忍は、凪の話にまんまと乗せられてしまった。やれやれと、彼女の頭をこつんと叩く。「庭が花でいっぱいになるのを楽しみに待っておるね。もし空と一緒になって、おじいさんに噓をつくようなことがあれば、二人ともお説教だからな」「はい、おじいさんのおっしゃる通りにいたします」凪は笑って、忍の機嫌をとるようにすり寄った。そして、あっという間に忍をすっかり上機嫌にさせてしまったのである。その様子を見ていた隆は、唖然とするばかりだった。忍といえば、一筋縄ではいかないことで有名な方だ。それを、凪はあんなふうに甘えてみせるだけで、いとも簡単に手なずけてしまったのか?「奥様、すごいですね……」「花の注文をしておけ」空の口角が微かに上がった。隆に命じたものの、その視線は彼に向けられることはなかった。隆は口元を引きつらせながらも、急いで手配に向かった。リビングには、忍と凪の笑い声が響いていた。しばらくして、食事の時間になった。凪は、忍を空腹にさせてはいけないと思い、台所に様子を伺いに行こうとした。しかし、忍に引き止められた。「こっちへ来い」「先に台所へ行ってきます。おじいさんはまだ療養中なのですから、お腹を空かせたらだめですよ」凪はそう言って譲らなかった。口先で喜ばせるのは簡単だけど、実際の気配りを怠ってはいけない。忍は嬉しそうに目を細め、彼女を引き止めて座らせると、ひとつの立派な小箱を取り出した。「これは、空のおばあさんが遺したアクセサリーでな。うちで代々受け継がれてきたものだ」凪が小箱を開けてみると、中身は確かに年代物だったが、その輝きを失っておらず、精巧な細工の価値が衰えることもないだろう。ずっしりと重く、非常に高価なものに違いない。その上、空の祖母から受け継がれたものだなんて……「残念なことに、彼女は空が結婚するのを見届けることなく、先に逝ってしまってな。本当はもっと早く渡すべきだったんだが……ただ、自分の手元に置いて、もう少し眺めていたくて、こんなに長く待ってしまった。今は、君に渡るね」忍は、小箱を凪の膝の上へと押しやった。凪は慌てて首を横に振った。「いえ、こんなに大切なものはいただけません……」それに、自分と空は政略結婚だ。そこに、本当の気持ちはない。そんな自分が、こんなに心の
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