る。 用意していたバッグを持って、私はお手伝いさんに挨拶をして急いで玄関を出た。 すると、玄関まで迎えに来てくれていたのだろう。 目の前に立っていた滝川さんの胸に飛び込むような形になってしまう。 「──ぅぷっ」 「す、すまない加納さ
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-05
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126話

「はい、大丈夫です。持田さんが間に入ってくれて、清水瞬は帰って行きました」 「それなら、良かった……それにしても、加納さんに接触してくるなんて……。何を考えているんだ、彼は……」 ぶつぶつ、と滝川さんが低い声で唸るように呟く。 確かに、清水瞬の行動は理解できない。 何故、彼が私を気にしているのか。 あのネットニュースを見て、どうして私の身を案じるのか。 「……清水瞬は、あのネットニュースには無関係なのかもしれません」 「──彼が無関係?……それは、どうして?」 「私を、危険だからとどこかに連れて行こうとしていました。それに、私が言った言葉に困惑していたので、本当に何も知らないのかもしれません」 「……なら、柳麗奈1人が企てた事だと言う事か?」 「でも、そんな事……できません、よね……」 社内チャットの件だけならば、麗奈1人でも企てる事は出来る。 だけど、それからネットにまで範囲を広げ、ネットニュースにまでし、記者は偽名で実態を掴めない。 確実に、協力者がいる。 しかも、ある程度力を持った、協力者が。 その協力者が、権力も、金銭的に余裕もある清水瞬だと思っていたけど、昨日の彼は本当に何も知らない様子だった。 「そうだな……。柳麗奈だけには不可能だ。清水瞬が柳麗奈の手助けをしていたのかも、と思っていたが……それが違うのであれば、清水の家と同等──もしくは、それ以上の力を持った家が協力している、と言う事か。だが……何のために……?」 「滝川さんの会社に、打撃を与えたいのでしょうか?」 「それは、有り得るな。潰したいと考えている人間は多いだろうが……柳麗奈の標的は加納さんだろう?どう、彼女と結び付いたのか……」 そこまで考えていた滝川さんは「もしかしたら」と呟いた。 「あのパーティー。……柳麗奈も、清水瞬のパートナーとして出席していたな」 「──っ!確かに、そうです!もしかしたらそこで麗奈は!」 「ああ。利害が一致した誰かがいたのかもしれないな」 赤信号で車が止まる。 ハンドルから手を離した滝川さんは、そのまま私の頭をそっと優しく撫でてくれた。 「けど、近い内に全部分かると思う。会長も協力してくれるし、安心してくれ」 ふわり、と微笑んだ滝川さん。 滝川さんがそう言ってくれるだけで、とても心強い。 不安も、ずっと感じ
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-05
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127話

滝川本家。 そこに着いたのは、ちょうどお昼に差し掛かる頃だった。 「加納さん、足元気をつけて」 「ありがとうございます滝川さん」 先に降りた滝川さんが、車のドアを開けてエスコートをしてくれる。 滝川さんの手を借りて車から降り、私は駐車場から見える本邸を見上げた。 滝川本家は、和洋館といった造りだ。 庭園はとても広く、和洋折衷の造りであるのに、どちらも上手く融合しあっていて、とても馴染んでいる。 本邸は、殆ど洋風な造りをしているけど、要所要所に日本古来の純和風な造りも取り入れられていて、見事に融合している。 滝川さんの本邸を、この目で見るのが初めてだった私は、圧倒されてしまった。 「加納さん?大丈夫か?砂利が多いから、足元気をつけてくれ」 「──す、すみません。つい、見とれてしまって」 「そうか?加納家の本邸も、見事だとは思うが」 「随分、長い間あの家には戻っていないので……大分うろ覚えなんです」 「すまない、そうだったな……」 滝川さんは、私が本家から出た理由を知っている。 気まずそうに顔を背けてしまった。 だけど、滝川さんが気に病む事はない。 いくらでも、私は両親に会いに行く事だって、謝罪をしに行く事だってできたんだ。 だけど、それを先延ばしにして、逃げていた。 けど。 こうして滝川さんの本家に招かれた事で。 私は加納家からも、両親からも。 そして、過去に犯した愚行からももう目を背けないし、逃げないって決めた。 両親と向き合わなくちゃいけないから。 滝川さんの案内のもと、歩いて行くと庭を過ぎて本邸の玄関が見えた。
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-06
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128話

