All Chapters of 異世界に子供の姿で転生し初期設定でチートを手に入れて: Chapter 81 - Chapter 90

92 Chapters

79話 ドラゴンをペット扱いする少年

「ボクの、お客さんなんだけど? 何を怒ってるのか分からないけど、ティナがドラキンに何かした? 何もしてないのに攻撃って、さすがに……それはダメだよ。怒るよ?」 そらの声は静かだが、底冷えのするような冷たい怒りを帯びていた。彼の瞳がドラキンを射抜くと、さっきまで威勢の良かったドラキンは一気に怯えた表情になった。全身の鱗がザワつき、恐怖に震える。 (あぁ、これ、ドラゴンと初めて出会った時と同じ反応じゃん) そらはドラキンの分かりやすい反応を見て、内心で呆れと既視感を覚えた。「さっきドラキンが言ってた通り、ティナに手を出したら、お前に……死をもって償ってもらうから。いや、それ以上の償いをしてもらうよ」 そらの声は絶対的な宣告であり、ドラキンはその重圧に耐えかねたように頭を垂れた。「……我が主人よ、すみません。突然、敵であった魔族が現れ、我を忘れて攻撃してしまいました」 ドラキンは主人であるそらに許しを請うと、そらはすぐに表情を和らげ、驚かせたティナに向き直った。「ティナ、驚かせてごめん。許してくれる?」「私は大丈夫ですが……そらくんって、ドラゴンの“主人”なんですか? なんでもアリですね……」 ティナは驚きと戸惑いで呆然としながらも、そらの非常識な状況に思わずため息混じりの言葉を漏らした。 ドラキンが、再び怯えた様子でティナに謝罪をした。「ティナ殿、お許し感謝する」 ティナが、目の前の巨大なドラゴンと、それを手懐けている少年、そらを交互に見ていた。理解の範疇を超えた事態に、表情は困惑に満ちている。「ドラキンは、ボクのペットだよ」 そらはまるで子犬を紹介するかのような軽い口調で言った。「ドラゴンをペット扱いする人、そうそういないと思いますけど……」 ティナはもはや突っ込む気力もないといった様子で呟く。
last updateLast Updated : 2025-12-14
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80話 魔族の少女の孤独と温かい居場所

 ティナは状況を飲み込もうと、そらの言葉を反芻するように尋ねた。「一緒に住んで、パーティに入れてくれるってことなのかな?」「うん。うちのパーティは、まだ戦力になる人が、あんまりいないからさ」 そらののんびりとした答えに、ティナは困惑を覚えた。「この前のゴブリン殲滅って、そらくんのパーティでしょ? すごい強いって噂だったよ?」「ああ。あれは、全部ボクが……やったんだよね」 そらは照れた様子もなく、あっさりと告白する。「……まあ、今日の様子を見て、なんとなく分かってたけど……」 ティナはドラキンを従わせている光景を思い出し、そらの規格外の能力を改めて認識した。「じゃあ、冷えちゃうから、話のつづきは、家に帰ってからにしようか」 そらが優しく提案すると、ティナは潤んだ瞳で静かに頷いた。「うん」「じゃあ、家に帰ろうか」 そらが何気なく発したその一言──「家に帰ろう」──が、ティナの心に深く響いた。長らく定住できず、常に居場所を求めて旅を続けてきた彼女にとって、「家」という温かい言葉はあまりにも重く、優しかった。 その一言にティナが、堰を切ったようにぽろりと涙をこぼした。星明りの下で光るその雫は、彼女が抱えていた寂しさを物語っているかのようだった。 ――えっ……泣いてる? そらが声をかける間もなく、ティナは無言でそっとそらの腕に手を回し、そのままぴたりと寄り添ってきた。その行動は、彼女の抱える安堵感と寂しさを雄弁に物語っていた。「……っ!」 柔らかくて温かい感触が、そらの二の腕に触れる。ティナさん……その、大きな胸が……はっきりと当たっている。そらの心臓がドクンと大きく跳ねた。 しかも、なんだかさっきまでと雰囲気が違う。警戒心や真面目さが溶け、口調も、表情も、まるで甘えるように少し
last updateLast Updated : 2025-12-15
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81話 最強種の王をペット扱いする少年

