جميع فصول : الفصل -الفصل 220

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211話

想像していた通り、新作発表記念パーティーまでの日々は、怒涛の忙しさとなった。 彼の秘書に戻った私は、涼真さんが忙しくなれば、私も必然と忙しい毎日を送る。 工場への視察、生地生産試験のチェック、不都合が起きれば、現場へ飛んでトラブルの解決を行う。 そして、それと同時にパーティーに招待されている他社重役や、提携した氷室社長の会社と取引のある会社の役員などまで全て勉強し、覚えなくてはならない。 忙しい毎日を送る中で、唯一の癒しは自宅にいる陸と凛と遊ぶ事だった。 ◇ ある日の休日、その日は久しぶりに本当に何もない日で。 丸々1日オフだった。 久しぶりにたっぷりと睡眠を取って、平日より少し遅めにリビングに降りる。 すると、そこには既に持田さんと間宮さんが居て、朝食を食べていた。 「加納さん、おはようございます」 持田さんが降りてきた私に気付き、挨拶をしてくれる。 持田さんに続いて間宮さんも声をかけてくれて、私も2人に挨拶を返した。 今日はお手伝いさんがお休みだ。 そんな日は、それぞれ適当に朝食を摂る。 私はお手伝いさんが作り置きしてくれていたおかずを冷蔵庫から取り出して炊きたてのご飯をお茶碗によそい、リビングのテーブルに向かった。 大きなダイニングテーブルは、私たちが座ってもまだ席が余っていて。 私が席に着いた所で、持田さんがちらりと階段の方を見やった後、口を開いた。 「滝川社長はまだお目覚めじゃないんですね」 「はい、そうみたいです。昨夜は取引先と会食があって……涼真さんも久しぶりにお酒を結構飲まれていたので」 「なるほど、それではまだまだ起きられそうにありませんね」 くすくすと笑う持田さんに間宮さん。 「そうだ、加納さん」 「──はい?何ですか、持田さん」 持田さんがふ、と笑みを消して真面目な表情で私を呼ぶ。 どうしたんだろう──。 そう思い、私も食事を進める手を止めると、持田さんが間宮さんをちらりと見て、2人が頷き合う。 そして、私に視線を戻した。 「その、滝川社長から聞き及んでいるとは思いますが……。私と間宮は、正式にお付き合いを始めまして……」 少し照れくさそうに笑う持田さんに、照れたように後頭部をかく間宮さん。 確かに、滝川さんからお2人の事情は聞いている。 私は、ぱっと瞳を輝かせて大きく頷いた。
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212話

持田さんと、間宮さんがこの家を出て行く──。 「……社長には、先日お話をしております。いつでも、大丈夫だとお返事を頂いていて」 「その……荷物が整理し終えたら、俺と……持田先輩はこの家を出る事になります」 2人の言葉に、私は驚きでいっぱいで。 上手く言葉を返せない。 そうだ──。 当初、持田さんと間宮さんがこの部屋に来た理由は。 私が一時的に涼真さんのお家にお世話になるから。 女性1人だと不安だろうから、って理由で、涼真さんは秘書の持田さんも一緒に住めば安心するだろうからって気を使ってくれたんだった。 だけど、私はもう他の住居を探す必要は、なくなった。 それに、婚約者の振り、じゃなくて。 私は今はもう本当に涼真さんの婚約者になったのだった。 それを考えれば、持田さんや間宮さんがこの家に居る理由がなくなる。 本来だったら、もっと早くに出て行っても良かっただろうに、持田さんはきっと私の気持ちが涼真さんに伝わり、成就するのを見届けてくれてから、引っ越しを決めたのだろう。 「そう、だったんですね……。何だか寂しくなっちゃいますけど、お2人の新たな門出ですね!おめでとうございます!」 私が明るくそう言うと、持田さんも間宮さんも少し恥ずかしそうに「ありがとうございます」と言葉を返してくれる。 そして持田さんは少し声を潜め、体を乗り出した。 何だろう?内緒バナシ? そう思った私も、持田さんと同じように体をテーブルに乗り出させ、耳を寄せる。 すると、持田さんは少し揶揄うような色を込めて私に呟いた。 「私と間宮がいなくなったら……夜は滝川社長と加納さんは2人きりになりますから、気をつけてくださいね?」 「──えっ」 まさか、そんな事を言われるとは思わなかった私は、持田さんに言われた瞬間、顔を真っ赤にしてがばりと体を仰け反らせた。 「な、何を急に……っ、そんなっ」 私が慌てふためき、持田さんに言葉を返していると、背中にとん、と誰かの体が当たる。 そして、そっと優しく私の耳を大きな手のひらが覆った。 「──持田さん、心に変な事を吹き込まないでくれ。警戒されたら困るだろう?」 「あら、社長。おはようございます」 「おはよう、2人とも」 じとり、とした目で涼真さんは持田さんと間宮さんに挨拶をする。 間宮さんは気まずそうに食事を終
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213話

