All Chapters of 異世界に子供の姿で転生し初期設定でチートを手に入れて: Chapter 61 - Chapter 70

92 Chapters

59話 伝説の存在と奇妙なパーティ

 ノアが驚きの声を上げる。その声は、恐怖と興奮が入り混じっていた。「キャー!! ドラゴンなの!!」 ノアはさらにそらの腕に強くしがみつき、全身を震わせた。 そらは落ち着いた声で、ノアの頭を優しく撫でながら安心させる。「大丈夫だよ。ノア、友達だから」 すると、巨大な体躯を持つドラキンが、空中で翼をゆっくりと動かし、少し謙虚な態度で答える。その重厚な声には、そらへの畏敬の念が込められていた。「友達などと、めっそうも御座いません」 そらはドラキンに尋ねる。彼の無邪気な質問は、巨大なドラゴンに対する態度としてあまりに自然すぎた。「この辺に、イノシシの猛獣とか魔獣の群れとかいる場所ないかな?」 ドラキンが巨大な首を静かに下げ、丁寧に案内を申し出る。「ご案内いたします。背中にお乗りくださいませ」 そらはノアを片腕でしっかりと抱え上げ、躊躇なくドラキンの背中に飛び乗った。硬い鱗の感触が手に伝わる。 そして、ドラキンがゆっくりと巨大な翼を広げ、空へと飛び立つ。ノアは驚きに目を真ん丸くして、そらの服にしがみついた。地上から離れるGと、伝説の存在であるドラゴンの背中に乗っているという非現実的な状況に、ノアの体はおどおどと小さくなる。「ひゃあ……! そらって、とんでもないお友だちがいるの」 ノアは息を呑みながら、風を切る音に負けないように小さな声で呟いた。その表情には、驚きと感心、そして少しの怖さが混ざり合っていた。 そらは少し照れながら、ノアの頭を軽く撫でて返す。「あんまり友達はいないけどね」 約10分ほど飛んだ後、ドラキンが夜の闇に包まれた丘のある森の中へ案内する。「こちらにイノシシの魔獣の群れが居ります」 ドラキンが静かに着地すると、そらはノアを片腕でしっかりと抱えて、優しく背中から降り立った。そして、巨大な体を見上げるようにドラキンに提案する。「ドラキンも一緒に冒険して遊んでいく?」 ドラキンはその提案が意外だったの
last updateLast Updated : 2025-11-19
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60話 ノアの勇気と銃の練習の成果

 ノアがその異様な様子に目を見開き、そらの腕にしがみついたまま声を上げる。「わ、わわぁぁぁっ! 魔獣さんが……消えたのっ!」 ふと探索魔法の意識を凝らすと、通常のイノシシの倍ほどの大きさを誇る、巨大なボスが、怒りに満ちた突進で遠くから迫ってくるのが見えた。筋骨隆々の巨体が地響きを立てながら疾走してくる様子は、凄まじい迫力に満ちていた。 そらは即座に対応する。ボスの魔力を感知し、イメージを集中。魔石を革の袋に転移し、同時に死体を収納させる。間髪入れずに二つの魔法が発動した。 結果として、イノシシのボスが突進の勢いを失い、倒れそうになる瞬間、完全に空間から消え去った。 空間の静寂が戻るか戻らないかのうちに、そらは新たな、より強い魔物の気配――オーガの群れの魔力を感知した。その途端、ドラキンが魔法通信で報告してくる。「次はオーガの群れのようです」 そらは肩をすくめて、興味を失ったように呟く。 (なんだぁー……食べれないやつか。どうでも良いや……) 彼は食料にならない魔物には全く関心を示さなかった。 そのままドラキンに指示を出す。「ドラキンにまかせたっ、宜しくねー」「かしこまりました」 ドラキンは主人からの命を受け、その巨大な体を静かに前へ進めた。 ドラキンは、巨大な翼を広げて勢いよく飛び上がり、百メートル前方に向けて口を大きく開いた。その口内に灼熱のエネルギーが収束していくのが見えたかと思うと、強烈な光の奔流、ドラゴンブレスを放つ。 辺りが夜にもかかわらず昼間のように明るくなり、大地が僅かに揺れるほどの凄まじい衝撃が響き渡る。轟音と共に熱を帯びた爆風が波となって押し寄せてきたため、そらは即座に強力なバリアを張り、ノアを完璧に守った。バリアに当たった熱風と土砂が音を立てて弾かれる。 その瞬間、オーガの群れはほぼ壊滅。だが、幸運にも、あるいは不運にも、ブレスの直撃を免れた一部のオーガたちが、怒りの形相でこちらに向かって突進してきた。その
last updateLast Updated : 2025-11-20
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61話 無数の魔法陣と竜を焼き尽くす追尾弾

