紬が慎からこれほど容赦のない言葉を投げかけられたのは、初めてのことだった。表情はほとんど変わらない。嫌味でも皮肉でもない。それでも、その言葉は鋭利な刃物のように胸に突き刺さった。慎はそれ以上何も言わず、踵を返してその場を離れ、診察室の外で待つことにした。医師が処置しやすいよう、場を空けたのだ。紬も、もはや慎と言い争う気力はなかった。処置が進むにつれ、痛みが少しずつ和らいでくる。真っ青な顔で医師を見上げた。「自分の身体のことはわかっています。精密検査までは必要ありません」テーブルの角に患部をぶつけ、それが引き金となって急性の腹痛を引き起こした。それだけのことだ。しかし医師は真剣な顔で言った。「尋常な痛みではありません。腹腔内出血がないか確認する必要があります」紬は静かに目を閉じた。自分でわかっていた。子宮癌の進行による慢性的な痛みがあり、そこへ強い衝撃が加わったのだ。だが、こうなってしまった以上、検査を受けるのが一番話が早い。「わかりました……検査結果はすべて私に直接お話しください。外にいる方は私とは何の関係もありませんので、その方には一切、口外しないでください」声は掠れていたが、強い意志を込めて念を押した。医師は深くは問わなかった。CTと血液検査が行われることになった。救急外来は混雑しており、結果が出るまでにしばらく時間がかかる。慎はその場を離れなかった。紬のベッドからほど近い待合の椅子に腰を下ろし、声もかけなかった。ただ、時折視線を上げ、紬の様子を確かめた。そうするうちに、承一が駆けつけた。息を切らしながら駆けつけた承一は、まだ血の気の引いたままの紬の顔を見て、表情が一気に険しくなった。「かなりひどいのか?いったい何があった?」紬は首を振り、こみ上げる気分の悪さをこらえながら、彼を安心させようと微笑んだ。「大丈夫よ、ちょっとぶつけただけだから」まもなく、正樹と寧音もやって来た。紬は二人に対して、愛想を振りまく余裕などなかった。体調が最悪な上に、残った気力をそちらに使いたくなかったのだ。この二人が来たのは、自分を心配してのことではないとわかっていた。慎がいるから来ただけだ。体面を繕いに来た、それだけのことだ。寧音は表情を変えることなく、ベッドの紬をちらりと一瞥する
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