「──っん、ちょっ、と、涼真さんっ!」 唇を啄むようにしていた涼真さんが、喉奥でクツクツと笑いながらようやく私から唇を離した。 改めて涼真さんは私に笑顔でおはよう、と口にすると、キッチンにコーヒーを注ぎに行った。 「持田さんから聞いたみたいだな。あの2人は近々家を出るから、そのつもりで」 「は、はい。その、突然でびっくりしましたけど、おめでたい事ですよね」 「ああ。持田さんと間宮の事は昔から見て来ているからな……ようやくか、と感慨深いものがあるよ」 涼真さんはコーヒーの入ったカップを手に戻ってくる。 涼真さんの手にはそれだけしかなくて、私は朝食を食べないのだろうか、と涼真さんに視線を向けた。 涼真さんは私の言いたい事を察したのだろう。 軽く肩を竦めて答える。 「少し胃の調子が悪くて、な。最近の不摂生が祟ったみたいだ」 「──えっ、大丈夫ですか!?」 「ああ、少し違和感があるだけだから問題ない。時間がたてば治ると思うよ」 そう話しながら涼真さんがリビングに戻り、テーブルに着く。 頬杖をつきながら、にこにこと笑顔を浮かべている涼真さんに私は首を傾げた。 何だかとても嬉しそうな涼真さん。 どうしたのだろうか。 そう私が思った時、涼真さんがおもむろに口を開く。 「持田さんや間宮が出て行くのは確かに少し寂しさはあるが……俺は心と2人でここに住む事になって少し浮かれてる」 「──っ」 「土日はお手伝いさんも休みだし、平日の夜はお手伝いさんも帰宅するだろう?」 「そ、そう……ですね」 「だから……寂しさはあれど、これからは心と2人での生活になるんだな、と思うと楽しみだ」 優しい顔でそう言う涼真さん。 そこに、さっきまでの揶揄うような色は見えなくて。 涼真さんの本心だと言う事が分かった私は、箸を置いて素直に頷いた。 「はい。わ、私も涼真さんと過ごす時間が楽しみ、です……」 素直に、自分の気持ちを伝えようとは思ったものの。 やっぱり、恥ずかしいものは恥ずかしい。 しかも、涼真さんは真っ直ぐ私を見つめてくれているから、尚更。 私が恥ずかしさに耐えきれず、涼真さんから目を逸らすと、涼真さんが笑い声を零した。 「──ははっ、真っ赤になってる」 「そ、それは……そうなるのも……当然です……」 「そう?でも真っ赤になる心もそ
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214話

