Masuk異世界に転生し、皇帝の娘であるミリア皇女に強いアプローチを受けユウヤは婚約者となるために、ユテーリア王国の王子となる。しかし、新たな婚約者として、情熱的なシャルロッテ王女が登場し、ユウヤを巡る二人の激しい愛情と独占欲が渦巻く日々が始まる。
Lihat lebih banyakミリアの屋敷のソファーで紅茶を飲みながら二人で寛いでいた。寛ぐつもりではいたが、つい世話になり迷惑を掛けたフェンベル王国にも店を出し恩返しをと仕事のことを考えてしまう。
「なんかさ~この国にも店を出して欲しいって言われてるんだけど……」
ユウヤが、少し困ったように呟く。
「でしょうね……」
ミリアは、納得したように頷いたあと、少しだけ首をかしげて尋ねた。
「……どうするのですか?」
「それを相談してるんだけど……婚約者なんだよね? やっぱり違った?」
その言葉に、ミリアの目がぱちんと見開かれる。
「違わないです! 婚約者ですわっ!」
きっぱりとした声。けれど、その頬はほんのり赤く染まっていた。
「それに先程、わたしのこの屋敷に滞在してくださると仰ってましたよね?」
ミリアは、ユウヤを見上げながら、目をキラキラと輝かせる。その瞳には、期待と嬉しさがあふれていた。
「まぁ~ね……イヤじゃなければ、またお世話になろうかな」
「嫌なわけないじゃないですか!もぉ……」
ミリアは、ぷくっと頬を膨らませながらも、その表情はどうしようもなく嬉しそうだった。
「じゃあ、頼むよ」
ユウヤがそう言うと、ミリアはぱっと笑顔を咲かせて――
「はぁい♡」
その声は、まるで春の陽だまりのようにあたたかく、ユウヤの心に、ふわりと優しい風を吹き込んだ。良いムードだった。ミリアの笑顔は柔らかく、ユウヤの心にも、久しぶりに穏やかな風が吹いていた。
柔らかな絹のクッションに身を預け、ユウヤは深く息を吐いた。ミリアの屋敷の中庭は、帝国の中心とは思えないほど静かで、心地よい風が花々の香りを運んでくる。
「……疲れたから、少し休もうか」
そう言ったユウヤの言葉に、ミリアはぱっと笑顔を咲かせた。
「はい♡ では、わたくしの膝をどうぞ」
「えっ……いや、そんな……」
「遠慮は無用ですわ。あなた様は、わたくしの婚約者なのですから」
ミリアは、絹の敷物に優雅に腰を下ろし、膝をぽんぽんと叩いた。ユウヤは少し戸惑いながらも、彼女の膝に頭を乗せる。
「……ミリアの膝、柔らかいな」
「ふふっ。皇女の膝枕は、世界で一番贅沢ですわよ?」
ミリアの指先が髪を撫でる。その仕草は、帝国の財政を動かす手とは思えないほど優しく、愛情に満ちていた。
「ユウヤ様。こうしていると、わたくしの中の“皇女”が眠ってしまいそうですわ」
「それは……いいことなのか?」
「ええ。あなた様の前では、ただの女の子でいたいのですもの」
ミリアは、そっとユウヤの頬に触れた。その瞳には、独占欲と幸福が混ざり合った光が宿っていた。
「……ユウヤ様。わたくし以外の女性に、こんな顔を見せてはなりませんわよ?」
「見せないよ。ミリアだけだ」
「ふふ……当然ですわ」
その笑顔は、帝国の威光を背負いながらも、ただ一人の恋人に向けられた、無邪気な少女のものだった。
ミリアの屋敷は、まるで宮殿のような静けさと気品に満ちていた。中庭の噴水は魔力で水を循環させ、花々は季節を超えて咲き誇っている。ユウヤは、絹張りのソファに腰を下ろし、ミリアの手から受け取った冷たい果実水を口にした。「……うまい。これ、なんの果物?」
「帝国南部の“星果”ですわ。わたくしの領地でしか採れませんの」
ミリアは、誇らしげに微笑む。その笑顔は、ただの自慢ではなく、ユウヤに喜んでもらえたことへの純粋な嬉しさだった。
「ユウヤ様のために、朝一番で召使いに摘ませましたのよ?」
「えっ……そんなことまで……」
「当然ですわ。あなた様は、わたくしの婚約者なのですから」
その言葉に、ユウヤは少しだけ照れたように視線を逸らす。だが、ミリアは構わず隣に腰を下ろし、そっと腕を絡めてきた。
「……ねえ、ユウヤ様。今日は、何も考えずに過ごしましょう?」
「そうだな。たまには、何もない日もいいかも」
その時、召使いが静かに近づき、銀の盆を差し出した。中には、帝国工房製の魔道具が並んでいる。
