Semua Bab 婚約者は私にプロポーズをしたその口で、初恋の幼馴染に愛してると宣う: Bab 221 - Bab 230

303 Bab

221話

それからは。 私はサンプルからスーツに着替え直し、社長室に戻って仕事に集中した。 ──涼真さんが、私の事を「抱きたい」と言った。 その時の涼真さんの声も。視線も。 熱を帯びていて。 仕事をしているのに、その時の事を思い出してしまって、私は何度も顔を真っ赤にしてしまった。 仕事に集中しなくちゃいけないのに。 それなのに、涼真さんの事ばかり考えてしまう。 その日の私の集中力は、本当に酷い有様で。 涼真さんに話しかけられる度に、私の顔は真っ赤に染まってしまったり、肩を叩かれるだけで大袈裟に震えてしまったり。 だけど、そんな私をどこか面白そうな表情で見ている涼真さん。 彼の舌を噛んでしまった私には、涼真さんに強く言えなくて。 ──いえ、でも! 別室であんな事をした涼真さんも悪いのだ。 あんな激しいキスをして、体に触れられれば、意識だってしてしまう。 私が涼真さんの事を好きな事は、涼真さんにも伝わっているから。 好きな人に触られて、大袈裟に反応してしまうのは仕方の無い事。 私は、自分に言い聞かせるように、うんうんと頷いた。 「──加納さん」 「はっ、はい!何でしょうか社長!」 涼真さんに話しかけられて、私は大きな声で返事をしてしまう。 しまった──。 また変に反応してしまった。 涼真さんは私の反応に、ぱちくりと目を丸くしていたけど、私がまた涼真さんの事を考えていたのだ、と悟ったのだろう。 涼真さんはにんまり、と嬉しそうに口元を綻ばせて口を開いた。 「俺の事で頭の中がいっぱいになっている所悪いが、報告書の修正を頼んでもいいかな?」 「も、もちろんです社長。どちらの報告書でしょうか?」 「ああ。──会社の……」 涼真さんに指示をされ、私は自分のパソコンで共有フォルダからその報告書を呼び出して指示を聞く。 涼真さんの指示は、的確で無駄が無い。 仕事をしていると、頭の中の混乱が落ち着いてくるようで。 「分かりました。本日中に修正して上げ直します」 「ああ、悪い。残業になってしまうだろうが、頼む」 「お任せください」 私は、そのための秘書なのだ。 「ありがとう、すまないな」 涼真さんは申し訳なさそうにそう言ってくれるけど、私は笑顔で首を横に振った。 「いいえ。それが私のお仕事ですから」 「ああ。俺もなるべく
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222話

◇ 新作発表パーティー当日。 私と涼真さんは、少し煌びやかな服に着替えてパーティー会場のホテルへと向かった。 滝川グループが、初めて他社と提携し、衣料品業界に進出したとあり、かなりの数の招待客が来ていた。 そこには、マスコミやテレビ中継も入っていて、私は緊張して手をぎゅっと握りこんだ。 私も、デザイナーとして紹介される。 そして、生地開発の責任者としても──。 これでもう、私の名前が大多数の人に知られる事となる。 清水瞬の会社に権利を譲ったあの生地。 それについても、きっと全部知られると思う。 私が今回開発した新生地は、あの生地より数段質が良くなったものだから。 そして、恐らく私の家が加納家だと言う事も。 「心。心配しなくていい。堂々としていればいいんだ」 「涼真さん……」 ホテルの控え室。 私の隣に座っていた涼真さんが、そっと優しく震える手を握ってくれる。 涼真さんの手は、温かくて大きくて。包まれているだけで、とても安心する。 私は、隣の涼真さんに頭を預けると、頷いた。 「はい。……堂々と、します。私が開発した生地も、デザインも……自信を持っていますから」 「ああ、そうだ。心の仕事は素晴らしい出来だ。誇って良い」 「ありがとうございます。緊張していましたが、落ち着きました……」 「今日は、パーティーが終わったら一緒に美味しい食事とお酒を飲んでゆっくりしよう。明日はちょうど休みだしな」 「ええ、そうですね。涼真さんとゆっくり過ごすのを楽しみにこの後のお仕事も頑張ります……!」 私が両手で握りこぶしを握ってそう言うと、涼真さんは優しく笑ってくれる。
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223話