 夜の暗い上空に、幾つもの複雑な幾何学模様を持つ魔法陣が次々と現れる。それらは深みのある青や金色に幻想的に輝きながら、ひとつ、またひとつと、空中に整然と並んでいく。その美しい光の輪の中から放たれる魔法は、見た目にはまるで光の装飾のように見えるが、実態はその反対、すべてが即死級の凶悪な威力を秘めていた。「これで、終わりかなっ」 そらの声が夜の闇に響き渡った。その言葉とともに、上空に並んだ魔法陣の中から、無数の魔法の弾丸が一斉に現れた。それはまるで野球ボールほどの大きさを持ちながら、複雑な魔法の加護をまとい、凄まじい速度で空を切り裂いてドラゴンに向かって疾走していく。 最初の弾丸が命中すると同時に、炸裂とともに紅蓮の炎が舞い上がる。さらに、弾丸には追尾効果が付与されており、空中で回避しようとするドラゴンの動きにぴったりと追従する。まるで何かに強く引き寄せられるように、ドラゴンに一切の動きを許さずに、次から次へと弾丸が命中していった。その猛烈な連撃は、夜空を鮮烈な光と爆音で満たした。ドン、ドン、ドン! 次々と爆音とともに衝撃波が広がり、ドラゴンの分厚い皮膚が勢いよく裂け、激しい火花が舞った。弾丸には燃焼効果が働き、紅蓮の炎が一瞬で竜の巨大な体を包み込むと、周囲に微細な肉片が飛び散った。わずか数秒で、ドラゴンの体は激しく燃え上がり、夜の空気中には血の匂いと焦げ臭い煙が濃く漂い始めた。 だが、これで終わりではない。上空の魔法陣は次々と新たな弾丸を補充し、止まることなく連射され続けた。凶悪な魔法が、抵抗する間もなく炎上するドラゴンを狙い、全力でその命を削り取っていく。一秒ごとに繰り出される苛烈な攻撃は、相手に反撃の機会すら与えなかった。 激しい爆発音と炎の光が続く中、ドラキンは慌てて翼を畳み、そらの元へ戻ってきた。その巨大な体は緊張に満ちていた。「同胞がご無礼を申し訳ございません!! 縄張りを荒らされたと勘違いをしたものだと思います。この辺一帯は我の領土なのですが……」 ドラキンは主人であるそらに、自分の同族が手を出したことを必死に詫びる。「こっちこそゴメン。同族を倒しちゃって悪かったね
last updateLast Updated : 2025-11-21
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62話 フィオの目覚めと優しき物語

 今回は二人とも二度目のお風呂なので、さっと汗を流して、湯船で温まるだけにした。 湯気が立ち込める浴室の中で、ノアは今日の冒険が楽しくて興奮が収まらないのか、湯船の中でそらの腕にしがみついてきた。 うむむぅ……直に胸が当たっていますよ、ノアさん。そらは水中で感じるノアの柔らかさに、内心で動揺した。 十分に温まったので湯船から出て、脱衣所でノアの体を拭いてあげる。特に濡れた背中を、優しくタオルで包み込むように拭いた。 パジャマに着替えさせると、雰囲気が一変する。可愛らしいパジャマ姿が、ノアの愛らしさを一層引き立てていた。 (可愛いなー。やっぱり貴族のお嬢様っぽいね。仕草も口調も上品だし) そらはノアを見つめながらそう思った。ブロンド色で少しウェーブがかかっているセミロングの髪、澄んだ茶色い瞳で、何を着ても本当に可愛い。 仲良く手を繋いでベッドに行き、そらはノアとエルに両側から挟まれる形で横になった。手を繋がないと、ノアが興奮したまま腕にしがみついて、そらの理性を刺激して危険だと判断したためだ。「さーて、寝よ……」 そらが安堵のため息をついたのも束の間、 って、しがみつかないでください。ノアさん。 ノアは手を繋いだまま、そらの腕に自分の体をぴったりと密着させてきた。パジャマ越しでも伝わる柔らかさと、幼い体温が、そらの意識を否応なく引きつける。 いろんな意味で寝れないのですが……。 そらは両脇からの心地良い重みと、微かな甘い匂いに包まれながら、今夜は眠りにつくまで時間がかかりそうだと、静かに頭を抱えた。 ノアがようやく静かに眠りについたので、そらはそっと抱きつきから脱出し、ベッドの上で寝返りを打つと……エルさん、またはだけていますよ。 絹のような柔らかなパジャマの胸元が大きく緩み、見えそうで見えないという高等な技を無意識に使っている。 見えそうで見えない……最高に悩ましい状態だ
last updateLast Updated : 2025-11-22
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63話 血を流さない大群の無力化

