「ボクの、お客さんなんだけど? 何を怒ってるのか分からないけど、ティナがドラキンに何かした? 何もしてないのに攻撃って、さすがに……それはダメだよ。怒るよ?」 そらの声は静かだが、底冷えのするような冷たい怒りを帯びていた。彼の瞳がドラキンを射抜くと、さっきまで威勢の良かったドラキンは一気に怯えた表情になった。全身の鱗がザワつき、恐怖に震える。 (あぁ、これ、ドラゴンと初めて出会った時と同じ反応じゃん) そらはドラキンの分かりやすい反応を見て、内心で呆れと既視感を覚えた。「さっきドラキンが言ってた通り、ティナに手を出したら、お前に……死をもって償ってもらうから。いや、それ以上の償いをしてもらうよ」 そらの声は絶対的な宣告であり、ドラキンはその重圧に耐えかねたように頭を垂れた。「……我が主人よ、すみません。突然、敵であった魔族が現れ、我を忘れて攻撃してしまいました」 ドラキンは主人であるそらに許しを請うと、そらはすぐに表情を和らげ、驚かせたティナに向き直った。「ティナ、驚かせてごめん。許してくれる?」「私は大丈夫ですが……そらくんって、ドラゴンの“主人”なんですか? なんでもアリですね……」 ティナは驚きと戸惑いで呆然としながらも、そらの非常識な状況に思わずため息混じりの言葉を漏らした。 ドラキンが、再び怯えた様子でティナに謝罪をした。「ティナ殿、お許し感謝する」 ティナが、目の前の巨大なドラゴンと、それを手懐けている少年、そらを交互に見ていた。理解の範疇を超えた事態に、表情は困惑に満ちている。「ドラキンは、ボクのペットだよ」 そらはまるで子犬を紹介するかのような軽い口調で言った。「ドラゴンをペット扱いする人、そうそういないと思いますけど……」 ティナはもはや突っ込む気力もないといった様子で呟く。
Last Updated : 2025-12-14 Read more