「あー、まぁ……そんなところかな」 そらが曖昧に頷くと、ティナは興奮を隠せない様子で言った。「すごい、幸運だったんですねっ! それって、国宝級かも。一生遊んで暮らせるレベルですよ!」 目をキラキラさせながら、ティナがじっとそらを見つめてくる。「へぇ〜、そんなにすごいんだ?」「うん、防具や武器はもちろん、実用品や美術品にも使われるの。でも、すっごく希少で、滅多に市場には出ないからね」「そうなんだ? でも、ドラゴンってその辺にいっぱいいるのに?」 そらが無邪気に問い返すと、ティナは心底驚いた顔で否定した。「いやいや、ドラゴンはその辺に“いる”って言われても、あれ不死の存在だよ? 討伐なんて無理だよ」「そ、そうなの? へぇ……ドラゴンって、倒せないんだ……」 そらは自分の過去の行為を思い返し、内心で冷や汗をかいた。 ――あれ? 俺、普通に倒しちゃったけど?  え、やばいのかなこれ……とりあえず黙っておこう。 そらは何食わぬ顔でいることを決意した。「ドラゴンってね、生きてる間は全身に魔力が流れてるから、剣や槍の物理攻撃は効かないし、魔法もはじいちゃうの。魔獣や魔物も、ドラゴンには近寄らないくらい怖がってるんだよ」 ティナの説明を聞きながら、そらは自分の経験を思い返した。 あー、それ知ってる。狩りに連れて行くと、ドラゴンのオーラやドラゴンの威圧だかで獲物が逃げちゃうんだよな……正直ちょっと邪魔だった。「そうなんだ……」「昔ね、他国の軍が村を襲ったドラゴンを討伐しに行ったんだけど、逆にその国が滅んだって話もあるくらい。だから、さっきびっくりしたの。あのドラゴン、一体何者なの?」「えっとね、確か……竜の谷の最古のドラゴンの王って言ってたかな?」「&hellip
last updateLast Updated : 2025-12-16
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82話 初めての正式パーティ登録への緊張

翌朝―― 息苦しさでそらは目が覚めた。何かが顔の上に乗っているような……。状況を把握しようと、退けようと手を伸ばすと、柔らかく弾力のある感触が手のひらに広がった。『ぷにゅっ♡ ぷにゅっ♡』(これは……この感触は。ああ、すぐに分かった。これは……ティナの胸だ) そらは昨夜、彼女が自分の腕の中で眠りについたのを思い出した。 けどまあ……せっかくなので、もう少しこのまま目を閉じていようっと。うん、朝から幸せだ。そらは至福の瞬間を味わいながら、微睡(まどろみ)の中に身を委ねかけた。 ……いやいや、そろそろやめておかないと、悲鳴でも上げられたら困る。そらは理性が働くのを感じ、ゆっくりと瞼を開けた。 そらがゆっくり目を開けると、視界に飛び込んできたのは、ティナをしっかりと抱きしめ、その柔らかな胸に手を添えているという、完璧で言い訳不能な構図だった。ティナはまだスヤスヤと眠っている。 そしてその光景を、ベッドの端からエルとブロッサムがジト目で、冷たい視線を送っていた。二人の瞳には呆れと怒りが混じっている。(……スミマセン。これは……事故、偶然の事故なんです) そらは心の中で平謝りし、そっとティナから手を離した。 ステフが台所で朝食の準備をしてくれている間、そらは居心地の悪さから逃れるように食材の保管庫を確認しつつ、在庫の補充をすることにした。昨日仕留めたイノシシの魔獣を魔法で解体し、部位ごとに肉を整えて並べておく。 野菜や果物は大量に買っておいたから、しばらくは問題なさそうだ。塩や砂糖も魔法でまとめて生成してあるので、当分の備蓄は心配いらない。生活の基盤はしっかりしている。 さて、今日はどうするかな。皆のスキルアップでもやるか。ティナも来てくれたし、せっかくだから先生として手伝ってもらおう。そらは今日一日の計画を立て始めた。 あ、その前に…&hel
last updateLast Updated : 2025-12-17
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83話 報酬の受領と新たな生活基盤の確立