 ただし、脂が非常に多いため、串焼きにすると脂が滴り落ちて炎上し、肉が焦げてしまう。そらは焼ける脂の音を聞きながら、ふと考える。 (これならフライパンで脂肪を煮出してラードが作れるかもな……でもラードって何に使うんだ? 料理は詳しくないから分からないけど……ラーメンとか? ラーメンなんて売ってないしなぁ……作り方も知らないし。野菜の炒めものとか炒飯とかか……あと、明かりを灯すのに使えるかも。でも、煙や臭いが気になるって聞いたことがあるな。ステフに任せちゃおっと) そらは美味しそうな脂を見つめながら、未知の調味料の活用法について頭を悩ませた。 肉を焼いていると、香ばしい匂いに誘われるように、皆が次々とベッドから起きてきた。そらは人数分イノシシの肉を丁寧に焼き、朝食として提供する。 朝から湯気が立つ脂っこい肉を、皆が美味しそうに頬張る光景にそらは内心驚きつつ、自分も香りに耐えきれず手を伸ばして口にする。その濃厚な旨味に、満足げに頷いた。「今日もギルドに行って依頼を見て決めようか?」 そらが提案すると、女の子たちは元気よく声を揃える。その声には冒険への期待が満ちていた。「はーい」 いつものメンバーでギルドに向かい、到着すると、受付嬢が慌てた様子でカウンターから駆け寄ってきた。その顔には焦りと安堵が入り混じっていた。「あ! そらさん! 良い所に来て頂きました! あの……緊急依頼をお願いしたいのですが、大丈夫でしょうか!」 そらは突然の申し出に少し戸惑いつつ確認する。「は、はい。大丈夫ですけど、えっと……どんな依頼でしょう? ボク達に出来る事なら良いですけど」 受付嬢は熱心に手を組みながら、そらに縋るように話を続ける。「ゴブリンキラーで有名なパーティですから、大丈夫です」 驚いたそらは思わず声を上げる。「はい!? いつからゴブリンキラーで有名になってるんですか! 60体
last updateLast Updated : 2025-11-23
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64話 広域転移による数千の死体埋葬

 瞬く間に群れを無力化した後も、そらの探索は止まらない。彼は魔力を大地と空気へと広げ、さらに探索魔法を駆使してゴブリンの巣穴の正確な位置を把握する。魔力の探針が、地面の下に隠されたいくつもの暗い空間を突き止めた。 彼は時間差なく、把握した全ての巣穴に同時に魔力を送り込む。巣穴の中に潜んでいた残りのゴブリンたちの魔石も、瞬時に転移で回収される。地面の下で静かに、そして完全にゴブリンたちの生命活動が停止した。 さらにそらは、指示された殲滅目標の地域全体に、広大な網をかけるように広域探索魔法を展開。森の隅々まで、わずかに残るゴブリンの位置を特定していく。 彼の視線の先で、あるいは意識の届く遥か遠くで、ゴブリンの残党が次々と魔石を失い倒れていった。その魔法の連鎖は、まるでドミノ倒しのように、広大な地域を一掃していった。 空には太陽が静かに昇り始めているが、この森のゴブリンの脅威は完全に消滅していた。 一滴の血も、焦げた匂いもなく、ただ静かに、広範囲にわたるゴブリンの殲滅が完了した。その静寂さこそが、そらの規格外な魔力と技術が生み出した、他の追随を許さない壮大で恐ろしい迫力を物語っていた。 そらは軽く息をつきながら、何事もなかったかのように振り返る。彼の顔には、微かな疲労感すら見られなかった。「終わったんだけど、どうしよっか?」 その言葉に、周囲の状況の変化に気づいていなかった女の子たちは驚きの声を上げた。「は? 今来たところだよね?」 エルが不満そうな表情で唇を尖らせながら呟く。彼女は戦闘への意欲が削がれたことに退屈を感じていた。「まだ、何もしてないよ。つまんなーい」 ブロッサムが周囲を見回しながら、少し考え込みながら提案する。彼女はこの機会を無駄にしたくないようだった。「折角きたので、何かしたいのですけれど……」 アリアも両手を広げながら、大げさに口を尖らせる。その不満げな仕草は、退屈を訴えていた。「つまーんなーいのですー」 フィオはそらにそっと寄り添いながら、静かに呟いた。その声には明
last updateLast Updated : 2025-11-24
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65話 人影なき湖と透き通る清らかな情景

