Semua Bab 婚約者は私にプロポーズをしたその口で、初恋の幼馴染に愛してると宣う: Bab 271 - Bab 280

303 Bab

271話

◇ ──それからの日々は、忙しさで目が回るようだった。 婚約発表パーティーの日は決まったものの、招待客は多岐にわたる。 招待状の作成や、婚約発表パーティー内の食事やドリンクの手配や種類。 パーティー会場は滝川グループが経営しているプリンスホテルのホールを借りる事が出来た。 立地もとても良く、雨の日でも車から降りて濡れる心配もなさそうだ。 涼真さんと相談しつつ、持田さんや間宮さんにアドバイスをもらい、時折滝川さんの本家や、私の実家にも顔を出して着々と婚約の日が近付いて来た。 ◇ 「どうした、心?」 「──えっ?」 涼真さんの部屋。 私がソファに座り、ぼうっとしていると隣に座った涼真さんが心配そうに顔を覗き込んできた。 涼真さんの手には、2人で飲もうと言っていたワイングラスが握られている。 「仕事に、パーティーの準備に……疲れているだろう?大丈夫か?」 「だ、大丈夫ですっ!」 「本当に?無理していないか?」 「本当に大丈夫なんです、ただ……」 私が言葉を途中で切った事に、涼真さんの心配そうだった顔が不安気に揺れる。 いけない、涼真さんを不安にさせたい訳じゃない。 私は自分の恥ずかしい気持ちは置いて、涼真さんに理由を話す事にした。 ここで変な誤解が生まれて、涼真さんとギクシャクしてしまうのが1番嫌だ。 「そっ、その!本当に体調は大丈夫なんです。涼真さんが私の体調面も凄く気遣ってくれているから……。ただ、その……婚約発表パーティーの日付けが決まった時は、まだまだ先だなって思ってたんです。だけど、準備に忙しく過ごしていたらあっという間に時間が経っていて……」 「──うん。あとはもう当日の俺と心の服を選ぶだけだな」 私が言葉に詰まりながらでも、涼真さんは決して急かせる事なく、優しい表情で聞いてくれる。 私の頬に涼真さんの手のひらが触れ、愛おしそうに撫でてくれる。 私は、自然と無意識に頬に触れる涼真さんの手に頬を擦り寄せた。 「パーティーの日が近付くにつれて……実感してきて……。私、パーティーが終わったら、正式に涼真さんの婚約者になるんだなぁって……。堂々と、胸を張って涼真さんの婚約者だって、名乗れるんだ、って……」 「──っ、そんな可愛い事を考えていたのか?」 「かっ、可愛い事って……」 「だってそうだろう?物憂げな
Baca selengkapnya

272話

麗奈や、清水 瞬の事。 それに黒瀬社長。 その3人に関して、驚くほどに何も接触がなくて。 静かすぎるのが逆に不気味で、不安を煽る。 だけど、私が不安を抱えていると涼真さんが心配してしまう。 3人の動向が静か過ぎて怖いけど、私はあまり気にしないように努めつつ、日々の仕事をこなしていた。 そんなある日。 休日に、涼真さんと今後の仕事の話や、婚約発表パーティーの事について話していると不意に涼真さんの表情が真剣な物に変わった──。 「それで──、……涼真さん、どうしました?」 何か不手際などあっただろうか。 そんな事を心配し、私はリビングのテーブルにある書類を見直した。 だけど涼真さんは書類を取る私の手に自分の手を重ね、ゆっくりと言葉を選ぶように慎重に口を開く。 「心……。ずっと調べていた事があって……。心が学生の時に権利を売った人物について、だ……」 「──っ!見つかったのですか?」 私の言葉に、涼真さんは何とも言えない顔をする。 「見つかったと言えば、見つかってはいる……だが、やはりその人物は既に亡くなっていたよ」 「亡くなって……?」 「ああ。清水の会社役員で、生前は心から買った権利で清水の会社でかなりの地位を築いていた。……買った本人が既に亡くなっていて、心に謝罪をさせる事ももう難しくなってしまった」 申し訳なさそうにそう告げる涼真さん。 もしかして、この事をずっと気に病んでいたのだろうか──。 私は涼真さんの手に、もう片方の手を重ねると力を込めた。 「いいんです……。権利は既に売ってしまっているし……。私の手を離れています」 「だが、学生だった心の足元を見て、かなり買い叩かれている。本来心が得るはずだった金額よりかなり少なくて……」 言ってしまえば、私は騙されたのだろう。 恋に盲目になって、当時の私は清水 瞬を助けたいがためにかなり馬鹿な事をした。 過去の精算をしようにも、私の権利を買った人物は既に亡くなっていて。 所謂、感情の「落とし所」を無くしてしまった。 だけど──。 私は、自分の事のように悔しそうで、悲しそうにしている涼真さんに微笑んでみせた。 「大丈夫です。沢山調べていただいてありがとうございます、涼真さん。過去の研究成果は、私の愚かな行動で二度と取り戻す事は出来ないですけど……今は、沢山の人
Baca selengkapnya