リビングで朝食を摂り終えた私は、涼真さんのコーヒーのおかわりを用意しつつ、テレビのニュースを見ている涼真さんの背中に向かって声をかける。 「涼真さん。新作発表のパーティーの事なんですが」 「──うん?」 私が話しかけると、すぐにテレビから私へと視線を向けてくれる涼真さん。 私は彼の隣に戻り、コーヒーの入ったカップを渡すと、考えていた事を提案した。 「氷室社長の会社の売りは低価格ですよね?それに、今回のデザインはオフィスカジュアルからフォーマルまで幅広く展開します」 私の言葉に、涼真さんは真剣な表情で聞いてくれる。 そして、頷き先を促してくれる。 「黒瀬さんの会社は、1点1点の高級感や特別感を大事にしていますが、私たちは逆です。親しみがあって、手に取りやすい……働く社会人のために、毎日のお仕事で少しオシャレで、だけど低価格なのを表すために……モデルは、本職の人じゃなくて同じように会社で働く社会人の方にお任せするのはどうですか?」 そして、私はこの提案をする時に絶対にお願いしたい事があった。 私はぐっと拳を握り、涼真さんに期待を込めた目を向け、続ける。 「それ、で……!涼真さんにも是非今回発表した服を着ていただきたいなぁ、と思いまして……!」 「──俺が?」 私の言葉に、涼真さんがぱちくりと目を丸くする。 涼真さんがこんな反応をするのは当然だ。 涼真さんは会社の代表。社長だ。 だからこそ、質の良く、高級なスーツを身にまとっている。 自分の身分に合った服装を身に付けているのは良く分かっている。 だけど──。 「涼真さんが、会社の社長が着ていても、劣らない服──。そんな服が、出来ていると自信を持って言えるんです!」 私がぐっと体を乗り出し、自信満々に喋る姿が珍しいのだろう。 涼真さんはぱちくり、と何度か目を瞬かせた後、ふっと瞳を柔らかく細めた。 「ああ、勿論いくらでも協力するよ。そもそも、自社の商品だしな。それに心もデザインと生地開発に関わっているからこそ、俺もそれを着たい」 「ほ、本当ですか!?」 「ああ。心が手がけた仕事だろう?俺が1番に着てみたい。サンプルが出来たら持って帰ってきてくれないか?」 「わ、分かりました!数日中にサンプルが上がると思うので、ぜひ試着してみてください!」 私が嬉々としてそう告げると、涼真
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215話

涼真さんが言っていた「試着」。 それは、家の中だけで終わる試着だと思っていたのに──。 新作発表記念パーティの打ち合わせで。 私が提案した内容を、涼真さんが企画として盛り込んでくれたのだけど。 ◇ そのパーティーの打ち合わせが終わり、涼真さんと社長室に戻ってくるなり開口一番、私は涼真さんに告げた。 「しゃ、社長……っ!どうして私までステージに立つ事に!?試着は家の中でだけの話じゃあ!?」 「そうとは言っていないだろう?」 飄々と答える涼真さんに、私は嵌められてしまったのだと気付く。 私が目立つ事が苦手なのを分かってくれているのに……!それなのに、涼真さんは私もステージに引っ張りあげてしまったのだ。 涼真さんはデスクに座り、肩を竦めてみせた。 「何も加納秘書だけがステージに立つ訳じゃない。他の女性社員も立つし、俺もステージに立つだろう?」 「しゃ、社長はいいんですよ……我が社の顔なんですから……」 涼真さんみたいにスタイルが良くて、容姿も整っている人は、ステージに立ったら、とても映えると思う。 華やかな人だから、きっとライトに照らされて、新商品を着た涼真さんはとても素敵だと思う。 それに、他の社員でステージに立つ人達も、皆容姿が整っている人達ばかりだった。 だけど、それに比べて私は特別スタイルも良くないし、容姿だって極々普通だ。 メイクで多少華やかには出来るけど、涼真さんみたいに堂々とステージに立てるような人間じゃないのに……。 私が項垂れてぶつぶつと呟いていると、涼真さんが何かを呟いた。 「心が綺麗なのは周知の事実なんだがな……自己肯定感が低いのが玉に瑕だ……」 「──え、何かおっしゃいましたか、社長……」 私がずん、と暗くなりつつ涼真さんに聞くけど、涼真さんは「何でもない」と笑顔で首を横に振り、仕事に戻ってしまった。 私は、それ以上涼真さんに何かを言ってももう無理だと悟り、肩を落として自分のデスクに戻る。 大人しく仕事に集中しよう。 仕事に集中していれば、ステージに立つ事を考えなくて済むから。 ◇ それから、パーティーで発表されるサンプルが会社に到着したのはそれから数日後の事だった。 到着したサンプルを確認した私は、生地の出来に感嘆の声を上げる。 肌触りも良く、軽やか。それなのに保温効果も抜群で生地も薄い
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216話