「皇女殿下、先ほどご注文の“癒しの香炉”と“冷気の羽布団”が届いております」
「ありがとうございます。ユウヤ様のために、最高級のものを揃えましたの」
「いや、俺そんなに……」
「ふふっ、遠慮は無用ですわ。あなた様の快適さは、帝国の最優先事項ですもの」
ミリアは、まるで国家予算を動かすような口ぶりで言い切った。召使いは深々と頭を下げ、静かに下がっていく。
ユウヤは、ミリアの横顔を見つめながら、(やっぱりスケールが違うな……)と、内心で苦笑した。
その後、二人は屋敷の奥にある温泉付きの浴室へと向かい、ミリアの領地から運ばれた香草湯に浸かる。湯けむりの中、ミリアはユウヤの肩にそっと頭を預け、囁いた。
「……ユウヤ様。こうしていると、世界がわたくし達だけのものに思えますわ」
「それ、ちょっと怖いけど……悪くないな」
その言葉に、ミリアはくすくすと笑い、湯の中でユウヤの手を握った。
その後、ユウヤが中庭のソファでくつろいでいると、ミリアが召使いに向かって軽やかに手を振った。
「そこの者、ユウヤ様のために“星果のジュレ”を用意なさい。冷たすぎては喉を痛めますから、温度はわたくしの指先と同じくらいにしてくださいますように」
「はっ、皇女殿下!」
召使いは慌てて頭を下げ、走って厨房へと向かっていった。
「幸運なのですかね……金や権力があった方が良いですが、それが目的で付き合って無いので、金や権力が無くても一緒に居られれば幸せですよ。お金なら俺も持っていますし稼いでますしね。権力が無くても暮らせますよ」 ユウヤは、湯船の縁に頭を預け、夜空を見上げながら淡々と語った。その声には、物質的な豊かさよりも、心の平穏を重んじる静かな意志が宿っていた。「そうか……金や権力が無くても大切にするのだな?」 おっちゃんは、ユウヤの言葉の真偽を確かめるように、じっとその瞳を覗き込んできた。「勿論ですね……権力は、むしろ邪魔ですね、のんびりと暮らしたいので……」 ユウヤが少し困ったように笑いながら言うと、おっちゃんは目を丸くして、腹の底から響くような声で笑い出した。「変わった奴だなぁ! 普通は死物狂いで権力を手に入れようとしている奴等ばかりだぞ?」 だろうね~普通は。でも俺は、権力に魅力を感じないしなぁ……何でだろ?自分でも分からない。前世の記憶があるからか、それとも今の自由な身の上が気に入っているからか。「俺の考えは参考にはならないですね」 ユウヤは、気恥ずかしさを隠すように、お湯を掬って顔を洗った。「いや、それはそれで、珍しい考えで興味があるな。それで、その女と結婚をする気はあるのだろ?」 おっちゃんは、面白そうに目を細め、さらに踏み込んだ。その視線は、若者の覚悟の深さを推し量るかのようだった。「えぇ、ありますよ……婚約してますし。……好きなので」 ユウヤは、暗闇に紛れて赤くなった顔を隠しながら、はっきりと答えた。ミリアやシャルロッテの、時折見せる年相応の笑顔や温もりを思い出すと、自然とその言葉が口を突いて出た。「だったら要らないと言っている権力も付いてくるが良いのか?」 おっちゃんは、現実的な問題を突きつけるように、鋭い問いを投げかけた。その声は、
「夜に、ちょっと温泉に入りたくなりまして……」 ユウヤは、湯船に浸かったまま、平静を装って答えた。「一人でか?」 ヤバそうな人物は、ユウヤの言葉を吟味するように、低い声で問い返した。(あ、モンスターが出るんだっけ……普通は、一人ではこないか……) ユウヤは、自身の不注意を思い出し、内心で舌打ちした。「一応、冒険者をしているのでモンスターとの戦闘は問題ありません。日頃の疲れを癒やしに温泉に入りにきました」 ユウヤは、自分の職業と目的を簡潔に伝え、警戒心がないフリをした。「そうか……モンスターが活発になる、こんな夜中に温泉に入りに来るとは相当な強者なのだな。そういえば、ここに来る途中にモンスターが道端に大量に倒されていたな……」 その人物は、冷めた視線でユウヤを値踏みするように見つめ、ユウヤの通ってきた道の状況を指摘した。 その人物の胸には、昔受けたデカい刀傷の跡が、暗闇の中で薄っすらと白く見えた。それは、彼がただの強者ではないことを示す、凄絶な過去の痕跡であった。