「よく来てくれたな。さあ、こっちに来て座りなさい」 上座に座っていた老齢の男性が、入口に立ち竦んでいた私と滝川さんに向かって朗らかに声をかけた。 くしゃり、と笑みを浮かべたその男性が、恐らくこの滝川家の主であり、滝川さんのおじい様である、滝川会長なのだろう。 両側に座っているのは、滝川さんのご両親や、親戚なのだろう、と思う。 みんな、優しく微笑んでくれている。 だけど、私は緊張しきってしまっていて、歓迎してくれている人々の顔をしっかりと見る余裕がなかった。 隣にいた滝川さんが、答える。 「お待たせしてしまい、すみませんおじい様。それに、皆様。……加納さん、行こう。俺たちの席はあっちみたいだ」 「わ、分かりました……。し、失礼します」 滝川さんに促され、空席に向かう。 ぽつん、と空いた椅子は、おじい様のすぐ隣の席。 そこは、通常であれば滝川さんのご両親が座っているような場所なのに。 大丈夫だろうか、失礼な事をして、怒っていないだろうか──。 そんな心配がむくむくと沸き上がり、私はちらり、と滝川さんのご両親であろう方を見やる。 だけど、ご両親だと思われる男女は、にこやかな笑みを浮かべたまま、私に向かって「緊張しないで、どうぞ座って」と優しく声をかけてくれた。 私と滝川さんが席に着くと、待っていた、とばかりに食事が運ばれ始める。 「加納さん。こちらに座っているのが、滝川会長。俺のおじい様、だな」 「本日はお招きいただきありがとうございます。加納心です。よろしくお願いします」 滝川さんに紹介してもらい、私も自分の名前を名乗って、ぺこりと頭を下げる。 滝川会長は、何故だか私を懐かしそうに見つめ、優しく目を細めて下さり、小さく1つ頷いた。 「こちらこそ、急な誘いになってしまい、すまないね。緊張せず、食事を楽しんでくれ」 「ありがとうございます、会長」 滝川会長の印象は、世間で出回っている厳格でとても厳しい経営者、と言うのとは違い、優しそうな「おじいさん」そのものだった。 孫である滝川さんを朗らかに見つめ、ずっと微笑んでいる。 次に滝川さんは、ご両親であろう向かいに座る2人の男女に顔を向けて私に説明してくれる。 「向かいに座っているのが、父。隣が母だ」 「よ、よろしくお願いします」 「全く、お前はそんな適当に……よろしく、
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-06
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129話

招かれた昼食会は、緊張して食事が喉を通らないだろう、と言う当初の気持ちとは裏腹に、とても和やかに進んだ。 こんな風に迷惑をかけてしまった私に対して、滝川さんのご両親も嫌な顔や雰囲気1つ滲ませる事なく、苦手な食べ物や好みの食べ物などを聞いてくれて、笑顔で会話をしてくれる。 最初こそ、滝川さんのおじい様の圧倒的なオーラに圧されていたけど、おじい様と会話をしていれば、おじい様──滝川会長はとても優しく、大らかで、楽しい方だった。 滝川さんの親戚の方々も、みんな私に好意的で、優しい。 食事も終盤、最後は食後のデザートを残すところのみ、と言う頃。 口元を拭っていた滝川会長は、先程まで浮かべていた笑みをすっと消し、真面目な顔つきに変わった。 それまで笑顔で食事を楽しんでいた他の方々も、真剣な顔つきに変わり、空間の空気ががらりと変わる。 「会長……」 滝川さんが、まるで咎めるような声を出す。 けど、滝川会長は滝川さんの言葉なんて意に介せず、すっと私に視線を向けた。 「加納さん。楽しい話ばかりをして今日を終えようと思ったんだが……やはり真面目な話もしておかねば」 「──っ、はい。会長」 室内の雰囲気に、私も背筋を伸ばして会長に顔を向ける。 私の隣に座っている滝川さんだけが、どこか怒っているような、咎めるような雰囲気を醸し出しているけど、会長は構わず話し出した。 「此度の、騒動だが……。こちらで情報を流出させた記者を当たってみたが、偽名だった。それは、涼真から聞いているな?」 「はい、お聞きしています」 「うむ。今度は、その記者が所属している会社に対して、我々は法的措置の準備を始めた。そこで、その会社に投資している者が浮かび上がった」 「投資、ですか……?」 「ああ。……黒瀬、公紀。……聞き覚え
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-07
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130話

会長は一旦口を噤んだあと、言葉を続けた。 「もしかしたら、黒瀬は今回の件で確証を得たかったのかもしれないな。加納さん、あなたが窮地に陥った時、加納家が動くのか、どうか」 加納家が動いてしまえば、私の実家が明らかになってしまう。 それを、確認したかった──? でも、何のために……。 私がその疑問を口にする前に、会長はふ、と視線を逸らしてしまい、話はそこで終わってしまった。 何だか、無理くり話を切り上げたような。 そんな違和感が残るけど、話の続きを、と私が会長に言えるはずもない。 どこか、不完全燃焼のような、もやもやとした謎だけが残った。 ◇ 昼食会が終わり、社に戻るため、俺と加納さんは一足先に本家を出る事にした。 まだ食後のお茶を楽しんでいる親戚や、両親をちらりと見やるが、彼らは特に俺に何かを話しかける様子は無い。 「加納さん、家に送るよ。明日から普段通り出社して欲しい」 「分かりました、滝川さん」 今朝はまだ、社内は加納さんの噂でざわめいていた。 加納さんに対する疑念の目は、まだちらほらとあった。 それを全部無くして、加納さんが傷つかないようにしなくてはならない。 だが、それも今日1日あればどうにかなるだろう。 滝川本家がネットニュースで記事を出した会社を訴えるのだから、誰もがきっと口を噤む。 そう考えながらホールから出ようと歩いていると、ふと背後から名前を呼ばれた。 「涼真。少しいいか?」 「会長……」 俺のおじい様──会長から声をかけられて、足を止める。 加納さんと一緒に話を聞くのだろうか、と思ったがどうやらそうではないらしい。 会長が
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-07
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