あれから、私と涼真さんは約束をした。 さっきは会社で涼真さんと抱き合ってしまったけど、会社ではいつも通りに過ごし、家に帰ってから──。 自宅で、少し触れ合いに慣れる練習をするようにすると言う涼真さんの提案に私は頷いた。 私は、まだ涼真さんに抱きしめられたり、距離が近くなったりすると、緊張して体が硬直してしまうから。 そんな状態じゃあ、婚約者の振りをしているのが。偽物の婚約者だと言う事が、パーティーに参加している参加者にバレてしまう。 だから、パーティーまでの数日間。 私は涼真さんと触れ合うのが自然に出来るように、慣れるようにその提案に乗った。 ──の、だけど。 「心……ガチガチに緊張してる……大丈夫か?」 「ふぁいっ!大丈夫ですっ!」 仕事が終わって、家に帰ってきた私たち。 夕食を終えて、寝るまでのまったりとした時間を、この触れ合いの時間にあてた。 場所は、涼真さんの部屋。 私たちは、ソファの前で立った状態で向き合っていた。 私が緊張しているから、涼真さんが心配そうに話しかけてくれたけど、私は変な声を出して返事をしてしまった。 そんな私の返事を聞いた涼真さんが、きょとんと目を丸くする。 そして、耐えきれないと言うように笑った。 「ふ、くく……っ、ふぁいって……」 「涼真さん……っ!」 「悪い悪い、ほら、機嫌直してくれ心」 私が恥ずかしさで顔を真っ赤にして涼真さんを睨むと、笑いながら涼真さんが私を引き寄せた。 ぐっ、と強く体を抱き寄せられ、そのまますっぽりと涼真さんの腕の中に閉じ込められる。 涼真さんの手は、私の後頭部に回って、私を落ち着かせるようにゆっくりと優しく私の髪を梳いてくれる。 とく、とく、と一定のリズムで鼓動を刻む涼真さんの心音が、とても心地良い。 私は、無意識に涼真さんの胸元に擦り寄ってしまう。 その瞬間、涼真さんの体がぴくりと動いて、心臓が一際大きく鼓動を刻んだ。 「──涼真さ」 「ソファに座ろう、心」 さっと私から顔を逸らした涼真さんが、私の手を引いたままソファに座る。 このまま、涼真さんの隣に座ればいいのかな? そう考えた私が、そうしようとした時──。 「違う、心」 「──え?」 「ほら、触れ合いに慣れてもらわないといけないんだから」 「えっと……?なので、涼真さんの隣に……」
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