「正式にパーティに参加してもらえることになったんですよ」 そらが嬉しそうに報告すると、ギルマスは目を見開いて喜びを表した。「ティナがパーティに参加か、珍しいな! それは良かった。心配してたんだぞ! 毎回ヘルプで入っていたしな。これで安心だな!」「……はい」 自分の加入を心から喜んでくれるギルマスの言葉に、ティナが頬をほんのり赤くしていた。照れてるのかな? そらはその可愛らしい反応を見て微笑んだ。「報酬の件だが、支払いは大金貨と金貨になる。問題はないか?」 ギルマスは目の前の机に分厚い帳簿を広げながら、金額の大きさを確認するように尋ねてきた。「はい、大丈夫ですよ」 そらは特に動じることなく、軽く頷いた。「え?! そんな大金貨!? え、大金ですね……」 ティナはその金額に驚き、声をひそめて息を呑んだ。「まあ当然の報酬だ。討伐数の桁が違うからな。後日に領主様と国王様からも報酬が出るからな! 両方からの依頼が来ていた案件だからな」 ギルマスは誇らしげに胸を張り、その依頼の重大さを説明した。 お金には困っていないけれど、貰えるものはしっかり貰っておこう! 正当な報酬だし、遠慮することもない。そらは目の前の大金に冷静な態度を崩さなかった。 最近、お金が減らない! 文字通り、いくら使ってもマックス表示から変わらない感じだ。マックス以上の記録もされているっぽいから、何か裏で増えているのかもしれない。 お金を使うことがほとんどないし、服は魔法で出したり、食事もイノシシの肉を食べているから、必要なのは野菜くらい。だから、この後はティナの服を買ってあげようかなと思っている。 ギルマスからずっしりと重い大金貨と金貨が入った革袋を受け取り、改めて挨拶をしてギルドを出た。「この後、服を見に行こうか?」 そらがさりげなく提案すると、ティナは少し不思議そうな顔をした。「良いけど、そらさんの服?」「うん」 目
last updateLast Updated : 2025-12-18
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84話 ティナ先生の誕生と魔法の練習

 そらはベッドに座らせられると、ティナは気恥ずかしさを隠しきれない様子で部屋の隅で着替え始めた。「こっちを見ないでくださいね」 恥ずかしそうに顔を赤くさせ、それでも決意を込めた、少し強い口調で言ってきた。「あ、はい……」 そらは素直に返事をした。もちろんチラッとでも見たら怒られるだろうし、二度とこんな機会を与えてもらえなくなるので、ここは大人しくしておこうかなと決意した。壁の木目を熱心に観察するフリをした。 しばらくファッションショーに付き合ったが、次はパジャマも試してみるのだろうか? そっちの方が普段見れない姿だから楽しみなんだけどなーとか考えていた。 その時、コンコンと控えめなノックの音が聞こえた。ティナが警戒しつつもドアを開けると、眠りから覚めたばかりのフィオが目をキラキラさせながら走ってきて、一目散にそらの膝の上に座り、抱きついて甘えてきた。「わたしも、そらと、いっしょにいるぅ」「うん。良いよ。」 そらは優しく言いながら、フィオの柔らかな髪を愛おしむように撫でた。フィオはニコニコしながら、さらにそらに体を擦り付けて甘えてくる。その様子が可愛くて、そらは思わず微笑んでしまった。 フィオとそらのやり取りを見ていたティナは、一瞬だけ、少し残念そうな顔をしていた。その表情はすぐに消えたが、そらは見逃さなかった。 ティナのプライベートファッションショーは華やかなドレスが終わり、次にリラックスできる部屋着やパジャマへと続いていった。ティナが鏡の前で一生懸命服を試着している間、そらの膝の上にいるフィオは安心しきった可愛い寝顔ですっかり眠ってしまっていた。「私に、こんなに服があるなんて初めてですよ! 移動が大変になるし、お金もなかったので、すごく嬉しいです……本当に、ありがとうございます」 ティナは新しい服に囲まれ、心からの喜びを込めて言い、少し照れくさそうに笑った。その笑顔はとても優しかった。 ちょうどそのタイミングで、ステフがドアの外から「お昼ご飯の準備ができましたよ」と穏やかな声で呼びに
last updateLast Updated : 2025-12-19
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85話 不可視の偵察と領主の醜態