(いやいや、そっちの方が強者っぽいですけど……! やっぱり兵士のお偉いさんかな……? 顔も暗闇の中で薄っすらと見えるけど、今までに会った中で一番強そうで恐いな) ユウヤは、相手から発せられる重圧に警戒心を強めた。(あぁ、言われてみれば、倒したモンスターを放置してきちゃったな。ちょっと……不味かったかな?) ユウヤは、後始末を忘れたことに冷や汗をかいた。(それで、他の人は温泉に入っている気配は無さそうだけど……周囲に展開している気配からして、この人の護衛なのか……?)「それで道に転がっていたモンスターは、お前の仕業なのか?」 その声は、断定的な響きを含んでいた。
ムッとした表情のシャルロッテが玄関で出迎えてくれた。彼女は、両腕を組んで、不満げにユウヤを見上げていた。シャルロッテは、ムッとしていても頬を膨らませて可愛いオーラを出しているので、ユウヤにはたまらなく可愛く感じてしまう。(その……ぷくぅと膨らませた柔らかそうな、ほっぺを触りたいんですけど) ユウヤは、衝動的に手を伸ばしたくなるのを、必死に我慢した。「もお、遅いですわぁ……」 シャルロッテは、玄関先で待ちくたびれた様子で、膨らんだ頬をさらに膨らませて訴えた。「別に、遊びに行っていた訳では無いのですわよ」 ミリアは、冷淡な視線をシャルロッテに向け、自分の正当性を主張した。「分かっていますけれど……お姉様は、ユウヤ様を独り占めし過ぎですわっ」 シャルロッテは、嫉妬の炎を隠さずに、切々と訴えかけた。「こうもウルサイのなら、婚約を認めるんじゃなかったかしら……」 ミリアは、一瞬、ゾッとするような冷たい声で言い放った。 シャルロッテは、その言葉にハッとした表情になり、ユウヤの腕に慌ててしがみついた。その手には、強い焦燥感が込められていた。「ううぅ……ヒドイですわ……ユウヤ様からも、お姉様に抗議をしてくださいっ」 シャルロッテは、ユウヤに甘えるように助けを求めた。「はぁ~……俺が居ないと、二人は仲が良いのに困るよな~」 ユウヤが呆れたようにため息をつきながらそう言うと、二人は一瞬顔を見合わせ、ミリアが申し訳無さそうに言ってきた。「すみません。本当に仲が悪い訳ではないのですが……からかってしまって」 ミリアは、わずかに頬を赤らめて、視線を逸らしながら小声で謝罪した。「はい……おふざけですわ」 シャルロッテも、ユウヤの腕から離れ、
「何で、ミリアが勝手に決めるんだよ」 ユウヤは、自分の意思を無視されたことに、少し苛立ちを込めて言った。「ユウヤ様なら、お分かりになられるでしょう?」 ミリアは、ユウヤの置かれている立場と政略的な必要性を暗に示し、諭すような目線を向けた。「まぁ……分かるけどさ。また、相談もされてないんだけど?」 ユウヤは、理解はできるが不満は残るという表情で、不服を唱えた。 ミリアが俯いて、また怒られるという表情で、申し訳無さそうに言い訳をしてきた。「相談をしても答えは変わりませんし、必要ないかと……ユウヤ様が要らないと言うのであればお断りいたしますけれど……?」 ミリアは、俯いたまま、小声で言い訳をした。その声には、自分の判断への絶対的な自信と、ユウヤの機嫌を損ねたくないという気持ちが混ざっていた。「今回は、良いけど次回からは相談をしてよ」 ユウヤは、ミリアの性格を理解し、強く叱責する代わりに、今後のルールを明確にした。「はい……分かりました……」 ミリアは、心底安堵したように顔を上げ、素直に頷いた。 ミリアは、今まで文句を言われず自分の考えた通りにしてきて、相談をするという習慣がなかったから仕方ないけど、慣れてもらわないと。ユウヤは、ミリアの行動原理と彼女を変えていく必要性を静かに認識した。 今回のミリアの考えは、話からすると多分だけど、弱小の王国の娘は要らないと言っていたので、強い王国の娘をもらい裏切らないようにする意味と忠誠の証なのかな?王様も娘を差し出す見返りもあるだろう、皇帝の一族の側室になれば恩恵もあるんじゃないかな……。まあそれに……今回は幼い少女で無害と判断をしたのかもね。ユウヤは、ミリアの打算的な戦略と安全性の評価を冷静に分析した。「本人のユフィリスは、嫌がってるんじゃない?」 ユウヤは、政略結婚に巻き込まれる少