「会いたくないって、どうして?」奈々美は苛立ちを隠せず、その場で足を踏み鳴らした。ボディーガードが答えないと分かると、病室に向かって声を張り上げる。「祐一さん!どうして会ってくれないの?私、祐一さんを怒らせた?」「これはこれは、滝沢家のお姫様じゃない?あなたも門前払いを食う日が来るとはね」紬のからかうような声に、奈々美は振り返る。一瞬だけ由奈を見たあと、紬をにらみつけた。「調子に乗らないでよ。あなたなんかより、私の方が祐一さんとずっと仲がいいんだから」「そうかな?祐一兄ちゃんに追い返されてるのはあなたのほうみたいだけど?」紬はわざとらしく眉を動かし、得意げに笑う。「あなた……!」「前も言ってたでしょ。滝沢家のお嬢様だからといって、好き放題してたらバチが当たるって。ほら、祐一兄ちゃんにだって嫌われたでしょ?」奈々美の顔が真っ赤になる。手にしていたバッグを強く握りしめ、そのまま背を向けて去っていった。由奈はその後ろ姿を見送り、ふっと紬を見る。「奈々美とは、仲がよくないんですか?」「仲よくなれるわけないでしょ」紬は嫌悪を隠そうともせず言い放つ。「小さい頃、海都市に遊びに来るたび、あの子に散々嫌がらせされたんだから。滝沢家の娘ってだけで威張ってさ」肩をすくめる。「友達だって、本当に仲がいい人なんてほとんどいないよ。あの性格じゃ、周りが我慢してるだけ。滝沢家に生まれてなかったら、とっくに孤立させられてたと思うよ」思わず、由奈は吹き出した。すると紬は、ぐっと顔を近づけてくる。「お義姉ちゃん、笑ったほうがずっと可愛いよ。もっと笑って」「……今日が初対面なのに、どうして私が笑わないって分かるんですか?」「アルバムで見たから」由奈は目を瞬かせる。「アルバム?」「お義姉ちゃんと叔母さんと祐一兄ちゃんの写真。家族写真ね。どれも、あんまり笑ってなかった」由奈は言葉を失う。あれは結婚してすぐの頃に撮った写真のはずだ。あの頃、祐一の心に自分がいないことを知っていた。どんなに家族の前で笑おうとしても、胸の奥の寂しさまでは隠せなかった。「お義姉ちゃん会ったことがないのに、一目であなただって分かったのは――祐一兄ちゃんのところで、写真を見たことがあったから」その言葉に、由奈の眉がわずかに寄る。その頃、祐一は本を閉
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