 領主の執務室に行くと、重厚な木の扉の前には領主兵が二人、無言で剣を携え、厳重な警護についていた。彼らの硬い表情は、室内の秘密を守るという意思を示していた。 転移で部屋の中に侵入し、彼らを観察をしていた。 豪奢な調度品が並ぶ執務室の中、重厚な木の机の奥にある領主の椅子には、脂ぎった顔つきで、見るからに性格の悪そうな男が不遜な態度でふんぞり返って座っていた。その両脇には、着飾った側仕えらしき二人の女性が侍り、男は厭らしい笑みを浮かべながら、彼女たちの体を触り、イチャついていた。タバコのような煙草の匂いと、安っぽい香水の匂いが室内に充満している。 ノアはその光景を目撃し、そらの首にしがみついたまま、ムッとした表情で男を強く睨んでいた。その小さな体からは、弟を軟禁し、領地を奪った男に対する激しい怒りと嫌悪が、微かにそらに伝わってきた。 その男の前には、五人の男たちが床に跪いていた。彼らの顔は青ざめており、領主の男の機嫌を窺うように、一切の動きを見せずに沈黙を守っていた。彼らもまた、この男の横暴な支配下にある現状に不満を抱えているようだったが、何も言えずに耐えている。 (あの男が、ノアの領主権を奪ったヤツか。見るからにロクなモンじゃないな) そらは、ノアの感情を感じ取りながら、冷静に状況を分析した。この男が、ノアの領地と弟の自由を奪っている元凶であることは明白だった。 激しく怒鳴りつける声が部屋に響く。「まだ小娘は見つからないのか!!」「消息も足取りも不明です。安否も確認できておりません。」「何も知らん小娘の一人も探せんのか! 何を遊んでいるんだ!! 使えん奴らだな!」 領主は言葉と共に、脂の乗った肉付きの良い手を机に叩きつけた。分厚い木製の机がガタリと音を立て、その衝撃で彼のグラスの中の酒がわずかに揺れた。側仕えの女性たちはびくりと肩を震わせ、顔色を窺う。「領内から出ることはできないはずなので、領内にはいると思われます。近隣の町や村へ幼い少女が辿り着くのは困難で、不可能かと……。」 跪く男たちは、恐れで顔を一層青ざめさせながら、震える
last updateLast Updated : 2025-12-20
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86話 豪奢な会議室から絶望の谷へ

(信用できる人たちなの?) そらは、ノアの小さな頭を優しく撫でながら、改めて心の中で問いかけた。(はい。なの。私をかばってくれて捕まってるの。) ノアは、そらの胸に顔を押し付けたまま、涙声になりそうなのを必死に堪えながら答えた。その声には、家臣たちへの強い信頼と、申し訳なさ、そして現状に対する激しい怒りが込められていた。(じゃあ今日、全部終わらせようか? 見てられないし、時間をかけても結果は同じだし……。) そらの思考は迅速だった。このまま放置して家臣たちの苦難を長引かせる必要はない。すぐにでもノアの領地を取り戻し、彼女を正当な領主の座に戻すべきだと判断した。(お願いなの。) ノアは、そらの服をぎゅっと握りしめ、切実な願いを伝えた。(ノアはここにいてね。ここは、安全な場所だよ。) そらは、不可視化の魔法を維持したまま、ノアの体をそっと壁際に寄りかからせる。(はい。なの。) ノアは、家臣たちの方を見つめながら、固く頷いた。そらは、ノアに背を向け、冷たい鉄格子の前に静かに立ち、これから起こす行動のために精神を集中させた。部屋の隅で怠惰に警備にあたっている兵士たちに、そらの冷たい視線が向けられた。 領主邸の一室、大きな会議室には20人ほどの男女が集まり、口々に意見を述べ、熱のこもった話し合いをしていた。その内容は、先ほどの領主の執務室で聞かれたものとほぼ同じ――「誰が昇格するか」、「どの程度の報酬が妥当か」、といった権力と利権を巡る、醜いものだった。人々の欲望と野心が渦巻く、淀んだ空気が室内に充満していた。 不可視化状態で室内の様子を観察していたそらは、その卑しいやり取りに静かにうんざりした。(うん、こいつらも必要ないな。) そらの心の中で下された決定は迅速だった。もはやここに残しておく価値はない。 竜の谷行き決定だな! そらはためらうことなく、会議室にいる全員を転移魔法で一斉に送った。一瞬にして会議室は静寂に包まれた。(ドラキン、追加で20人送ったからね
last updateLast Updated : 2025-12-21
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87話 ティナの日記

