Lahat ng Kabanata ng 恋はタイミングがつきものと言うけれど: Kabanata 1 - Kabanata 10

19 Kabanata

1.失恋

 ー 「侑斗(ゆうと)、助けて。 彼が浮気していて、問い詰めたら別れようって言ったの。 あんなに好きだって言ってたのに。」 雪村 華(ゆきむらはな)は電話をかけた瞬間、自分でも驚くほど声が震えているのに気づいた。 こんな時はどうしても会いたい気持ちを抑えきれず、結局また坂下侑斗(さかしたゆうと)に連絡してしまった。 ー 「今回はどんな男? 相変わらず見る目がないね。」 ー 「わかっているわ、侑斗の言いたいことは。 でも、今回は本当にピンチなの。 約束していたのに、今更結婚できないって…。 私はどうしたらいいの?」 ー 「何それ? わかった、とりあえず今から行くから、待ってて。」 ー 「うん、ありがとう。」 私はその声で少し落ち着く。 侑斗はいつもそうだ。 私が困れば手を差し伸べてくれる。 だから、どうしていいかわからなくなると、彼に頼ってしまうのだ。 私は恋人ができると彼中心の生活になって、侑斗への連絡は途切れがちだ。 けれど、結局失恋すると、再び彼に泣きついていた。 彼は幼馴染だから、私のことを手に取るようにわかっていて、呆れたように話しても、見捨てることなく電車を乗り継ぎ、駆けつけてくれる。「来てくれて、ありがとう。」 泣き腫らした顔で笑おうとすると、彼はすぐに私を抱きしめてくれた。 体の芯から、ようやく安堵が広がる。「大変だったな。」 彼の腕の中で何度も頷いた。 彼氏がいる間は、侑斗でさえ部屋には入れなかった。 だから、こうして彼を迎え入れるのは、もう恋が終わってしまった証でもある。 私は、好きな人を不安にさせるようなことだけは、絶対にしたくなかったから。 しばらくするとようやく落ち着き、話し出す。「今日ね、琴音(ことね)から彼が、女性と住んでいるって聞いたの。 そんなはずはないと思ったけど、心配でマンションに行ってみたら、女性と二人で腕を組んで出て来たの。」「酷いな。」「そうなの。 私が声をかけたら、最初はバツが悪そうにしていたのに、だんだん浮気はしたけど、お前のせいだから仕方ない。 もう女として見れないとか言い出して。 それでも私は彼のことが好きだし、諦めたくないって言ったら、もう新しい女性と住んでいるし、お前とは別れるって。」「浮気男の言いそうなことだ。 色々言ってくる華のこと
last updateHuling Na-update : 2025-09-23
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2.親友

「それでどうだった?」 華は、友人の清水琴音(しみずことね)と食事に来ていた。 琴音は、つき合っていた彼氏が女性と同棲していると教えてくれた親友である。 だから、お礼を込めた報告に来ていた。「琴音の言う通りだったよ。 マンションから女性と出て来て、散々酷いことを言った挙句、一方的に私を捨てたの。」「何それ? やっぱり浮気してたんだね。 そのくせ、自分から別れようとするだなんて勝手じゃない?」「うん、それに私、完全に騙されてた。 ちょっとした浮気ならまだしも、二股だよ、本当に腹が立つ。 しかも、相手の女性にもバカにされて、悔しかった。」「酷いね。 彼って、そんな男だったっけ?」「そうなの。 付き合っていた時は全然そう見えなくて、琴音に教えてもらうまでは信じきっていたし。」「そうだよね。 だから、私も聞いた時、半信半疑だったんだ。 でも、もし騙されてたら困ると思って、華に伝えたの。」「ありがとね。 このまま知らないでいたら、もっと酷いことになってた。」「かろうじて、それだけは防げたね。」「うん、辛かったけど、これで良かったのかも。 でもね、悔しいことに本人を目の前にすると色々言いたいことがあったのに、悲しくて言い返す言葉が思うように出ないの。」「そうか、うーん、それはごめん。 一緒に行ってあげれば良かったね。」「ありがとう。 でもいいよ、ゴタゴタに巻き込みたくないから。 こうして話を聞いてくれてるだけで嬉しいし。」「そっか、話ならいくらでも聞くからね。」「ありがとう。」 二人にとってお馴染みのイタリアンレストランで、濃厚なカルボナーラを食べながら会話は続いていく。「華、ピザどのくらい食べる?」「四分の一でいい。 あんまり食欲ないんだ。」「そりゃね、結婚ダメになったら、食欲もなくなるよね。」「うん。」「で、式場どうするの? 予約してたよね?」「それがね、キャンセル料が百五十万かかるってわかったの。 彼が私も悪いから、半分払えって言ってきて、結婚もできないのに、酷いでしょ。」「えっ、それ言われたままに払うの?」「そこはね、侑斗が婚約破棄の慰謝料請求で、何とかしてくれるって言ってるんだけど。」「その名前久々に聞いた。 へー、ついに弁護士になったんだ。 侑斗元気?」「うん、この前会った
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3.俺の恋