「た、滝川社長……っ、戻られたのですね!?」 「ああ」 取引先との会議があった涼真さん。 私はその会議には出席しなくて大丈夫だったので、社長室で仕事をしていた。 そうしたら、サンプルが届いた、と今回の新作発表パーティーを総括する部署が届けてくれたのだ。 早速中身を確認することに集中していた私は、涼真さんが会議が終わって部屋に戻ってきていた事に気が付かなかった。 「し、失礼しました社長──!サンプルをすぐに全て並べますね」 私が慌ててその場に立ち上がろうとした時。 涼真さんがそれを遮る。 「いや、全部出さなくても大丈夫だ。──俺が着るのは?」 「はい。こちらのワイシャツと……あとはこちらのパンツですね」 涼真さんの問いに、すぐにサンプルの中から涼真さんが当日モデルとして着る服を取り出す。 それを涼真さんに渡すと、涼真さんは服を見つめ、生地を確認して満足そうに頷いた。 「──ああ、かなり良いな。デザインも安価だとは思わない出来だ。それに、肌触りもかなり良い。心、生地の開発は相当大変だっただろう?ありがとう」 ふわり、と優しい笑を浮かべて私にお礼を告げる涼真さん。 その笑顔が、本当に嬉しくて。 それに、褒めてくれた事もとても嬉しい。 大変だった時期もあったけど、全て報われた気分になる。 「──っ、とんでもないです、涼真さん。私こそ、信じて生地開発を任せて下さり、ありがとうございます」 嬉しくて嬉しくて。 思わず泣きそうになりつつ、私も涼真さんにお礼を伝えた。 私の言葉を聞いた涼真さんは笑顔のままそっと頭を撫でてくれる。 恥ずかしいけど、嬉しい──。 気恥しさを感じつつそのまま享受していると、ふ、と涼真さんの手が離れた。 少し寂しさを感じながら涼真さんの手を追っていると、涼真さんが呟いた。 「サンプルを試着してみるか」 「ぜひ!今、別室にサンプルを運びますね」 涼真さんが、私が開発した生地で作った服を着てくれる……! しかも、今回涼真さんが着る服は、私もデザインに携わっているのだ。 とても嬉しくて、社長室の隣にある別室にサンプルを運んだ私は、涼真さんにこの部屋で着替えて貰おうと別室から退出しようとした。 けど──。 「心が着るサンプルも届いているんだろう?ここで着替えてしまったらどうだ?」 「──へ?」
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217話

涼真さんが着替えの為に別室に入って、5分程。 私が社長室で仕事をしていると、別室の扉が開いて涼真さんが顔を覗かせた。 「心、着替え終わった」 「──はいっ!今行きますね」 涼真さんの呼び方が「加納さん」から私の名前呼びに変わっている。 呼び名の変化は、涼真さんが今の時間は「プライベート」だと分けている合図。 私は別室に入った。 そして、着替え終えた涼真さんの姿を見た私は、思わず見蕩れてしまう。 軽く腕捲りをした涼真さんの、しなやかな筋肉がついた腕。 腕にはいくつもの血管が浮き出ていて、細いけど、しっかりと筋肉のついた体躯。 サンプルの服装は、ビジネス用のワイシャツのようにカチッとした服装ではなくて、涼真さんは普段のネクタイを外しており、第二ボタンまで外したワイシャツからは男らしい太い首筋と、鎖骨が際立っていて。 それに、ビジネス用のワイシャツじゃなくて体の線が分かるような体型にフィットしたワイシャツは、涼真さんの鍛えられた体を惜しげも無く際立たせている。 しっかり服を着ているのに、どこか色っぽい。 私は、涼真さんの姿を見てごくり、と喉が鳴ってしまった。 上品ながら、とても色っぽい姿に、私は不安になる。 「──涼真さんの服は、変更した方がいいかもしれません……」 「──は、?何故……」 真剣な表情で告げた私の言葉に、涼真さんは驚いたように目を見開き、私に疑問を投げかける。 そして、部屋の扉を開けた状態でその場に棒立ちの私を不審がり、涼真さんが近付いて来た。 「りょ、涼真さん……!ストップ……!止まって下さい……!」 「何で顔を隠す……?一体どうしたんだ心……?」 近付いて来る涼真さんを直視出来なくて、私が変な叫び声を上げて両手で顔を隠すと、益々涼真さんの顔は怪訝そうに眉を寄せた。 そして涼真さんは私の手を掴むと、無理矢理ではないけど、ある程度強い力で私の手を顔からどかし、自分に引き寄せた。 私の態度が変だから、もしかしたら涼真さんは心配してくれたのかもしれない。 だけど、その涼真さんの優しさが、今の私にはマイナスに働いた。 私の顔を見た瞬間、涼真さんの瞳は驚きに見開かれる。 「──心……?どうして、顔が真っ赤に……」 「うう……だから、止まって下さいって言ったのに……」 涼真さんが格好良すぎて、直視出来ません
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218話

