異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。第二章 のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

56 チャプター

30話 傲慢な貴族と、ミリアの激しい怒り

 どこからともなく、一人の貴族がその光景を目にして騒ぎ立てるように近づいてきた。まるで自分が手柄を立てたかのような、傲慢な表情を浮かべている。「貴様! 国王様が、お渡しになるのに跪かずとは無礼であろう! 不敬罪であるぞ!」 護衛を5人ほど引き連れたその男は、いかにも代々貴族を引き継いできたといった風情だった。全く空気が読めない典型的なバカ息子で、子供のまま大きくなったような印象だ。30代半ばくらいの太った体躯で、弱い者には威張り散らし、強い者には逆らわずお世辞を言っていそうなタイプ。そいつが手柄を取ったかのような顔でニヤニヤしながらさらに近づいてきて、国王が渡している物を見て困惑した表情になり、独り言のように呟いた。「国王様、このような者に何をお渡しに……? こ、これは……」 近くにいたお偉いさんが、そのバカ貴族に威圧的な表情と言葉で詰め寄った。その声は低く、怒気をはらんでいる。その顔には、隠しきれない焦燥が浮かんでいた。「貴様……国王様に恥をかかせる気か? 黙って下がれっ! 下がっていろ!」 お偉いさんに注意されたバカ貴族は、意味が分からないようで、その場に呆然と立ち尽くし、俺たちをぼう然と見つめていた。その目は、理解不能なものを見るかのように、虚ろだった。顔からは、先ほどの傲慢さが消え失せ、戸惑いに取って代わられていた。「無礼ですって? どちらかと言えば国王の方が無礼ですわよ! わたしの夫になる方なのですよ。献上品を渡すのであれば、跪き渡すべきですわっ」 ミリアは青く透き通った瞳で国王を睨みつけ、毅然とした態度で言い放った。その言葉には、一切の迷いがなかった。彼女の背筋はピンと伸び、その威圧的なオーラは、周囲の空気を張り詰めるほどだった。「はぁ……ミリアは……黙ってて」 俺は慌ててミリアの口を手のひらで塞いだ。彼女の熱い吐息が、俺の手に触れる。ミリアは、突然の行動に目を丸くしたが、抵抗はしなかった。「はぁい……」
last update最終更新日 : 2025-10-15
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31話 バカ貴族の待ち伏せと、ミリアの可愛い負けず嫌い

「ん? ……はい? 俺に忠誠をって……早すぎじゃないの? ミリアの婚約者になっただけだよね? しかも公式じゃないし。次期皇帝……? 早すぎるだろ」 俺は驚きを隠せない。予想外の展開に、頭の中が疑問符でいっぱいになる。ミリアに組まれた腕の感触も忘れて、思わず立ち止まってしまった。「何を仰っているのですか。もう! 前に言いましたでしょう? お父様に認めていただいたと!」 ミリアは頬を膨らませ、不満そうに俺を睨む。その青く透き通った瞳は、拗ねた子供のように潤んでいる。そして、組んでいた腕をわずかに強く絡ませてきた。「ああ~……うん。言ってたね」 俺は頭を掻きながら、曖昧に答える。「お父様が認めたということは、公式に認められていますわ」 ミリアは胸を張り、自信満々に言い切った。その声には、揺るぎない確信が込められている。「そうなの?婚約発表もしてないし、いつでも取り消せるでしょ?」 俺はまだ、状況が飲み込めずにいた。認識のずれが大きすぎる。「簡単には取り消せませんわ。各王国宛にお父様がお知らせをお出しになられましたもの」 ミリアの青く透き通った瞳が、してやったり、とばかりに輝く。その表情は、まるでいたずらを成功させた子供のようだ。口元には、満足そうな笑みが浮かんでいた。「はい? お父さんは嫌がってたんだよね? 自分から手紙を出すとは思えないんだけど?」 俺は眉をひそめた。どう考えても皇帝が自らそんなことをするとは信じられない。疑いの眼差しでミリアの顔をじっと見つめた。「ええ。わたくしが頼んでお知らせを出してもらいましたわ」 ミリアが満足そうな顔で言ってきた。その笑顔は、どこか小悪魔的だ。青く透き通った瞳が、わずかにキラキラと輝いている。無理やり感があるけど……ミリアが満足してるならいいか。お父さんは不満に思っているだろうけど。だが、ミリアの表情は、どこか得意げで、俺の驚きを楽しんでいるかのように
last update最終更新日 : 2025-10-16
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32話 ミリア死守の命令と、ユウヤの単独行動