 侑斗は多忙な仕事の合間に、華の婚約破棄による慰謝料請求を進めていた。 法律事務所に勤めているが、本来、俺の専門は企業案件で、恋愛や結婚絡みのトラブルは扱っていない。 弁護する内容によって、各セクションに分かれており、依頼人の希望に沿って有利に進めるには、専門家の意見を求めるのが不可欠だった。 だから今回は、その分野に強い高木さんに相談しながら、なんとか時間を捻出していたのだ。 そこまでするほど、子供の頃から俺は華を好きだったけれど、長い間その想いを封印して来た。 恋愛して浮かれているようでは、いつまでも合格できないと思っていたからで、弁護士になるべく、司法試験の勉強に専念していた。 華が男と付き合ってもすぐに別れるのはわかっていたし、弁護士になってから、告白するつもりだった。 そして、無事合格して、弁護士として働き、華もシングルの今がチャンス。 俺は華の元彼の件を片付けたら、彼女と付き合いたいと思っている。 そんな折、このオフィスのCEOである父から呼び出され、部屋を訪れた。「失礼します、父さん。」「岡本君、二人にしてくれ。」「はい、坂下代表。」 パラリーガルの岡本さんが退出すると、応接用のソファに腰掛ける。 それを見届けると、デスクの奥に座る父は、低い声で切り出した。「何で呼ばれたか、わかっているのか?」「わかってる。」「友人からの依頼を引き受けたんだってな。 そんな案件、担当部署に回したらいいだろう? お前は自分の仕事に集中しろ。」「そうはいかないよ。 案件を進める対価として、きちんと弁護料をもらってる。 会社に利益をもたらしているんだから、父さんに止められる筋合いはない。 父さんだって、知り合いから依頼された案件を引き受けたことがあるだろ?」「それはそうだが、お前は今まだ経験も浅く、大切な時期だ。」「わかってる。 けど俺は、この経験を無駄にしないし、必ず今後の仕事に役立ててみせる。」「はっきり言おう。 そんなに、その娘が大切か?」 幼馴染である華のことは、父も知っている。「ああ、俺は彼女のために弁護士になった。 彼女とのことだけは、絶対に誰にも口出しさせない。 たとえこのオフィスをクビになっても。」 そう言って父を見据えると、父は諦めたように溜息をついた。「お前は昔からそうだ。 あの娘の
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4.繰り返す