273話

婚約発表パーティーが近付いたある日の休日。 私は涼真さんと一緒にパーティーに着るドレスやスーツを選びに都内にあるセレクトショップにやって来ていた。 品揃えも豊富で、涼真さんも良く利用しているらしく、私と涼真さんがショップに入るなりすぐに店長らしき人が自ら案内してくれた。 「心は肌が白いからはっきりした色合いのドレスが似合いそうだな。それに、背中も綺麗だから肌を見せるドレスが似合いそうだ……。いや、だがあまり背中が開いたドレスはな……他の男の目もある。やっぱり違うデザインの物を」 「かしこまりました」 涼真さんは自分のスーツそっちのけで、私のドレス選びに精を出している。 「りょ、涼真さん。私のドレスじゃなくて、涼真さんのスーツも……」 「いや、俺のは後回しだ。心のドレス選びの方が重要だろう。ドレスに合わせてアクセサリーや靴、髪型も決めないとだろう?」 涼真さんの瞳がキラキラと輝いていて、私にそう言った後、店員を呼び色々なドレスを持って来させている。 どこか楽しそうな涼真さんに、私の声は全然届かなくて。 あれも、これも、と指示を出す涼真さんに従い、色々な種類のドレスを持ってくる店員さん。 私は最早着せ替え人形のように沢山のドレスを試着した──。 ◇ 「うう……何だかもう、一生分のドレスを着たような気がします」 帰りの車内。 涼真さん自らハンドルを握ってくれていて。 私は涼真さんの隣でぐったりと背中を座席に預けていた。 そんな私の様子を見て、赤信号で停車した時に涼真さんが苦笑い混じりに私の頭を撫でてくれた。 「すまない、心。どんなドレスも似合うからついあれこれと……」 「私のドレス選びに凄く時間を取っちゃって……涼真さんのスーツをじっくり選べませんでした……」 私がじっとりとした目を向けると、涼真さんはちっとも悪いと思っていないような様子で「悪い」と答える。 「涼真さんのスーツを選ぶの、楽しみにしていたのに……」 涼真さんはとっても格好いいから。 だから、きっとどんなスーツでも似合う。 色々なスーツに着替える涼真さんを見るのが凄く楽しみだったのに。 それなのに、私のドレス選びだけでほとんど時間が過ぎてしまって。 楽しみにしていた涼真さんのスーツ選びは、ささっと終わってしまったのだ。 「だが、やっぱりパーティーで華や
Baca selengkapnya