「いや……勝つ負けるじゃないでしょ? ミリアを護れるかだよ? 勝てるっていうのは分かるけど、ミリアを護れなければ護衛の意味がないし。盗賊の討伐なら冒険者に頼めばいいだけだし」 俺は冷静に護衛の本質を説いた。彼らの顔色が変わるのが分かった。彼らの瞳に、責任の重みが宿る。顔つきが真剣になり、背筋がピンと伸びた。「そ、そうでした……」 護衛はハッとしたように、顔を青ざめさせた。その表情には、自分の役割への再認識と、緊張の色が浮かんでいた。彼らの間で、静かな覚悟が共有される。「相手は護衛が五人、盗賊が二十人ほどだったから、戦って勝つのは簡単だけど、ミリアを狙われていたら数が多くて……結構、厄介だと思うよ。まあ……あのバカ貴族は多分、国王の前で恥をかかされたと思って俺に仕返しに来ただけだと思うけど」 俺は状況を分析し、具体的に説明した。彼らの表情が、さらに引き締まるのが見える。視線は、周囲の警戒すべき場所へと向けられていた。「なるほど……。そうですか……ではユウヤ様、どういたしますか?」 護衛の一人が、真剣な面持ちで俺に指示を求めた。 ん? 護衛が俺に指示を求めているのか? ど素人の俺に? 昨日の稽古という名の遊び、あるいは暇つぶしで、俺が彼らを圧倒してしまったからだろうか。ホントなら、ミリアを馬車に乗せてバリアを張って安全にしておきたいところだが、残念ながら馬車がない。バリアを何も無い場所で使用すれば、その存在が露骨にバレてしまうだろう。「狙いは多分、俺だけだと思うから三方向に分かれる。まずは俺一人、王国の兵士に知らせるやつが二人、残りの全員はミリアを死守してもらう。もし攻撃を受けた場合は、誰か俺に知らせてくれ」 俺は即座に指示を出した。簡潔だが、必要な要素は全て盛り込んだつもりだ。護衛たちは一様に頷き、緊張感を持って配置につこうとする。「反対ですわ。なぜ、ユウヤ様がお一人なのですか!」 ミリアは不安そうな青く透き
last update最終更新日 : 2025-10-17
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33話 哀願の絶叫と、冷酷に突きつけられた現実

「あぁ~あ……抜剣しちゃったね? 殺されても文句は言わないでね……って、死んだら文句は言えないか~。まあ殺しはしないけどね~」 俺は大きくため息をついた。まるで目の前の状況が、くだらない茶番劇であるかのように。視線は、抜剣した盗賊たちを、ゴミを見るかのように冷ややかに見下ろしていた。「貴様が一人で、こいつらに勝つつもりなのか? 頭は大丈夫なのか? 正気なのか? あははは……バカがっ!」 貴族は腹を抱えて、下品な笑い声をあげた。その笑い声は、嘲りそのものだ。ミリアが心配なので、まともに戦うつもりはない。バリアを使った技がバレるのはまずいので、剣で腕や足を切り落とすつもりだ。俺は、腰に下げていた国王から贈られた剣を抜き放ち、その金属の冷たい光を月明かりに反射させた。 だが、罪悪感や恐怖心はなかった。この世界で生きていくなら仕方がない。盗賊がいるし、町を出れば無法地帯で平気で剣を振るってくる。斬らなければこっちが斬られる世界だ。相手は盗賊をやってるのだから、同じようなこと、あるいはそれ以上のひどいことをやってきただろう。今回は、自分の番になったと思って罰を受けてもらう。彼らがこれまで奪ってきたものの報いを受けるのだ。俺の心は氷のように冷え切っていた。剣を握る手に迷いはなく、その一閃が彼らの運命を決することを理解していた。♢瞬間の決着とバカ貴族の末路 アイテムストレージから剣を取り出し、抜剣した。刀身が煌めき、周囲の空気を切り裂く。剣を振り抜くと同時に、不可視のバリアを発生させ、盗賊たちの腕や足を切り落とした。鈍い音と、男たちの断末魔の叫びが同時に響き渡る。血飛沫が宙を舞い、地面を赤く染めた。切り落とされた四肢が、不規則な動きを止め、路地にごろりと転がる。もちろん、バカ貴族も同様に両腕と両足を切り落とした。彼の顔から血の気が引き、脂汗が噴き出す。その瞳には、絶望の色が深く刻まれている。体は激痛と恐怖で痙攣していた。「わぁ……っ……た、助けてくれ……頼む!命だけは助けてくれ!」 
last update最終更新日 : 2025-10-18
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34話 王族の忠告と、路地裏に残した愚かな貴族