 久しぶりに会えた華と理人さんは、和風創作料理の店でデートしていた。「このテリーヌ、出汁が効いていて、とても美味しい。」「気に入ってくれて良かった。 実は前に会食で来たとき、料理が美味しくて、雰囲気も良いから華を連れて来たいと思っていたんだよ。」「嬉しい。」 忙しい仕事の合間にも私を思い出し、次にデートする場所を考えてくれる。 頻回には会えないけれど、その分、私を大切にしてくれているのが伝わってくる。 そんな彼の優しさが嬉しい。 テーブル席の奥、観葉植物の陰に隠れるようにして座っている私達は、周囲のざわめきなど存在しないかのように、互いに視線を絡め合っていた。「好きだよ。」 いたずらっぽく囁く理人さんに、私は頬を赤らめる。「もう、周りの人に変な目で見られちゃうよ。」 冗談めかした私の声に、彼は少しだけ目を細めて笑った。「大丈夫、誰も見ていないさ。 この後、まだ時間あるよね?」「うん。 明日は休みだから。 理人さんは?」「僕は明日有給取った。」「えっ、嬉しい。 じゃあ、心置きなくゆっくりできるね。」 まるで二人だけの世界にいるように、心地よい時間が流れていく。 私達は、お腹いっぱい料理を楽しんで、店を後にすると、柔らかな夜風が頬を撫でた。「風が気持ちいい。 少し歩こう。」「うん。」 二人が腕を組みながら道を歩いていると、突然、後ろから女性が駆け寄って来て、理人さんの腕を掴んだ。 睨みつける目は鋭く、怒りを隠そうともしない。「理人、この女とはどういう関係? ぜひ紹介して。」「うわっ、どうしてここに?」「どうしてここにじゃないわよ。 どういう関係か聞いているの!」「いや、この人は会社の取引相手で、たまたま飲み会があって、一緒に歩いていただけだよ。」「私が何も知らないとでも思って、しょうもない嘘を。 見たらわかるわよ。 私が気づかないとでも思った?」 そう言われた理人さんは、下を向き、言葉を失った。「ねえ、あんたも何か言ったらどうなのよ、恥ずかしくないの?」 そう言って、今度は私を睨みつける。「えっ、私? 理人さん、ねえ、これってどういうこと? どうしてこの人は怒っているの?」 私が理人さんに囁くように尋ねると、彼は歯切れ悪く答えた。「いやあ、それはちょっと誤解があって。」「誤解?」
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5.またもや、ピンチ

 理人さんとの別れから二週間後、彼から受けた心の傷が癒えて来たと感じていた頃、彼の奥さんから一通の内容証明が届いた。 そこには「不倫に対する慰謝料を三百万円請求する」とはっきり書かれていた。 三百万? そんな…、私はただ彼が既婚者だと知らずに付き合っていただけなのに。 どうしてこんなことになるの? 元彼からもらったお金はあるけれど、とても足りる額じゃない。 どうしよう…。 ひとりでは抱えきれず、私はまた侑斗に頼ることを決めた。 SNSを開いてメッセージを送る。 ー 「忙しい?ごめん、相談ある」 ー 「何?急ぎ?」 ー 「うん、できれば」 ー 「わかった、仕事終わったら連絡する、どこに行けばいい?」 ー 「家」 ー 「了解」 その日の夜、侑斗は仕事帰りにコンビニ袋を提げて、早速家に来てくれた。 スーツ姿に整えた髪。 いつも爽やかな彼が、今日は一段とカッコ良く見える。 どうして仕事帰りなのに、こんなに一日の疲労感が出てないの? とは言え、いつでも侑斗は颯爽と現れるし、シュッとした鼻筋や強い眼差しもすべてカッコいい。「侑斗、急にごめん。」「大丈夫、華からの連絡はだいたいいつも急だから。」「そっか。」 二人で笑った後、侑斗は買って来たスイーツを私に渡し、いつもの場所に座る。 テーブルの前のソファの左側。「で、どうした?」「それが…、とりあえず、そのスーツ、ハンガーにかける? 疲れたでしょ?」「ああ、サンキュ。」 侑斗のスーツを受け取り、シワにならないように窓際にかけると、冷蔵庫からビールを取り出し渡す。 すると、彼はすぐにプシュと音を立てて缶を開け、豪快に飲み干した後、満足げにひと息ついた。「あのね…。」「何、言いにくい感じなんだ?」「うん。」「男絡みだろ? わかってるよ。」「そっか。」 私は意を決し、彼の向かいにちょこんと座る。「この前、元彼の件で助けてもらったばかりなのに、本当にごめん。 実はね、…これ。」 引き出しから、理人さんの妻から届いた内容証明を取り出すと、恐る恐る侑斗に差し出す。「不倫の慰謝料請求って? 何してんの?」 呆れ顔の侑斗。 やっぱりそんな反応になるよね。 私は慌てて、誤解を解こうと説明し出す。「ごめん。 でも、違うの。 不倫してたって、知らなかったの。
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6.やり返す

