「その紙を……金庫に?」明里は自分の耳を疑った。どこぞの希少な宝石や国宝級の骨董品だろうか。わざわざ重厚な金庫にしまう必要があるのだろうか。いったい誰が、他人の婚姻届受理証明書など盗みに来るというのか。「お前にはわからないさ」潤はまったく迷いのない足取りで、階段を上がっていった。「俺にとって、これは命より大切なものなんだ」明里はこれ以上止めるのを諦めた。一階の広々としたリビングで待ちながら、スマホを取り出し、親友の胡桃にメッセージを送った。どうしてもこの呆れた出来事を誰かに愚痴りたかったのだ。【男の人って、どうしてこうなの?】潤の突拍子もない行動は、時々本当に理解を超えている。【男なんてみんな似たようなものよ。さっき潤が金庫に入れるって話をしたら、樹も『もし俺たちが籍を入れたら、俺も絶対に金庫に入れる』って真顔で言ってたわ】その返信を見て、明里は樹の気持ちなら少しは理解できる気がした。【あなたたちがその紙を手に入れるには、まだまだ一筋縄ではいかないでしょうからね】【そっちだって、ここまで来るのに十分すぎるくらい苦労したじゃない】画面越しの胡桃の言葉に、明里はふと胸の奥に熱いものが込み上げてくるのを感じた。やがて、潤が二階から下りてくると、明里は自分から歩み寄り、その引き締まった背中にそっと腕を回した。潤もまた、明里を静かに抱きしめ返した。二人は何も言葉を交わさなかった。ただ、重なり合う互いの鼓動を感じながら、静かに寄り添っていた。「明里ちゃん……」しばらくの沈黙の後、潤が頭上からぽつりと口を開いた。「ありがとう」彼は噛み締めるように言った。「もう一度、俺を愛する機会をくれて。お前のこと、絶対に失望させない」「ふふ、こちらこそ」明里は潤の広い胸に頬をすり寄せた。「もう一度、私と一緒に歩いてくれてありがとう」「お腹は空いていないか?」潤は少しだけ明里から体を離し、その手を引いてふかふかのソファへと導いた。「そろそろ手配した食事が届くはずだ。今日は一歩も外へ出たくない。この家で、二人きりで祝おう」明里に異存はなかった。ほどなくして別荘に届けられた食事は、どれも明里の好物ばかりだった。さらに、食事と一緒に抱えきれないほど大きな花束も届けられた。目が覚めるような、鮮やかな真紅の薔薇。柔
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