それからは。 私はサンプルからスーツに着替え直し、社長室に戻って仕事に集中した。 ──涼真さんが、私の事を「抱きたい」と言った。 その時の涼真さんの声も。視線も。 熱を帯びていて。 仕事をしているのに、その時の事を思い出してしまって、私は何度も顔を真っ赤にしてしまった。 仕事に集中しなくちゃいけないのに。 それなのに、涼真さんの事ばかり考えてしまう。 その日の私の集中力は、本当に酷い有様で。 涼真さんに話しかけられる度に、私の顔は真っ赤に染まってしまったり、肩を叩かれるだけで大袈裟に震えてしまったり。 だけど、そんな私をどこか面白そうな表情で見ている涼真さん。 彼の舌を噛んでしまった私には、涼真さんに強く言えなくて。 ──いえ、でも! 別室であんな事をした涼真さんも悪いのだ。 あんな激しいキスをして、体に触れられれば、意識だってしてしまう。 私が涼真さんの事を好きな事は、涼真さんにも伝わっているから。 好きな人に触られて、大袈裟に反応してしまうのは仕方の無い事。 私は、自分に言い聞かせるように、うんうんと頷いた。 「──加納さん」 「はっ、はい!何でしょうか社長!」 涼真さんに話しかけられて、私は大きな声で返事をしてしまう。 しまった──。 また変に反応してしまった。 涼真さんは私の反応に、ぱちくりと目を丸くしていたけど、私がまた涼真さんの事を考えていたのだ、と悟ったのだろう。 涼真さんはにんまり、と嬉しそうに口元を綻ばせて口を開いた。 「俺の事で頭の中がいっぱいになっている所悪いが、報告書の修正を頼んでもいいかな?」 「も、もちろんです社長。どちらの報告書でしょうか?」 「ああ。──会社の……」 涼真さんに指示をされ、私は自分のパソコンで共有フォルダからその報告書を呼び出して指示を聞く。 涼真さんの指示は、的確で無駄が無い。 仕事をしていると、頭の中の混乱が落ち着いてくるようで。 「分かりました。本日中に修正して上げ直します」 「ああ、悪い。残業になってしまうだろうが、頼む」 「お任せください」 私は、そのための秘書なのだ。 「ありがとう、すまないな」 涼真さんは申し訳なさそうにそう言ってくれるけど、私は笑顔で首を横に振った。 「いいえ。それが私のお仕事ですから」 「ああ。俺もなるべく
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