「高木さん、相談にのっていただいてありがとうございます。」「いいのよ、ちゃんと報酬ももらってるんだから。」 翌日のオフィスで、侑斗は華の案件について、男女間の揉め事を専門に扱っている部門の高木さんを訪ねていた。 高木さんはこの道何十年かのベテランであり、ハキハキとした話しぶりは、自信の現れでもあった。「それにしてもこの相手の女性、大した証拠もないのに、無理矢理慰謝料を請求して来てるわね。 こちらのクライアントは若い女性で、そんなにお金がないことがわかりそうなものなのに。」「そうなんですよ。 きっと、何も分からず泣き寝入りして、言われたままに支払うと思ってますよね。 ただ、こちらがいくら結婚していたのを知らなかったと主張しても、提示する証拠がないんですよ。 だから、その男に証言させようと思っています。 それがあれば戦えますか?」「そうね。 ただそれだけだと、相手に弁護士がついた場合、説得されて直前で覆される可能性もあるわ。 だから、そんな時でも言い逃れできないように、こちらとしてもできる限りの状況証拠を集めた方が安全ね。」「わかりました。 SNSのやり取りはすべてあるので、それを証拠として提出します。」「そうね、最後まで気を抜かないで。 それと、一つ聞いていい? その女性は坂下さんとどういう関係?」「友人です。」「そう? でも、その女性はこの前の案件と同一人物よね。 となると、この女性自身にも問題があるように思えるんだけど。 それでも受けるの?」「はい。」「きっとこの女性はまたやるわよ。 それでも?」「はい。」「じゃあ、はっきり言うけど、妙な案件に関わって負けたら、坂下さん自身の経歴に傷がつくわよ。 あなたは次期CEOでしょ。」「はい、忠告ありがとうございます。 でも、僕にとって彼女は特別な存在です。 だから彼女のためにつく傷なら、いくらでもついていいと思っています。」「そう、その覚悟があるならいいけど。 じゃ、困ったらまた相談して。」「はい。 ありがとうございます。」 アドバイスをくれた高木さんの部屋を後にし、自分の部屋へ戻って相手の男に電話をかける。 ー 「もしもし、こちら坂下リーガルオフィスの坂下ですが、小川理人さんですか?」 ー 「はい。僕ですが何?弁護士?」 ー 「はい。雪村 
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7.琴音との会話

「お疲れ、今日は何にする?」「今日はさっぱりした物が食べたい。」  華は琴音といつものイタリアンレストランに来て、メニューを眺めていた。「だったら、冷製パスタかレモン味のペペロンチーノね。」「うーん、ペペロンチーノがいい。」「じゃあ、そうしよう。」 琴音は肩までの髪をふわりと巻き、品の良いワンピースに身を包んでいる。 育ちの良さを滲ませるが、いつも快活で気取らない。 思ったことはストレートに口にし、時に答えに困るほど率直だが、その裏には私を心配してくれる優しさがある。 ひと通り注文すると、彼女からの質問タイムが始まる。「で、どうなった? 不倫男との慰謝料は?」「言い方。 悩んだけど、結局、また侑斗を頼っちゃった。」「まあ、そうなるよね。 今回の件に関しては、華一人じゃどうにもならないよ。 きっと私でも侑斗に頼る。 なんて、話だけで直接侑斗に会ったことはないけれど。」「うん、そうだよね。 でも今回は本当に頼みにくかったよ。 さすがに二回連続は申し訳なくて。」「まあ、この前の件がやっと片づいたばかりだしね。」「うん。」「それで、侑斗は何だって?」「引き受けてくれるけれど、今のが片付づくまで、恋愛禁止だって。」「えっ、厳しいね。 でも、そう言われても仕方がないよ、さすがに。 侑斗の気持ちもわからなくもないしね。 だってさぁ、彼からしてみれば常に華の案件を抱えている状態でしょ。」「そう、反省してる。」「華は元からダメ男と付き合いがちだけど、最近は二股とか不倫とか、話がどんどん大きくなっているよね。」「うん、どうしてだろ? 今度こそ失敗しないようにと思って、慎重に選んでいるつもりなんだけど。 どんどん酷くなっていくのは、何でだろう?」「華から話を聞いている分には、相手の男が悪い人って感じじゃないのよね。 華に恋愛フィルターかかっているからかな。 普通は気づくべき大事なことを見落としてるのか、そもそも信じ過ぎなのか。」「そうなのかな? 自分では全然わからないの。」「だったら単純に、男運が悪いんじゃない?」「それ、一番傷つく。 私も薄々は感じているけれど。」「だってそれが、しっくりくる答えだもの。 でもね、心配しないで。 今度こそいい話があるのよ。 私が恋のキューピットになってあげる。」
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8.侑斗の家