パーティー会場に入場した私たちは、それから暫くの間忙しく過ごした。 涼真さんと氷室社長は報道陣の対応や、他企業の重役対応に追われ、私と桜さんはその他の方達の対応にてんてこ舞いになっていた。 まるで目が回ってしまいそうな忙しさ。 人波が一瞬途切れた隙に、氷室社長の奥様桜さんが、私に話しかけてくれた。 「加納さん。少し喉を潤しませんか?」 「そう、ですね……!滝川社長と氷室社長は──」 私は涼真さんが居る方向に視線を向ける。 だけど涼真さんは未だ招待客の対応に追われているように見えて。 桜さんと一緒だし、涼真さんの視界に入る位置に居れば大丈夫だろう、と私は桜さんの提案に頷いた。 「そうですね、一旦休憩を挟みましょう?」 私と桜さんは、談笑しつつスタッフからドリンクを受け取り、空いているスペースへ移った。 私が今回、新生地の開発を行った事。そして、デザインを行った事は、既に発表されている。 そのため、私と桜さんの周りには話しかけたいような人達が集まってきていたけれど、私と桜さんが一息ついているのが彼らにも分かるのだろう。 不躾に距離を詰めて声をかけて来る人はいなかった。 「それにしても、こんなに若くて綺麗な加納さんが生地開発の天才だとは……!研究者としての顔だけでなく、デザイナーの一面も持っていらっしゃったとは……驚きました」 「そんな……恐縮です。まだまだ未熟ですが、今後も勉強して、滝川社長のお力になれるように頑張ります」 「ふふふ、滝川社長も、とても素敵なお嫁さんに来ていただいて、嬉しいでしょうね」 桜さんが口にした「お嫁さん」の言葉に、私の頬はぼっと赤くなってしまう。 そんな私の姿を見て、桜さんは口元に手を当て「あらあら!」と楽しそうに声を上げた。
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224話

近づいて来ていた足音が、私の背後でぴたり、と止まった。 「──……?」 私と桜さんは不審に思い、振り向く。 すると、そこには──。 「心……少し話したい事がある。今いいか?」 「──清水、社長……?」 そこには、顔色を悪くさせた清水瞬が立っていて。 私に向かってそう、口にした。 だけど、私は今この場を離れる訳にもいかないし、清水瞬と2人きりになるつもりも無い。 私の硬い表情に、清水瞬はぐっと眉を寄せ、拳を握る。 「頼む……大事な話がある……」 「……ですが、私はこれから予定があります。この場を離れる訳にはいかないんです。この場でお話して頂けませんか?この場でお話出来ない内容でしたら……お断りいたします」 キッパリとした私の物言いに、清水瞬は迷うように視線を左右に揺らした後、口を開いた。 「この場では、話しにくい事だ。……うちの会社が……、独自に……開発した生地について、話をしたい……」 「──!」 ああ、と納得する。 まだ、実物は発表前だけど。 清水瞬は、滝川グループが開発した……私が開発した生地について話したいのだろう。 どこからどうみても、清水瞬の会社が開発した生地を上位互換したような代物だ。 似通った生地だけど、流石に見る人が見れば一目瞭然。 今回私が開発した新生地は、清水瞬の会社が開発した生地よりも性能も良く、清水グループが長年かけて研究しても解決出来なかった部分を私の生地は全て解決し、性能の向上に成功したのだ。 生地の生産方法、手入れ方法にも着目し、その部分から手を入れる事によって以前の代物よりも安価に提供する事が実現出来た。 資料を見ただけで、あの生地を開発したのは私だったのだろう、と清水瞬は気付いたのかもしれない。 だからこそ、こうして私に会いにやって来たのだ。 私が開発者だと、確認したかったのだろう。 「あの生地について、私から言う事は何もありません」 「──だが、心!」 「……そのように、契約を交わしましたから」 「──っ!」 これだけ言えば、清水瞬も察するだろう。 自分の知らないところで、水面下で。 密かに取引があったのだ、と言う事を。 その証拠に、清水瞬は信じられない物を見るように目を見開き震えている。 それは、羞恥によるものか。 それとも、過去の私に対する怒りだろうか。
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225話

