院長も招集され、協議の末に自ら手術に加わることになった。樹は手術室へと運び込まれた。容態の詳細が、胡桃の耳に届くことはなかった。容態は重篤だった。とりわけ頭部への衝撃が凄まじく、脳内出血が確認されていた。手術がようやく終わったのは、夜の八時を回った頃だった。脳内の血腫は、太い血管と重要な神経のすぐそばに位置しており、メスを入れることなど到底不可能な状態だった。確かなのは、血腫が神経を圧迫し続けているという事実だけ。それが今後どのような影響をもたらすのか、誰にも予測はつかなかった。今のところ、他の部位に命に関わるような怪我は見当たらない。ただ――樹は、このまま目を覚まさないかもしれなかった。翌日も、そしてその翌日も、意識が戻る気配は一切なかった。バイタルサインは正常値を示している。それでも、昏睡状態は深く静かに続いていた。医師たちは度重なるカンファレンスを開き、やがてひとつの結論を導き出した。血腫が神経を圧迫しているせいだ、と。時間が経ち、血腫が少しずつ体内に吸収されていけば、やがて圧迫が解け、目を覚ます可能性がある。あくまでも、可能性の話に過ぎないけれど。脳の構造はあまりにも複雑で、人類がその全容を知るには、未だに材料が少なすぎるのだ。ようやく子どもが生まれ、ふたりで新しい命の誕生という大きな喜びに包まれていたばかりだったのに。それなのに、こんな残酷な運命が降りかかるとは。事故の責任はトラックの運転手にあったが、今となっては彼を責め立てたところで、何も変わりはしないのだ。事故が起きたあの日から、胡桃は片時も病院を離れなかった。気づけば、季節は八月の末へと移ろっていた。一ヶ月以上もの間、彼女は病室にずっと寄り添い、樹の世話を何から何まで自分の手でこなしてきた。あんなに気が強くて、時には我が儘に振る舞うこともあったというのに、今の彼女は黙々とすべてをひとりで引き受けていた。裕福な家庭であれば、専門の介護士や家政婦を雇うのが常である。だが胡桃は、決して誰の手も借りようとしなかった。どんな些細なことであっても、すべて自らの手で行った。見かねた樹の両親が休むようにと説得しても、胡桃は頑として首を縦には振らなかった。産後間もない頃は少し丸みを帯びていた体つきが、今では見る影もなく
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