「どうした、心?随分可愛い反応をしてくれるんだな?」 楽しそうに、弾んだ声の涼真さん。 くつくつと喉奥で笑う涼真さんの低い声が、彼に抱きしめられている私にまで振動して伝わってきて。 自分の体温がカッと高くなるのを感じた。 そんな私に涼真さんは、耳元にわざと口を近付けると囁くように言葉を紡いだ。 「何を想像した……?」 「──っ」 涼真さんの色を含んだ声に、私の顔がかっと熱を持つ。 絶対に、わざとだ。 私が涼真さんに見蕩れていたのを分かっていて、こんな事を言うなんて──。 私は抱きしめられていた体勢から抜け出そうと、力一杯涼真さんの胸を押す。 すると、あっさりと離れてくれた涼真さんに、私は逆に驚いてしまった。 「このまま心を揶揄いたい気持ちはあるが……行き過ぎると襲いそうだ」 「お、襲い……!?」 ひょい、と肩を竦めた涼真さんの言葉に、私は狼狽える。 まさか会社でそんな事を涼真さんが口にするとは思わなくって。 私が狼狽えている間に、涼真さんは第二ボタンまで開けていた胸元を、1つ閉めた。 「さて、おふざけはこの辺にして……。心が着る予定のサンプルも、着て見せて」 ◇ 別室で、私は自分用のサンプルに袖を通していた。 涼真さんは真っ赤になった私を別室に残し、楽しそうに社長室に戻って行ったのだ。 そんな彼は今、私が着替え終わるのを待ちつつ、仕事をこなしている。 「服の出来は、最高だわ……」 まるで、低価格帯の量産品だとは思えないほど、肌触りが良く、高級品だと思えてしまうようなデザイン。 自分の開発した生地が、とても素晴らしいものになったと言う自負がある。 だけど──。 私が着ているサンプルは、少し露出が多い服だ。 私は、オフィスカジュアルのサンプルを着る予定だったのだけど、同梱されていたこの服を目にした涼真さんが、この服を着てみて欲しい、と言ったのだ。 涼真さんは恋人で、私の婚約者であると同時に私の雇用主でもある。 それに、私が働いている会社の社長。 彼の専属秘書として、社長の「願い」を断る訳にもいかなくて。 「うう……涼真さんが社長として命令してくれたら、素直に着たのに……」 社長、としてなら。 そうしたら仕事として私も何の恥ずかしさも感じずに、着替えていた。 だけど、涼真さんは涼真さんとして私に「これ
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219話