○月○日 今日、初めてのハンターのお仕事をした! 後衛の魔導師が足りなくて、そのパーティに入ったんだけど……手のひらに嫌な汗をかきながら、緊張で体が固まったまま、うまく攻撃できなかったし、支援魔法もダメだった。頑張ったけど、まだまだ練習しないとダメみたい。ふつふつと込み上げる悔しさで、ベッドに倒れ込んだ! 明日に備えて、もう寝るっ!  ○月✕日 まだ体が少し痛むけど、今日も魔導師が足りないパーティに入ったよ。今度はちゃんと攻撃魔法を当てられた! やったー! 嬉しさで胸が弾む! でも、みんなとうまく話せなかった……。口を開こうとすると、途端に言葉が喉に詰まってしまう。もっとおしゃべりの練習しないと。でもどうすればいいの? 誰も教えてくれない。誰か教えてほしいなぁ。孤独感で胸が張り裂けそうです。  ○月✕✕日 今日は魔導師のお仕事なかった。何しようって考えて、薬草採りの依頼をすることにした! いっぱい取るぞー! って思ったけど……あんまり取れなかった。知識も経験もない。むずかしいなぁ。森の中は冷たくて、自分の無力さを痛感した。  ○月○✕日 魔導師のお仕事があった! いっぱい活躍できた! 嬉しくて足取りが軽くなる! でも……魔法が強すぎて魔族だって疑われちゃった!? え!? そんなつもりなかったのに~! 心臓がバクバクと鳴り響く。やばい、明日この町を出ないと……。また居場所を失う恐怖に全身が震えた。次はもっと、もっと気をつけなきゃ。  ✕月○日 今日は新しい町へ移動してるところ! 足の裏が痛い。おなかすいた……でも我慢。次の町はいい町だといいなぁ。安全で、ちゃんと仕事できる町だったらいいんだけど……。道行く人々が皆、楽しそうに見えた。  ○✕月○日 新しい町についた! すっごく大きいし、きれい! ギルドでお仕事探したけど、いいのがなかった&
last updateLast Updated : 2025-12-22
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88話 忠臣の解放と幼き領主ノアの再スタート

 幹部たちの顔が一様に絶望に染まった。彼らのいる場所は四方をドラゴンに囲まれ、逃げ場などどこにもない。森の奥まで走ることなど、到底不可能だと本能が叫んでいた。 そして、ドラゴンたちはすでに、「遊び」の準備を終えていた。血を求め、快楽を求める彼らの唸り声が谷全体に響き渡った。 鋭い鳴き声が谷間に響き渡り、数十体のドラゴンたちが次々と地面を蹴って襲いかかる。巨大な牙が閃き、鉄棒のようなシッポが強烈な風と共に振るわれ、広げられた翼が強烈な風を巻き起こした。空気が裂ける音が悲鳴に混じる。 ドラゴンたちに完全に囲まれた幹部たちは、悲鳴を上げながら、散り散りに逃げようと足掻くが、すでに逃げ場はどこにもなかった。彼らの必死な逃走は、ドラゴンにとってはただの楽しい追いかけっこに過ぎない。 更に新たに目の前に現れた動くおもちゃに、ドラゴンたちは楽しげに目を輝かせる。先ほどまで遊んでいた者たちがもういなくなり、少し物足りなさを感じていたドラゴンたち——そんな飢えた獣たちの前に、新しい獲物が舞い降りたのだ。「新しい獲物が来たぞ!」と言わんばかりに、ドラゴンたちは歓喜の雄叫びを上げた。 それまで遊べなかったドラゴンたちが加わり、獲物の奪い合いが始まる。鋭い爪が空を切り、鱗がぶつかり合う音が響く。生き残れる保証など、どこにもない――この場にいる誰もが、自らの絶望的な状況を痛感することになるだろう。竜の谷は、今、混沌の遊び場と化していた。 激しい遊び場と化した竜の谷から意識を戻し、そらは地下牢でノアに問いかける。(ノア、他にも、まだ居るの?)(もう居ないの) ノアの言葉を聞き終え、そらはすぐに牢屋に閉じ込められていた人々を魔法で解放した。家臣たちは突然の解放に戸惑いながらも、状況を瞬時に察し、安堵の表情を浮かべる。 ノアは不可視化を解除したそらの胸元から顔を出し、解放された家臣たちに向かって微笑んだ。幼い領主と忠実な家臣たちの再会に、冷たい地下牢に一筋の温かい光が差した。 そらはノアに声を掛ける。(ノア、何かあったら連絡してね。ボクは家に戻ってるよ)
last updateLast Updated : 2025-12-23
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