 目に見えていたゴブリンの死体が、一瞬にして消え去る。エルはその手際の良い魔法の処理に不思議そうに問いかける。「ゴブリンは、どこ?」「埋葬したよ、地面の下に」 そらの簡潔な言葉に、アリアが手を叩いて喜ぶ。その無邪気な笑顔が、森の空気を明るくした。「これでお散歩出来るのです!」 フィオも嬉しそうな笑顔で飛び跳ねる。「やったぁー!」 ブロッサムはその魔法の利便性に感心した様子で小さく頷く。彼女の上品な仕草は、そらの持つ能力の評価を表していた。「便利な魔法ですわね……」 その後、皆で森をしばらく散歩することに。エルがそらの右腕にしがみつき、フィオが後ろからそらの服をそっと掴むため、そらは動きづらさを感じながらも、微笑みながら進んでいく。 約一時間の散歩で女の子たちには少し疲れが見え始めたが、ゴブリンの穢れが消え去った森の中の空気は清々しく、そらは心地よさを感じる。 (魔獣や魔物、猛獣が現れなくて平和で良い場所だな……) やがて可愛い小動物が現れ、その無邪気な姿を見たフィオが歓喜の声を上げながら追いかけ回す。その小さな体が森の木々の間を縫うように駆けていく。そんなフィオに釣られるようにして、アリアも楽しそうに笑いながら走り回る。そらはその和やかな様子を見て、心底ほっとした気持ちで平和な散歩を続けた。 しばらく歩くと、木々の隙間から水面の光がきらめいて見えた。一行が木々をかき分けて進むと、目の前に静謐な湖を発見した。 そこは人影など一切ない、森の奥深くにひっそりと佇む神秘的な場所だった。湖の透明な水面は、周囲の緑豊かな木々と、頭上に広がる青空を鏡のように映し出している。太陽の光が葉の隙間を縫って細く降り注ぎ、湖面にまるで金色の粒を撒いたように、木漏れ日の斑点模様をきらきらと輝かせている。 風もなく、水面は完璧な静寂を保ち、その音のない美しさが訪れた者たちの心を洗うようだった。静かで、透き通るような清らかな情景が、そらの目に焼き付いた。 エルがその壮大な景色に目を輝
last updateLast Updated : 2025-11-25
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66話 床を軋ませる特大の革袋

 ああ、体が冷えたのね。しかし、アリアは偉いな。恥ずかしいからといって、勝手に森に入っていかずに、ちゃんと教えてくれるなんて助かる。そらはアリアの純粋な行動に感心した。「ブロッサム、トイレに行ってくるよ。みんなをお願いね」 そらはブロッサムに声をかけ、アリアに小さな手を引かれて、皆から見えない木々の陰へと向かった。 手を繋いだまま、アリアはそっとしゃがみ込み、おしっこをし始めた。その小さな体から、チョロチョロという微かな水音が聞こえてくる。 ……いや、隠れてても俺には見えてるんですけど。アリアさん? そらは彼女の無邪気な行為に、内心で複雑な感情を抱いた。「ありがとなのです」 アリアは用を済ませてスッキリした様子で、元気を取り戻し、再び水遊びを楽しんでいた。湖畔に戻り、ここでも一時間ほど遊び終えると、そらはドライヤーをイメージして、濡れた彼女の下着と髪の毛を魔法で素早く乾かす。 その後、湖畔の開けた場所に焚き火を用意し、香ばしいイノシシの肉を焼きながら、収納から取り出した温かい野菜スープと彩り豊かなサラダを並べて昼食の準備を整える。「ここでお昼にしようっか」 そらが提案すると、皆が楽しそうに焚き火の周りに集まり、賑やかに昼食を始めた。 食事を終えたタイミングで、そらはそっとステータス画面を開き、今日の朝に回収したゴブリンの魔石の数を確認する。 (ゴブリンの魔石……3860個!?) その途方もない数に、そらは驚きのあまり息を呑んだ。わずか二時間程度の間に、自分がどれほどの数のゴブリンを討伐し、この地域の脅威を完全に排除したのかを改めて実感する。 時間を潰すために何かを考えるが、特にやることもなくなる。充実した散歩と昼食で、食事を終えたフィオはすっかり眠そうな様子で、そらの腕に寄りかかるとそのまま夢の世界へ旅立った。そらはフィオを優しく抱え、ギルドへ向かうことに決めた。 昼過ぎにギルドに到着すると、予想通り、受付嬢が慌てた様子でカウンターから駆け寄ってきた。そらがフィオを抱えている姿を見て、
last updateLast Updated : 2025-12-01
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67話 名誉な事態へのそらの関心の無さ

