優香はそのまま次々と、他の小説にも手を伸ばしていった。「一晩で六つ子を妊娠!?冷酷御曹司が土下座で復縁を懇願」やら、「夜の秘め事」やら、「もう誘惑しないで、将軍はついに陥落しました」やら。おかげで、これまで縁のなかった知識がずいぶんと増えた。もっとも、どこまでが誇張なのかは、まだよくわからないのだけれど。けれど、今の啓太の反応を見ていると、どうも小説のヒーローに少し似ているような気がしてならない。まさか……本当に、あんなふうになってるんじゃないよね?優香はちらりと横目で彼を窺った。啓太は座ったままで、上着に隠れているため、見た目には何もわからない。「立ってみて」啓太は動けなかった。「……どうかしたか?」なぜ優香は寝室へ行かないのだろう。いったい、何を企んでいるんだ。「立ってみてよ」優香はもう一度繰り返した。啓太はゆっくりと深呼吸をして、ようやく口を開いた。「優香、いったい何がしたいんだ?」「あ、わかった」優香は両手を膝に乗せて前かがみになり、ひょいと彼の顔を覗き込んだ。「啓太って、そんなに敏感なの?」啓太は生まれてこのかた、これほど恥ずかしい思いをしたことは一度もなかった。顔をそむける。耳の先が赤く染まっていることなど、自分ではまったく気づいていない。「全部お見通しなんだから」優香は少し得意げに笑った。「隠したってムダだよ」啓太はもう開き直るしかなかった。「わかってるなら、なんであっちへ行かないんだ」「私の家なのに、どこへ行けっていうのよ」優香はさらりと返した。「それに、これは私のせいじゃないし」啓太は黙り込んだ。優香がこんなにも近くにいる。彼女から漂うやわらかな甘い香りが、鼻腔をくすぐる。本当に、たまらなかった。これではますます動けない。このお姫様に、とにかく早く向こうへ行ってほしい――今はただ、それだけを願っていた。「この間、私に向かって『男としてダメだ』って言ったの、やっぱり嘘だったんじゃない?」「他の女には反応しないって意味だ。でも、君は違う」啓太は静かな声で言った。「そんなの、信じられないわ」啓太は膝の上に置いた大きな手を、ぐっと握りしめた。優香は信じてくれない。だが、こういうことは証明のしようがないのだ。「なんで黙ってる
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