私と桜さんが涼真さん達のところに行くと、涼真さんはすぐに私を引き寄せてくれた。 「心、大丈夫だったか?」 「はい、大丈夫です涼真さん」 涼真さんが心配そうに私に話しかける。 遠くに居たのに、涼真さんは私の事を見ていてくれたんだ、と分かり私の胸はじん、と温かくなった。 「清水社長に変な事を言われていないか?」 「はい。今のところは。ただ……」 「何だ……?」 私たちは、移動しながら会話を続ける。 今は、着替えのために控え室に移動している最中だ。 開発した生地で作った、新しいブランド。 その服を私たち自らがモデルとして身にまとい、ステージに立つ。 着替えのために用意された部屋に着いた私たち。 本当は涼真さんとは別室のはずだったのだけど、涼真さんは私の腰を抱いたまま別室の扉を開けて中に進む。 別室の扉を閉め、尚且つ施錠もした涼真さんは、私に振り返った。 私は涼真さんに、清水瞬に言われた事を伝える。 「私が生地の開発者だと言う事に、気付いたみたいです。その事について話したい、と言われましたが……これから発表があるからと言って断りました」 「そうか……」 私の話を聞きながら、涼真さんは着替えを始める。 私はスーツを脱ぐ涼真さんの手伝いをするために、彼に近付く。 ワイシャツの袖のボタンを涼真さんが外している間に、私は涼真さんのネクタイを解く。 そしてすぐ近くに用意されていた新商品の服を手に取った。 「昔、心が生地開発をして、その権利を会社に売った事も清水社長は知ったと言う事か」 「はい、そうだと思います」 「なら……清水社長はどうしても心と接触したいと考えるはずだ。絶対に1人にならないようにしてくれ、心。彼と話をする際は、俺が同席する」 「涼真さんが──?」 私の言葉に、涼真さんはにんまり、と悪い笑みを浮かべて頷いた。 「ああ。色々調べて行く内に、面白い事が分かった。それを彼に知らせてやろう、と思って」 「──?」 涼真さんは楽しげに笑うと、きょとんとしている私に軽く口付けた。 ◇ 「新作発表にまいります!」 ステージにライトが当たる。 このパーティーの参加者がステージ近くに多く集まって来ているのが見えた。 「わ、わわ……凄い沢山の人が……」 「心、緊張し過ぎだ」 私の肩に手をぽん、と乗せて涼真さんが苦
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226話

今回新作として発表されるのは、7着。 3着が男性用の服で、4着が女性用の服だ。 どの服も、モデルはプロモデルじゃなくて社員が着ている。 プロモデルに頼まず、社員に着て貰ったのは、安価な服を身近に感じてもらいたいため。 誰でも手に取れる価格帯。 そして、幅広く着てもらいやすいように年齢層の括りは取り払った。 その為、新作の衣装を着てくれる社員も年齢層はバラバラにした。 新卒の若い人から、40代、果ては50代の社員が着ても違和感なく馴染むようにデザインした今回の服は、ステージに立った彼らを見るパーティーの参加者の顔を見れば、結果は一目瞭然だった。 「反応は上々だな。俺たちも行こう、心」 「──はいっ!涼真さん!」 そして、私たち2人が最後にステージに立つと、参加者の視線が最高潮にステージに集まった。 あちらこちらから感じる視線。 私はステージに立っているだけで緊張でいっぱいいっぱいになっていたけど、涼真さんは流石だ。 司会者から話を振られ、落ち着いた様子ですらすらと答えている。 新規事業に至るまでの道のりや、衣料部門に挑戦していく事。 そして、今回の成功をきっかけに、会社を成長させて行く事を淀みなく、答えて行く。 緊張が落ち着いて来た私は、ようやくステージから会場を見渡す余裕が出てきた。 周囲に視線を向けると、さっき私に話しかけてきた清水瞬が、悔しそうに表情を歪め、私たちを──いや、私を見つめていた。 「──……っ」 その視線は、どこかぞっとする程執着を孕んでいるように思えて。 気持ちが、悪い。 私は清水瞬の視線から逃れるように視線を別の方向に向ける。 するとそこには──。 (──えっ!) 私の父と、母の姿があった。 まさか、涼真さんが両親にも招待状を送ってくれていたなんて。 私が生地の開発に奔走している間に、涼真さんが招待状を送ってくれたのだろうか。 生地開発が終わり、私がパーティーの準備に取り掛かってからは、両親に招待状は送っていないのだ。 だから、きっと。 涼真さんが招待状を出してくれたのだ、と知り私はステージで司会者に話を振られて答えている涼真さんをそっと見やる。 こんな風に気遣ってもらってばかりで。 私は涼真さんにどうお返しをしていけばいいのだろう。 もっともっと、仕事に精を出さないと、と私が
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227話