 (また、やっちゃった? 面倒事か?) ギルマスの手招きに応じ、そらはフィオを抱えたままその場で問いかける。「なんでしょ?」 ギルマスが一言も発さず、黙って手招きしながら、そらを奥の部屋に導いていく。その重苦しい雰囲気が、ただならぬ事態を物語っていた。 そらは受付カウンターの中に入り、女の子たちを安全のために、一緒にカウンターの中に入れてもらう。そして眠っているフィオを奥の小さなソファーにそっと寝かせてから、自分だけがギルマスの待つ応接室に向かった。ギルマスは既に応接室の向かいのソファーに腕を組んで座って待っていた。 ギルマスが深刻そうな表情で、重々しく話を切り出す。「なぁ。今回の緊急依頼は、領主軍、王国軍も参加するつもりでいた件だったんだよ」 そらは表情を崩さず、軽く頷きながら返事をする。「はい」 (だから……何? ゴブリンでしょ? 数が少し多いだけでしょ?)と内心で思いつつも、そらは顔には一切出さなかった。 ギルマスが深い溜息をつきながら、話を続ける。「それを一パーティが二時間程で殲滅して帰ってきたんだ」「はい」 そらは簡潔に、しかし落ち着いて返事をする。「言いたい事分かるよな?」 ギルマスが全てを見透かすような視線をそらに向けながら問いかける。その目には、諦めと戸惑いが混じっていた。 (は? まっっったく分かりませんが?) そらは内心で完全に困惑しながら、表情を読み取られないように言葉を返す。「……いえ、分かりません」 そらが困惑を隠さず返事を返し、純粋な疑問として首を傾げてギルマスへ質問をした。「国軍も領主軍も出場しなくて助かったって事ですか?」 ギルマスはその問いかけに、半分頷きながらも、複雑な感情を滲ませて答える。「まぁそうなんだが。どえらい事をしてくれたって事だな」「軍を出さないで済んで良かったですね…&hellip
last updateLast Updated : 2025-12-02
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68話 門兵に「帰れ」と言われて喜ぶそら

 そらは馬車の必要性を完全に否定するように、少し困った様子で言った。「あ、それ必要ないです。勝手に準備してすぐに出発しますよ」 ギルマスは王国の馬車という権威を簡単に断られたことに一瞬驚き、目を見開いた。だが、すぐにそらの規格外の能力を思い出し、理解を示す。「は? 王国の豪華な馬車だぞ? ……ああ、分かった。まぁ頼んだぞ!」 ギルドを出て家に戻ったそらは、女の子たちに事情を説明する。皆の好奇心と不安を和らげるために、そらは出発までの時間をリラックスして過ごすことにした。少し癒しを求めて、フィオに寄り添いながらその柔らかな温もりを感じたり、ベッドでゴロゴロして、心ゆくまで惰眠を貪って時間を潰したりして、精神的なリラックスを図った。 気分転換に家の修繕や魔道具作りに挑戦し、また皆と一緒に森に入り、冒険ごっこをして遊ぶなど、そらは充実した日々を送る。エルとアリアの無邪気な笑顔、フィオの甘える仕草、ブロッサムの穏やかな微笑み。仲間たちと共有するその時間が、そらにとっては何にも代えがたい大切なひとときとなっていた。 数日が過ぎて、約束の日が来た。 そらは転移魔法を使い、王城近くへと一瞬で現れた。 彼は王城の厳重な門に立ち、門兵に「国王に呼ばれて来たこと」を伝えると、当然ながら即座に怪しまれる。門兵の顔には困惑と警戒の色が浮かんでいた。「まぁ、子どもが国王に呼ばれる訳ないよね。そりゃ疑われるわなぁ……」 そらは門兵の反応を予測していたかのように内心で冷静に考えつつ、次の指示を待つために門兵の反応を見守った。 門兵が心底面倒そうな声で言い放つ。その口調には侮りが含まれていた。「……遊びなら他でやれ! ガキが国王様に呼ばれる訳がないだろ!」 そらはその言葉を予想していたかのように軽く肩をすくめながら尋ねる。「ですよね~。帰っても良い?」 門兵は早く厄介払いしたいとばかりに、手を振りながら大声で叫ぶ。「当たり前だ。帰れ、帰れ!」
last updateLast Updated : 2025-12-03
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