政府関連のプロジェクトとなると、技術に求められる水準は桁違いに跳ね上がる。その後の二日間、紬は承一たちと共に、幾度となく長時間の会議を重ねていた。議論は白熱し、実務的な細部に至るまで徹底的に詰められていく。災害救援対応ドローンは、一般的な民生機やこれまでの上位モデルとは、設計思想からして根本的に異なる。積載量、ナビゲーション精度、そして航続能力。あらゆる面において、絶対的な信頼性と確実な性能向上が必須条件だった。おおよその企画骨子が固まったところで、次はアロー・フロンティア側との調整だ。紬は朝日を伴い、先方との協議に向かった。アロー・フロンティアを訪れるのは、紬にとってこれが初めてのことだ。すでに事業は軌道に乗り、盤石な運営体制が敷かれているとは聞いていたが、実際にそのロビーに足を踏み入れて初めて、紬はその規模の大きさを肌で感じた。随所に、潤沢な資金が投じられていることが、空間の端々から伝わってくる。長きにわたり実績を積み上げてきた老舗企業と比べても、何ら遜色はない。慎ほどの資本力があれば、寧音という存在を業界へと押し上げることなど、造作もないことなのだ。担当部署との打ち合わせを終え、朝日と共にロビーへ降りてきた頃には、すでに時計の針は十時を過ぎていた。朝日が車を回しに行っている間、紬は手元の携帯で良平にメッセージを送った。【今夜、食事に行きます】と。送信を終えてふと顔を上げると、少し先の曲がり角から、見知った人影が現れた。光だ。向こうも紬に気づき、足を止める。だが、紬は視線を向けることすらせず、光の横を風のように通り過ぎた。光の表情に、複雑な色が浮かぶ。数ヶ月間、共に仕事をしてきた間柄だ。一声くらいかけてくれてもいいものを、と思っていたのだ。遠ざかる紬の背中を見送りながら、光は気にする風でもなく、軽く肩をすくめた。アロー・フロンティアの将来性は計り知れない。自分の未来のために動いたのだ、この選択は間違いなどではない。その場面を、ちょうど通りかかった寧音が目撃していた。カツカツとヒールの音を響かせて歩み寄ると、彼女は事務的な口調で問いかけた。「さっき、彼女と打ち合わせを?」光は即座に首を振る。「いいえ、他の者が対応しました。今のは偶然すれ違っただけです」寧音は紬が去った方向を
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