274話

◇ 婚約発表パーティー、当日。 ホテルのホールは煌びやかな装飾が施され、沢山の招待客が来場していた。 そこには、滝川グループの役員や、加納家と取引や交流のある人達が多く招待されていた。 このパーティーには、涼真さんのご両親や私の両親も参加している。 錚々たる顔ぶれに、両家の両親達がいるテーブルには近付く人は中々いない。 「ああ、緊張します……」 「大丈夫か、心……?」 会場に入る前。 私は大扉の前で、逸る鼓動を何とか落ち着かせようと胸に手を当てていたが、心臓の鼓動がドコドコと速いまま、収まってくれる気配が無い。 そんな私を心配して、涼真さんが顔を覗き込んでくれる。 私は何とか笑みを貼り付け、涼真さんに笑い返してみたが、それでも涼真さんの心配そうな表情はなくならない。 「落ち着いて、と言っても……難しいよな……。ああ、くそ。心にキスして落ち着いてもらいたいが、今キスしたら乱れてしまうな」 「──え?」 「ほら。心の唇を彩る赤が、キスをしたら掠れてしまうだろう?俺にも移ってしまうし……招待客に何をしてたかバレてしまう」 「なっ、何を……っ!」 まさか涼真さんがそんな事を言うなんて──! 私が羞恥で顔を赤くしていると、涼真さんがしてやったりと言う顔で私の肩を抱いた。 「少しは緊張が解けたんじゃないか?ほら、時間だ心。会場に入ろう」 「──あっ、わわっ」 ほとんどの招待客が到着したのだろう。 私たちが入場する時間になり、涼真さんに肩を抱き寄せられて歩き出す。 大扉が左右に開き、眩い程の照明が私たちに降り注ぐ。 招待客の沢山の視線を感じて、私は背筋をぴんと伸ばした。 大企業の滝川グループ御曹司である涼真さんと、同じく加納財閥の娘である私の婚約発表パーティーだ。 多くの人の関心を引いている。 会場内には、メディアのカメラも入っているようで、私は粗相をしないようにとお腹に力を入れた──。 ◇ 婚約発表は、恙無く進行した。 涼真さんと私の言葉が終わり、後は立食パーティーを楽しむだけ──。 楽しめたら最高だったのだけど、私と涼真さんの周りには、沢山の人の輪が出来ていた。 それに、私の両親と涼真さんのご両親の周囲にも、沢山の人が詰めかけているのが見える。 滝川と、加納。 その両家が縁を得て結び付くのだ。 元々大企業
Baca selengkapnya

275話

程よくお酒も進み、楽しい会話に夢中になっていた。 だから、私も。涼真さんも。気付いていなかったのだ。 遅れてパーティーに参加してきた人がいるなんて事には。 涼真さんも多少なりとも緊張はあったのかもしれない。 多くの招待客と話し、少し人の波が途切れた時。 安心しきった表情で私の元にやって来た。 「心、ずっと立ちっぱなしだろう?大丈夫か?疲れていない?」 「──涼真さん」 「少しソファに座って休憩しないか?」 大仕事を1つやり遂げた──。 そんな開放感があるのだろう。涼真さんは私の肩を抱き寄せ、少し離れた場所にあるソファに目をやる。 「でも……私たちがここを離れて大丈夫ですか?」 「ああ、少しくらいは大丈夫だろう。パーティーはまだまだ続くからな、一旦休憩しておかないと足が辛いぞ?」 「ふふっ、それは嫌ですね。ソファに行きましょうか?」 「ああ、そうしよう」 私と涼真さんは顔を見合わせてくすくすと笑い合うと、涼真さんが私の肩を抱いたまま近くに居た人達に軽く頭を下げる。 「すみません、少しだけこの場を離れますね。また後ほどお話しましょう」 「ええ、ぜひ!」 「また後ほど」 招待客の方々は快く頷いてくれて、私たちから離れて行く。 「後で涼真さんのご両親にもご挨拶をしないとですね」 「そうだな……俺も心のご両親の所へ行かないと」 そんな事を話しながら歩き、ソファに私たちは並んで座った。 ソファに座った涼真さんは、会場内を見渡しておかしそうに笑い、口を開いた。 「一応俺たちが主役のはずなんだが……」 「ふふっ、皆さん楽しそうにお話していますね」 「ああ。新しい人との出会いもあり、これから取引を始める会社もあるだろうな」 「私たちのパーティーで出会った会社が、手を取り合うなんて良いですね」 「ああ」 私たちの婚約が、会社同士の架け橋、のような物になっているのだろうか。 参加者達の顔を見れば、皆が楽しそうに笑っている。 どこかでは商談のような物が始まっているし、名刺交換をしている人達もいる。 そして、誰かの子供同士だろうか。 親に紹介され、照れくさそうに笑い合う男女の姿も見えた。 「凄いですね。このパーティー会場では今、色々な事が起こっているみたいです」 「ああ。俺たちの婚約以上の大きな話題がここで発生しないよ
Baca selengkapnya

