どこからともなく、一人の貴族がその光景を目にして騒ぎ立てるように近づいてきた。まるで自分が手柄を立てたかのような、傲慢な表情を浮かべている。「貴様! 国王様が、お渡しになるのに跪かずとは無礼であろう! 不敬罪であるぞ!」 護衛を5人ほど引き連れたその男は、いかにも代々貴族を引き継いできたといった風情だった。全く空気が読めない典型的なバカ息子で、子供のまま大きくなったような印象だ。30代半ばくらいの太った体躯で、弱い者には威張り散らし、強い者には逆らわずお世辞を言っていそうなタイプ。そいつが手柄を取ったかのような顔でニヤニヤしながらさらに近づいてきて、国王が渡している物を見て困惑した表情になり、独り言のように呟いた。「国王様、このような者に何をお渡しに……? こ、これは……」 近くにいたお偉いさんが、そのバカ貴族に威圧的な表情と言葉で詰め寄った。その声は低く、怒気をはらんでいる。その顔には、隠しきれない焦燥が浮かんでいた。「貴様……国王様に恥をかかせる気か? 黙って下がれっ! 下がっていろ!」 お偉いさんに注意されたバカ貴族は、意味が分からないようで、その場に呆然と立ち尽くし、俺たちをぼう然と見つめていた。その目は、理解不能なものを見るかのように、虚ろだった。顔からは、先ほどの傲慢さが消え失せ、戸惑いに取って代わられていた。「無礼ですって? どちらかと言えば国王の方が無礼ですわよ! わたしの夫になる方なのですよ。献上品を渡すのであれば、跪き渡すべきですわっ」 ミリアは青く透き通った瞳で国王を睨みつけ、毅然とした態度で言い放った。その言葉には、一切の迷いがなかった。彼女の背筋はピンと伸び、その威圧的なオーラは、周囲の空気を張り詰めるほどだった。「はぁ……ミリアは……黙ってて」 俺は慌ててミリアの口を手のひらで塞いだ。彼女の熱い吐息が、俺の手に触れる。ミリアは、突然の行動に目を丸くしたが、抵抗はしなかった。「はぁい……」
最終更新日 : 2025-10-15 続きを読む