All Chapters of 婚約者は私にプロポーズをしたその口で、初恋の幼馴染に愛してると宣う: Chapter 301 - Chapter 303

303 Chapters

301話

◇ 「本日はありがとうございました」 「いやいや、こちらこそ!お2人に会えて良かったですよ。どうですかな、この後予定が入っていなければ」 帝都ホテル。 専務取締役の部屋で会議を終えた涼真さん。 涼真さんの後ろに付き従っていた私は秘書として徹底していたけど、専務取締役は私たちが婚約している事を知っていたのだろう。 涼真さんと私に向けて手でお猪口の形を作り、口元にそれを運んで見せた。 お酒の席へのお誘いだ。 この後、予定が無ければもちろんご一緒出来ていたけど──。 涼真さんは申し訳なさそうな表情を作ると、専務へ断りの言葉を告げた。 「有難いお誘いですが申し訳ございません、この後も会議が入っておりまして……」 「なんと……!それは残念……。また次の楽しみに取っておくとしましょう」 「ええ、次は是非」 「加納さんも、次は一緒に食事を楽しみましょう」 「ありがとうございます」 専務は私にも笑顔で話しかけてくれて、私も笑顔で言葉を返す。 エレベーターで下まで送ってくれる、と言う専務の言葉に甘え、3人で談笑しながらエレベーターに乗り込んだ。 「そう言えば、御社で来春発表の──」 「そこまでご存知ですか……!ええ、それはですね──」 ……? あれ、おかしいな。 涼真さんと専務の声が、遠くなるような気がする。 頭がぼうっとして、ぐらぐらとする。 いけない、このままだと体がふらついてしまいそうだ。 私は内頬を強く噛み締め、何とか意識を保っていた。 だけど、エレベーターが下に着いて2人がエレベーターから出るのを待つため、私はエレベーターの操作盤にさっと移動しようとした。 だけど──。 「──っ、」 「心!」 動いた瞬間、ぐわん、と私の頭が揺れた。 そして体からふっと力が抜けた感覚。 私の名前を焦って呼ぶ涼真さんの声。 驚いたような顔の専務──。 ああ、いけない。 取引先に迷惑をかけてしまう──。 そこまで考えた所で、私の意識はぶつり、と切れてしまった。 ◇ 次に目が覚めた時、私の視界に入って来たのは見慣れない天井だった。 「……?」 ぼうっとする頭で僅かに身動ぎをすると、すぐ側から涼真さんの焦ったような声が聞こえた。 「心!目が覚めたか!?」 「涼真さん……?ごめんなさい、私……」 急いで起き上がろう
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302話

「な……、なんっ、本当、ですか……!?」 涼真さんの感極まったような声が部屋に零れる。 声も震えていて、涼真さんは自分の顔を手で覆っていた。 「ええ、間違いないですよ。まだ胎嚢が確認出来るくらいの小さな袋ですが……エコーで見てみますか?」 「ぜ、是非!」 女性医師の言葉に、涼真さんは即座に答える。 私と言えば、まだ現実味が全然なくて。 唖然としたまま、エコーの準備が着々と進められて行くのを眺めている事しか出来なかった。 実感がまだ湧いていない私に、涼真さんが目元を赤く染めたまま、私の手を握って声をかけてくれる。 「心、心ありがとう……。本当に嬉しい……」 「涼真さん……」 看護師さんに促され、ベッドに横になる。 お腹に機械を当てられ、モニターに白黒の映像が映し出された。 それを確認しながら女性医師は丁寧に説明してくれる。 「ここにある小さな丸い形、分かりますか?これが胎嚢、と呼ばれる赤ちゃんを包む袋です。これからどんどん赤ちゃんが成長していきますよ」 「……本当に、赤ちゃんが?」 「ええ。これからつわりも始まると思いますから、体調の変化には気をつけてくださいね」 「涼真さんとの、赤ちゃん……?」 モニターに映った胎嚢を見た瞬間、さっきまで湧いてこなかった実感がじわじわと湧き出てくる。 私のお腹には今、涼真さんとの赤ちゃんがいるんだ。 そう考えた瞬間、私の視界はぶわっと涙で滲んだ。 その間も、涼真さんは女性医師に色々と質問していて。 つわりが酷い時にはどうしたら、とか。 仕事は移動が多いから大丈夫か、とか。 どんな事を気をつければいいか、とか。 色々な事を聞いていたけど、私は次から次へと溢れてくる涙を拭うのに必死で。 看護師さんからティッシュを渡されて、私は早く泣き止まないと。そんな事ばかり考えていた。 病院での診察が終わり、涼真さんと診察室を出た私達は、車で家に帰ってきた。 「心、荷物は?これだけか?」 「りょ、涼真さん!バッグくらい自分で持てますから!」 「駄目だ、まだ妊娠初期なんだから安静にしないと」 涼真さんは私の荷物を渡してくれる事なく、車から降りる際もいつも以上に気を使ってくれた。 「家も階段があるから危ないな。寝室を1階に移動しよう。それに家に入る前の階段も危ない。新築で家を建てるか?」
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最終話

◇ 2回目の検診の日。 この日も涼真さんはお休みを取ってくれて、検診に一緒に来てくれた。 そして、この日。 前回と一緒の女性医師から、驚く事を告げられた。 「──ああ、やっぱり。前回も違和感があったのですが、確信しました」 「えっ?」 「心音が2つ確認できますね」 「──えっ!?」 「おめでとうございます、お子様は双子ですね。双子の妊娠です」 ◇ 「──ぅっ、うぅ……」 「心、心大丈夫か?」 「ごめんなさい、涼真さん……。涼真さん、明日もお仕事で早いのに……」 「気にしないでくれ。心が辛い時に1人のうのうと眠っていられない」 涼真さんは、私がつわりで辛い時もずっと傍に寄り添ってくれていて。 匂いが駄目でご飯が食べられない時は、私が食べられる物がないか、とスーパーに走ってくれて。 沢山のフルーツや、食べられそうな物を買ってきてくれた。 双子の妊娠は、私が考えていたよりも凄く大変で。 つわりも酷いし、体調の変化が出やすいし、お腹も凄く重くなる。 私の体調を心配してくれた涼真さんは、私の仕事を一時休職扱いにしてくれて。 私が家で1人になってしまわないよう、持田さんや間宮さん、それに母がしょっちゅう家にやって来てくれた。 以前会議終わりに倒れてしまい迷惑をかけてしまった帝都ホテルの専務取締役に涼真さんと一緒に後日妊娠を報告しに行くと、凄く喜んでくれて。 家族でいつでもホテルを利用してくれ、と言ってもらえた。 そして、やっぱり涼真さんは新築の家を建ててしまって。 私がお腹が大きくなる前に、新築の家が出来る前に賃貸のお家に移動した。 階段が少なく、私の移動しやすさを大前提に考えて見つけてくれた賃貸。 この子達が生まれる頃には、新築の家が出来上がるだろう、との事。 私の父は、初孫だと喜び、涼真さんのご両親と一緒になって色々とベビーグッズを競うように購入しているらしい。 ◇ 「──私の所に、また帰ってきてくれたのかな?」 「心?」 夜。 寝室で、ぽつりと呟いた私の声に涼真さんが反応する。 私は笑顔で涼真さんに向き直ると、言葉を続けた。 「以前、前の子を亡くしてしまったけど……。もしかしたら、一旦帰って、妹か弟を一緒に連れてきてくれたのかなって……ふと、そう思ったんです」 私の言いたい事を悟ったのだろう。
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