276話

涼真さんのご両親への挨拶も終わり、次は私の両親への挨拶。 涼真さんは流石落ち着いていて、私の両親への挨拶も難なくこなしていた。 そして、お互いの両親への挨拶が終わり、そのタイミングで再び私たちに参加者達が話しかけて来る。 「滝川さん、加納さん……!もしよろしければ、御社の今後の事業展開などを──!」 「いやいや!弊社との話を詰めて──!」 「こちらが先に──!」 沢山の人達が、仕事の話を涼真さんとしたがっているのが分かる。 涼真さんは困ったような顔をして、私にちらりと視線を向けた。 「いや、すみませんが……今日は婚約者の傍に……」 「ふふ、大丈夫ですよ涼真さん。私は少しソファで休んでおりますので」 「だが、心……」 「大丈夫です。涼真さんの視界に入る所にいますね」 「すまない、心。少し話したら戻るよ。必ず俺の視界に入る場所に居てくれ」 「ええ、勿論です」 心配そうに私の手を握る涼真さんに、私は「大丈夫」だと言うように笑って見せた。 申し訳なさそうにしている参加者の皆さんに私は軽く会釈をして、少しだけ離れた場所にあるソファに向かって歩いて行った。 参加者の皆さんの気持ちも良く分かる。 こうしたパーティーでは、新たな取引を得られる可能性が大きいのだ。 それに、今日は滝川グループと加納家の両親まで参加している。 滝川グループを継ぐ涼真さんと少しでもお近付きになり、顔を売っておきたい、と考えるのは尤も。 それに、加納家の両親の所にも挨拶に来る人が途絶えない。 「父も、母も……中々こういったパーティーには顔を出さないものね……」 だから、今日のように両親が揃って参加しているなんて珍しく、少しでも話を、と考えるのは当然。 仕事に繋がれば万々歳なのだ。 「ここら辺でいいかしら……」 私は、涼真さんから見える位置にあるソファまでやって来ると、腰を下ろした。 「いたた……靴擦れしているわね……」 新しい靴だからか、実は先程から足が痛み出していた。 「情けないわ、少し立ちっぱなしなだけでこうなるなんて……」 涼真さんと婚約して。結婚したら。 こうしたパーティーへの参加は日常茶飯事になるだろう。 「私も慣れなきゃ……」 ふう、と息をついているとどこからかパーティーのスタッフがやって来た。 「お飲み物は如何ですか?」
Baca selengkapnya

277話

「──え?」 くらり、くらり、と目の前が回る。 ──おかしい。 アルコールが得意じゃなくても、いくらなんでもこんな少量のシャンパンで、頭がぼうっとするほど酔う事なんて、無い。 次第に目の前がくらくらと白くなって行くような感覚に陥る。 それと同時に、体がカッと熱を持つように急に熱くなってきた。 「え、え……?何、これ……?」 意味が分からない──。 自分の身に起きている事が分からなくて、怖くて。 私は涼真さんに助けを求めるようにして顔を向けた。 瞬間、真っ黒な壁に遮られる。 「大分酔っているようだ、いけないね」 「──え」 壁、だと思っていたのは、どうやら誰かのスーツ。 くらくらする頭で、声の主を確認するために視線を上げる。 すると、そこには──。 「どうしてここに……、黒瀬社長……」 招待していないはずの、黒瀬社長がそこに居た。 「悪酔いしてしまっているようだ。別室で少し休んだ方がいい」 「ちょっ、やめ──……ひっ」 私が大声を出して静止しようとした瞬間、黒瀬社長が私の腰に手を這わせた。 その時、私の背筋をびりびりとした稲妻のような快感が走った。 霰もない声を上げてしまわないよう、私は奥歯を食いしばり、必死に声を押し殺す。 私が耐えているのを見た黒瀬社長は、下卑た笑みを顔に乗せ、そのまま有無を言わさぬ強さで腰を抱き、無理矢理私をその場から遠ざける。 「ちょっ、止め──」 「ははっ。大声を出さないように気をつけた方がいい。君も、こんな場所で婚約者以外の男の手で喘がされたくないだろう?」 「何を──っ、……っ」 腰を抱いている手とは違う、もう片方の手で首筋をなぞられ、私はまた声を我慢するために奥歯を噛み締める。 自分の足には信じられないほど力が入っておらず、黒瀬さんに半ば抱かれて移動するような形になってしまっている。 手を離して欲しい。 だけど、ぞわぞわとした快感が身体中に走り、上手く言葉を発せないし、体が上手く動かせない。 突然、こんな事になるなんておかしいし、招待もしていない黒瀬社長がパーティーに参加している事もおかしい。 そこで私は、ようやく黒瀬社長に何か薬を盛られたのだと察する。 恐らく、媚薬に近い薬──。 それを飲まされたのだ、とぼうっとする頭で察する。 「さあ、別室でゆっくりと休憩しよ
Baca selengkapnya

