さっき、大地は自分の気持ちを無視して、無理やり渉の相手をさせようとした。今度は、彼が企画案に目を通し終わった途端、用済みだとばかりに切り捨てようとしている。世の中、そんなに甘くはない。「プロジェクトは実力勝負よ。渉とのプライベートな問題と仕事は別。契約はちゃんと書面で交わすんだから、彼が約束を破るなら違約金を払ってもらうだけ。二宮グループも私も損はしないわ」大地はぐっと言葉に詰まった。葵がバンと机を叩いて立ち上がった。「お姉さん!なんて恩知らずなの!お父さんが特別にあなたを今の地位に引き上げてあげたことを忘れたの?」「二宮グループを守ったのは私の母なのよ。だから私がどんな立場にいようと当然のこと。それに比べて、二宮家で生まれたわけでもないあなたが、私に向かって机を叩くなんて、何様のつもり?」凪の冷たい視線がナイフのように葵の胸に突き刺さり、葵は思わず息を呑んだ。カチャッ――再びドアが開き、葵はこみ上げてきた怒りをぐっとこらえた。悔しさで胸が張り裂けそうだった。渉は、会議室の異様な雰囲気に気づいた。「凪と二人きりで話したいです」「でも、このプロジェクトは私が……」葵は不満そうに言った。「決定権は俺にあります」渉は冷たく言い放ち、葵を全く相手にしなかった。それを見た大地は、慌てて葵を隣の会議室に連れて行こうとした。しかし葵は大地の手を振りほどいた。「お父さん!お姉さんに馬鹿にされて、他の人にもいじめられてるのを黙って見てるだけなの!?」「プロジェクトが最優先だ。まずは契約を済ませる。君のことは、後でお父さんが何とかしてやるから」大地の視線は会議室に向けられた。白い壁を見つめながら、まるで中にいる渉と凪の姿が見えるかのようだった。十三年という絆は、利用する価値がある。……会議室。渉は凪の向かいに座り、二人の視線が交わった。「彼らは君に強い敵意を抱いている。君を追い出したいんだろう」「知ってるわ」凪は気にも留めない様子で答えた。あまりに率直な彼女の態度に渉は一瞬言葉を失ったが、すぐに口を開いた。「もし、俺がこれまでしてきたことを全て許してくれるなら、このプロジェクトは君に一任する。そうすれば君は二宮グループで確固たる地位を築けるし、もっと自分のやりたいことができるようにな
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