凄く注目を浴びている──。 私は、じわりと手のひらに汗をかいた。 だけどそれをぎゅっと拳を握って耐えると、1度目を閉じて深呼吸をしてから再び目を開ける。 沢山の人から注目を浴びるのは緊張するけど。 いつかは通る道だ。 私は笑みを浮かべて口を開いた。 「本日は、我が社の新作発表パーティーに参加いただき、ありがとうございます。皆さんの目で見ていただいた通り、今回発売される服のどれもが素晴らしい出来だと自負しております。モデルをして下さっている社員の方々が見目麗しいので、あまり参考にならないかもしれませんが──」 私がそう言うと、笑いが起こる。 「今回発表した新作達は、どれも自信を持って世に送り出せる品物ばかりです。これからも我が社は、今回の新作を超えるような最高品質の品物を、安価で提供出来るように努めてまいります」 私がそう言葉を締め括ると、父と母が1番に拍手をしてくれた。 参加者達が驚いたように両親と私を交互に見たけれど、すぐに父と母に倣い、会場は割れんばかりの拍手の音に包まれた。 ◇ 「加納さん、今回の新作には加納さんが開発した新生地が使用されているとの事ですが、この生地はある企業と良く似ていますが、その辺りはどのように考えておられますか!?」 「他企業が特許を取っていますが、加納さんは今回開発した新生地を同じように特許を申請しますか──」 報道陣が私と涼真さんに沢山集まり、カメラとマイクを向けてくる。 私はちらりと涼真さんを見た。 けど、涼真さんは肩を竦めただけで、報道陣に答えない。 好きに回答して構わない、と言う事だろう。 私は報道陣に向かってにっこりと笑みを向けると、答えた。 「特許を申請するつもりはありません。確かに開発における苦労は計り知れない物でしたが……。私はこの生地を皆さんで共有し、更に素晴らしい性能の服を作って行きたいので」 それだけを答えると、私の腰を抱いた涼真さんが歩き始めた。 報道陣にはこれ以上答えないで良い、と言う事だろう。 「あっ、加納さん──」 報道陣の残念そうな声が背後から聞こえる。 だけど、涼真さんは報道陣を気にする素振りは見せず、真っ直ぐ歩いて行く。 涼真さんの視線の先を見て、私ははっとした。 「──涼真さん」 「もう、隠す必要は無いだろう?」 涼真さんが口元に笑みを浮か
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228話

父と母が、参加者と談笑しているのが分かる。 涼真さんは私を伴い、真っ直ぐ両親へ向かって歩いて行く。 父と母が、近づく私たちに気が付いた。 それまで話していた招待客から顔を上げ、私たちに視線を向けるのが離れたこの場所からも分かった。 「──心」 父の顔が、若干だけど穏やかな物に変わる。 私がやって来た事に周囲の参加者も気付いたのだろう。 私と両親を、じっと見つめている。 「心ちゃん。今日はおめでとう」 「お母様、ありがとうございます」 母が、私に手を伸ばして手を握ってくれる。 母の手は凄く暖かくて。 私が「お母様」と呼んだ途端、周囲がざわめくのが分かった。 「新作のデザインは中々だったな。だが、もう少し精進しなさい」 「──お父様。ありがとうございます、今後も精進いたします」 父の厳しい声が落ちる。 だけど、父の声は昔から良く通るのだ。 その声は、周囲の人達にも等しく届いていて。 報道陣が、私たちに近付きたそうにそわそわとしているのが分かるけど、その時に涼真さんが別室に移動する事を提案した。 「加納社長に、夫人。もしよろしければ別室に移動しませんか?我が社の新作を、ゆっくりとご覧いただきたい」 「そうだな。そうしたい。案内してくれるか?」 「ええ。こちらへどうぞ」 涼真さんの提案に頷いた父と母は、係りの者に案内されていく。 涼真さんは、私の腰を抱き寄せて報道陣に向き直ると、にこりと笑みを浮かべて告げた。 「我々は少々席を外しますが、まだパーティーは始まったばかりですので、お楽しみください」 報道陣に有無も言わさず、涼真さんは私をエスコートして別室に向かって歩いて行く。 「──ありがとうございます、涼真さん」 「気にしないでくれ。報道陣に囲まれてしまったらゆっくり話す事も出来ないだろう?まあ……戻った後が大変だとは思うが……」 「ふふ、頑張って対応しましょうね」 「そうだな」 私の父と母が向かった別室。 そこに私も涼真さんも、向かう。 そんな私たちの後ろ姿を、恨めしそうにじっとりと見つめている人物が居たなんて、その時の私は気づいていなかった。 ◇ 「今回の新作発表は、良いタイミングで行ったな」 別室に私たちが入って、父と母に合流した途端。 ソファに座り、私がデザインした服を見ていた父がそう告げた
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229話