278話

◇ 「はな、して……っ」 「苦しいだろう?無理して我慢しなくていい」 私を外に連れ出した黒瀬社長はにたり、と下卑た笑みを浮かべると、私の事を舐め回すように視線を動かす。 その視線がとても気持ち悪くて。 必死に足を踏ん張り、その場に留まろうとしたけど私のそんな些細な抵抗など黒瀬社長は意に返さない。 「抵抗するのは止めておいた方がいい。せっかくの婚約パーティーだろう?そんな婚約パーティーで主役の1人である加納さんがこんな廊下で婚約者以外の男と抱き合っている姿を見られたら……?大変な事になる」 「──な、」 「まあ、私はここで始めてもいいんだが……。君を最初に抱くのは誰か、もう決まっているからな」 「なに、を……っ」 黒瀬社長の言っている言葉の意味が、分からない。 私を、抱く──? そんな人間が、既にこれから向かう部屋に居るというのだろうか。 形振り構わず騒いで逃げ出したい。 だけど、ここで私が騒いで暴れたら。 黒瀬社長は本当にこんな、誰が通るかも分からない廊下で私を抱こうとするだろう。 そんな「本気」が彼から垣間見えた。 だけど、大人しく部屋に連れて行かれたくもない。 走って逃げられればいいのに、今の私の体は今まで感じた事のないほどの熱を放ち、足すらまともに動かす事が出来ない。 そんな状態で、上手く抵抗する事が出来るのだろうか。 部屋に連れて行かれて、その場から逃げ出す事が出来るのだろうか──。 必死に頭を働かせようとするけど、体が熱くて。 思考がぼうっとしてくる──。 嫌だ、嫌だ、嫌だ。 助けて、涼真さん。 「さあ、着いたよ加納さん。時間はたっぷりあるから楽しもうか」 にっこり、と愉しげに笑った黒瀬社長がある部屋の前にやって来ると、扉に手をかけた。 扉が開くのが酷くゆっくりと感じてしまって。 私は、扉の隙間から部屋の中に居る人物を見て、唖然と呟いた──。 「麗奈に、清水 瞬──?」 どうして、2人がここに──。 私が唖然としていると、無理やり部屋に押し込まれ、背後で扉が閉まる音が聞こえた。 唖然と立ち尽くす私に近付いて来た麗奈は、醜悪に顔を歪めた。 「──ふっ、ふふっ。間抜けな顔……!心、あんたこれから自分がどうなるか……理解していないの?」 クスクスと愉しげに笑う麗奈に。 麗奈の少し後ろで覚悟
Baca selengkapnya