 しばらくして、侑斗からSNSでメッセージが届いた。 ー 「この前の話が解決したから、家に来て待ってて、今、福岡だから」 ー 「忙しそうだね、無理せずに今度で大丈夫だよ」 ー 「お土産も渡したいんだ」 ー 「そっか、ありがとう、じゃあ、待ってるね」 ー 「うん、13:30東京着だから」 ー 「了解」 少し早かったけれど、午後二時に侑斗の家に着き、呼び鈴を鳴らすと、お母さんが出て来て、笑顔で迎えてくれた。「いらっしゃい、華ちゃん。 侑斗から聞いているわよ。 とりあえず入って待ってて。」「はい、お邪魔します。」 玄関の扉をくぐると、まず広々とした土間が目に入る。 磨かれた木の床は艶やかに光り、靴箱の上には季節の花が生けられいた。 高級感があり、落ち着いた家のようすは以前から変わらずで、小さなアパート暮らしの私を少し緊張させる。「久しぶりね、元気にしてた?」「はい。」「そう、良かったわ。 もう少ししたら、侑斗が帰るから待っててね。」「はい。 ありがとうございます。」 居間には低めのソファと深い色合いのテーブルが整然と置かれていて、お母さんはそこに私を座らせると、お茶とクッキーを差し出した。 そして、微笑みながら探るように私を見る。「華ちゃんは、侑斗の好きなタイプを知ってる?」「いやー、聞いたことはないですね。 そう言う話は、侑斗はあまりしないから。」「そうなの? 華ちゃんならわかるかなあと思ったんだけれど、残念。 ここから先の話は侑斗に内緒なんだけど、実はね、弁護士婦人会の皆さんから、お見合いの写真がたくさん届いているのよ。 まだ早いと侑斗から怒られそうだけど、きちんとお付き合いしてから結婚するとなると、早めにお相手を決めておかないとね。」「そうですね。」「忙しいと後回しにしてたら、良い子はどんどん結婚しちゃうのにね。 呑気なものよ。 この前なんてね、仕事が忙しいって、一カ月まるまるお休みが取れなかったの。 そんなはずないと思って、お父さんに確認したら、なんでも友人の案件を引き受けているから、お休みがなかったんですって。 侑斗は人が良いから、困っている友人に相談されて放っておけなかったのね。 昔からそんなところがあるのよ。」「そうですね。」 侑斗を心配する彼のお母さんに、その問題を抱えた友人が自
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9.告白