勢い良く顔を上げた涼真さんの目は、期待に輝いているように見えて。 私は、彼が椅子から立ち上がったのを目にした瞬間、急いで別室の中に舞い戻った。 「心?開けるぞ?」 「ど、どうぞ……」 こんこん、と別室の扉がノックされる音の後、涼真さんの声が聞こえた。 ゆっくりと扉が開く音が聞こえて。 だけど、私は涼真さんを振り向く事が出来ない。 私が着たサンプルは、所謂「デート用の可愛くて少しセクシーな服」だ。 このデザインは、私がデザインした服じゃないけど、確かに服自体はとっても可愛いし、セクシーだと思う。 ニットワンピになっているんだけど、デート用だからか、少し丈が短い。 黒いストッキングを身につけているし、室内は暖房が付いていて暖かいから寒くはないけど、冬の時期にこれは寒いだろうな、と少し現実逃避をしてしまう。 そうしないと、私の背後から刺さる涼真さんの視線に、挫けてしまいそうで。 「心、そんなに恥ずかしがらなくても……これはうちの会社の商品なんだから、もっと堂々と着ればいい」 「それは、そうですけど……」 苦笑混じりの涼真さんの声。 確かに、恥ずかしいって思っていると涼真さんの視線も気になるし、私もどんどん羞恥心が増してくる。 これは、仕事。 そうだ仕事だと気持ちを切り替えて──。 「この服は、確か……デートにぴったりな可愛い服、だったな……。確かに、彼女とのデートの時に、彼女がこんな可愛い服を着てきたら、世の中の男は嬉しいだろう」 すぐ後ろから聞こえた涼真さんの声に、私は大袈裟に肩を揺らしてしまった。 「ほら、ちゃんと見せてくれ心」 「あっ、わあっ」
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220話

まさか、涼真さんがキスをしてくるとは──。 私は驚いた拍子に、唇を開けてしまう。 すると、その隙に涼真さんは深くキスをしてきて。 「──んっ!?」 涼真さんの深いキスに翻弄され、私の膝からは力が抜けてしまう。 かくん、と膝を折ってしまう寸前。 涼真さんは私の腰を抱いて持ち上げると、別室にあるテーブルにそのまま私を押し倒してしまった。 「──!?んっ、んんっ!」 まさか、こんな場所で押し倒されてしまうなんて──。 私の頭はパニックになり、必死に涼真さんの胸を叩き、上から退いてもらおうとするけど、涼真さんは退いてくれる気配がなく、更にキスが深く激しくなる。 体が熱くなり、背中に伝わるテーブルのひやり、とした冷たさが気持ちよくなってきて。 とろん、と私の瞼が落ちそうになった時──。 するり、と私の太腿に涼真さんの手のひらが触れる。 私がびっくりして目を開けると、涼真さんの熱の篭った瞳と近距離でかち合った。 熱を孕み、少し潤んだ涼真さんの瞳。 その瞳が、涼真さんの瞼に遮られてしまい、見えなくなってしまった瞬間、私の太腿の外側を撫でていた涼真さんの熱い手のひらが、スカートの中に潜り込んだ。 ぞわぞわとした快感が背筋に走った私は、思わず涼真さんの舌を噛んでしまった。 「──っ」 涼真さんの声が漏れ、素早く私から離れる。 涼真さんは、噛まれた舌をちろりと唇から覗かせ、私をじとっとした目で見つめた。 「ご、ごめんなさい涼真さん……つい……」 私は咄嗟に涼真さんに謝るけど、いつの間にか捲りあげられていたスカートを、急いで下げる。 「だ、だけどっ、こんな場所でこんな……っ、いやらしいことをする涼真さんがいけないんですっ!」 「まあ……多少暴走した事は否めない……それは悪かったよ、心」 涼真さんは噛まれた舌で自分の唇をなぞると、私に視線を向ける。 その姿が、ぞっとするほど色気を放っていて。 私はごくり、と喉を鳴らして固まってしまう。 ゆっくりと、だけど確実に私に近付いてきた涼真さんは、テーブルに座った状態の私の足の近くに手をついて身をかがめた。 涼真さんの唇が、私の耳に触れる。 そして涼真さんは直接私の耳に吹き込むように囁いた。 「──持田さんと間宮が引っ越したら……俺は心を抱くつもりだから。……覚悟しておいてくれ」 「─
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