 はぁ。今更、バカ貴族を騙すメリットがないだろ……騙してどうするんだよ……。「信じなくてもいいけど。他国の王族を殺そうとして、そっちこそただじゃ済まないんじゃないの? じゃあ、人を待たせてるんで……」 俺は兵士たちに後の処理を任せ、その場を後にしようとした。剣を鞘に収めるカチャリという音が、路地の静寂に響いた。「き、貴様……そんなウソを……」 貴族がまだ何か喚いているが、これ以上バカ貴族と話をしても時間の無駄だ。俺は無視をして、ミリアとの合流地点というか、ミリアの屋敷に帰ってきた。彼の叫び声が背後で遠ざかるのを感じながら、俺の足取りは速かった。♢ミリアとの再会と新たな騒動の予感 屋敷の門をくぐると、ミリアが駆け寄ってきた。その顔には、安堵と心配が入り混じった複雑な表情が浮かんでいる。瞳の奥に、俺の無事を確かめるような強い光があった。「おかえりなさいっ♪ ユウヤ様」 ミリアの声は、弾むような喜びと、かすかな不安を含んでいた。俺の姿を視界に捉え、心底安心したような響きがある。彼女は、俺の体に触れて確かめたいのを我慢しているようだった。「ただいま~」 俺は笑顔で答えた。彼女の心配を少しでも和らげたかった。「また血だらけですが……おケガは、ありませんわよね?」 ミリアは俺の服についた血を見て、心配そうに眉を下げた。その青く透き通った瞳は、俺の身を案じる気持ちでいっぱいのようだ。こんな風に心配してくれるのは嬉しいな。ミリアも無事に帰れてよかった。「うん。無いよ」 俺は首を振り、無事をアピールした。彼女の視線が、俺の全身をくまなく確認しているのがわかる。そして、安心したように、そっと胸に手を当てた。「全員始末をなされたのですか?」 ミリアは軽く恐ろしいことを言う。全員皆殺しにしてきたのか、と聞いているのだろうか。その言葉に、わずかな血の匂いが混
last update最終更新日 : 2025-10-19
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35話 斬首への反対と、ユウヤが下した厳罰

「なんの御用かしら?」 ミリアが、あくまで上から目線で尋ねる。その声は、一瞬にして部屋の空気を張り詰めさせた。国王の顔に、さらに緊張の色が走る。当然、七つの王国を支配下におく帝国の皇帝が溺愛する第一皇女のミリアを怒らせればただでは済まない。 そして今回の件は、その皇女殿下を王国内の貴族が襲撃を企て、実行に移し襲撃をしてしまったのだ。国王は、事態の深刻さに、喉の奥が張り付くような感覚を覚えていた。「その……我が王国のバカ貴族が、とんでもない無礼を行い申し訳ないです」 国王は顔を青ざめさせ、冷や汗を滲ませながら謝罪した。その声は、震えている。ミリアは、ユウヤの腕に抱きつき顔を上げ国王に聞いた。「それで、どうなさるおつもりですの?」 ミリアに青く透き通った瞳で見つめられ、顔をこわばらせながら国王が答えた。「即刻、斬首を考えておりますが……刑を執行する確認と許可を頂きに参りました」「そうですか。それで良いんじゃないのかしら」 機嫌の良かったミリアが、興味なさそうに国王に返事を返した。だが、俺は納得ができなくて反対意見を出した。斬首では、あいつには生ぬるい。「ミリアを襲ったんだよ?そんな簡単にラクに死なせたくないな……。子爵家の爵位の剥奪、財産の没収で平民への格下げ。盗賊と護衛は斬首でも良いけどね。それと空いた爵位と領地に下級貴族のレニアを入れてあげてくれる?王国の為に店で頑張って働いてくれてるし」 俺の言葉に、ミリアは頬を膨らませ、露骨に不満そうな表情を浮かべた。その青い瞳に、小さな嫉妬の炎が揺らめいている。腕に絡ませた指先に、微かな力が込められた。「もぉ! 何でですの? 下級貴族の娘ばかりをご贔屓にしてますわね!」 あからさまに不機嫌そうになったミリアに、国王とお付きの表情はみるみる青褪めて怯えていた。彼らの顔からは、血の気が引いている。そんな国王たちを無視をして、俺はミリアに向かって返事を返した。「頑張っている者には褒美を、害する者には貴族であれ厳罰を与えられる
last update最終更新日 : 2025-10-20
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36話 孤立無援の末路と、冷たい家族の視線