「部屋のようす、随分変わったね。」 華は久しぶりに訪れた侑斗の部屋をしげしげと眺めていた。 前回、彼女が来たのは遠い昔で、その頃デスクは学習机だし、本棚にある法律関係の書籍は、昔は生物図鑑や歴史漫画だった。「そりゃあそうだよ。 逆に今でも学習机で法律の勉強してたら、面白いだろうな。」「ふふ、見てみたい気がする。」「でも、足周りのスペースとか机の幅が狭くて早々に買い替えたんだよ。」 そう答えながら華の表情を伺うと、いつものように笑っているようで、どこか寂しそうな表情が気になり不安になる。「何かあった?」「ううん、侑斗はずっと頑張っていたなあと思って。 私ももっと勉強しておけば良かった。」「気になるなら、今でも遅くないよ。 資格取ったり、講習受けたりしてそのスキルを仕事で活かしたら良いと思うよ。」「私、学歴がほしい。」「学歴、大学の? やりたいことがあるなら良いけど、今さら?」「そうだよね。 ううん、…いいの。」「いや絶対何かあったよな。」 華の口から漏れる言葉の歯切れの悪さに、俺は確信する。「何も。 私、侑斗がずっと頑張っているの見て来たのに、自分も頑張ろうと一度も思わなかったなぁと思って。 侑斗は侑斗、私は私って。」「それで良いんだよ。 でも、華は俺のすることをいつでも応援してくれたし、周りのやつみたいに勉強ばかりする俺を茶化したりしなかった。」「だって本当に侑斗は偉いもの。 私、尊敬してたんだ。」 大きな瞳からは、すぐに感情が溢れ出す。 そんなところも可愛い。「ありがとう。」 華はいつもそうだ。 俺を励まし、やる気をキープさせてくれる。 彼女とのことがなかったら、勉強も仕事もこんなに頑張り続けてこれた自信がない。 変な男に寄り道することがあっても、彼女は俺のだから。 華、好きだ。 もう言ってしまいたい。 けれど告白する前に、まずは彼女を悩ませていた件を片付けてしまおう。「この前の案件だけど、男が華に既婚を隠していたことを認めたよ。 SNSの会話でも、華が奥さんの存在を知っていたような発言は一切なかったし。 だから、華が不倫の共犯だという奥さんからの慰謝料請求は取り下げられた。 男には請求するみたいだけど。 俺がついている以上、証拠もないのに裁判をやっても勝てないと、弁護士から言われ
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10.今は

 華は、侑斗の家を出て、道沿いにある公園のベンチに座り、涙をこぼしていた。「侑斗…、今は…無理なの…っ。」 目の前には、家族連れの子供たちが楽しそうに滑り台で遊んでいる。 突然、侑斗に「好きだ、付き合ってほしい。」と言われて、本当はすごく嬉しかった。 けれど同時に、今の私では付き合うのは無理だとも痛感していた。 だって私は、誇れるような学歴もなく、むしろ問題ばかりを起こし、侑斗の足を引っ張るようなそんな存在だから。 二人が好き合っているからと言って、このまま感情のままに付き合っても、侑斗はきっと周りから反対され、私と付き合ったことを後悔するだろう。 侑斗のお父さんは、私が彼を困らせた友人だと知っているし、お母さんだって、良い条件のお見合い相手がいるのに、このタイミングで私と付き合ってほしくはないだろう。 反対されて、釣り合わない現実を突きつけられ、二人で傷つくくらいなら、最初から彼には知られない方がいい。 私では家族が納得しないであろうことを。 悲しいけれど、こんなふうになってしまったのは、全部私のせいだった。 子供の頃からもっと勉強し、大学に進んで、変な男と付き合ったりしなければ、今、侑斗と付き合えたのに。 長い間、ずっと秘めてきた想いが叶うところだったのに、みすみす逃してしまった。 本当に自分が嫌になる。 それでも、しばらく落ち込むと、微かな期待が込み上げる。 侑斗はこんな私でも「好き」だと言ってくれたよね? だったら、今更だけど大学に通って、誰とも付き合わずちゃんとした自分になれば、彼に相応しくなれるかもしれないと淡い期待が胸をよぎる。 まずは大学を目指すことを家族へ相談しようと、離れて暮らしている母の家へ向かった。「華お姉ちゃん、待ってたよ!」 実家の玄関を開けると、私を見つけ飛びつくように出迎えてくれたのは、小学二年生の弟、蓮(れん)であった。「蓮元気?」「うん、僕ね、今度ピアノの発表会があるんだよ。 すごく練習頑張っているから、絶対に聞きに来てね。」「うん、わかった。 楽しみにしてるからね。」「十日後の日曜日、リーフホテルで一時からだから忘れないで、必ずよ。」 キッチンから顔を出した母も念押しする。「わかってる、大丈夫だよ。」 蓮は母が再婚した男性との間にできた大切な子供で、約束を忘れて悲しませる
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