それから、暫くの間。 父と母は涼真さんとこの先の事業について話した。 そして、時折私に生地の事について聞いてきたり、デザインの事を聞いてきたり、と生き生きと仕事の話をした。 時間はあっという間に過ぎていて。 父の秘書が、もうすぐ予定の時間だ、と知らせに来た。 父も、母も予定が詰まっているのだろう。 忙しい中、こうしてパーティーに顔を出してくれた父と母の気遣いに、私は改めてお礼を伝える。 「お父様、お母様。今日は来て下さり、本当にありがとうございました」 「ふん。今回の新作発表は興味があったからな。たまたま時間が空いていたから来ただけだ」 父は、ぷいっと私から顔を逸らしてしまう。 だけど、私にこっそりと近付いた母は、ひそりと耳打ちした。 「本当は数件商談が入っていて、時間の余裕は無かったのよ。なのに、お父様ったら心ちゃんの晴れの舞台だからって」 「──さっさと帰るぞ!」 母の言葉が聞こえたのだろうか。 父は、恥ずかしそうにしつつ怒声を上げ、早足で部屋の入口に歩いて行ってしまう。 「あの人ったら、バレて気恥しいからって大人気ないわね。じゃあ、私たちはここで失礼するわ、心ちゃん。まだパーティーは長いんでしょう?最後まで、しっかりとね」 「はい、お母様。お父様も、ありがとうございました」 「──ふん」 父は母を待つことなく扉に手をかけ、そして思い出したかのように顔だけを振り向かせた。 「次は、お前達の婚約発表のパーティーか。両家の顔合わせの日取りが決まり次第、すぐに連絡をくれ」 「分かりました、加納社長。候補日が決まりましたら、すぐに」 「ああ、頼んだ」 父の言葉に、涼真さんが答える。 こくりと頷いた父は、そのまま扉を開けると外へ出て行った。 「じゃあね、心ちゃん。また」 「はい、お母様」 「見送りは大丈夫よ。まだ他の方のお相手が必要でしょう?」 母は私にそう言うと、ひらひらと手を振って出ていく。 涼真さんは2人を追いかけるように扉に向かって歩いて行った。 そして、部屋を出る寸前、私に振り向く。 「心。お2人は見送りは大丈夫だと仰ったが、俺が出口まで見送ってくるよ」 「──なら、私も……!」 涼真さんの言葉に、私が歩きだそうとした時。 涼真さんが私に向かって手のひらを向けた。 まるで、足を止めて、と言う
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230話

涼真さんが出て行った部屋の中。 私は、じんわりと痛む足に視線を落とす。 高いヒールに慣れていないから、痛めてしまった。 「……これから、涼真さんと一緒にこう言うパーティーに参加するのが多くなるのよね、きっと」 涼真さんと想いを通じ合わせた今。 婚約者のふりじゃなくて、本当の婚約者になった。 そして、行く行くは──。 将来の事を考え、私の頬がじわじわと熱く火照ってくる。 「ヒールのある靴を履く事にも、慣れなくちゃ……」 私は頬を両手で抑えつつ、ぽつりと呟く。 すると、この部屋の扉が開く音が聞こえた。 さっき涼真さんが足の手当のために人を送ってくれると行っていたから、その人かもしれない。 私は、扉の方に顔を向けてお礼を伝えようとした。 「どうもありがとうござ──」 だけど、私の笑みも。 言葉も。 途中でピタリ、と固まってしまう。 扉から現れた人は、まさかここで会う事になるとは思わなかった人物──。 清水 瞬だったから──。 「──心っ」 清水瞬は、私の姿を見ると表情を緩め、周囲を確認する。 「……滝川も、いないのか……」 「──っ」 涼真さんがいない事を確認した清水瞬は、しめた、とばかりに嫌な笑みを浮かべる。 私は一刻も早くこの部屋を出ないと、と思い座っていたソファから立ち上がろうとした。 けど、突然動き出したからだろう。 さっきまであまり感じていなかった痛みが強く走り、私は声も出せずにソファに逆戻りしてしまう。 「──っ、」 「どうした、心……!?」 清水瞬は慌てたように私に駆け寄り、その場に膝を着く。 そして迷いなく私のヒールを脱がすと、眉を顰めた。 「──こんな高いヒールを履くからだ。……心、お前は俺と付き合ってる時はこんな洒落た服も……ヒールも履いていなかったのに……」 「……っ、触らないでください清水社長!すぐに出て行って!」 「どうして俺は……っ、あんなに傍で支えてくれていた心の献身に気づかず、あんな……っ、あんな麗奈なんかに……っ」 「──っ、??」 麗奈、なんか? そう言えば、思い出してみれば。 今日、この場に現れた清水瞬の隣には見慣れた麗奈がいない──。 何かあったのだろうか。 一瞬だけ考えてしまったけど、麗奈と清水瞬がどうなっていようと、私には関係の無い事。 私は未だ
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