279話

「ねえ、心。その薬の効き目はどう?すっごく効いて気持ちいいでしょう?それは私が海外に居る時に良くお世話になった気持ちよくなれる薬よ。ドレスの擦れる感触すら凄い刺激でしょう?」 「なん、何でこんな事──……っ」 「何で?どうして私だけが不幸になるのよ。心が瞬を誘惑しなければ……。あんたが瞬と出会わなければ、全ては私の物だったのに。私の幸せをあんたが全部奪ったのよ!奪われたから、私は奪い返す!それだけよ!」 突然怒鳴りだした麗奈に、私は恐怖を覚えてソファの上で後ずさる。 だけど、ソファと自分の体が擦れる感覚だけで私の体にははしたない感覚が走り、私は小さく声を漏らして俯いた。 そんな私を見下ろしていた麗奈は、嬉しそうに笑う。 「私の人生は、あんたに滅茶苦茶にされた。だからあんたの人生も滅茶苦茶になれば良いわ」 麗奈はそれだけを言い終えると、部屋の扉に向かって歩いて行く。 そして、部屋の扉を開ける寸前。 麗奈はくるりと振り返り、清水 瞬と黒瀬社長に向かって口を開いた。 「抱くならさっさと抱いて、素っ裸の心を廊下に放置しなさいよ。早くしないと滝川が心を探し出しちゃうわ」 「分かっ、てる……」 麗奈にそう言われた清水 瞬は、自分のスーツを脱ぎ捨て、スラックスのベルトに手をかけつつソファに近付いて来る。 私はソファの上で必死に清水 瞬から距離を取ろうと後退するけれど、上手く体が動かない状況だと対して動けなくて。 「大丈夫だ、心。俺たち、またやり直そう。心が滝川に捨てられても、俺が心を大事にするって誓う」 「な、何を……っ」 「ああ、心。この部屋を出たら終わりだとは思わないでね。黒瀬さんに動画を撮ってもらうから、一生逃げられないわよ。他の男とやってるあんたの動画がネットにばら撒かれたら、いくら滝川でもあんたを捨てるんじゃない?」 くすくす、と愉しげに笑う麗奈の声が聞こえる。 「せいぜい地獄に落ちればいいわ、私と同じようにね」 そして、言いたい事を言い終えた麗奈が扉の施錠を解錠するために手をかけた。 「悪く思わないでくれ、加納さん」 「黒瀬、社長……」 黒瀬社長は、片手にスマホを構えながら私に近付いて来る。 「この動画はきっと良い値で売れると思うんだ。君ほどの美女なら、会員達も満足してくれるだろう」 「──は、なに、を……っ」 「
Baca selengkapnya

280話

涼真さん、助けて。 私が心の中で呟いたのと、同時。 部屋を出ようとしていた麗奈の叫び声が聞こえた。 「──きゃあっ!」 「心!!」 麗奈の叫び声の後。 良く知った涼真さんの声が聞こえる。 低くて、甘くて、愛おしいと言う感情を声に乗せて、私の名前を呼んでくれる涼真さん。 そんな、いつも聞きなれた涼真さんの声が聞こえた瞬間、絶望に支配されていた私の頭が一気に覚醒する。 「りょう、まさん……っ、」 「どうしてここに滝川が……!」 焦ったような清水 瞬の声。 そして、黒瀬社長もさっきまでの余裕そうな表情はなくなり、焦燥感に濡れている。 「間宮!持田さん!柳 麗奈は持田さんが捕まえろ!間宮はスタッフと協力して清水と黒瀬を!」 「かしこまりました社長!」 涼真さんの怒声と共に、ホテル側のスタッフだろうか。 スタッフ数人が部屋に雪崩込み、間宮さんと一緒にあっという間に私の上に覆い被さっていた清水 瞬を捕え、スマホで動画を撮影しようとしていた黒瀬社長も拘束する。 バタバタ、と慌てた足音が私のいるソファに近付き、涼真さんの声が聞こえる。 「心っ、心……!良かった、無事か……!」 「涼真、さ……」 涼真さんは私の姿を瞳に映した瞬間、ぐしゃりと顔を歪めて泣きそうな表情になる。 私のドレスが乱れていない事に安堵した様子の涼真さんは、私をソファから抱き起こそうと私に触れた。 瞬間──。 びりびり、と私の体に強い快感が走る。 「──ぁっ!」 「……っ、心!?」 小さく漏れ出てしまった、甘えるような鼻にかかった声。 そんな私の声を聞いた涼真さんは、一瞬にして顔色を変えると私の顔を隠すように自分のスーツを脱いで私に被せた。 「……触れない方が、いいか?」 すぐ近くに、涼真さんがいる。 その安心感と、飲まされた薬の効果が膨れ上がっていて──。 涼真さんの低い声、それに、距離が近づいた事で涼真さんの香りが私の鼻に届いて堪らない気持ちになる。 ずくずく、と甘く疼く下腹部に私の息はどんどんと荒くなって行く。 「──っ、」 私の異変を素早く察知した涼真さんは、ぐっと眉根を寄せると室内にいる間宮さんと持田さんに指示を出した。 「間宮、警察に通報してくれ。この3人をどこか別室に拘束しろ、決して逃げられないように」 「かしこまりました、社
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1
...
262728293031
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status