「毒殺は、一人で出来ないよね?料理ができるわけじゃ無いので厨房に忍び込めないし、何より手足が無いし。殺される覚悟で襲ってくるって言うのも、手足を切り落とされてて無理じゃないかな。さっきも言ったけど子爵という地位を失って、お金も失って人望は元々無さそうだし。誰も手伝ってくれないでしょ」 俺の言葉に、お付きの貴族の顔から血の気が引いていく。その表情は、呆然としたままだ。完全に論破され、反論の余地がないことを悟ったようだ。「そう言われると……危険性は無いですね」 王のお付きのお偉いさんも納得してくれた様子だった。その表情には、安堵の色が浮かんでいる。彼の肩から力が抜けたのがわかる。「残された人生は、親族に恨まれて生きていく事になると思うよ」 俺は、彼の未来を淡々と語った。その言葉には、一切の感情がこもっていなかった。まるで、定められた運命を告げるかのように。「うわぁ……ユウヤ様、想像しただけでキツイ罰ですわね」 ミリアが同情するような表情をしていた。その青く透き通った瞳には、憐憫の色が浮かぶ。「それに……大罪を犯して、命を助けた温情ある国王ってなるんじゃないかな?それに、それを許した皇女殿下って」 俺は、この処分が王国とミリアに与える好影響を説明した。「さすがですわね……♪」 ミリアの顔に、再び満面の笑みが浮かんだ。その輝く瞳は、俺への尊敬の念を示している。心からの賞賛が、その表情に現れていた。「お気遣い感謝致します」 国王は、深々と頭を下げた。その声には、深い安堵と感謝が込められている。「さすがですな……罰も与えられてお二人の好感度も上げられるとは……」 国王のお付きの偉そうな人も感心してくれた。その表情には、尊敬の念が浮かんでいる。「では、さっそくその様に手配を致します」 国王が立ち上がり、深々とお辞儀をして屋敷を出ていった。彼の
last update最終更新日 : 2025-10-21
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37話 憎悪と怨念に蝕まれる心と、微塵もない反省の色

 ――その日々は、まさに“生き地獄”だった。 過ちの報いは、終わることなく彼を縛り続けた。 助けを求めても届かず、悔いても戻れず、 彼の世界は、冷たい家族の無言と、自分自身の後悔によって塗りつぶされていく。 家族たちが仕事に出かけて一人になると、問題の張本人――かつてのバカ貴族は、 小屋の隅で静かにユウヤへの憎しみを募らせていた。 なぜ自分がこんな目に遭っているのか。 その原因を必死に――だが歪んだ視点で――考え続けていた。 なぜ王族のユウヤが、護衛を少人数しか連れず、町を歩いていたのか? なぜ、あえて馬車を使わなかったのか? なぜ、そんな“隙”を見せていたのか……? 考えに考えた末、彼は滑稽な結論にたどり着く。 ――これは罠だった。 ユウヤは、将来脅威になるであろう“優秀な自分たち一族”を早めに潰そうとして仕掛けてきた。 そして、自分はその知略に嵌められたのだ――そう思い込んだ。「……今回は、知略で負けてしまったが……次回こそ、復讐を果たしてやる……」 そう呟きながら、彼は毎日、妄想に耽っていた。 反省の色は微塵もなく、 心の奥底では、憎しみと怨念だけが静かに渦を巻き続けていた。 それはもう、自分自身を蝕む毒のように―― 静かに、そして確実に彼を孤独の底へと沈めていく。 大罪人となった彼には、数人の監視役が常に付き添っていた。 彼らの定期的な報告によって、王様と側近たちは、 ユウヤの語っていた“罰の内容”が、まさにその通り実現されていることに驚きを隠せなかった。 王様自身、当初は「少々甘いのでは……」と懐疑的だったらしい。 しかし、現状を詳しく聞くにつれて、その考えは覆された。 ――なるほど、これほどまでに精神を追い詰めるとは。 家族に見放され、働くこともできず、孤独と怨念に沈む日々
last update最終更新日 : 2025-10-22
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38話 借金をしてまでBランク武器を求める中級冒険者の熱意

 ――需要は、間違いなくある。説明不足が原因なだけだ。 そこで俺は、効能を丁寧に伝えることにした。 使用期限は半年。 そして何より、『毒・麻痺・睡眠・催眠・幻覚・精神攻撃などに有効』だと説明すると、客たちの反応が一変した。「えっ、そんなに? それ、持ってた方が絶対に安心だよね……!」 治癒薬を買って帰ろうとしていた客ですら、再び列に並び直すほどだった。 商品棚の前には、たちまち人だかりができる。 森の中には、低級ながらも植物系の魔物が多く潜んでいた。彼らは物理的な攻撃には弱いものの、【毒・麻痺・睡眠・催眠・幻覚・精神】といった状態異常系の攻撃を得意としていた。 魔物そのものはさほど強くなく、討伐自体は難しくない。しかし、厄介なのはその後だった。毒は戦闘後も持続し、じわじわと体力を削っていく。麻痺や睡眠は戦闘中に受けると回避や反撃ができず、致命的な一撃を受ける危険が高まる。 さらに厄介なのが、催眠・幻覚・精神干渉といった精神系の攻撃だ。これらを受けると仲間同士で争い始めてしまい、戦闘が混乱を極める。効果が切れるまで仲間を置き去りにするか、睡眠魔法や専用のアイテムで一時的に無力化し、正気に戻るのを待つしかなかった。 森での戦闘は、魔物を倒すこと以上に、その後の対処が生死を分けるのだった。それをいとも簡単に解決ができるとわかると、その驚きと喜びの表情―― それが、俺の読みが正しかったことを物語っていた。 武器はCランクの武器がメインに売れていたが、中級冒険者も多数いたため、彼らは奮発し、借金をしてまでBランクの武器を購入してくれた。彼らの目には、新しい武器への期待と、これからの冒険への熱意が宿っている。 中には、俺が甲冑を斬り刻んだという噂を疑っていて、「実際に見てみたい」「自分の武器で甲冑を斬らせてほしい」という者まで出てきた。彼らの視線は、挑戦的でありながらも、どこか期待に満ちている。「自分の武器で斬るのは問題ないですが……武器が破損しても修理や交換はしませんけど?」 俺は念を押した。「ああ、問題無い。買い
last update最終更新日 : 2025-10-23
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39話 「ミリアが一番可愛い」という魔法の言葉と、一瞬で機嫌が直る王女の純真さ

「ユウヤ様……顔がニヤけていますけど? 可愛い女の子で、お気に入りの子でもいました?」 隣にいたミリアが、じとっとした視線で俺を見上げてきた。その"青く透き通った瞳"には、微かな不満の色が浮かんでいる。まるで、お気に入りのオモチャを横取りされそうな子供のような、不機嫌な表情だった。「は? そんな訳……ないだろ……ミリアが一番可愛いぞ」 俺は慌てて否定し、ミリアの機嫌を取るように言った。内心では冷や汗が流れたが、声には出さなかった。「まぁ♡  嬉しい事を……」 ミリアは頬をほんのり赤く染め、嬉しそうに微笑んだ。その表情は、一瞬にして柔らかくなり、まるで花が咲くようだった。単純な反応に、俺はホッと胸を撫で下ろす。 はぁ……ミリアがチョロくて助かった。いや、言葉が悪すぎるよな……ミリアが純真で助かった、だな。裏切る事はしないけど、見るくらい良いよな? 商売だしな。心の中で言い訳を重ねた。「初めは、ナイフの実演です! 動きは地味ですが使える武器ですよ~! 剣の予備で小さいので邪魔にもならないですし、使えますよ。もし剣がモンスターや木に刺さり、抜けなくなった時や剣が折れてしまった時にでもナイフで止めを刺せますよ」 俺はそう言って、甲冑を3体用意した。そして、瞬時に懐に入る振りをして、"プスッ! プスッ! プスッ!"と柔らかい物を刺す感じで、甲冑の隙間を狙って刺してみせた。その動きは流れるようで、一切の無駄がない。それを見ていた女性たちが、感嘆の声を上げて騒ぎ始めた。「キャー♡ 格好良いわ!素敵~!」 黄色い歓声が店内に響き渡る。さっきまで機嫌を良さそうにしていたミリアが、再び不機嫌そうな感じに戻っていて、頬を膨らませて女性たちを鋭く睨んでいた。その"青く透き通った瞳"からは、嫉妬の炎がメラメラと燃え上がっているのが見て取れる。まるで、大切な宝物を守ろうとする猫のような警戒心だった。♢双剣の実演と王女の登場
last update最終更新日 : 2025-10-24
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